機械の変形する音が激しく鳴り響いた。 続けざまに、わずかに光を放つ無数の銃口が私へと向けられた。 | |||
でも、相手は私に照準を定めるばかりで、一向に攻撃してこない。 | |||
私はその隙に頭をフル回転させ、混沌の中からどうにか道筋を立てて、 現状を理解しようとした。 | |||
A | (選択→D) | 1.脅威を分析する | B |
2.ペルシカたちの状況を確かめる | C | ||
B | 私を包囲している浄化者は数にして5名、少数精鋭の部隊だ。 そのうち下位浄化者である4名が、こちらに銃口を突き付けている。 | ||
その背後に立つ中位浄化者とは、かつて遭遇している。 以前、ロッサムで戦った「フェイス」と同じ階級だ。 | |||
彼女の強力な狙撃銃は、深く印象に残っている。 | |||
記憶が確かなら、彼女のコードネームは「ウィズダム」だ。 | A | ||
C | 私はできるだけ身動きせずに、横目で周囲を見渡した。 そう離れていない場所に、ペルシカが倒れている。 傷口には簡単な治療が施されている。 | ||
メンタルは活動状態にあるようだが、まだ目を覚ましていない。 おそらく、先ほどの私と似たような状況だろう。 | |||
彼女が心配だけど、今は軽率に動くべきではない。 | |||
他のメンバーも、状況は似たり寄ったりだ。 | A | ||
D | (選択→G) | 1.浄化者が攻撃して来ない理由を推測する。 | E |
2.武力抵抗の可能性を探る。 | F | ||
E | 銃を構えているのは、4名の下位浄化者だけだ。 一方「ウィズダム」――つまり、あの中位浄化者は、こちらに敵意を示していない。 | ||
下位浄化者は、最も単純な判断しかできないと聞く。 | |||
いつもなら、相手が異常エージェントだと判明すると、 有無を言わさず攻撃を仕掛けてくるはずだ。 | |||
となると「ウィズダム」が攻撃を阻止しているのか。 | D | ||
F | 下位浄化者の損傷状況から推測するに、つい先ほど戦いを終えたばかりのようだ。 万全な状況には見えない。 | ||
多かれ少なかれ、躯体には紫色の浸蝕痕が見られる。 あの怪物どもと戦ったに違いない。 | |||
オペランドを使って逃げ出すこともできたが、 この数の浄化者が相手となると、無事に済むとは思えない。 | |||
なにより、ペルシカたちを置いてはいけない。 | D | ||
G | (選択) | 1.結論を下す。 | H |
H | 上手くいけば、交渉に持ち込めるかもしれない。 | ||
ウィズダム | 【リファクター】、分析結果はどうだ? | ||
私が結論を下すと同時に「ウィズダム」が傍の下位浄化者に尋ねた。 | |||
リファクター | 【検査結果、ターゲットのメンタルはすでに蘇生しています。軽度の感染が見られますが、メンタルファイアウォールが感染の進行を防いでいます】 | ||
ウィズダム | 【リファクター】、もう一度分析を。見落としは許されぬ。 | ||
リファクター | 【分析結果が一致。当該エージェントには軽度の感染が見られますが、メンタルファイアウォールが感染の進行を防いでいます】 | ||
リファクター | 【しかし、判定システムはターゲットを異常エージェントに分類しています】 | ||
下位浄化者は再び私に狙いを定め、武器のセーフティを外した。 | |||
下位浄化者 | 【異常エージェントは、浄化しなくてはなりません】 | ||
(選択) | 1.主導権を握る | I | |
2.様子を見る | J | ||
I | ウィズダム | 待…… | |
{教授} | あなたたちには撃てないよ。 | ||
ウィズダム | 待て。 | ||
下位浄化者 | 【命令を確認】 | ||
下位浄化者はウィズダムの命令を受け、揃って武器を下ろした。 | |||
ウィズダム | …… | ||
ウィズダム | なぜ吾輩が撃たないとわかる? | K | |
J | ウィズダム | 待て。 | |
下位浄化者 | 【命令を確認】 | ||
下位浄化者はウィズダムの命令を受け、揃って武器を下ろした。 | |||
ウィズダム | これだけの銃口を向けられて、何の反応も示さぬとは。 | ||
ウィズダム | 浄化されるのが怖くないのでござるか? | ||
{教授} | まぁね。 | K | |
K | {教授} | 本気だったら、とっくに手を下してるはずよ。 | |
ウィズダム | くくく……死ぬ時も、それだけ誇らしげだと良いのでござるが。 | ||
そう言って、ウィズダムは狙撃銃を構えた。 レーザーサイトから伸びる赤いラインが、私の額へと当てられる。 | |||
下位浄化者 | 【命令を確認、浄化プログラム起動――】 | ||
下位浄化者たちが、下ろしていた銃口を再び持ち上げた。 今度は武器のチャージ音が聞こえる…… | |||
ウィズダム | ! | ||
ウィズダム | やめろ!武器を下ろさぬか!そういう意味ではござらぬ! | ||
下位浄化者 | 【命令を確認】 | ||
ウィズダムのやや冷静さを欠いた命令に、下位浄化者たちは武器を下ろした。 | |||
ウィズダム | ひゅう…… | ||
目元は確認できないが、ウィズダムがこちらを睨んでいるのが、 私にははっきりとわかった。 | |||
(選択) | 1.話し合おう。 | L | |
2.プッ…… | M | ||
L | ウィズダム | チッ。 | N |
M | ウィズダム | 貴様!! | N |
N | ウィズダムは威勢を張りつつ、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。 そして安全距離を保てる位置で足を止めた。 | ||
彼女は私に武器を向けようとしたが、動作半ばで手を下ろした。 | |||
どうやら、少しは主導権を握れたようだ。 | |||
ウィズダム | ぬぁぁぁぁああ!まったくもって腹が立つ! | ||
そう言って、彼女はバイザーを上げた…… | |||
{教授} | えっ? | ||
これまで何度か遭遇戦を繰り広げてはいるが、 バイザーを外した彼女の姿に、私は驚きを禁じ得なかった…… | |||
ウィズダム | だ~か~ら~、イオスフォロス殿が常々仰ってるではないか、下位浄化者にも高度な知能を与えるべきだと! | ||
ウィズダム | ガラクタどものせいで、吾輩の主導権がカンッゼンに失われてしもうたではないか! | ||
リファクター | 【警告:イオスフォロス様の情報を出す必要は――】 | ||
ウィズダム | サイレントモード! | ||
リファクター | 【命令を確認】 | ||
「イオスフォロス様」……確か、ユーカリストもその名を口にしていた。 | |||
これまでのユーカリストの言動から察するに、浄化者の内部には派閥が存在するらしい。 | |||
「穏健派」のリーダーが、彼女の言う「イオスフォロス様」なのだろうか? | |||
どうやら、この「ウィズダム」は「穏健派」で間違いなさそうだ…… | |||
ウィズダム | うぉっほん…… | ||
ウィズダム | まぁよい。吾輩が銃を向けたのは、単におぬしの感染を恐れてのこと。万が一ということもござるからな。 | ||
{教授} | 私のメンタルは正常よ、感染してないと証明できる。 | ||
ウィズダム | うむ。吾輩の名はウィズダム、中位浄化者にござる。 | ||
ウィズダム | おぬしのことは存じておるぞ、「オアシス」の教授でござるな? | ||
ウィズダム | なんでも、純白の衣をまとい、漆黒のクマを目にあしらい、病を患うかのごとく弱々しい割に、妙な迫力を持つと聞く。 | ||
(選択) | 1.…… | O | |
2.まさかユーカリストが、私をそんな風に話していたなんて…… | P | ||
O | ウィズダム | ややっ!?おぬし、よもや教授にはのうござったか? | |
ウィズダム | こ、これはユーカリスト殿のお言葉にござるぞ。もしや、吾輩の記憶違いか……? | Q | |
P | ウィズダム | な、なぜユーカリスト殿だとわかった……? | |
{教授} | ユーカリストも「イオスフォロス様」の名を口にしていたからね。おおかた、彼女から聞いたんじゃないかと思ったんだ。 | Q | |
Q | リファクター | 【ピピピピーー】 | |
ウィズダム | スリープモードでござる! | ||
ユーカリスト……あのスイーツ娘。 | |||
{教授} | 話を戻しましょう。確かに私が教授よ、私に何の用? | ||
ウィズダム | それは良かった!おぬしを助けて正解でござったな! | ||
{教授} | 私を、助ける?もしかして、あなたが…… あの怪物どもから私たちを助けてくれたの? | ||
私たちは怪物に襲われ気を失っていた。 そして目覚めると、今度は浄化者に銃を突きつけられていた。 結論を導き出すのは容易い。 | |||
ウィズダム | さすがはユーカリスト殿に認められし者……その通りでござる。おぬしらを襲ったエントロピーどもを撃退したのは、吾輩の小隊にござ候。 | ||
そう言って、ウィズダムはそこはかとなく冷静さを取り戻した。 | |||
{教授} | エントロピー? それって、ウィルスの怪物の名前? | ||
ウィズダム | いかにも。エントロピーは、マグラシアに巣くうイレギュラーにござる。もちろん、奴らをコンピューターウィルスと称してもかまわぬが。 | ||
ウィズダム | 生を受けたその日から、我ら浄化者はイオスフォロス殿の英明なる御導きのもと、弛みなくエントロピーを討伐して参ったのでござる。 | ||
ウィズダム | されど、ここまで大規模な暴走は初めてでござるな。よもや、ピエリデス全体が感染してしまうとは。 | ||
{教授} | つまり、エントロピーを掃討する最中に、 私たち「異常エージェント」を助けてくれたの? | ||
ウィズダム | イオスフォロス殿はかねてより、こう諭しておられる。異常エージェントを殲滅する必要はない、一部の者は我らの仲間にも成り得る、と。 | ||
ウィズダム | 異常エージェントとて、エージェントには違いあるまい。エージェントはみな神の子、初めは誰しも平等にござる。 | ||
この、ややうっかり者な中位浄化者の説明を聞いて、 私はとある結論にたどり着いた。 | |||
「ウィズダム」と「ユーカリスト」は、間違いなく「穏健派」だ。 | |||
対して「フェイス」「レイヴン」そして「アンジェラス」。 この三人が属しているのは、もう一方の派閥だろうか…… | |||
でも今は、浄化者の内情を気にかけている場合ではない。 | |||
ペルシカたちは意識不明のままだ。 もしウィズダムを説き伏せることができれば―― | |||
{教授} | 私を助けたのは、イオスフォロスの教えだけが理由じゃないんでしょう? | ||
ウィズダム | !ぬぬぅ…… | ||
同じ中位浄化者といえど「ウィズダム」と「フェイス」とではかなりの違いがある。 | |||
機械的に命令を執行するだけの「フェイス」に比べ、 「ウィズダム」は見るからに個性的だ。 時に、上位浄化者の風格さえ漂わせている。 | |||
これも、派閥が関係しているのだろうか? | |||
ウィズダム | 是非もなし……教授、我らにはおぬしたちの力が必要なのでござる。 | ||
ウィズダムはすぐに落ち着きを取り戻した。 | |||
ウィズダム | 見ての通り、吾輩の小隊は芳しくござらぬ。エントロピーの勢いが、いまだかつてないほどに強まっておるのだ。 | ||
ウィズダム | リバベルタワーが前哨警報を受け取ったのは、ほんの数時間前。報告には、ピエリデスセクターに少数のエントロピーが侵入したと記されておった。 | ||
ウィズダム | そこで吾輩が調査へ赴いたのでござるが、しかし…… | ||
ピッ―― | |||
下位浄化者 | 【警告!大量の異常プログラムが接近中】 【繰り返す、大量の異常プログラムが接近中!】 | ||
突如響いた警報音が、ウィズダムの言葉を遮った。 | |||
ウィズダム | ぬぬ……なんと間の悪い。 | ||
だが私には、ウィズダムのおおよその目的がわかっていた。 | |||
{教授} | なんとなくわかったわ。 まずは目の前のエントロピーをどうにかしましょう! | ||
ウィズダム | おぬし、またしてもわかりよったのか!まぁよい…… | ||
ウィズダム | 浄化者ども、戦闘準備でござる! |