ピエリデス 標準 PART.10 公演

Last-modified: 2024-11-27 (水) 21:10:47

 ラヴの姿を装ったエントロピーは倒れ、灰となって散っていった。
 ひとしきり眩暈を覚えた後、気付けば私たちは現実へと戻っていた。
ペルシカ教授!オディールさんもご無事でしたか、良かった……
ソルだから言ったじゃん、教授なら大丈夫だって。
ウィズダムはぁ……はぁ……危のうござった。
(選択)1.【武装制圧準備】A
2.具合はどう?B
Aウィズダム……ぬぁぁっ!?
ウィズダムおいこら、吾輩の台詞でからかうのは止さぬか!C
Bウィズダムだいぶ良い。少なくとも、メンタルの制御権は取り戻したでござる。C
Cウィズダム浄化者とエントロピーは相容れぬが、もし……
 ウィズダムはしばらく黙った。
表情には憎悪と恐怖が混じる。
{教授}もし?
ウィズダムいいや、そうはさせぬ!
ウィズダム奴らなんぞに吾輩のメンタルを占拠されてたまるか……
オディールすべての努力が報われた、これほど喜ばしいことはないわ。おかえりなさい。
ウィズダム……よもや、ターシャリレベルでおぬしらに助けられるとは。以前、おぬしを見捨てようとしたことを、謝らねばならんな。
オディールいいの。みんな無事で戻って来れた、それだけで十分よ。
オディールそろそろ、終幕へと向かう頃ね……うぅっ。
 オディールが歩み出そうとしたとたん、彼女の身体がよろめいた。
ウィズダムがそれを支える。
ウィズダム大丈夫でござるか?
オディールええ、もちろん……芸術で最も重要かつ最も美しいとされるのは、「強さ」と「勇気」だもの。
オディール私なら平気よ、心配しないで……花園に行きましょう。
 オディールは疲れているようだった。
だがその笑顔は変わらず美しい。
 ウィズダムは何も言わずにオディールを支えている。
しばらくして、アントニーナがオディールのもう一方の腕を支えた。
 
オディール私たちの花園へようこそ。
 美しい花園が、私たちの前へと現れた。
それはまるでエントロピー液の海に漂う、孤島のようだった。
ソルわぁ~~、きれい!
アントニーナ感染される前のピエリデスは……こんなに美しかったんですか?
オディールこれは私たち姉妹の単なる余興よ……
オディール感染が広がるにつれ、いずれはここもオペランドが尽きて、廃墟となってしまうのでしょうね……
{教授}そうなる日が来る前に、早く何とかしなくちゃね。
オディールふふふ。頼りになるわ、教授さん。
 
オディールこれがデータの裂け目よ。
 花園の空中には、一筋の紫色の裂け目が横たわっていた。
周囲には黒紫色をした触手のような生き物が、小さく身をうねらせている。
今にも大量のエントロピーが湧き出し、この土地を呑み込んでしまいそうだ。
オディールあとは、これを閉じるだけ……
オディールどうすればいいかはわかっているの。でも、私だけの力では成し遂げられない……
ソルうっわぁ……き、気持ち悪すぎる……
ウィズダムフフン、足手まといにならないと申していたのは、どこの誰でござったか。
ソルあ、足手まといになんかなるもんか!どきな、あたしがオディールを手伝う!
ウィズダムやめておけ、エントロピーへの耐性もないくせに!
ウィズダムさっさとどかぬか、こんなところにいては邪魔でござる。
 ウィズダムは、オディールを支えていたアントニーナとソルを遠くへと押しやった。
裂け目の傍には、ウィズダムとオディールだけが残った。
 オディールは手を伸ばし、手のひらから流れるオペランドを使って、
裂け目の周囲を封鎖した。
オディール裂け目は私が出来る限り制御するわ……後は……お願い……
 ウィズダムが手を振ると、下位浄化者たちが四方へ展開し、周囲を警戒し始めた。
次に、ウィズダムは紫色の裂け目へと片手を伸ばした。
清らかな光が、彼女の手から発せられる。
オディールこれで……やっと……
 オペランドが流れ出るにつれ、オディールの顔色がいよいよ青白くなった。
 白い光に照らされる彼女は、まるで透き通って見える。
アントニーナいけない、このままオペランドを放出していては、身体がもちません!
ペルシカ皆さん、オペランドを私に!私からオディールさんへ渡します!
ソルはいよッ!
 オペランドのサポートを受けた事で、オディールの顔色が若干良くなった。
 ウィズダムが彼女を一瞥して、なだめるように言った。
ウィズダム安心いたせ、すぐに元通りでござる。
ウィズダム【浄化開始】
【吾等は暗闇で刃を鍛え、混沌より秩序を守り、長夜に光明を灯す……】
 ウィズダムの手から放たれた白い光が裂け目へと流れ込み、
底なしの切れ目を徐々に満たしていった。
やがて一瞬のうちに、裂け目の周囲から強烈な光がほとばしり、世界を覆い尽くした。
 烈日に融ける雪のように、黒紫色の裂け目が純白の光によって溶解してゆく。
 裂け目から這い出て必死に足掻いていた触手も、
オディールのオペランドによって縛り付けられ、なすがままにされている。
ペルシカオペランドが、尽きてしまいそうです……
ソルくッ……あたしも……
アントニーナこちらにはまだ残ってます、これも彼女に。
ウィズダムまだ耐えられそうか、オディール?
オディールなんとか……ね……
 口ではそう言いつつも、オディールの輪郭は明らかに先ほどより薄くなっている。
 私の心臓は喉元にまで来ていた。
もはや成功を祈るしか術はない。
 
 まるで1日が過ぎ去ったかのように感じられ――実際にはたったの数秒だったが――
白い光は収まっていった。
 裂け目はすでに消えていた。
そこには、消失しつつあるエントロピー液だけが残されていた。
オディールはぁ……はぁ……成功した……?
オディールピエリデスは……助かった……の……?
ウィズダム心配いらぬ、すべて終わったでござる。
 身体が極限にまで薄まったオディールが、屈託のない笑顔を浮かべた。
そんな彼女を見て、ウィズダムも笑い出した。
オディールありがとう、皆さん……
ウィズダムなに、これも浄化者の責務にござる。待っておれ、おぬしにオペランドを……
 ウィズダムの背後で何かが光った。
ソルどいて、ウィズダム!!
ウィズダム……!?
 極めて薄かったオディールの姿が、完全に消失した。
 ウィズダムの背後にあったエントロピー液から数本の触手が現れ、
ウィズダムの身体を貫いた。
ソルそんな……
アントニーナオディール、一体何をした!?
 アントニーナの怒号に伴い、背後にあった液体がゆるりと立ち上がり、
漆黒の人影へと姿を変えた。
 見た目は違えど、その顔立ちには見覚えがあった――オディールだ。
 一瞬、彼女の顔色が苦痛に染まるも、完全に新たな力を受け入れたかのように、
今度は無上なる喜びの表情を浮かべた。
オディール?あぁ……竜殺しはやがて竜となる。勇者の願いが何であろうと、結果は変わらない。これは疑いようのない悲劇なの。
オディール?喜劇を書くのは難しいわ。大団円を迎えるには、想像を絶する努力が必要となる。けれど悲劇は違う。
オディール?喪失とはえてして理不尽なもの……喪失こそが私たちの宿命。かたや生存とは強奪の繰り返し。
{教授}オディール……あなた……
アントニーナ裂け目の制御にオペランドを割いたせいで、エントロピーに隙を突かれたか……
アントニーナあれだけオペランドをファイアウォールに充てるよう忠告したのに!!
オディール?生きるために奪い、生きるために喰らう……生きるためなら、忌み嫌うものとすら混じり合う。
オディール?舞台はこれにて幕引きよ、ご観劇に感謝するわ。
{教授}彼女を押さえて!
ソル待ちやがれッ!
 ソルは両剣を抜いて、オディールの触手めがけて切りかかった。
 キンッ!
ソル……あんた……!
 ソルの刀は、無情にも狙撃銃のバレルで弾かれた。
ウィズダムぐ……う……
ソル足手まといになるなって……そっちが言ったんじゃん……!
 貫かれた傷口を中心に、ウィズダムの身体が素早く変異し始めた。
彼女の両手と顔面は、すでに漆黒に覆われてしまっている。
 彼女の身体が苦痛に歪んだ。
まるで何かが彼女の皮膚下で激しく変化し、繭を突き破ろうとしているかのように。
ウィズダムの……呑み込……すべ、て……
い、いやだ、吾輩、は……@#¥失#%……リセ……##¥%!
ウィズダムうぅぅぅ……あぐッ……ガッ……
ガアあァァァぁあアあーーーー
オディール?ふふふ……なんて美しいのかしら。躯体に囚われた命が、まもなく羽化し始める――
オディール?幸せなお方、これから真の自由を味わえるのね。
オディール?我らが崇拝せし主は、かくも偉大であらせられる。己が暗闇に囚われようとも、我らに自由をお恵みになるのだから。
オディール?でも大丈夫、私が主を解き放ってご覧にいれましょう。
アントニーナ逃げる気か!
 アントニーナの攻撃が外れた。
 ウィズダムの背後で、オディールは悠々とスカートをたくし上げ、
優雅にお辞儀をしてみせた。続いて、紫色の裂け目が再び現れる。
彼女は身体をのけぞらせ、あの恐ろし気な隙間へと、瞬く間に姿を消した。
ペルシカソルさん、退がって!今のウィズダムは危険です!
ソルでも……
ウィズダムギギ……ギガ……ガァァッァァァアアアーーーー!!
下位浄化者【攻撃命令を確認、ターゲット変更――】
アントニーナあれはもうウィズダムではありません!下位浄化者まで寝返った!
アントニーナもう迷っている場合じゃない!
{教授}ペルシカ、ソルの援護を!アントニーナ、下位浄化者をお願い!
{教授}ソル……戦闘準備!
ソルくっ……
ソルくっそぉぉぉぉッ!