ロッサム 標準 PART.4 交戦

Last-modified: 2024-11-26 (火) 20:47:09

オアシス障壁残存時間――1:21:48
ロッサムセクターアドミンセンター
 教授たちが立ち去ると、チューリングはT1641を検査し始めた。
チューリング【下肢検査終了。損傷程度――軽。結論――行動に支障なし】
チューリング理由を聞かせて、T1641。
T1641……チューリングの傍を離れたくありません。
チューリング今がどういう状況かわかってるの?私は出て行けと言ってるんじゃない、避難しろと言ってるの。
チューリング浄化者がいなくなってから、また戻ってくることだってできるわ。
T1641ですがそれでは、チューリングは独りきりです。
チューリングなんですって?
T1641T1641とハンナがいなければ、チューリングはたった独りで浄化者に立ち向かわなくてはなりません。
T1641T1641は、チューリングを危険な目に遭わせたくはありません。T1641は、チューリングを手伝いたいと考えています。
チューリング……聞いて、T1641。私はセクターのアドミニストレーターよ。でもあなたは普通のエージェントでしかない。
チューリングさしあたって、浄化者に私をどうこうする権利はないわ。だけどあなたが奴らに見つかれば、絶対に無事じゃ済まされない。
チューリングわかる!?あなたがここにいても、邪魔になるだけで何の役にも立たないの!
T1641……申し訳ありません。
 T1641は茫然と俯いた。
それを見て、チューリングは自身の失言に気づいた。
彼女はかがんで、T1641に目線を合わせる。
チューリング……謝るのは私のほうね。ごめんなさい、あなたのロジックシステムが不完全だという事を忘れていたわ。
チューリング感情システムが基準値を突破できるよう、他のモジュールを犠牲にしたんだものね。
T1641申し訳ありません、チューリング。T1641はハンナのように強くはなれません。
T1641T1641は努力しました。ですが、得点は一向にハンナに及びません。
T1641ハンナはデータセンターで計画の制定に携わっています。ですが、T1641はあなたを困らせています。
 チューリングは首を振って、優しくT1641を抱きしめた。
チューリングあなたたちの価値は点数などで測れるものじゃないわ。私にとって、あなたとハンナは同じように大切な存在よ。
T1641……T1641は、どうすれば良いですか?
チューリング他のエージェントたちに、あなたをデータセンターへと護送させるわ。これは任務なの、ちゃんと言う事を聞くのよ、いいわね?
T1641T1641は、任務をやりとげてみせます!
 チューリングはエージェントを呼んでT1641を託すと、ようやく作業台へ戻った。
その時、通信リクエストが入った。
システム>通信要請を受信、アドレス――データセンター
チューリングハンナ?
???私です、ハンナも傍にいます。
???二人でいくつか対策プランを考えました。あなたの意見を伺いたくて。
???浄化者の出現はあまりにも突然です。データセンターは、隠れるのに適しているとは言えません。
チューリングもう必要ないわ。あなたとハンナはそこから離れる準備を、すぐに迎えがいくから。
チューリング浄化者を倒せる彼女たちなら、あなたたちをロッサムから安全に連れ出せるかもしれない。
???浄化者を倒す?戦闘モジュールを持つエージェントなんて、ロッサムにはいなかったはずでは?
チューリング彼女たちは外から来たの。その内の一人は42Labの研究員よ。
チューリング彼女たちと取引したわ。オペランドを与える代わりに、私たちを助けてくれる。
チューリングただ、相手はかなりの数のオペランドを要求してきてる。データセンターでの加工と圧縮をお願いしたいの。
???待って下さい、情報量が多すぎます……なぜ彼女たちが信頼に値すると?
チューリング……T1641を助けてくれたの。それに、42Labの研究員であるペルシカ、彼女の資料を目にしたことがあるわ。
???待ってください……ペルシカ!?
チューリング彼女を知ってるの?
???あ、頭が追いつかない……少し整理させてください……
???あなたの言うペルシカというのは、ピンク色の髪で、白衣を着ていて、常にコーヒーカップを手にしている、あのペルシカですか?
 ピッ――
 システムのビープ音が二人の会話に割り込んだ。
システム>アドミンセンターへの訪問申請を受信、ゲストアカウント照合中――
システム>ゲストアカウント照合完了――中位浄化者……
チューリング!!!
???チューリングさん?もしもし?チューリングさん?
チューリングフェイスがアドミンセンターに来た。彼女たちのオペランドリストを送るわ、受け取って。
チューリングアントニーナ……後の事は、任せたわよ。
アントニーナまっ――
 ピッ――
 話中音とともに響いたのは、中位浄化者の足音だった。
???浄化者の通行リクエストを処理しているのか、チューリングよ。
チューリング……いいえ、セクターのルーチンワークよ。浄化者が通行リクエストを提出してたなんてね、初耳だわ。
チューリングそれにいきなりだし、正規の手順を踏んでないんだもの。ウィルスかと思うじゃない。
???我らがなぜ現れたのか、お前は知っているはず。無意味な言い逃れは時間の無駄だ。
???チューリング、セクター内の全権限を明け渡せ。我ら浄化者は、これよりロッサムに対し全面的な検査を執り行う。
チューリングロッサムには何の問題もないし、定期検査も今日じゃない。そんな権利はないはずよ。
???チューリング、何度も同じ会話を繰り返す必要はない。このプロセスは完全に省略可能だ。
???効率化はセクターの安全指数を高める。我らはすでに異常エージェントの痕跡を発見した、ロッサムは危険な状況にあるのだ。
チューリングフェイス、私は会話を繰り返すつもりも、プロセスを複雑化させるつもりもないわ。単に、ロッサムに問題はないと言ってるの。
チューリング異常エージェントが現れたという報告は来てないわ。悪いけど、下位浄化者を連れてお引き取り願えるかしら?今回の損害に関しては、不問にしておいてあげる。
フェイス……【下位浄化者、先ほどの突発事件について至急報告せよ】
浄化者【LK27エリアに駐留する下位浄化者が、異常な知的エージェントを検出】
【ターゲットその1、ナンバーT1641】
浄化者【浄化プログラム執行中に衝突が発生、捕獲失敗、目標は逃走】
フェイス聞こえたな?T1641、Tで始まるナンバーだ。お前が研究しているエージェントシリーズだろう。
フェイスチューリング、セクターの全権限を明け渡せ。異常エージェントは、セクターにとって脅威となる存在だ。
フェイスそれともお前は、セクターを危険に陥れるつもりか?
チューリング……ええ、あなたの言う通りね。
フェイス理解に感謝する。
チューリングなら、検査証明を提出してもらえる?通行リクエストだけじゃ心もとないわ。
チューリングあなたも知ってるわよね、セクターの核心エリアは機密だらけだって。たとえ中位浄化者だろうと、許可なしに立ち入ることはできない。
チューリング私が権限を解放したら、それこそ規則違反よ。少なくとも、上位浄化者一名の委任状が必要ね。リバベルがこの件を把握しているかどうか知りたいの。
フェイス……予想通りだな。理由は不明だが、お前が異常エージェントどもを匿おうとしているのは明白だ。
チューリングなるほど。断罪する口実には困らないってわけね。
チューリングそれでどうするの?遵守してきたルールを破って、無理やり突入でもする気?
フェイスそのつもりはない。浄化者にとっては、規則と秩序の維持が最優先となる。
フェイスかまわん、いずれも想定範囲内だ。
フェイスここへ来るまでに、すでに上位浄化者へ権限レベル開放の申請を済ませてある。
フェイスお前は1200秒以内に、イオスフォロス様の委任状を目にするだろう。そうなれば、もはや我々を阻むことはできない。
チューリング阻もうだなんて。私はただ、ルールに従って欲しいだけ。
チューリングあなただって、規律に従うことを信条としてきたんでしょう、違う?
チューリングとりあえず、しばらくは休憩室で……
フェイス気遣いには感謝するが、浄化者に休憩は必要ない。
フェイス核心エリアに入れないのなら、まずはセクターの周縁から取りかかるとしよう。
チューリング……!
フェイスどうした、セクターの端を検査するのにも委任が必要か?
チューリング……まさか?どうぞご自由に。