アントニーナ | ダメです……この拘束プログラムでは、下位浄化者を一時的に抑えることしかできません。ウィズダムには効かない! | ||
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アントニーナ | ペルシカさん、援護を! | ||
ペルシカ | わかりました、オペランドをお渡しします! | ||
ウィズダム | ギギーーギァァーー*&……&……%*&¥& | ||
倒されたウィズダムは、相変わらず何かを叫んでいた。 | |||
声帯を引き裂かれたかのような叫び声が響き、ドーム天井を震わせる。 | |||
ソル | 下位浄化者どもが集まって来てる! | ||
ソル | アンナ!まだなの!? | ||
アントニーナ | あと10秒食い止めてください! | ||
オディール | 私もオペランドで支援を…… | ||
ペルシカ | 結構です!あなたはメンタルファイアウォールの維持に専念してください! | ||
ペルシカ | ターシャリレベルにまで感染が広がってるんです。エントロピーにまた意識を奪われたら、今度こそ取り返しがつきません! | ||
アントニーナ | できた……拘束プログラム完成しました!受け取って! | ||
ソル | よしきた!これでもくらえーー! | ||
ソルはアントニーナが投げた拘束プログラム装置をキャッチすると、 ウィズダムのほうへと走った。 | |||
脅威を察してか、分散していた下位浄化者たちが、一斉に銃口をソルに向ける。 | |||
ソル | 頼むから……静かにしてろっつの! | ||
波のように押し寄せる下位浄化者を飛び越え、 ソルはボロボロになったウィズダムの頭部を掴み、拘束装置を無理やりねじ込んだ。 | |||
ふいに、辺りが静かになった。 | |||
下位浄化者たちは一瞬固まったかと思うと、攻撃をやめて正常に稼働し始めた。 | |||
ペルシカ | 成功です!ウィズダムが命令しない限り、彼らは私たちを攻撃できません。 | ||
ペルシカ | 今は当初の設定通り、私たちを味方だと認識しているようです…… | ||
ソル | ウィズダムの様子は? | ||
アントニーナ | 芳しくありませんね、エントロピーがかなり深くまで侵入しています。 | ||
ソル | ……どうしようもないの? | ||
アントニーナ | 断言はできませんが。ですが見たところ、中位浄化者は進化の過程で、エントロピー耐性が備わったようです。 | ||
アントニーナ | これが他のエージェントだったら、とっくにお陀仏してるでしょうが、彼女はまだ抗っています。 | ||
アントニーナ | ウィズダムの浄化プログラムをシミュレート可能です。まぁ、焼け石に水だとは思いますけど…… | ||
{教授} | 彼女のターシャリレベルに潜ってみよう。 | ||
ペルシカ | 教授、危険すぎます! | ||
(選択) | 1.彼女を見殺しになんてできない。 | A | |
2.私たちには浄化者の力が必要だ。 | B | ||
A | {教授} | それに彼女には何度も助けられてる。 | C |
B | {教授} | エントロピーを突破して裂け目を閉じるには、浄化者の戦闘力が必要不可欠だ。 | C |
C | ペルシカ | ……確かに、その通りですが……もし、教授に何かあったら私たちは…… | |
ペルシカ | お願いです、どうか考え直してください。 | ||
アントニーナ | ウィズダムのエントロピー化が進んでいます。 | ||
アントニーナ | 結論がどうあれ、早く決めて頂かないと。 | ||
オディール | 私が同行するわ。 | ||
オディール | ターシャリレベルには慣れているの。教授を手伝えるはずよ。 | ||
アントニーナ | そちらの状況も、似たようなものじゃないですか。 | ||
アントニーナ | あなたまで暴走したら…… | ||
オディール | 大丈夫、せめてもの道案内をするだけだから。オペランドは浪費しないわ。 | ||
アントニーナ | ……いいでしょう。八方破れではありますが、最適解には違いありませんね。 | ||
アントニーナ | それに、誰かが外で時間を稼がなくちゃなりませんし。 | ||
ソル | ほら、アンナも同意したよ!教授とオディールを行かせてあげなよ、ペルシカ! | ||
ソル | 教授はもう経験者なんだしさ。もし状況がヤバくなっても、あたしたちで、その……そのあれだ…… | ||
アントニーナ | 外部から干渉して、教授のアクセスを切断できます。 | ||
ソル | そうそうそう!教授のアクセスを切断できるんだしさ……だからお願い、教授! | ||
ソル | この子を見捨てるわけには行かないよ…… | ||
私はペルシカの目を見た。 | |||
ペルシカ | ……わかりました。ですが、どうかお気をつけて。 | ||
ペルシカ | メンタルシステム、接続開始。 | ||
膨大な量のデータが降り注ぎ、立派な神殿に変わった。 | |||
周囲に人影はない。 | |||
オディール | げほげほッ……浄化者の領地のようね……なんて大きいの。 | ||
口では大丈夫だと言いつつも、 私を連れてターシャリレベルへと入ったオディールは、さらに弱って見えた。 | |||
オディール | ウィズダムはここにいないみたい。もう少し奥へ行ってみましょうか? | ||
その場を離れようとふりむいた瞬間、とある影が私を覆った。 | |||
フェイス | …… | ||
{教授} | …… | ||
フェイス | 新しく来た浄化者か? | ||
フェイスが手を伸ばしてきた。 私は思わず後ずさる。 | |||
だが私はすぐに気づいた。 彼女が見ているのは私ではなく、その背後の…… | |||
フェイス | 【検査プログラムを実行】 | ||
フェイス | 【周辺情報を識別せよ】 | ||
ウィズダム | 【データ読み取り中……中位浄化者、ウィズダム、リセット完了】 | ||
ウィズダム | 【ここはパンテオン、我らが聖典を祀る地】 | ||
フェイス | 【識別完了】 | ||
フェイス | 良く戻った、ウィズダム。 | ||
ウィズダム | 「戻った」?【情報の補完を申請する】 | ||
フェイス | 【情報が空白である可能性を検知……情報の補完を開始】 | ||
フェイス | 何が知りたいのだ? | ||
ウィズダム | 戻って来たとはつまり、吾輩はリセットされたでござるか? | ||
フェイス | マグラシアの脅威となる異常プログラムと命を賭して戦う、それこそが浄化者の使命なり。 | ||
フェイス | お前は見事ピエリデスセクターを守り、己の責務を果たしたのだ。 | ||
ウィズダム | そうでござったか……? | ||
ウィズダム | 吾輩が、ピエリデスセクターのエージェントを守った……なら、吾輩の戦いぶりはいかに……? | ||
フェイス | 今度は逃げも怠けもせずに、立派に仕事を成し遂げた。イオスフォロス様が褒めておられたぞ。 | ||
オディール | ウィズダムのメンタルが安らいでる。今すぐ彼女を呼び覚ますのよ! | ||
(選択) | 1.ウィズダムを呼び覚ましてみる | D | |
2.様子を見る | E | ||
D | {教授} | ウィズダム、目を覚ませ! | |
私は彼女の肩をつかんだ。 ウィズダムが驚いて私を見る。 | |||
ウィズダム | おぬしは……教授?なぜおぬしがリバベルに? | ||
私が答えようとする前に、ウィズダムとフェイスの姿が灰となって崩れた。 | F | ||
E | 黒紫色の異常オペランドが、ウィズダムとフェイスの身体を呑み込んだ。 | ||
私はとっさに彼女たちに手を伸ばすも、二人はあっという間に灰と化してしまった。 | F | ||
F | |||
{教授} | ……!? | ||
オディール | ウィズダムさんの状況は、私よりも悪い……次の幕に移ったんだわ、ここはエントロピーに浸蝕されてしまう! | ||
黒紫色の触手のようなツルが、パンテオンのあちこちから這い出てきた。 建物が崩れ始める。 | |||
考える間もなく、私たちは崩壊の緩やかなゲートに向かって走り出した。 | |||
オディール | うっ…… | ||
{教授} | オディール? | ||
オディール | 大丈夫よ、オペランドの問題だから……行きましょう! | ||
システム | 【身分情報を確認:中位浄化者、ウィズダム】 | ||
システム | 【訓練モード起動】 | ||
ラヴ | ウィズダム?今日はいったいどうしたの、新しい浄化者なんて連れて? | ||
ラヴ | すごい量のオペランドね、新しい上位浄化者さまかしら? | ||
ウィズダム | 新しい朋友?はて、なんの事やら…… | ||
ウィズダムは怪訝そうに私を見た。 | |||
その瞬間、私は背筋が凍った。 まるで無数の狙撃銃に睨まれているかのようだ。 | |||
だがすぐに、ウィズダムは視線を戻した。 危機感もそれに伴い消失する。 | |||
ウィズダム | ……上位ではなかろう……ただの仲間にござる。こやつらのことは気にするな。 | ||
{教授} | (記憶が退行してるのか?) | ||
ラヴ | こんなにオペランドを持っているんだもの、きっとホープと同じ召喚系ね!こんにちは。 | ||
{教授} | どうも。 | ||
ラヴが手を伸ばしてきた。 私が反応するより速く、ウィズダムが私たちの間に割って入った。 | |||
ラヴ | ……ウィズダム、何をしているの? | ||
ウィズダム | ……吾輩は……? | ||
ウィズダム | とにかく、こやつらにあまり近づくな、ラヴ。 | ||
ウィズダムは自分の行動に困惑しているようだった。 | |||
彼女はゆっくりと身を引いた。 いつでも二人を遮れるという姿勢を保ったまま。 | |||
ラヴ | 新しいお友達を守ったかと思えば、今度は訓練を増やしたいだなんて…… | ||
ラヴ | 前は、訓練場に来ることなんて稀だったのに。いつも規定の訓練を終えたら、すぐに帰ってしまうじゃない。 | ||
ウィズダム | 力がなければ、己の身すら守れんからの。 | ||
ラヴ | 守る……わたしやフェイス、それにリヴェレンスだってあなたを守れるわ。 | ||
ウィズダム | そうではござらぬ。吾輩には、おぬしらより高度な知能が備わっておる。だが吾輩は……吾輩は恐ろしいのだ…… | ||
ラヴ | 何が恐ろしいの? | ||
ウィズダム | 多くの可能性を演算できてしまうからこそ、吾輩は……とても恐ろしい…… | ||
ウィズダム | もし記憶がリセットされたら、吾輩は知能を失い、下位浄化者のような無能になり下がってしまうのか? | ||
ウィズダムは両腕を抱いて、その場にうずくまった。 ラヴは同じようにしゃがんで、彼女を優しく抱きしめる。 | |||
ラヴ | 中位浄化者の中で一番賢いのは、いつだってウィズダムよ。なぜそんなことを言うの?わたしにはわからない。 | ||
ラヴ | ……その賢さがないと、中位の責任を果たせない。もしかして、ウィズダムはそれが怖いの? | ||
ウィズダム | か、考えただけで耐えられぬ……吾輩はそんなの嫌でござる! | ||
ラヴ | それなら、強くなればいいのよ。そうすれば、怖い思いをしないですむわ。 | ||
ウィズダム | だからこそ、もっと訓練を増やさなければ。これまでのように怠けていてはいかん。 | ||
ラヴ | もう一つ方法があるわよ、どうして試そうと思わないの? | ||
ウィズダム | 訓練する他に、何の手立てがあると申すのだ? | ||
ラヴ | 他の人のオペランドを奪えばいいの。 | ||
オディール | これは……エントロピー化した部分が彼女を誘惑しているの? | ||
ウィズダム | ラヴ、一体何を申しておるのだ?吾輩は…… | ||
ラヴ? | あなたはすべての記憶を失った、過去は何ひとつ覚えていない……あなたのメンタルには、常にリセットの恐怖がつきまとう…… | ||
ラヴ? | でも他人のオペランドを呑み込めば、あなたはすぐに強くなれるし、記憶も失わずに済むのよ。 | ||
ラヴ? | そうなれば、イオスフォロス様は褒めてくれるわ。ホープよりも多くのオペランドや、リヴェレンスよりも強大な力を! | ||
ウィズダム | 貴様……吾輩にイレギュラーの真似をしろと申すか!?そんなこと、できるわけがなかろう! | ||
ラヴ? | なら、あなたには何ができるの、ウィズダム? | ||
(選択) | 1.ウィズダム、目を覚ますんだ! | G | |
G | ウィズダムは恐慌に陥った。 パンテオンが揺れ始める。 | ||
何かがラヴの背後から、私とウィズダムを睨んだ。 さながら恨みと狂乱が実体を持つかのように。 | |||
ラヴ? | 彼と行く気なの、ウィズダム?彼らが何なのか、わかっているの? | ||
ラヴ? | 自分の仲間を捨てて、どうするつもりなの? | ||
パンテオンの隅が黒く変色し始めた。 先ほどのように、建物が次々と剥がれ落ちてゆく。 | |||
ラヴの声が捻じれ、つんざくような音となって、 何本もの鉄針のように私の脳へと突き刺さった。 | |||
オディール | ウィズダムさん、あれはあなたの仲間じゃないわ!よく見て! | ||
ラヴ? | リセットされたウィズダムには、なんにもできやしない。他人を呑み込まないと、知性すら保てない―― | ||
ウィズダム | 吾輩は…… | ||
{教授} | ウィズダム!目を覚ませ!! | ||
ウィズダム | …… | ||
ウィズダム | こやつらが何者かは知らぬ……だが吾輩にはわかる。こやつらは吾輩に忠告しておるのだ。 | ||
ウィズダム | だが貴様は……貴様はラヴにあらず、貴様は吾輩の仲間にあらず! | ||
空中に銀白色の光が過ったかと思うと、空は一転して黒紫色に変わった。 | |||
辺りはがらんとしている、次のゲートはもう存在しない。 | |||
エントロピー | あナタ――知能がナケレバ何モ――¥#¥…………#…… | ||
ラヴの声が野獣のような濁った叫びに変わった。 | |||
ウィズダム | 教授、先に行け。 | ||
(選択) | 1.私を思い出したのか? | H | |
2.ここは君のターシャリレベルだ、早く目を覚ませ! | I | ||
H | ウィズダム | オディールと外界の浄化プログラム……そしておぬしのおかげで、吾輩は思い出した。 | I |
I | ウィズダム | これが何なのかはわかっておる……ここで奴を倒さねば、吾輩は正気に戻れぬ。 | |
ウィズダム | 奴を消すのは……吾輩の役目。 | ||
銃を持つ彼女の手が、かすかに震えていた。 それでも彼女は狙撃銃を構え、私の前に立った。 | |||
すでにエントロピーと化した「ラヴ」に照準を定め、彼女はトリガーを引いた―― |