ピエリデス 標準 PART.7 劇場

Last-modified: 2024-11-27 (水) 21:03:25

 ピエリデスセクター、アドミンセンター。
 私たちは浄化者に続いてエントロピーの波をしりぞけ、
ウィズダムの言うエントロピー化したアドミニストレーターを中枢エリアで発見した。
???……
ソルうわっ、なにこの人、怖い……全身紫色になってる。
ペルシカどうします?彼女のメンタルにアクセスして、呼び覚ましましょうか?
リファクター【検測完了、現在の感染率78%、速やかな浄化を推奨します】
ウィズダムまこと遺憾なれど、この者は目覚めはせぬ。
ウィズダムまだ抗っているようだが、完全にエントロピー化するのは時間の問題にござる。
ウィズダムその者のメンタルは、とっくにターシャリレベルに沈んでおる。じきに、エージェントの皮を被ったエントロピーと成り果てるであろう。
ウィズダム……我らには、そうなる前に救済を与えることしかできぬのだ。ご理解願おう。
 そう言って、ウィズダムは戦闘態勢を取ると、
自身の狙撃銃にエネルギーを充填し始めた。
ウィズダム退がっておれ、ペルシカ殿。エントロピー化したエージェントの末路は、そなたも……
ペルシカ……
 アドミニストレーターを見つめていたペルシカが、何かに気づいた。
ペルシカ待ってください!
 ドンッ――
 ペルシカの制止を耳にして、ソルは逆手で狙撃銃のバレルを掴み、上へと持ち上げた。
ウィズダムが反応できずにトリガーを引く。
弾丸は天井を貫き、部屋全体が震えた。
ウィズダムな、なにをする……驚くぞ……
ソルそうだよ。どうしたの、ペルシカ?
アントニーナ何もわかってないのに、よく動けましたね……
ペルシカこの方、見覚えがあるような気がしませんか?
ソル見覚え?まさか、ここへ来るのは初めてなん――
ソルあれっ、本当だ!
ソル教授、見て見て!この子だよ、あたしたちの勝負を邪魔した、白い服の女の子!
ウィズダム……勝負?おぬしたちが?
(選択)1.ターシャリレベルでの事を言ってるのよ。A
2.そう。時間がある時、よくプロレスごっこしてるの。B
Aペルシカええ、私も……ターシャリレベルで彼女に会っています。C
Bウィズダムプ、プロレス?おぬしと、ソルが……?
ソルおぉっとぉ!教授、あたしの挑戦、受けてくれるの!?
ペルシカこんな時にふざけないでください、教授。私も彼女に会っています。その……ターシャリレベルで……C
Cソルそうそうそう!
ソルでも、色がなんだか違うみたい。あの時は確か、白い髪に、白いワンピースだったと思うけど……
ウィズダムま、待たれよ……ピエリデスセクターのアドミニストレーターが、おぬしたちのターシャリレベルに現れたと申すのか?
ペルシカはい。彼女のおかげで、そこがターシャリレベルだと気づけたんです。
{教授}私たちを助けてくれたのは、彼女なのかもしれない。
ウィズダムしかしこの有様で、どうやっておぬしたちを助けたと申すのだ?
ペルシカ見たところ、メンタルは保たれているようです。先ほどの診断からも、彼女のターシャリレベルが完全に蝕まれていないことがわかっています。
ウィズダムさ、さりとて、こやつを目覚めさせる方法など……待て、おぬしたちまさか……?
ペルシカそのまさかです。ターシャリレベルにアクセスして、彼女を呼び覚まします。
ペルシカ彼女が私たちにそうしたように。
ウィズダム正気でござるか?
ソルアンナ、なんか言ってやんなよ!この子、あたしたちを助けてくれたんだよ?
アントニーナ……そうは言っても、私は彼女を知りませんし。どちらかを選ぶなら、私はウィズダムの側に立ちます。
アントニーナ単純な問題を複雑にする必要はありません。クロックさんが私たちの帰りを待っているんですよ。
(選択)1.冷静に分析するD
2.恩を返すE
D{教授}確かに、アントニーナとウィズダムの考えも一理ある。
だけど、事はそう単純じゃない。
F
E{教授}彼女が助けてくれたのは、疑いようのない事実よ。
恩人を見捨てるわけにはいかない。
{教授}それに、ピエリデスセクターの問題は、もっと根深いような気がするの。F
F{教授}ウィズダム。ここへは警報を受けてすぐに駆けつけたって言ってたよね。
{教授}でもあなたがやってきた時、すでに感染はセクター全体へと広がっていた。
ウィズダムぬぅ……確かに。普段なら、1匹でもエントロピーが現れれば、浄化者の警報システムが知らせているはず。
ウィズダムセクター全域が感染するなど、前代未聞でござる……
ペルシカ私も教授に賛成です。原因を突きとめない限り、安全だとは言えませんから。
ペルシカ真実を知るのは、おそらくアドミニストレーターだけかと。
{教授}試してみるしかないね。
でないと、オアシスやクロックの身に起きたことが、また繰り返されてしまう。
アントニーナ……一理ありますね……わかりました。
ウィズダムどうしても助けると申すのか、教授?
{教授}そうしない理由はないもの。
ウィズダム、あなたはどうする?
ウィズダム……すまぬ、吾輩には無理だ。
ウィズダム浄化者には暗黙のルールが存在する。重度のエントロピー感染を患うエージェントのターシャリレベルには、けしてアクセスしてはならんのだ。
ウィズダム否。正しくは――いまだにアドミニストレーターを殺めずにいる時点で、吾輩はすでに一線を越えているのでござる。
ウィズダムしかし……吾輩のメンタル回路が告げておる。ここにイオスフォロス様があらせられたなら、粗野な解決方法を許しはせぬであろう。
ウィズダム故に、吾輩にできるのは、時間を稼ぐことのみ。
 ウィズダムはバイザーを下ろし、狙撃銃を手に外へと向かった。
ウィズダム長くて10分でござる、教授。
{教授}十分よ。ありがとう、ウィズダム。
{教授}ソル、彼女をサポートしてあげて。
アントニーナは周囲の警戒を。何かあった時はお願いね。
{教授}ペルシカ。私の意識をアドミニストレーターのメンタルにつないでくれる?
ペルシカ教授。やはり、ここは私が。
{教授}多分、私とあなたたちとでは何かが違うんだと思う。
一番最初に目を覚ましたのは私だったし。
{教授}心配しないで、ペルシカ。ちゃんと戻って来るから。
ペルシカ……わかりました。
ペルシカせめて、オペランドをお渡ししておきます。
ソルあっ、その手があったか!ならあたしも!
アントニーナ……無駄にしないでくださいよ。今や、オペランドは恐ろしく貴重なんですから。
 三人はそう言って、それぞれオペランドを私に託した。
 アクセスする直前に、ペルシカが私の手をぎゅっと握りしめた。
ペルシカ必ず、無事に戻って来てください、教授。
 意識が沈む。
膨大な量のデータが降り注ぎ、私の感覚を覆した。
 
 喧騒が私を呼び覚ました。
目を見開くと、そこは劇場だった。
 座席の間をエージェントたちが行き来している。
彼らはすぐに席を見つけて座った。周囲が再び静かになる。
???楽しみね、シェイド先生の戦争劇。あなたもこのテーマが好きなの?
{教授}あなたは……
???隣に座っても?
 目の前の少女こそ、私の探していたアドミニストレーターだった。
???私の名前はオディール。あなたは?
(選択)1.正直に伝えるG
2.様子を見守るH
G{教授}私は{教授}、あなたを……
オディールしッ――舞台が始まるわ、お喋りしてはだめ。
 彼女は人差し指を私の唇に当てた。I
H{教授}私のことは教授と呼んで。
オディール面白いお名前ね。それじゃ、教授さん。この素晴らしい舞台を楽しみましょう。I
I 幕が降ろされ、そして再び開かれた。
アドミニストレーターによく似た少女が、舞台へと現れる。
オデットここはピエリデスセクター、マグラシアの桃源郷。
オデット他のセクターのような華やかさはないし、ディットコインが山ほどあるわけでも、オペランドが無尽蔵にあるわけでもない。
オデットでもここには、他のセクターにはないものがある。この世界で最も美しいもの――
オデットそう、それは芸術。
 少女は舞台の上を跳ね回り、うぐいすのような声で軽やかに歌った。
オディールあの子は私の妹なの。シェイド先生に主役として選ばれたのよ、可愛いでしょう?
 オディールは小声で私に説明した。
微笑みを浮かべ、妹の演技を見守っている。
オデット木漏れ日に歌い、泉の中で踊る。
オデット書林で詩を綴り、長い……
オディール長い回廊で絵を描く……
 オディールは、小声で妹に続いた。
 まるで何千回、何万回と繰り返してきたかのように、
リズムから音程に至るまで、二人の歌声は完璧に揃っていた。
オディール&オデット創造で萌芽を潤し、閃きで梢を整える。
オディール&オデットそれなのに――
 劇場の照明が突如消えた。
オデットそれなのにだんだんと、誰も私たちの舞台を見なくなった。
オデット花園は荒れ果て、オペランドは枯れ果て……
オデット誇りであるはずの芸術も、やがては消えてなくなった……
 コネクションロストのことだろうか……
オデット芸術はもう必要とされないの?私たちは捨てられてしまったの?
オディール&オデット私たちは、消えてしまうの?
オデットそんなある日――
 劇場の照明が灯った。
舞台に奇妙な植物が現れる。
オデットそんなある日、謎に満ちた訪問者が、萎れた花園に種を植えた。
オデット種は芽吹き、成長し、やがて蕾を成した。
オディール虹のように美しく、月明かりのように魅力的。
オデット好奇からそれを見て、それに触れた。
オディール歓喜からそれを愛で、それを待った。
オディール&オデットそして……
オデットそして、どうなったの?お姉さま。
オディールそして、黒紫色の花托が、神からの恩賜を実らせた。
オデット私たちは恩賜を抱いて、花園を再建し、劇場を再開した。
オデットほんのわずかな権限を貢ぐだけで、紫の花はオペランドを恵んでくれる。
オデットそうして、私たちはセクターを甦らせた。私たちの存在意義を取り戻した――
 そこまで歌うと、劇場の明かりが再び消えた。
周囲のエージェントが次々とこちらをふりむく。
その瞳は虚ろで、唇はわずかに開かれている。
エージェントたちその代償は?
 舞台中央に生えていた花が突然変異し、
その中から大量のエントロピーが湧き出した。
 次の瞬間、その場にいたエージェントは全員、エントロピーによって呑み込まれた。
深い紫色のツルに覆い尽くされた彼らは、エントロピーの怪物へと姿を歪ませた。
 
 私はオディールを見た。彼女もツルに纏わりつかれている。
だが変異は免れているようだ。
オディール……
オデットあ……あなたも、芸術がお好きなの?
オデットねぇ、こっちを見て……私を見て、みんなと同じように……
エージェントたちみんなと同じように……
オデット私たちに加わりなさい!
 !!
ペルシカ必ず、無事に戻って来てください、教授。
(選択)1.抵抗するJ
2.抵抗するJ
3.抵抗するJ
J{教授}心配しないで、ペルシカ。ちゃんと戻って来るから。