ピエリデス 標準 PART.1 交差

Last-modified: 2024-11-27 (水) 20:43:33

???教授……教授?
{教授}……ん……?ペルシカ?
ペルシカ眠ってしまわれたんですか?
(選択)1.えっ、寝てた……?疲れてたのかもな。A
2.このところオアシスが平和だから、気が緩んだのかもね。B
Aペルシカ確かに、とてもお疲れのようです。あまり無理なさらないでください。C
Bペルシカいつでもどこでも眠りにつけるオアシス……なんだか、とっても安心します。C
Cペルシカ教授にリラックスして頂くために、オアシスに新しくできたプロジェクタールームで映画でも、と思ったのですけれど……
ペルシカふふふ、少々つまらなかったみたいですね。
 スクリーンに目を向けると、とあるモンスター映画が放映されていた。
 つんざくような叫び声が遠くから響いている。
少女が怪物の身体をまっぷたつに引き裂いたかと思うと、
もう一体の怪物の触手が、少女を背後から突き刺した。
 画面の隅では、白い服を着た別の少女が、
物語から遠ざかるようにして、漠然とその光景を眺めている。
 ふいに、白い服の少女と私の目が合った。
{教授}……
 スクリーンの中央では、あいかわらず人形と怪物の戦いが続いている。
気づけば、白い服の少女は消えていた。
まるで、初めから存在していなかったかのように。
 ……
>> CHAPTER 5 // 温 床 . . .
ペルシカ……大丈夫ですか?
ペルシカ蒸し暑かったのかもしれませんね、散歩にでも出かけましょうか。
 私はこめかみを押さえてどうにか頷くと、
ペルシカとともにプロジェクタールームを出た。
 私たちは花園の近くに座った。
ペルシカは一旦その場を離れ、1杯のコーヒーを片手に戻ってきた。
ペルシカちょうど良かった。最近、コーヒーの淹れ方にこだわってまして。味見してみてください、教授。
 私は受け取ったコーヒーを一気に飲み干したが、
過剰な甘ったるさに咳き込んでしまう。
{教授}ごほッ、ごほごほッ……どんだけ砂糖入れたんだ?
ペルシカ角砂糖を10個ほどだけど……多かった?
{教授}ペルシカ……
ペルシカはい?どうかなさいました?
{教授}いや……どうやら本当に疲れているみたいだ。
{教授}そういえば、新しいプロジェクタールーム、なかなかの造りだね。
ペルシカええ。人形たちが少しずつ戻って来ているので、各部門が軌道に乗り始めたんです……
ペルシカこうしてオアシスに娯楽の場ができたのも、ひとえに教授のおかげです。
(選択)1.そんなことないよ、皆が頑張ったおかげだ。D
2.まったくだ、本当にくたびれたよ。E
Dペルシカ皆、教授には頭があがりません。そう謙虚にならないでください。F
Eペルシカ本当にお疲れ様です。オアシスが平和なうちに、ゆっくりお休みになってください。F
Fペルシカもちろん、不安を感じることはあります……でも、あなたがいれば、轍を踏む心配はありませんもの。
ペルシカあなたなら、どんな困難でも乗り越えられるわよね、指揮官?
{教授}……ペルシカ!?
ペルシカきょ、教授?
{教授}ごめん、なんだか……なんだか気分が悪いんだ。
ペルシカ休憩しましょうか?
 ペルシカは労わりの眼差しを向けてきた。
焦燥感がじりじりと私の神経を這ってゆく。
 なんだ、この感覚は?現実に戻りたくて焦っているのか?
それとも……
 私はあえてペルシカの視線を避け、遠くに目を向けた。
すると、そこに白い人影を見つけた。
{教授}
{教授}ペルシカ、あそこにいるのは私たちの人形か?
ペルシカどこですか?
 目を戻すと、そこには誰もいなかった。
ペルシカ……もしかして前のことで、気が張り詰めていらっしゃるのでは?
ペルシカ今のオアシスは安全です。何かあれば、セキュリティシステムが知らせているでしょう。教授、まずはお座りください。
(選択)1.いや、彼女が誰なのか知りたい。G
2.そうかな?確かに、ちょっと敏感になってたかも。H
Gペルシカ教授、待ってください――
 少女が現れたほうへ向かおうとすると、見慣れた人物にぶつかった。I
H 私は再び腰を下ろした、だが焦燥感は拭えない。
きっと、何かを見落としているんだ、だけど……
 一連の足音が私の思考を遮った。I
Iアントニーナペルシカさん?教授?
ペルシカアントニーナさん?どうしてここに?
アントニーナサンドボックス障壁をメンテし終えたので、記録しに戻るところです。そちらこそ、映画を見に行くんじゃなかったんですか?
ペルシカ教授の具合が悪いようなので、一旦外に出てきたんです。
ペルシカあぁ……教授の見かけた白い服の少女は、アントニーナさんだったんですね。
{教授}……ちょっと待った。
{教授}白い服の少女を見たなんて、ひとことも言ってないはずだけど?
 キンッ――
 そう言ったとたん、空中に白銀色の光の塊が突如現れた。
光の塊は四散し、ゆっくりと空全体へと広がってゆく。
 私は思わず後ずさる。
やがて光が消えると、世界はたちまちその姿を変えた。
 
{教授}!!!!
 色鮮やかだった花園は、ペンキをぶちまけたかのように、
濃い黒紫の光に沈んでいる。
ペルシカどうしたんですか?顔色が、かなり悪いようですよ?
{教授}見えてないのか!?ペルシカ、周囲を見てみろ。
これは一体どういうことなんだ?
ペルシカすみません、教授の仰る意味が……お花はとても綺麗ですよ?
ペルシカそんなことより、一緒に花園の奥へと参りませんか?そこでなら、誰にも邪魔されずに済みます。
{教授}ペルシカ?
 ペルシカがとぼけているようには見えない。
心に芽生えた焦燥感が、いよいよ私を不安にさせる。
{教授}私は夢を見てるのか……
違う、マグラシアはセカンダリレベルであって現実世界じゃない。
ここに夢の概念はないはずだ。
 スッ――
 先ほどの場所に、白い服の少女の姿が一瞬よぎった。
{教授}
 私を導いているのか?
ペルシカどこへ行くんです?教授?
 ペルシカにかまわず、私は白い服の少女のほうへとまっすぐ向かっていった。
ペルシカ待ってください、教授――
ソルうわっ、どうしたのさ教授、そんなに急いで。
ソルペルシカが呼んでるよ?
{教授}どっから出てきたんだ、君は?
アントニーナ何を言ってるんです、さっきからいたじゃないですか。
 白い服の少女を追って花園を離れようとする私に、人形たちは激しい反応を見せた。
ペルシカ教授、どうかなさったんですか?
ソルちょっとちょっと。まさか、ペルシカを捨ててく気?
アントニーナチッ。だから言ったでしょう、この教授は頼りにならないって。
 彼女たちは一斉にこちらへと迫ってきた。
ソルに至っては、腰の刀柄に手をかけている。
 私は彼女たちを置いて、一目散に駆け出した。
周囲の景色が徐々にねじ曲がってゆく。
アントニーナ行かないでくださいよ、教授!
ソル教授、戻っておいでよ!
 かつて親しかった者たちの表情が、次々と豹変していった。
私は制止を振り払い、花園の端へとがむしゃらに走った。
 ふと、私は足を止めた。
振り返ると、そこには先ほどの少女の姿があった。
白い服の少女……
{教授}君か……君は一体誰なんだ?
白い服の少女……あなたはここにいるべきじゃない。
 彼女は花園の出口を指差した。
そこは静寂そのものだった、草花は風に揺れてすらいない。
ペルシカ?行ってはだめです!教授!
白い服の少女あなたの目的を思い出して。
 少女に促されるまま、足を踏み出そうとした瞬間、
あたりの景色がガラスのように次々と砕け散った。
 
 粉々になった記憶が、まるで写真のように瞬いては消えてゆき、
やがて天地を覆い尽くし、私を呑み込んでいった。
 
クロック来ないで!
クロックぐッ……あはは……こいつ、けっこータフだな。
ソル危ない!!
ペルシカ教授……逃げてくださ……