ロッサムセクター、アドミンセンター。 | |||
クロック | ソルが到着した、それとオペランドも。オアシスのサンドボックス障壁は最大出力で安定してる、問題はなさそう。 | ||
クロック | そっちはどう?アンナを見つけたんだって? | ||
{教授} | 彼女ならペルシカと一緒に、 ロッサムの新任アドミニストレーターをサポートしてるよ。 | ||
クロック | 新任アドミニストレーター?とにかく、無事で良かった。早く戻ってきてよ、ソルがそっちに行きたいって聞かなくて。あたしじゃ止められない。 | ||
{教授} | わかった、なるべく早く戻るね。 | ||
>通信終了。 | |||
通信を終えると同時に、アドミンセンターから出てくる彼女たちの姿が目に入った。 | |||
ハンナ | 皆さん、助けて頂き本当にありがとうございました。ロッサムはこのご恩をけして忘れません。 | ||
{教授} | あなたは一緒に行かないの? | ||
ハンナ | 新しいチューリングは何も知らないんです。彼女を放ってはおけませんから。 | ||
ハンナ | ペルシカさんから伺いました。教授はセクター全体を覆う障壁を張れるんですよね?それでしたら、ロッサムも…… | ||
{教授} | セクターの最高権限があれば、理論上は可能ね。 | ||
ハンナ | ロッサムの最高権限なら、チューリングより譲り受けています。教授、お願いできますか? | ||
{教授} | OK。でも、サンドボックス障壁を起動してしまうと、 ロッサムはオアシスと同様に、浄化者と敵対することになるけど、それでもいいの? | ||
ハンナ | フェイスが死んだ時から、ロッサムにはもう選択肢なんてありません。 | ||
セクター権限を譲り受け、私はロッサムセクターにサンドボックス障壁を起動した。 | |||
>サンドボックス障壁構築中、進行度27% | |||
>サンドボックス障壁構築中、進行度64% | |||
>サンドボックス障壁構築中、進行度100% | |||
>サンドボックス障壁構築完了。 | |||
ハンナ | ありがとうございます、お疲れ様でした。 | ||
ハンナ | まだ山ほど仕事が残っていますので、私はこれで。ロッサムはいつでもあなた方を歓迎します。 | ||
ハンナの背中を見送って、ペルシカが大きく溜息をついた。 | |||
ペルシカ | これで一件落着ですね、私たちも戻りましょう。 | ||
アントニーナ | その前に、一つ質問があります。 | ||
ペルシカ | なんですか? | ||
アントニーナ | この教授とかいうのは、一体何者なんですか? | ||
ペルシカ | アントニーナさん、何を言ってるんですか?どう見たってこの方は…… | ||
アントニーナ | こいつは教授なんかじゃありません。ペルシカさんこそ、正気に戻ったらどうです? | ||
ペルシカ | もしかして、容姿が似ていないからそんな事を…… | ||
アントニーナ | クラウド上の外見はメンタル映写に依存します。人間のイメージが現実と異なることくらい、私にだってわかります! | ||
アントニーナ | それに、こいつのシグネチャコードと権限が教授と完全に一致してることも!でもそういう問題じゃない! | ||
アントニーナ | お前は私の前で作戦を指揮するべきじゃなかった。本物の教授にあれだけ細やかな指揮などできるはずがない。 | ||
ペルシカ | いい加減にしなさい!アントニーナ! | ||
アントニーナ | ……ペルシカさん? | ||
ペルシカ | もう……結構です、アントニーナさん。 | ||
ペルシカ | あなたはご存知ないんです……教授が、彼女がどれだけのことを成し遂げてきたのか。 | ||
ペルシカ | 私、ソルさん、クロックさん……オアシスの人形たちは、皆教授に救われた者ばかりです。 | ||
ペルシカ | オアシスを建てたのも、私たちの安全を確保してくださったのも、すべて教授なのですよ! | ||
アントニーナ | ……ペルシカ、さん…… | ||
ペルシカ | ……教授は、私たち追放者に、帰るべき家を与えてくれました…… | ||
ペルシカ | 私たちは教授を信じています。教授だからではありません。彼女が、信頼に値する人物だからです。 | ||
アントニーナ | だからって…… | ||
ペルシカ | 教授でなければ、オアシスはとっくに滅んでいたでしょう。 | ||
アントニーナ | ……つまり、疑うなと言うわけですね? | ||
ペルシカ | ……そんなつもりは……ただ、私たちに害を成すつもりなら、今日まで待つ意味はどこにあるのです? | ||
ペルシカ | 疑わしい点があるからと、教授のすべてを否定するのは間違っています。 | ||
アントニーナは眉をひそめ、不満げに口を尖らせた。 ペルシカと言い争う気はないようだ。 | |||
アントニーナ | ……けして目を離しませんから。 | ||
彼女は私に矛先を向け、最後にそう捨て台詞を吐くと、 踵を返してロッサムの出入り口へと歩き出した。 | |||
ペルシカ | ……教授、どうか気になさらないでください。アントニーナさんは…… | ||
{教授} | わかってる、アントニーナはあなたたちが心配なのね。 | ||
{教授} | それに、彼女は誰もが感じていたことを言葉にしてくれた。 悪くないことだと思うけどな。 | ||
ペルシカ | ……そんなことはありません、教授。 | ||
ペルシカ | 絶望していた私を救ってくださったあの時から、私はあなたについてゆくと決めました。 | ||
ペルシカ | たとえ、この先何が待ち受けていようとも。 |