アントニーナ | 中央の上位エントロピーを攻撃すれば、他のエントロピーにも影響します!効果アリですね! | ||
---|---|---|---|
??? | このルール、どのエントロピーにも効くみたいね、良かった。 | ||
??? | 掩護をお願いできる?私が突くから。 | ||
アントニーナ | まかせてください。 | ||
…… | |||
最後の一体が倒れると、エントロピー液の混じった海水は跡形もなく退いていった。 人形はエントロピーの巣から長槍を引き抜いて、こちらへと向かってくる。 | |||
??? | 戦闘終了。 | ||
アントニーナ | 完璧でしたね。怪物どもと初めて戦ったとは、とても思えません。 | ||
??? | 地形が有利だっただけだよ。それに、教授の指揮もあるし。 | ||
??? | 地上での単独作戦だったら、あなたに及ばなかったと思う。 | ||
アントニーナ | 戦術人形じゃあるまいし、大して変わりませんよ。 | ||
??? | 指揮するのが戦術人形だったら、もっとスムーズだったんじゃない? | ||
アントニーナ | そういった経験があるのかもしれませんね、教授? | ||
(選択) | 1.戦術人形って? | A | |
2.まぁね。昔は戦術人形を率いて、あちこちで戦ったものさ。 | A | ||
A | アントニーナ | もういいです……訊ねたこっちがバカでした。 | |
??? | 教授って、面白い人だね。 | ||
アントニーナ | こんな奴を面白いと言えるなら、「面白い」を「ロクでもない」の下位互換とするしかないですね。 | ||
??? | んー……場を和ませるのが下手なだけかも? | ||
そう言いながら、こちらの視線に気づいたかのように、彼女はふりむいて私を見た。 | |||
(選択) | 1.こんにちは。 | B | |
2.…… | C | ||
B | ??? | こんにちは、「教授」。 | D |
C | 私が黙っていると、見知らぬ人形は少々ためらいがちに微笑んで見せた。 | ||
??? | こんにちは、「教授」。 | D | |
D | |||
??? | 初めましてだね、私は初塵(はつちり)。 | ||
彼女は手を差し出した。だが一瞬握手を交わしただけで、彼女はすぐに手を放した。 そして私たちに向かって小さく頷く。 | |||
E | (選択→H) | 1.君はここで何を? | F |
2.この地底洞窟について、何か知ってるのか? | G | ||
F | 初塵 | 仲間の末宵(すえよい)がここで消息を絶ったから、探しに来たの。 | |
初塵 | 他の人に出会うなんて、思いもしなかった。 | E | |
G | 初塵 | 見ての通り、ここの岩は私を阻めない。でも、まだここへ来て間もないんだ。 | |
初塵 | この先の状況は、あなたたちのほうが詳しいと思うよ。 | E | |
H | |||
(選択) | 1.協力し合う。 | I | |
2.黙っている。 | J | ||
I | 初塵 | 教授は、私について来てほしいの? | |
初塵 | ……そうだね、しばらくは同行できるかも。 | ||
{教授} | ここに限った話じゃないよ。 実は、オアシスというセクターに拠点を持っているんだ。 もしよかったら、私たちに加わらないか? | ||
初塵 | んー……お誘いは嬉しいけど、今は末宵を探さなくちゃ。 | ||
初塵 | あの子が見つからないと、他のことが手につかなくて。 | ||
{教授} | そうか、わかった。 | ||
初塵 | わかってくれて、ありがと。 | K | |
J | アントニーナ | どちらもクラウドセクターの人形なんだし、チームを組めば、この先だいぶ楽になるんじゃないかな! | |
アントニーナ | アンナや教授と一緒に、冒険するなんてどう? | ||
初塵 | 教授がイヤじゃないなら、しばらくは一緒にいてもいいよ。 | ||
アントニーナ | 教授はね、オアシスっていうセクターに拠点を造ったんだ!あなたさえ良ければ、私たちに加わったっていいんだよ! | ||
初塵 | んー……良いアイディアだと思うけど、今は末宵を探さなくちゃ。 | ||
初塵 | あの子が見つからないと、他のことが手につかなくて。 | K | |
K | |||
初塵 | それじゃ、しばらくの間、よろしくね。 | ||
アントニーナ | となれば、情報共有といきますか! | ||
初塵 | うん。【同期データアップロード中】 【アップロード完了】……なにか収穫はあった? | ||
アントニーナ | 良いニュースです。初塵さんの情報はかなり使えますよ。やはり、エントロピーには樹状ネットワークが存在してましたね。 | ||
アントニーナ | それに、ここのエントロピーはピエリデスのものとは異なります。コードの違いだけではありません、指揮系統もです。 | ||
アントニーナ | コプリーセクターのエントロピーは、上位が下位に命令を下す形です。彼らには協力という概念がある。 | ||
{教授} | なるほど。上位を倒すと、まわりも動かなくなるのはそのためか。 | ||
アントニーナ | おそらく、別の上位からの命令を待つ必要があるのでしょう。 | ||
アントニーナ | できれば、巣穴のリーダーを優先的に倒していきたいところですね。残りはどうとでもなります。 | ||
初塵 | ためになる情報だったね。それで、悪いニュースは? | ||
アントニーナ | 悪いニュースは、私たちが壊した5つの巣穴と同じものが、この先ますます増えていくということ。 | ||
アントニーナ | 巣穴が増えれば増えるほど、大元にたどり着くことは難しくなります。 | ||
初塵 | 必ずしも悪いニュースだとは言えないね。 | ||
初塵 | あなたの追ってる信号、もっと奥深くにあるの? | ||
アントニーナ | はい。目標まで、かなりの距離がありますね。 | ||
アントニーナ | 末宵さんの手がかりは見つかったんですか? | ||
初塵は首を振った。 | |||
アントニーナ | そうですか……私も他の人形の信号は検知していませんね。その方がここにいない可能性は? | ||
初塵 | 末宵の信号を最後に拾ったのが、コプリーセクターだったの。 | ||
初塵 | 地上での通信は問題なかった。信号が届かない場所と言えば、地下しかないと思って。 | ||
アントニーナ | もし見つからなかったら? | ||
初塵 | あの子はここにいる、断言するよ。 | ||
{教授} | 大切な人なのか? | ||
初塵 | 仲間だから。それに、私と唯一同じモデルの人形なの。 | ||
{教授} | 姉弟なのか?それとも姉妹? | ||
初塵 | ……なんで私たちをそんな風に言うの? | ||
{教授} | 人間の習慣だよ。同じ人物から造られた二つの個体は、兄弟姉妹と呼ぶんだ。 | ||
初塵 | そうだったんだ、ならそうかも。 | ||
初塵 | 末宵は私の……弟。それに大切な仲間だよ。だから絶対に探し出さないと。 | ||
アントニーナ | 姉弟の概念についてはよくわかりませんが、とにかく、理由があるなら止めはしません。 | ||
アントニーナ | 出発する前に、周辺環境の変化を記録して……ん? | ||
初塵 | どうしたの? | ||
そう言って、初塵はアントニーナに歩み寄った。 | |||
アントニーナ | ……ご自分でどうぞ。 | ||
初塵 | …… | ||
初塵 | お客さんは、私たちが最初じゃなかったみたいね。 | ||
{教授} | 何を見てるんだ? | ||
初塵は彼女の武器で、エントロピー液の中から何かを拾い上げて見せた。 | |||
アントニーナ | 噛み砕かれたダンパーです。 | ||
アントニーナ | どこかの先住エージェントが残していったものでしょうか……私たちより先に、誰かがここを訪れている。 | ||
初塵 | あの怪物たちに、食べられちゃったのかな。 | ||
初塵は付着したエントロピー液を海水で洗い流し、ダンパーを懐にしまった。 | |||
アントニーナ | ダンパーが気になるんですか? | ||
初塵 | ううん、べつに。地上に戻ったら、アドミニストレーターに渡そうと思って。 | ||
初塵 | エージェントがいなくなって、困ってるだろうから。でも、もしかしたら…… | ||
アントニーナ | もしかしたら、何もかも承知の上かもしれない。アドミニストレーターは、セクターのすべてを把握して然るべきですからね。 | ||
初塵 | もしかしたら、ね。こうするのが癖なんだ。 | ||
アントニーナ | やけに冷静ですね。 | ||
アントニーナ | 末宵さんが心配じゃないんですか? | ||
初塵 | あの子は強いよ。あんな怪物なんかに食べられたりしない。 | ||
初塵 | 焦って手がかりを見落としちゃったら困るしね。だけど…… | ||
初塵は口を噤んだ。その眼差しはとても冷静には見えない。 | |||
初塵 | 教授、早く出発しよう。いいよね? | ||
L | (選択) | 1.ここをもう少し調べたい。 | M |
2.行こう。 | N | ||
M | 初塵 | そっか……確かに、他にも手がかりが見つかるかも。 | |
私たちは付近をひととおり調べた。 エントロピー液の溜まり場で、武器の一部と思われる残骸を見つけた。 そして、エントロピー液にひどく蝕まれた布の切れ端も。 | |||
初塵 | 見つけただけでも、5~6人のエージェントがここにいたみたいね……しかも、浄化者の武器の残骸まで落ちてる。 | ||
初塵 | 浄化者もエントロピーから逃げられなかった。思った以上にひどいことがあったみたい。 | L | |
N | 初塵 | それじゃ、今まで通り下を見て来るから。何かあったら知らせるね。 | |
そう言って、彼女はさらなる地底へと潜った。 | |||
奥へと向かう途中で私は奇妙な声を聞いた。それは規則正しい震動音のようだった。 初めこそ微弱だったが、アントニーナの示す方向へと近づくにつれ、 音は次第に大きくなってゆく。まるで耳元で血管が強く脈打っているようだ。 | |||
私は傍にいるアントニーナを見た。 彼女は端末の縁をきつく握りしめながら、未知なる深淵を見据えている。 | |||
{教授} | アントニーナ、なんだか…… | ||
アントニーナ | ひぁっ……!? | ||
{教授} | えっ?どうしたの、そんなに驚いて…… | ||
アントニーナ | ……べつに。信号のノイズをフィルタリングしていただけです。そっちこそ何ですかいきなり? | ||
{教授} | なんか、心臓の鼓動のような音がしないか? | ||
アントニーナ | ……ええ、してますね。それに音だけじゃありません。 | ||
彼女は足元へと視線を促した。 | |||
灰褐色をした硬質岩の表面に、不揃いな凹凸が這っている。 複雑に絡み合うそれは、さながら植物の根を彷彿とさせる一方で、 臓器に浮かぶ血管のようにも見える。 | |||
アントニーナ | この表面に這ってるモノ……一見、岩の一部のようですが、質感がやや異なります。 | ||
アントニーナ | まるで、生き物の神経系の中を進んでいるようですね。 | ||
アントニーナ | 信号もますます強くなっています……この数値、どこまで上がるんでしょう。 | ||
(選択) | 1.怖いのか? | O | |
2.作戦を変えようか? | P | ||
O | アントニーナ | その冗談、ちっとも笑えませんね。 | |
アントニーナ | 私がエントロピーを怖がるわけないでしょう。 | ||
自分を奮い立たせるかのように彼女は言った。口ぶりはひどく曖昧だった。 | Q | ||
P | {教授} | もし相手が手強そうだったら、ペルシカたちとの連絡を優先しよう。 | |
アントニーナ | わかってます。障壁の破壊任務は、バックグラウンドで続行中です。 | Q | |
Q | アントニーナ | マグラシアはデータの世界、なのになぜ心臓の音が…… | |
アントニーナ | 気味が悪いですね。 | ||
初塵 | その根っこ、下にもあったよ。あなたたちの説明とはだいぶ違うけど。 | ||
アントニーナ | 地下にも?持って来れますか? | ||
初塵 | 試してみる。 | ||
十数秒後、初塵が地面から現れた。彼女の通った穴がすぐに閉じる。 | |||
初塵 | これは岩じゃない。見たところ、エージェントの一部だと思う。 | ||
初塵 | 欠片を取って来たよ、はい。 | ||
アントニーナ | ……コード構造はエントロピーのものですね。生きてはいますが、個体とは言えません。初塵さんの言うように、生き物の一部のように見えます。 | ||
アントニーナ | ここの根は完全に硬化してますが、地底のものはまだ生きている……? | ||
初塵 | そうなのかな、よくわからない。ただ、岩みたいに通れないのは確かだね。 | ||
アントニーナ | 地中での移動に影響しますか? | ||
初塵 | 少しね、でも大丈夫。前にも地底でこういうの見てるから。切っちゃえばいいだけ。 | ||
{教授} | この物体の電子信号は解析できるか? | ||
アントニーナ | やってみます。 | ||
数秒後、重たく混濁した声が、アントニーナの端末から発せられた。 | |||
初めはぼんやりとした嗚咽音だった。獣の産声に少し似ている。 アントニーナが音質を上げるにつれて、 その音は徐々に女性の声のようなものに変化していった。 | |||
言語には程遠いが、感情がはっきりと伝わってくる。 怒り、哀しみ、そして強い渇望…… | |||
……まるで心臓が肋骨という牢獄から抜け出そうと、叫んでいるかのようだ。 | |||
アントニーナ | …… | ||
アントニーナは停止キーを押した。 | |||
アントニーナ | なんですか、これ……? | ||
アントニーナがそう言ったとたん、地面が再び揺れ出した。 地表を這う触手のような物体が震え始める。 天井から剥がれたオペランドの欠片が水面へと落ちた。 | |||
初塵 | また地震……?違う、岩だけが揺れてるみたい。何があったの? | ||
アントニーナ | ……信号の範囲が広がった……障壁のジャミングが消えました! | ||
アントニーナ | ペルシカさん、聴こえ―― | ||
ふいに揺れが止まった。アントニーナの叫び声が洞窟の中を響いてゆく。 通信機の光がまた暗くなった。 | |||
{教授} | また切れたのか? | ||
アントニーナ | ええ、またです。でも一瞬のエラーのおかげで、より遠くまで探索できました。 | ||
アントニーナ | 精確な位置がつかめただけじゃない、相手の勢力分布もすべて把握しましたよ。 | ||
初塵 | 上位エントロピーの近くに人形の信号は? | ||
アントニーナ | ありません、残念ながら。ただ、検出した信号にノイズが混じってますね。むこうが反ジャミングシステムを備えている可能性はあります…… | ||
初塵 | ノイズ?どんなノイズなの? | ||
アントニーナ | これです。 | ||
初塵 | ……これ、末宵の暗号化メッセージだ…… | ||
初塵 | この近くで動けなくなって、助けを呼んでる。 | ||
アントニーナ | 暗号化メッセージ? | ||
アントニーナ | 私の知らない暗号化形式があったなんて……それどころか、暗号化されてることすら気づけなかった!いつ開発されたものなんです? | ||
初塵 | 私たちのモデルだけの特殊機能だよ。地下でのやり取りに使うの。通常のシステムだと、ノイズにしか聞こえないけど。 | ||
初塵 | あの子はふだん使わない。これで呼びかけたということは、かなり危険な状況…… | ||
初塵 | ごめんなさい、教授。協力し合えるのはここまでみたい。私、行かないと。 | ||
アントニーナ | 水を差すわけじゃありませんが、追跡できた信号はかなりの大きさです。あなた一人じゃ危険すぎる。 | ||
初塵 | 大丈夫。戦いも性能も、末宵より私のほうが上だから。 | ||
初塵 | はやくあの子を助けたいの、一秒たりとも無駄にできない。それに、あなたたちを連れて地中を進むのはもっと危険だし。 | ||
アントニーナ | ……わかりました、どうかご武運を。 | ||
(選択) | 1.待った。 | R | |
R | {教授} | その信号源が、末宵と一緒だったら? | |
初塵 | ……上位エントロピーが、末宵を捕らえてると言いたいの? | ||
アントニーナ | 言われてみれば……敵の分布からして、その可能性はありますね。 | ||
初塵 | …… | ||
{教授} | 相手の位置が特定できるのは、アントニーナが信号を追跡してるおかげだ。 末宵のいる具体的な場所は、まだわからないんだろう? | ||
{教授} | 目標の位置が違ったなら、その時別れても遅くはない。 | ||
初塵 | 確かに、そうかもしれない。 | ||
初塵 | 言っておくけど、私はあの子が最優先だから。上位エントロピーの近くにいないとわかったら、そこからは別行動だからね。 | ||
{教授} | ああ、わかってるよ。 | ||
立ち塞がる数体のエントロピーを一掃すると、目の前が急に光った。 黒紫色の液体オペランドに浸蝕され、見るも無残となった岩石。 その無数にある隙間を通じて、風が鋭く長い音へと変化している。 | |||
初塵 | ……あれが、あなたたちの探してる「上位エントロピー」なの? | ||
岩石の上に盤踞する巨大な影が、淡い紫色の光の中へと浮かび上がる。 | |||
彼女の上半身は、エージェントとなんら違わなかった。 だが下の肉腫から伸びる巨大な触手は、絶えず蠕動しながら周囲の様子を探っている。 こちらの存在に気づいたのか、それは何かから逃れるかのようにもがき始めた。 | |||
??? | ウぅぅーーア”ぁ”ぁ”ぁ”ーーー!! | ||
激しい金切声が地底洞窟を席巻する。 | |||
アントニーナ | あたりのオペランドが彼女へと集まっている……間違いありません、こいつが信号の発信源です! |