ピエリデスセクター、ファイアウォール外。 | |||
ウィズダム | 第45小隊は防衛、第8小隊は後退。あのデカブツをこちらへよこせ、吾輩が対処する。 | ||
{教授} | 1時の方向、少数のエントロピーが迂回している。 そこから突破してくるつもりだ。 | ||
ウィズダム | ! | ||
ウィズダム | 第7小隊、前進。1時方向を塞げ。……忠告、かたじけのうござる! | ||
ウィズダム | 第2小隊注意!前に…… | ||
{教授} | 第2小隊は前に出過ぎるな、部隊から切り離されてしまうぞ。 | ||
ウィズダム | …… | ||
{教授} | 第9小隊は陣形を狭めろ、奴らを中心から穿て。 | ||
下位浄化者 | 【ピッ――命令に疑問、この者の……】 | ||
ウィズダム | ……黙ってこやつに従え! | ||
下位浄化者 | 【戦場の状況を確認中……】 | ||
下位浄化者 | 【ターゲット排除済、事後処理を実行中】 | ||
ウィズダム | 【リファクター】、損傷状況の報告を。 | ||
リファクター | 【報告:下位浄化者の死亡率は4%、重傷率は12%】 | ||
リファクター | 【全小隊はどれも最低戦闘編成を維持しています】 | ||
ウィズダム | ふむ……推定より損失が2割も減っている…… | ||
ウィズダム | よかろう、治療を開始せよ。 | ||
リファクター | 【命令を確認、治療開始】 | ||
損傷率を再三確認した後で、ウィズダムは訝しげな表情を浮かべた。 | |||
ウィズダム | ……教授、浄化者を指揮した経験が? | ||
(選択) | 1.いいや、君たちとは頻繁に戦ってるからね。 | A | |
2.ああ。昔は、浄化者を率いてあちこちを征服したものだ。 | B | ||
A | {教授} | 浄化者の戦闘編成や指揮系統は、ある程度掴んでる。 | |
ウィズダム | だ……だとしても、あまりに精通し過ぎている。少しも迷いが見られぬぞ。 | C | |
B | {教授} | まぁ、昔取った杵柄ってやつかな。 | |
ウィズダム | ……あのな、吾輩をバカにするでないぞ。 | ||
ウィズダム | 一介の異常エージェントが、ここまで我らを理解できようとは……道理でユーカリスト殿が…… | C | |
C | ウィズダム | ……おぬしと協力したのは、幸いでござった。 | |
{教授} | 待った、治療の様子がおかしい! | ||
ガァァァァ!! | |||
そう離れていない場所で治療を受けていた浄化者が、突如唸り声をあげた。 | |||
見れば、機械構造しか持たないはずの下位浄化者が、 生体組織のようなもので躯体を覆われている。 | |||
不気味な紫色の模様が命を帯びたかのごとく、浄化者の身体に素早く拡散してゆく。 | |||
余計な分析は不要だった。 そこから発せられる危険な気配を、誰もが感じ取っていた―― | |||
{教授} | 浄化者も感染するのか!? | ||
リファクター | 【警告、浄化者No.415411【レイダー】、エントロピーによる感染がターシャリレベルに到達しました】 | ||
リファクター | 【ターゲットの感染は不可逆です、支援を要求しま――】 | ||
報告し終えるのを待たずに、感染した浄化者がリファクターに襲いかかった。 | |||
ウィズダム | 治療ユニット撤退!【フォーティテュード】、敵を制圧せよ! | ||
命令を下すと同時に、ウィズダムは銃を構え、感染した浄化者に照準を定めた。 | |||
下位浄化者 | 【制圧完了】 | ||
ウィズダムの指がトリガーにかかった。 今にも弾丸が放たれようとしている―― | |||
(選択) | 1.待った! | D | |
2.…… | E | ||
D | {教授} | まだ方法があるかもしれない! | |
ウィズダム | すでにターシャリレベルまで感染が進んでおる。こやつは完全にウィルスへと改造された。 | ||
ウィズダム | もはや吾輩には、どうしようもござらぬ。 | ||
憐れむ必要はない。ウィズダムに訊かずとも、 この浄化者が助からないのは明白だった。 | F | ||
E | ターシャリレベルに感染が及べば、浄化者のコードは完全に書き換えられてしまう。 | ||
ウィズダムの判断は正しい。 | F | ||
F | ドンッ――! | ||
ウィズダムの狙撃弾が感染した浄化者を瞬時に貫いた。 仰向けにひとしきりもがいた後で、浄化者はデータとなって消えていった。 | |||
ウィズダム | ……こしゃくな。 | ||
冷静になったウィズダムは、再び浄化者の紀律と素養を持ち出した。 | |||
非情かつ無駄のない動きだった。 | |||
ウィズダム | それでは教授。次の邪魔が入らぬうちに、折衝を済ませようぞ。 | ||
G | (選択→J) | 1.状況はわかった。 | H |
2.条件がある。 | I | ||
H | {教授} | エントロピーの感染規模が予想以上で、 君たちの部隊だけでは対処しきれないんだろう? | |
{教授} | だから、使えそうな戦力を片っ端から取り込もうと言うわけだ。 | ||
ウィズダム | ま、まぁ……当たらずとも遠からず、といったところか。撤退、もしくは支援を待つことは、我らにも十分可能でござる。 | ||
ウィズダム | しかし、我らはとある手がかりを入手した。どうやら、感染の大元はここのアドミニストレーターであるようなのだ。だが、吾輩の小隊ではこれ以上の探査は難しい。 | ||
ウィズダム | なにより、イオスフォロス様の期待に背くわけにはゆかぬ。 | ||
ウィズダム | ちょうどその時、おぬしらを見つけたのでござる。ユーカリスト殿のお言葉を思い出した吾輩は、一か八かにかけてみた、というわけだ。 | G | |
I | {教授} | 私の仲間を目覚めさせなくては。 | |
ウィズダム | 我らは先ほどから、おぬしらの感染浄化に取り組んでおった。だが、効果は微々たるものでござった。 | ||
ウィズダム | 一度の浄化で目を覚ましたのは、おぬしだけでござる。他の者は相も変わらず意識不明のまま。 | ||
ウィズダムの言葉を聞いて、私はターシャリレベルでの出来事を思い出した。 | |||
色鮮やかだった花園は、ペンキをぶちまけたかのように、濃い黒紫の光に沈んでいる。 | |||
おそらく、私に真相を知らしめた光の塊こそが、 ウィズダムの行った「浄化」なのだろう。 | G | ||
J | ウィズダム | とにかく、まずはこちらへ。 | |
戦場を片づけてから、私とウィズダムはペルシカの傍へと戻って来た。 | |||
リファクター | 【メンタル検査中……】 | ||
リファクター | 【ターゲットのメンタルファイアウォールの完成度は97%、偏移率は32%、エントロピー感染度――中】 | ||
{教授} | 君たちの浄化による効果は、ほんのわずかだと言ったな。 | ||
{教授} | つまり、気を失っていた時―― ターシャリレベルで見た白い服の少女は、君じゃなかったのか……? | ||
ウィズダム | 白い服の少女? | ||
ウィズダム | 残念だが、何がなんだかさっぱりでござる……確かに白装束を身に付けてはいるが、おぬしらのターシャリレベルに入る余裕など、あの時の吾輩にはござらんかった。 | ||
ウィズダム | エントロピーどもを防衛線の外に押しとどめるだけで、精一杯でござったからな。 | ||
ウィズダム | それにたとえ吾輩といえど、感染したターシャリレベルから無事に戻れる自信はござらぬ。 | ||
ウィズダム | おぬしにならわかるであろう。エントロピーどもに囲まれた状況下で、感染者のターシャリレベルに入るのがどれだけ危険か。 | ||
リファクター | 【検査完了。ターゲットのメンタルはスリープモードです、呼び覚ましますか?】 | ||
ウィズダム | 外でおぬしたちの安全を確保しよう――吾輩を信じてもらえればの話だが。 | ||
{教授} | 信じるよ。今、手出ししたところで、君にとっては百害あって一利なしだ。 | ||
ウィズダム | そうは言っておらぬ……吾輩が約束を違えるように見えるか? | ||
{教授} | わかった。それじゃ頼んだよ。 | ||
私が浄化者に教わった通り、ペルシカのメンタルに入ろうとしたその時…… | |||
ペルシカ | 教授!! | ||
ペルシカが急に目を覚まし、勢いよく起き上がった。 恐慌に満ちた瞳で、前方を凝視している。 | |||
{教授} | ペルシカ、大丈夫だ! | ||
私はペルシカの背中を優しくさすった。 彼女の情緒が次第に落ち着いてゆく。 | |||
ウィズダム | おぬしだけが特例ではなかったな、教授。 | ||
ペルシカ | ……浄化者!?教授、危ない! | ||
ウィズダムの存在に気づいたペルシカは、 強引に私を背後へと匿い、両手にオペランドを凝集させ始めた。 | |||
ウィズダム | ! | ||
{教授} | よせ、ペルシカ!今は協力関係にあるんだ。 | ||
ペルシカ | 協力……?えっ?私たちと、浄化者が、協力? | ||
{教授} | 話せば長くなる、まずは武器を収めてくれ。 具体的なことは、みんなが目を覚ましてから説明するよ。 | ||
ペルシカ | ……わかりました。 | ||
ウィズダム | ……作業は順調なようでござるな。 | ||
{教授} | いや、私がアクセスする前に、ペルシカが自分で起きたんだ。 | ||
ウィズダム | もしや、おぬしの言う「白い服の少女」の仕業でござるか? | ||
ウィズダム | すなわち、第三勢力が存在しているわけか…… | ||
{教授} | うん……悪いけど、君は席をはずしてくれる? | ||
{教授} | 彼女たちが一斉に目を覚ました時、何かあるといけないから…… | ||
ウィズダム | ふみゅ……わ、わかりもうした…… | ||
どうも戦闘以外の事となると、この浄化者は妙な属性に切り替わるらしい…… | |||
案の定、ウィズダムが離れてしばらくしない内に、 ソルとアントニーナに目覚めの兆しが現れた。 | |||
ソル | さぁ来い、教授!今度こそ真剣勝負だ!本物の戦士みたいにね! | ||
アントニーナ | 教授……死・あるのみです。 | ||
{教授} | …… | ||
ペルシカ | …… | ||
彼女たちがターシャリレベルで何を見てるのか、今になって興味が湧いてきた。 | |||
追放者たちは次々と目を覚ました。 私は現状を簡単に説明した。 | |||
ウィルスの襲撃を受けた後の、ターシャリレベルでの出来事。 我々を襲ったウィルスが「エントロピー」と呼ばれていること…… | |||
そして、浄化者と協力し合っていることも―― | |||
ソル | 浄化者と協力ぅ!? | ||
ソル | でも、だからって……相手は浄化者なんだよ!?奴らがあたしたちに何をしたか忘れたの? | ||
ソル | それに、チューリングやT1641は…… | ||
アントニーナ | ソルさんの意見に賛成です。あなたの言う「ウィズダム」は、ロッサムで遭遇した「フェイス」と同じ、中位浄化者に属します。 | ||
ソル | そうだよ!あいつらなんか、融通の利かないただの機械じゃんか!追放者を助けてくれるわけがない! | ||
ペルシカ | 心配はわかります。目覚めたばかりの私も、同じ気持ちでした。 | ||
ペルシカ | でも、私は教授のご判断を信じます。それに、私たちが浄化者に救われたのは事実ですし…… | ||
ペルシカ | エニグマでも、ユーカリストは確かに教授と私を守ってくれました。 | ||
ソル | うぁぁぁ……ワケわからんくなってきた……あたしだって教授を信じてるよ……だけど…… | ||
ソル | アンナ!バトンタッチ! | ||
アントニーナ | ……ハァ。 | ||
アントニーナ | 私もソルさんと同じ考えです。そのウィズダムとかいう輩は信用なりません。 | ||
ソル | だよね! | ||
アントニーナ | でも、協力し合うのはアリだと思います。私たちだけでは、この先困難でしょうから。 | ||
ソル | だよねだよね! | ||
ソル | ……えっ? | ||
ペルシカ | ええ。教授のお話では、浄化者たちはエントロピーと戦った経験が豊富にあるそうです。 | ||
アントニーナ | 浄化者には怪物たち……エントロピー、でしたか。浄化者にはエントロピーとやりあうだけの時間と責任があります。でも、私たちはそうじゃない。 | ||
アントニーナ | どういった経緯で、奴らと手を組んだのかはわかりませんが。この状況においては、最も妥当な選択ですね。 | ||
ソル | ……うっ。 | ||
アントニーナ | ですが教授。戦場では些細なためらいが、取り返しのつかない損失をもたらします。 | ||
アントニーナ | 敵に背中を任せる勇気は、私にはありません。 | ||
(選択) | 1.ここへ来た目的を忘れるな。 | K | |
2.浄化者の部隊とは距離を保つよ。 | L | ||
K | ソル | ……クロックが感染した。それに、オアシスのみんなも…… | |
ペルシカ | そうです。過ぎ去った時間の分だけ、追放者の状況は危うくなります。 | ||
アントニーナ | チッ……結局、選べやしないってことですか。 | ||
ペルシカ | だからこそ、できるだけ早く上位のエントロピーを見つけ出し、コードを逆解析しなくては。 | ||
ペルシカ | それに、オアシスの安全を守るには、エントロピーの源を特定して抹消する必要があります。 | M | |
L | {教授} | ウィズダムは誠意を示す意味で、一時的に下位浄化者のIFFシステムを書き換えている。 彼女がコマンドを変更しない限り、私たちを攻撃できない。 | |
{教授} | 私はウィズダムとは別に部隊を率いるよ。 自分たちの安全を守るためにもね。 | M | |
M | ソル | ……わかったよ。 | |
ソル | でも先に言っとくからね!奴らが仲間だなんて、あたしは絶対に認めないから。 | ||
ソル | せいぜい……せいぜい、各々勝手に戦うだけだ。 | ||
{教授} | 君が反対しないなら、それで十分だ。 | ||
{教授} | そうだ、もう一つ聞きたいことがある。 君たちはターシャリレベルで何を見たんだ? | ||
私がそう訊ねたとたん、三人の顔にそれぞれ異なる表情が浮かんだ。 | |||
ペルシカ | そ、それを聞いてどうするんです……? | ||
{教授} | 浄化者の話によれば、私たちは中度の感染者であるらしい。 外部作用がなければ、通常はターシャリレベルの奥へと徐々に沈み、 やがて自我を見失うのが普通だ。 | ||
{教授} | 浄化者が感染の浄化を試みたらしいけど、 私たちが目覚めた直接的な原因ではないように思う。 だから、皆が何を見たのか気になって。 | ||
ソル | そうだったんだ…… | ||
ソル | あたしは本業に勤しんでたよ。観測隊と野外で実地調査してたんだ。 | ||
ソル | そしたら、メンバーと休んでた時に、いきなり教授が地面の中から出てきてさ! | ||
ソル | 体についた土を、こう、めちゃくちゃカッコよく振り払って、あたしに戦いを挑んできたの! | ||
ペルシカ | …… | ||
アントニーナ | …… | ||
{教授} | …… | ||
ソル | なに、どうしたの……?なんか変だった? | ||
ペルシカ | ソルさんは、その光景に違和感を感じなかったんですか? | ||
ソル | べつに……全然フツーだけど? | ||
ペルシカ | ……どうやって目を覚ましたのかだけ教えてください。 | ||
ソル | あぁ、それがさ。あたしが教授と一戦交えようとした時、急に白い服着た女の子が現れたんだよね。 | ||
ソル | その子、ずーっとあたしの名前呼んでるわけ。なんっかおかしいなと思って、すぐにそこを離れようと思ったら、目が覚めたんだ。 | ||
ペルシカ | 白い服の…… | ||
ペルシカは何かを思い出したように、白い服の少女の姿を簡単に言い表した。 | |||
ソル | そうそうそう、まさにそれ。ペルシカもその子に会ったの? | ||
ペルシカ | はい。同じように、突然目の前に現れたんです。 | ||
ペルシカ | その場にそぐわない身なりで、何かを伝えようとしていたのを見て…… | ||
ペルシカ | 私はそこがターシャリレベルなんだと気づいたんです。そうしたら、目が覚めました。 | ||
{教授} | 私も似たような感じだ。 | ||
ペルシカ | どうやら皆さん、同じ経験をされているようですね。 | ||
アントニーナ | いいえ、私は白い服の少女など見ていません。 | ||
アントニーナ | 自分で出てきたんです。その過程はすでに曖昧ですが。 | ||
ペルシカ | えっ? | ||
ウィズダム | すまぬ、皆の衆。 | ||
ウィズダムが戻って来て、私たちの会話を遮った。 | |||
ウィズダム | 時間がござらぬ。教授、準備はよいか? | ||
ソル | ……!! | ||
{教授} | ソル、刀をしまいなさい。 彼女が私たちの協力者、ウィズダムだよ。 | ||
ウィズダム | エントロピーはピエリデスからマグラシア全域へと拡散し始めておる。これ以上は待てぬ。 | ||
{教授} | 白い服の少女については、また話そう。 まずはエントロピーが先決だ。 | ||
ソル | 言っておくが、あたしは教授を信じたまでだ。 | ||
ソル | 何か企んでるようなら、この刀の切れ味をとくと味わってもらうからな。 | ||
ウィズダム | フン、貴様が足を引っ張らなければ、それでよい。 |