コプリー 標準 PART.7 鼓動

Last-modified: 2024-12-03 (火) 18:45:50

アントニーナ中央の上位エントロピーを攻撃すれば、他のエントロピーにも影響します!効果アリですね!
???このルール、どのエントロピーにも効くみたいね、良かった。
???掩護をお願いできる?私が突くから。
アントニーナまかせてください。
 ……
 最後の一体が倒れると、エントロピー液の混じった海水は跡形もなく退いていった。
人形はエントロピーの巣から長槍を引き抜いて、こちらへと向かってくる。
???戦闘終了。
アントニーナ完璧でしたね。怪物どもと初めて戦ったとは、とても思えません。
???地形が有利だっただけだよ。それに、教授の指揮もあるし。
???地上での単独作戦だったら、あなたに及ばなかったと思う。
アントニーナ戦術人形じゃあるまいし、大して変わりませんよ。
???指揮するのが戦術人形だったら、もっとスムーズだったんじゃない?
アントニーナそういった経験があるのかもしれませんね、教授?
(選択)1.戦術人形って?A
2.まぁね。昔は戦術人形を率いて、あちこちで戦ったものさ。A
Aアントニーナもういいです……訊ねたこっちがバカでした。
???教授って、面白い人だね。
アントニーナこんな奴を面白いと言えるなら、「面白い」を「ロクでもない」の下位互換とするしかないですね。
???んー……場を和ませるのが下手なだけかも?
 そう言いながら、こちらの視線に気づいたかのように、彼女はふりむいて私を見た。
(選択)1.こんにちは。B
2.……C
B???こんにちは、「教授」。D
C 私が黙っていると、見知らぬ人形は少々ためらいがちに微笑んで見せた。
???こんにちは、「教授」。D
D 
???初めましてだね、私は初塵(はつちり)。
 彼女は手を差し出した。だが一瞬握手を交わしただけで、彼女はすぐに手を放した。
そして私たちに向かって小さく頷く。
E(選択→H)1.君はここで何を?F
2.この地底洞窟について、何か知ってるのか?G
F初塵仲間の末宵(すえよい)がここで消息を絶ったから、探しに来たの。
初塵他の人に出会うなんて、思いもしなかった。E
G初塵見ての通り、ここの岩は私を阻めない。でも、まだここへ来て間もないんだ。
初塵この先の状況は、あなたたちのほうが詳しいと思うよ。E
H 
(選択)1.協力し合う。I
2.黙っている。J
I初塵教授は、私について来てほしいの?
初塵……そうだね、しばらくは同行できるかも。
{教授}ここに限った話じゃないよ。
実は、オアシスというセクターに拠点を持っているんだ。
もしよかったら、私たちに加わらないか?
初塵んー……お誘いは嬉しいけど、今は末宵を探さなくちゃ。
初塵あの子が見つからないと、他のことが手につかなくて。
{教授}そうか、わかった。
初塵わかってくれて、ありがと。K
Jアントニーナどちらもクラウドセクターの人形なんだし、チームを組めば、この先だいぶ楽になるんじゃないかな!
アントニーナアンナや教授と一緒に、冒険するなんてどう?
初塵教授がイヤじゃないなら、しばらくは一緒にいてもいいよ。
アントニーナ教授はね、オアシスっていうセクターに拠点を造ったんだ!あなたさえ良ければ、私たちに加わったっていいんだよ!
初塵んー……良いアイディアだと思うけど、今は末宵を探さなくちゃ。
初塵あの子が見つからないと、他のことが手につかなくて。K
K 
初塵それじゃ、しばらくの間、よろしくね。
アントニーナとなれば、情報共有といきますか!
初塵うん。【同期データアップロード中】
【アップロード完了】……なにか収穫はあった?
アントニーナ良いニュースです。初塵さんの情報はかなり使えますよ。やはり、エントロピーには樹状ネットワークが存在してましたね。
アントニーナそれに、ここのエントロピーはピエリデスのものとは異なります。コードの違いだけではありません、指揮系統もです。
アントニーナコプリーセクターのエントロピーは、上位が下位に命令を下す形です。彼らには協力という概念がある。
{教授}なるほど。上位を倒すと、まわりも動かなくなるのはそのためか。
アントニーナおそらく、別の上位からの命令を待つ必要があるのでしょう。
アントニーナできれば、巣穴のリーダーを優先的に倒していきたいところですね。残りはどうとでもなります。
初塵ためになる情報だったね。それで、悪いニュースは?
アントニーナ悪いニュースは、私たちが壊した5つの巣穴と同じものが、この先ますます増えていくということ。
アントニーナ巣穴が増えれば増えるほど、大元にたどり着くことは難しくなります。
初塵必ずしも悪いニュースだとは言えないね。
初塵あなたの追ってる信号、もっと奥深くにあるの?
アントニーナはい。目標まで、かなりの距離がありますね。
アントニーナ末宵さんの手がかりは見つかったんですか?
 初塵は首を振った。
アントニーナそうですか……私も他の人形の信号は検知していませんね。その方がここにいない可能性は?
初塵末宵の信号を最後に拾ったのが、コプリーセクターだったの。
初塵地上での通信は問題なかった。信号が届かない場所と言えば、地下しかないと思って。
アントニーナもし見つからなかったら?
初塵あの子はここにいる、断言するよ。
{教授}大切な人なのか?
初塵仲間だから。それに、私と唯一同じモデルの人形なの。
{教授}姉弟なのか?それとも姉妹?
初塵……なんで私たちをそんな風に言うの?
{教授}人間の習慣だよ。同じ人物から造られた二つの個体は、兄弟姉妹と呼ぶんだ。
初塵そうだったんだ、ならそうかも。
初塵末宵は私の……弟。それに大切な仲間だよ。だから絶対に探し出さないと。
アントニーナ姉弟の概念についてはよくわかりませんが、とにかく、理由があるなら止めはしません。
アントニーナ出発する前に、周辺環境の変化を記録して……ん?
初塵どうしたの?
 そう言って、初塵はアントニーナに歩み寄った。
アントニーナ……ご自分でどうぞ。
初塵……
初塵お客さんは、私たちが最初じゃなかったみたいね。
{教授}何を見てるんだ?
 初塵は彼女の武器で、エントロピー液の中から何かを拾い上げて見せた。
アントニーナ噛み砕かれたダンパーです。
アントニーナどこかの先住エージェントが残していったものでしょうか……私たちより先に、誰かがここを訪れている。
初塵あの怪物たちに、食べられちゃったのかな。
 初塵は付着したエントロピー液を海水で洗い流し、ダンパーを懐にしまった。
アントニーナダンパーが気になるんですか?
初塵ううん、べつに。地上に戻ったら、アドミニストレーターに渡そうと思って。
初塵エージェントがいなくなって、困ってるだろうから。でも、もしかしたら……
アントニーナもしかしたら、何もかも承知の上かもしれない。アドミニストレーターは、セクターのすべてを把握して然るべきですからね。
初塵もしかしたら、ね。こうするのが癖なんだ。
アントニーナやけに冷静ですね。
アントニーナ末宵さんが心配じゃないんですか?
初塵あの子は強いよ。あんな怪物なんかに食べられたりしない。
初塵焦って手がかりを見落としちゃったら困るしね。だけど……
 初塵は口を噤んだ。その眼差しはとても冷静には見えない。
初塵教授、早く出発しよう。いいよね?
L(選択)1.ここをもう少し調べたい。M
2.行こう。N
M初塵そっか……確かに、他にも手がかりが見つかるかも。
 私たちは付近をひととおり調べた。
エントロピー液の溜まり場で、武器の一部と思われる残骸を見つけた。
そして、エントロピー液にひどく蝕まれた布の切れ端も。
初塵見つけただけでも、5~6人のエージェントがここにいたみたいね……しかも、浄化者の武器の残骸まで落ちてる。
初塵浄化者もエントロピーから逃げられなかった。思った以上にひどいことがあったみたい。L
N初塵それじゃ、今まで通り下を見て来るから。何かあったら知らせるね。
 そう言って、彼女はさらなる地底へと潜った。
 
 奥へと向かう途中で私は奇妙な声を聞いた。それは規則正しい震動音のようだった。
初めこそ微弱だったが、アントニーナの示す方向へと近づくにつれ、
音は次第に大きくなってゆく。まるで耳元で血管が強く脈打っているようだ。
 私は傍にいるアントニーナを見た。
彼女は端末の縁をきつく握りしめながら、未知なる深淵を見据えている。
{教授}アントニーナ、なんだか……
アントニーナひぁっ……!?
{教授}えっ?どうしたの、そんなに驚いて……
アントニーナ……べつに。信号のノイズをフィルタリングしていただけです。そっちこそ何ですかいきなり?
{教授}なんか、心臓の鼓動のような音がしないか?
アントニーナ……ええ、してますね。それに音だけじゃありません。
 彼女は足元へと視線を促した。
 灰褐色をした硬質岩の表面に、不揃いな凹凸が這っている。
複雑に絡み合うそれは、さながら植物の根を彷彿とさせる一方で、
臓器に浮かぶ血管のようにも見える。
アントニーナこの表面に這ってるモノ……一見、岩の一部のようですが、質感がやや異なります。
アントニーナまるで、生き物の神経系の中を進んでいるようですね。
アントニーナ信号もますます強くなっています……この数値、どこまで上がるんでしょう。
(選択)1.怖いのか?O
2.作戦を変えようか?P
Oアントニーナその冗談、ちっとも笑えませんね。
アントニーナ私がエントロピーを怖がるわけないでしょう。
 自分を奮い立たせるかのように彼女は言った。口ぶりはひどく曖昧だった。Q
P{教授}もし相手が手強そうだったら、ペルシカたちとの連絡を優先しよう。
アントニーナわかってます。障壁の破壊任務は、バックグラウンドで続行中です。Q
Qアントニーナマグラシアはデータの世界、なのになぜ心臓の音が……
アントニーナ気味が悪いですね。
初塵その根っこ、下にもあったよ。あなたたちの説明とはだいぶ違うけど。
アントニーナ地下にも?持って来れますか?
初塵試してみる。
 
 十数秒後、初塵が地面から現れた。彼女の通った穴がすぐに閉じる。
初塵これは岩じゃない。見たところ、エージェントの一部だと思う。
初塵欠片を取って来たよ、はい。
アントニーナ……コード構造はエントロピーのものですね。生きてはいますが、個体とは言えません。初塵さんの言うように、生き物の一部のように見えます。
アントニーナここの根は完全に硬化してますが、地底のものはまだ生きている……?
初塵そうなのかな、よくわからない。ただ、岩みたいに通れないのは確かだね。
アントニーナ地中での移動に影響しますか?
初塵少しね、でも大丈夫。前にも地底でこういうの見てるから。切っちゃえばいいだけ。
{教授}この物体の電子信号は解析できるか?
アントニーナやってみます。
 数秒後、重たく混濁した声が、アントニーナの端末から発せられた。
 初めはぼんやりとした嗚咽音だった。獣の産声に少し似ている。
アントニーナが音質を上げるにつれて、
その音は徐々に女性の声のようなものに変化していった。
 言語には程遠いが、感情がはっきりと伝わってくる。
怒り、哀しみ、そして強い渇望……
 ……まるで心臓が肋骨という牢獄から抜け出そうと、叫んでいるかのようだ。
アントニーナ……
 アントニーナは停止キーを押した。
アントニーナなんですか、これ……?
 アントニーナがそう言ったとたん、地面が再び揺れ出した。
地表を這う触手のような物体が震え始める。
天井から剥がれたオペランドの欠片が水面へと落ちた。
初塵また地震……?違う、岩だけが揺れてるみたい。何があったの?
アントニーナ……信号の範囲が広がった……障壁のジャミングが消えました!
アントニーナペルシカさん、聴こえ――
 ふいに揺れが止まった。アントニーナの叫び声が洞窟の中を響いてゆく。
通信機の光がまた暗くなった。
{教授}また切れたのか?
アントニーナええ、またです。でも一瞬のエラーのおかげで、より遠くまで探索できました。
アントニーナ精確な位置がつかめただけじゃない、相手の勢力分布もすべて把握しましたよ。
初塵上位エントロピーの近くに人形の信号は?
アントニーナありません、残念ながら。ただ、検出した信号にノイズが混じってますね。むこうが反ジャミングシステムを備えている可能性はあります……
初塵ノイズ?どんなノイズなの?
アントニーナこれです。
初塵……これ、末宵の暗号化メッセージだ……
初塵この近くで動けなくなって、助けを呼んでる。
アントニーナ暗号化メッセージ?
アントニーナ私の知らない暗号化形式があったなんて……それどころか、暗号化されてることすら気づけなかった!いつ開発されたものなんです?
初塵私たちのモデルだけの特殊機能だよ。地下でのやり取りに使うの。通常のシステムだと、ノイズにしか聞こえないけど。
初塵あの子はふだん使わない。これで呼びかけたということは、かなり危険な状況……
初塵ごめんなさい、教授。協力し合えるのはここまでみたい。私、行かないと。
アントニーナ水を差すわけじゃありませんが、追跡できた信号はかなりの大きさです。あなた一人じゃ危険すぎる。
初塵大丈夫。戦いも性能も、末宵より私のほうが上だから。
初塵はやくあの子を助けたいの、一秒たりとも無駄にできない。それに、あなたたちを連れて地中を進むのはもっと危険だし。
アントニーナ……わかりました、どうかご武運を。
(選択)1.待った。R
R{教授}その信号源が、末宵と一緒だったら?
初塵……上位エントロピーが、末宵を捕らえてると言いたいの?
アントニーナ言われてみれば……敵の分布からして、その可能性はありますね。
初塵……
{教授}相手の位置が特定できるのは、アントニーナが信号を追跡してるおかげだ。
末宵のいる具体的な場所は、まだわからないんだろう?
{教授}目標の位置が違ったなら、その時別れても遅くはない。
初塵確かに、そうかもしれない。
初塵言っておくけど、私はあの子が最優先だから。上位エントロピーの近くにいないとわかったら、そこからは別行動だからね。
{教授}ああ、わかってるよ。
 
 立ち塞がる数体のエントロピーを一掃すると、目の前が急に光った。
黒紫色の液体オペランドに浸蝕され、見るも無残となった岩石。
その無数にある隙間を通じて、風が鋭く長い音へと変化している。
初塵……あれが、あなたたちの探してる「上位エントロピー」なの?
 岩石の上に盤踞する巨大な影が、淡い紫色の光の中へと浮かび上がる。
 彼女の上半身は、エージェントとなんら違わなかった。
だが下の肉腫から伸びる巨大な触手は、絶えず蠕動しながら周囲の様子を探っている。
こちらの存在に気づいたのか、それは何かから逃れるかのようにもがき始めた。
???ウぅぅーーア”ぁ”ぁ”ぁ”ーーー!!
 激しい金切声が地底洞窟を席巻する。
アントニーナあたりのオペランドが彼女へと集まっている……間違いありません、こいつが信号の発信源です!