ピエリデス 標準 PART.3 要撃

Last-modified: 2024-11-27 (水) 20:51:01

 前日、午前04:11。
 オアシス司令室。
ペルシカ教授、今のところ戦線は安定しています。
ペルシカですが、サンドボックス障壁では、あの怪物たちを阻めません。今はなんとか抑え込めていますが、もし第三波、第四波が来れば……
{教授}……アントニーナのほうは?
ペルシカ解析を通じて、メンタルファイアウォールを安定させるコードを作成しています。クロックさんが命がけでサンプルを持ち帰ってくれたおかげです。
ペルシカしかし……
アントニーナ私からご説明します。
ペルシカアントニーナさん?感染者のほうは大丈夫なんですか?
アントニーナ生体サンプルで得たコードは、すでにインプット済です。さしあたっては問題ないですよ――
アントニーナ――さしあたっては、ですが。
ペルシカウィルスを止められないのでしょうか?
アントニーナこういった怪物は、とてつもなく微妙なんです。極めて不安定かつ不規則で、混沌とした状態にある。
アントニーナ生物学的にたとえれば、怪物たちはどれもが独立した個体であり、とある存在の発達や増殖による産物です。このウィルスも、おそらく後天的な進化の過程で備わったものでしょう。
アントニーナそのため現段階では、感染を一時的に封じ込めることしかできません。怪物どもの大元を見つけないことには、手の施しようがありませんね。
ペルシカなら、クロックさんは……
アントニーナ……クロックさんは、すでに感染の第二段階へと進んでいます。彼女の意識は、ターシャリレベルへと囚われてしまっている。
アントニーナ手に入れたコードでは、ターシャリレベルへの浸蝕を防ぐのが精一杯ですね。まぁ少なくとも、基礎演算とコアデータへの影響はかろうじて免れています。
 話の途中で、アントニーナのスクリーン上に通信リクエストが現れた。
 > 通信リクエスト確認、接続中……
エージェント解析結果が出ました。怪物の体内で、
まだ完全に異化していないプログラムの断片を発見しました。
プログラム内のデータは、どれもピエリデスセクターを指しています。
ペルシカピエリデスセクター……オアシスに最も近いセクターだと記憶しています。それに規模も小さい。
エージェントはい。これまでの探査で「芸術セクター」であることがわかっています。
我々を襲撃した怪物は、そこから発生したとみて間違いありません。
{教授}ペルシカ、メンバーを集めて出発の準備を。
ペルシカわかりまし……
 その時、アントニーナがペルシカの言葉を遮った。
アントニーナやめておいたほうがいいですよ、教授。
アントニーナある程度の防御力を持つオアシスですら、この有様なんです。ピエリデスセクターなんて、とっくに滅ぼされてると思いますけど。
アントニーナ怪物に占拠されたセクターに行ったところで、無駄死にするだけです。
ペルシカたとえ危険でも、怪物たちの本体からソースコードさえ入手できれば、クロックさんたちは助かります!
ペルシカそれに、他に選択肢はありません。
アントニーナいいえ、一つだけあります。誰も認めたくはないだけで。
アントニーナペルシカさん。最悪の事態となる前に、彼女たちをリセットするんです。でないと、リセットのチャンスまで失われてしまいます。
ペルシカ彼女たちを……殺せと言うんですか!?
アントニーナ仕方ないじゃないですか!!
アントニーナ二度と会えなくなるのは、もっと嫌だ……
アントニーナ私だって、他に方法があれば……くそっ!
 アントニーナは拳をデスクに激しく叩きつけた。
(選択)1.あなたの言うことはもっともよ。A
2.敵前逃亡するなんて、あなたらしくもない。B
A{教授}でも、ここでためらうわけにはいかない。
もし怪物の攻撃が止まなかったら、仲間を何回リセットすることになる?
C
B{教授}心配はわかるよ。だけどリスクはさておき、
あなたは何回仲間をリセットするつもりなの?
C
Cアントニーナ……
ペルシカアントニーナさん。これはけしてクロックさんや、感染者たちのためだけではありません。
ペルシカ怪物たちの進攻は続いています。主力部隊がなんとか対抗していますが、敵の増援がいつ現れるかもわかりません。
ペルシカピエリデスへと向かうのは、ソースコードを見つけるのはもちろん、あれらを根本的に消し去るためでもあるんです。
アントニーナ……わかりました、教授に従います。
{教授}武装部隊は、オアシスに残って怪物を食い止めて。
突撃隊はペルシカ、アントニーナ、ソルの三名。出発準備を。
ペルシカはい!
 
 AM06:52。
 ピエリデスセクター外。
 アントニーナは私たちのまわりに、奇妙な形の装置を取り付けた。
それが稼働したのを確かめてから、
彼女はピエリデスセクターのファイアウォールにアクセスし始めた。
ソルなんなのさ、これ?すっごくボロいけど……
ペルシカじっとしてください、アントニーナさんが大急ぎで作った防御装置です。外敵から私たちをある程度守ってくれます。
ソルちょ……ちょっと聞いただけじゃんか。なにさ、みんなピリピリしちゃって。
ペルシカ……確かに、もう少し気を楽にするべきですね。
ペルシカアントニーナさん、ファイアウォールのクラックは順調ですか?
アントニーナ……
ペルシカアントニーナさん?
 ペルシカは応答のないアントニーナに触れてみた。
 ドサッ――
ペルシカ&ソルアントニーナ(さん)!?
 アントニーナは苦痛の表情を浮かべて地面へと倒れ、身を縮こまらせた。
ペルシカまずいです、アントニーナさんのメンタルが感染しています!
ソルファイアウォールか!?
 アントニーナを支えようとした矢先、
ソルの叫び声と目の前の光景に、私は愕然とした。
 故障時のような光が瞬いたかと思うと、
きれいに整っていたはずのファイアウォールは、
いつの間にかボロボロに朽ち果てていた。
怪物ギッ!――
 次の瞬間、おびただしい数の奇妙なプログラムが裂け目から身を乗り出し、
怒涛のごとくこちらへと押し寄せて来た。
怪物ギギギーーガガーーー
 防御装置による障壁が、怪物の攻撃をかろうじて防いだ。
私たちはその場に縮こまることしかできなかった。
ソルアンナ!しっかり!!
ペルシカ駄目です、彼女はもう感染しています!撤退するしかありません!
{教授}防御装置を抱えて突破するのは?
ペルシカいけません!装置を動かすのは危険です!
怪物ガァァァーーギギギーーー
 黒紫色の液体が障壁内へと滲みだし、
足元から太腿をつたって上半身へと這い上がってきた。
{教授}危険でも――
 言葉の途中で、怪物たちに圧迫されていた防御障壁が、ガラスのように砕け散った。
 押し寄せる黒紫色の波に、今にも呑み込まれそうになる。
ソル危ない!!
 ソルが素早く私たちの前に立ち、襲い来る怪物を一刀両断にした。
 しかし、亡骸は地に落ちることなく、延々と寄せる怪物の波にからめとられ、
私たちのほうへと押し流されてきた。
ペルシカソルさん!教授を掩護して先に行ってください!
ソルなら、あんたはどうすんのさ!?
ペルシカオペランド障壁で奴らを食い止めます!
 ペルシカの手から放たれたオペランドが、怪物たちを足止めした。
 だが形成途中の障壁は、敵の分泌した黒紫色の液体によって溶かされてしまう。
 ソルがすぐさま正面の怪物を防いだ。
しかし、今度は側面から触手が襲いかかって来る――
 
ペルシカ!!教授!!!
 ふいに、私は誰かに押しのけられた。
続いて、何かが貫かれたような音がした。
 あぁッ――
 溢れ出したオペランドが、黒紫色の液体と混じりあう。
 視界がはっきりとする時には、ペルシカはすでに倒れていた。
{教授}ペルシカ!!
ペルシカうぅ……
ペルシカピエリデス、は……もう……
ペルシカ教授……逃げてくださ……
 
ペルシカふふふ、少々つまらなかったみたいですね。
ペルシカあなたなら、どんな困難でも乗り越えられるわよね、指揮官?
ペルシカあぁ……教授の見かけた白い服の少女は、アントニーナさんだったんですね。
{教授}白い服の少女を見たなんて、ひとことも言ってないはずだけど?
白い服の少女……あなたはここにいるべきじゃない。
 気づくと、私は花園にいた。
周囲の景色が破片となって、あたりに浮かんでいる。
 白い服の少女が私を見つめている。
彼女は小さく笑顔を浮かべた。
白い服の少女……目を覚まして。
 
{教授}!!
 私は猛然と起き上がった。
 まわりを見渡すと、アントニーナの設置した装置はすでに機能停止しており、
他の三名は私の傍で静かに横たわっていた。傷口には応急処置が施されている。
 ホッとしたのも束の間、耳元から聞き慣れた機械音声が響いた。
浄化者【警告、ターゲットが目を覚ましました】
???メンタルの状況はわかるか?
浄化者【検査中……警告、ターゲットは異常エージェントです】
【プログラムを続行しますか?】
???続行し……いや、待った。先にこやつを取り押さえろ。
 機械の変形する音が激しく鳴り響いた。
続けざまに、わずかに光を放つ無数の銃口が私へと向けられた。
???【武装制圧準備】
{教授}!!!