ピエリデス 標準 PART.9 夢魘

Last-modified: 2024-12-03 (火) 17:12:18

アントニーナダメです……この拘束プログラムでは、下位浄化者を一時的に抑えることしかできません。ウィズダムには効かない!
アントニーナペルシカさん、援護を!
ペルシカわかりました、オペランドをお渡しします!
ウィズダムギギーーギァァーー*&……&……%*&¥&
 倒されたウィズダムは、相変わらず何かを叫んでいた。
 声帯を引き裂かれたかのような叫び声が響き、ドーム天井を震わせる。
ソル下位浄化者どもが集まって来てる!
ソルアンナ!まだなの!?
アントニーナあと10秒食い止めてください!
オディール私もオペランドで支援を……
ペルシカ結構です!あなたはメンタルファイアウォールの維持に専念してください!
ペルシカターシャリレベルにまで感染が広がってるんです。エントロピーにまた意識を奪われたら、今度こそ取り返しがつきません!
アントニーナできた……拘束プログラム完成しました!受け取って!
ソルよしきた!これでもくらえーー!
 ソルはアントニーナが投げた拘束プログラム装置をキャッチすると、
ウィズダムのほうへと走った。
 脅威を察してか、分散していた下位浄化者たちが、一斉に銃口をソルに向ける。
ソル頼むから……静かにしてろっつの!
 波のように押し寄せる下位浄化者を飛び越え、
ソルはボロボロになったウィズダムの頭部を掴み、拘束装置を無理やりねじ込んだ。
 
 ふいに、辺りが静かになった。
 下位浄化者たちは一瞬固まったかと思うと、攻撃をやめて正常に稼働し始めた。
ペルシカ成功です!ウィズダムが命令しない限り、彼らは私たちを攻撃できません。
ペルシカ今は当初の設定通り、私たちを味方だと認識しているようです……
ソルウィズダムの様子は?
アントニーナ芳しくありませんね、エントロピーがかなり深くまで侵入しています。
ソル……どうしようもないの?
アントニーナ断言はできませんが。ですが見たところ、中位浄化者は進化の過程で、エントロピー耐性が備わったようです。
アントニーナこれが他のエージェントだったら、とっくにお陀仏してるでしょうが、彼女はまだ抗っています。
アントニーナウィズダムの浄化プログラムをシミュレート可能です。まぁ、焼け石に水だとは思いますけど……
{教授}彼女のターシャリレベルに潜ってみよう。
ペルシカ教授、危険すぎます!
(選択)1.彼女を見殺しになんてできない。A
2.私たちには浄化者の力が必要だ。B
A{教授}それに彼女には何度も助けられてる。C
B{教授}エントロピーを突破して裂け目を閉じるには、浄化者の戦闘力が必要不可欠だ。C
Cペルシカ……確かに、その通りですが……もし、教授に何かあったら私たちは……
ペルシカお願いです、どうか考え直してください。
アントニーナウィズダムのエントロピー化が進んでいます。
アントニーナ結論がどうあれ、早く決めて頂かないと。
オディール私が同行するわ。
オディールターシャリレベルには慣れているの。教授を手伝えるはずよ。
アントニーナそちらの状況も、似たようなものじゃないですか。
アントニーナあなたまで暴走したら……
オディール大丈夫、せめてもの道案内をするだけだから。オペランドは浪費しないわ。
アントニーナ……いいでしょう。八方破れではありますが、最適解には違いありませんね。
アントニーナそれに、誰かが外で時間を稼がなくちゃなりませんし。
ソルほら、アンナも同意したよ!教授とオディールを行かせてあげなよ、ペルシカ!
ソル教授はもう経験者なんだしさ。もし状況がヤバくなっても、あたしたちで、その……そのあれだ……
アントニーナ外部から干渉して、教授のアクセスを切断できます。
ソルそうそうそう!教授のアクセスを切断できるんだしさ……だからお願い、教授!
ソルこの子を見捨てるわけには行かないよ……
 私はペルシカの目を見た。
ペルシカ……わかりました。ですが、どうかお気をつけて。
ペルシカメンタルシステム、接続開始。
 
 膨大な量のデータが降り注ぎ、立派な神殿に変わった。
 周囲に人影はない。
オディールげほげほッ……浄化者の領地のようね……なんて大きいの。
 口では大丈夫だと言いつつも、
私を連れてターシャリレベルへと入ったオディールは、さらに弱って見えた。
オディールウィズダムはここにいないみたい。もう少し奥へ行ってみましょうか?
 その場を離れようとふりむいた瞬間、とある影が私を覆った。
フェイス……
{教授}……
フェイス新しく来た浄化者か?
 フェイスが手を伸ばしてきた。
私は思わず後ずさる。
 だが私はすぐに気づいた。
彼女が見ているのは私ではなく、その背後の……
フェイス【検査プログラムを実行】
フェイス【周辺情報を識別せよ】
ウィズダム【データ読み取り中……中位浄化者、ウィズダム、リセット完了】
ウィズダム【ここはパンテオン、我らが聖典を祀る地】
フェイス【識別完了】
フェイス良く戻った、ウィズダム。
ウィズダム「戻った」?【情報の補完を申請する】
フェイス【情報が空白である可能性を検知……情報の補完を開始】
フェイス何が知りたいのだ?
ウィズダム戻って来たとはつまり、吾輩はリセットされたでござるか?
フェイスマグラシアの脅威となる異常プログラムと命を賭して戦う、それこそが浄化者の使命なり。
フェイスお前は見事ピエリデスセクターを守り、己の責務を果たしたのだ。
ウィズダムそうでござったか……?
ウィズダム吾輩が、ピエリデスセクターのエージェントを守った……なら、吾輩の戦いぶりはいかに……?
フェイス今度は逃げも怠けもせずに、立派に仕事を成し遂げた。イオスフォロス様が褒めておられたぞ。
 
オディールウィズダムのメンタルが安らいでる。今すぐ彼女を呼び覚ますのよ!
(選択)1.ウィズダムを呼び覚ましてみるD
2.様子を見るE
D{教授}ウィズダム、目を覚ませ!
 私は彼女の肩をつかんだ。
ウィズダムが驚いて私を見る。
ウィズダムおぬしは……教授?なぜおぬしがリバベルに?
 私が答えようとする前に、ウィズダムとフェイスの姿が灰となって崩れた。F
E 黒紫色の異常オペランドが、ウィズダムとフェイスの身体を呑み込んだ。
 私はとっさに彼女たちに手を伸ばすも、二人はあっという間に灰と化してしまった。F
F 
{教授}……!?
オディールウィズダムさんの状況は、私よりも悪い……次の幕に移ったんだわ、ここはエントロピーに浸蝕されてしまう!
 黒紫色の触手のようなツルが、パンテオンのあちこちから這い出てきた。
建物が崩れ始める。
 考える間もなく、私たちは崩壊の緩やかなゲートに向かって走り出した。
オディールうっ……
{教授}オディール?
オディール大丈夫よ、オペランドの問題だから……行きましょう!
 
システム【身分情報を確認:中位浄化者、ウィズダム】
システム【訓練モード起動】
ラヴウィズダム?今日はいったいどうしたの、新しい浄化者なんて連れて?
ラヴすごい量のオペランドね、新しい上位浄化者さまかしら?
ウィズダム新しい朋友?はて、なんの事やら……
 ウィズダムは怪訝そうに私を見た。
 その瞬間、私は背筋が凍った。
まるで無数の狙撃銃に睨まれているかのようだ。
 だがすぐに、ウィズダムは視線を戻した。
危機感もそれに伴い消失する。
ウィズダム……上位ではなかろう……ただの仲間にござる。こやつらのことは気にするな。
{教授}(記憶が退行してるのか?)
ラヴこんなにオペランドを持っているんだもの、きっとホープと同じ召喚系ね!こんにちは。
{教授}どうも。
 ラヴが手を伸ばしてきた。
私が反応するより速く、ウィズダムが私たちの間に割って入った。
ラヴ……ウィズダム、何をしているの?
ウィズダム……吾輩は……?
ウィズダムとにかく、こやつらにあまり近づくな、ラヴ。
 ウィズダムは自分の行動に困惑しているようだった。
 彼女はゆっくりと身を引いた。
いつでも二人を遮れるという姿勢を保ったまま。
ラヴ新しいお友達を守ったかと思えば、今度は訓練を増やしたいだなんて……
ラヴ前は、訓練場に来ることなんて稀だったのに。いつも規定の訓練を終えたら、すぐに帰ってしまうじゃない。
ウィズダム力がなければ、己の身すら守れんからの。
ラヴ守る……わたしやフェイス、それにリヴェレンスだってあなたを守れるわ。
ウィズダムそうではござらぬ。吾輩には、おぬしらより高度な知能が備わっておる。だが吾輩は……吾輩は恐ろしいのだ……
ラヴ何が恐ろしいの?
ウィズダム多くの可能性を演算できてしまうからこそ、吾輩は……とても恐ろしい……
ウィズダムもし記憶がリセットされたら、吾輩は知能を失い、下位浄化者のような無能になり下がってしまうのか?
 ウィズダムは両腕を抱いて、その場にうずくまった。
ラヴは同じようにしゃがんで、彼女を優しく抱きしめる。
ラヴ中位浄化者の中で一番賢いのは、いつだってウィズダムよ。なぜそんなことを言うの?わたしにはわからない。
ラヴ……その賢さがないと、中位の責任を果たせない。もしかして、ウィズダムはそれが怖いの?
ウィズダムか、考えただけで耐えられぬ……吾輩はそんなの嫌でござる!
ラヴそれなら、強くなればいいのよ。そうすれば、怖い思いをしないですむわ。
ウィズダムだからこそ、もっと訓練を増やさなければ。これまでのように怠けていてはいかん。
ラヴもう一つ方法があるわよ、どうして試そうと思わないの?
ウィズダム訓練する他に、何の手立てがあると申すのだ?
ラヴ他の人のオペランドを奪えばいいの。
オディールこれは……エントロピー化した部分が彼女を誘惑しているの?
ウィズダムラヴ、一体何を申しておるのだ?吾輩は……
ラヴ?あなたはすべての記憶を失った、過去は何ひとつ覚えていない……あなたのメンタルには、常にリセットの恐怖がつきまとう……
ラヴ?でも他人のオペランドを呑み込めば、あなたはすぐに強くなれるし、記憶も失わずに済むのよ。
ラヴ?そうなれば、イオスフォロス様は褒めてくれるわ。ホープよりも多くのオペランドや、リヴェレンスよりも強大な力を!
ウィズダム貴様……吾輩にイレギュラーの真似をしろと申すか!?そんなこと、できるわけがなかろう!
ラヴ?なら、あなたには何ができるの、ウィズダム?
(選択)1.ウィズダム、目を覚ますんだ!G
G ウィズダムは恐慌に陥った。
パンテオンが揺れ始める。
 何かがラヴの背後から、私とウィズダムを睨んだ。
さながら恨みと狂乱が実体を持つかのように。
ラヴ?彼と行く気なの、ウィズダム?彼らが何なのか、わかっているの?
ラヴ?自分の仲間を捨てて、どうするつもりなの?
 パンテオンの隅が黒く変色し始めた。
先ほどのように、建物が次々と剥がれ落ちてゆく。
 ラヴの声が捻じれ、つんざくような音となって、
何本もの鉄針のように私の脳へと突き刺さった。
オディールウィズダムさん、あれはあなたの仲間じゃないわ!よく見て!
ラヴ?リセットされたウィズダムには、なんにもできやしない。他人を呑み込まないと、知性すら保てない――
ウィズダム吾輩は……
{教授}ウィズダム!目を覚ませ!!
ウィズダム……
ウィズダムこやつらが何者かは知らぬ……だが吾輩にはわかる。こやつらは吾輩に忠告しておるのだ。
ウィズダムだが貴様は……貴様はラヴにあらず、貴様は吾輩の仲間にあらず!
 空中に銀白色の光が過ったかと思うと、空は一転して黒紫色に変わった。
 辺りはがらんとしている、次のゲートはもう存在しない。
エントロピーあナタ――知能がナケレバ何モ――¥#¥…………#……
 ラヴの声が野獣のような濁った叫びに変わった。
ウィズダム教授、先に行け。
(選択)1.私を思い出したのか?H
2.ここは君のターシャリレベルだ、早く目を覚ませ!I
Hウィズダムオディールと外界の浄化プログラム……そしておぬしのおかげで、吾輩は思い出した。I
Iウィズダムこれが何なのかはわかっておる……ここで奴を倒さねば、吾輩は正気に戻れぬ。
ウィズダム奴を消すのは……吾輩の役目。
 銃を持つ彼女の手が、かすかに震えていた。
それでも彼女は狙撃銃を構え、私の前に立った。
 すでにエントロピーと化した「ラヴ」に照準を定め、彼女はトリガーを引いた――