オアシス障壁残存時間――1:11:51 ロッサムセクター、08号貿易専用始発駅 | |||
現実世界の情報を簡潔に伝えると、リコは私たちを駅のような建物へと案内した。 | |||
システム | >ゲストアカウントを確認、シグネチャコード照合中―― | ||
システム | >照合完了。ゲスト名――リコ、分散型通貨トレーダー。 >同行者3名、アカウント照合中。 | ||
リコ | 照合中止、チケットを購入する。 | ||
システム | >照合中止、支払いが完了しました。 | ||
リコ | はれまっ……また値上がりしてるよ。リコ財布がますますしぼんでゆく……ふぇぇ~ん…… | ||
ペルシカ | ……この場所は? | ||
ソル | あはははッ!なにそのワザとらしいウソ泣き!ペルシカすら騙せてないし! | ||
リコ | ……ちぇっ、食えないヤツら。リコよりよっぽど商人に向いてるよ。 | ||
リコ | ここは秘密のリコステーションさ。通貨トレーダーは各セクターのオペランドを調整するのが仕事だからね、作業量は並大抵じゃない。 | ||
リコ | トレーダー専用の特別ルートがなかったら、ロッサムの仕事だけでも、くたびれて死んじまうよ。 | ||
ペルシカ | ということは、他のセクターにも同じような施設が? | ||
リコ | モチのロン。どんだけ小っこいセクターでもね。 | ||
リコ | どうだい、こんだけの機密情報をタダで教えてやったんだ……そっちにも、それなりの誠意を示してもらわんとねェ。 | ||
リコ | せめて何をしに行くのか、教えてくれたっていいだろ? | ||
ペルシカ | あなたは単に、私たちから情報を引き出したいだけでしょう? | ||
リコ | へへヘッ、野暮なこと聞くねェ。リコだって、お前さんらの知らない情報をた~っくさん持ってんだ。この世は持ちつ持たれつだろ、違うかい? | ||
リコ | 特別に、もう一回だけ質問するチャンスをやるよ、何が知りたい? | ||
(選択) | 1.ロッサムで何が起きたんだ? | A | |
A | リコ | はは~ん……さては、お前さんたちのやろうとしてる事と関係してんだね? | |
リコ | ん~……それについちゃ、結構長い話になるよ。ちょっとばかし整理さしとくれ……そうさなァ、お前さんたちは、このセクターのアドミニストレーターの任務が何かわかるかい? | ||
ペルシカ | ロッサムは42Labの「AIラボ」として、各種科研用AIの開発に務めてきました。 | ||
リコ | そのとーり!チューリングはここのアドミニストレーターとして、人間からアレコレ情報を受け取っていた。 | ||
リコ | AI技術の発展と進化のためさ。本来なら、なんの問題もなかったはずなんだ。マグラシア全体が、コネクションロストするまではね。 | ||
リコ | 人間との連絡がつかなくなると、チューリングは自身のAI進化プロジェクトを起ち上げた。あっという間に、あいつの作品第一号「T01」が誕生したのさ。 | ||
リコ | そいつが、人間の要求とは関係なく生み出され、そのせいで異常と認定された、ロッサムで初めてのエージェントだったんだ。 | ||
ペルシカ | 異常エージェント……T01のどこに問題が? | ||
リコ | 浄化者によれば、人間から委任されてないからなんだとさ。 | ||
リコ | しかも、メンタルレベルは定められた基準をオーバーしてるときた。よーするに、浄化者どものレッドラインを越えちまったんだね。 | ||
リコ | そいからとゆーもの、浄化者とチューリングはイタチごっこを繰り返してるってわけさ。 | ||
リコ | Tシリーズのエージェントが生み出されるたびに、浄化者がここへ処理しにくるんだ。 | ||
ペルシカ | 処理とは、まさか…… | ||
リコ | そりゃ、セクターから抹消するのに決まってんだろ。 | ||
ソル | ろくでもないヤツらだな!コネクションロストで連絡がつかないってのに、人間からの委任を受け取れるわけないじゃん! | ||
リコ | 浄化者はそうは思ってないねェ。 | ||
ペルシカ | T01……T1641……リコさん、もしかして…… | ||
リコ | そっ。今日、お前さんたちが遭遇したのは、何度も繰り返されてきた日常のひとコマに過ぎないのさ。 | ||
リコ | しっかし、実際に口にしてみると……胸クソ悪いったらありゃしないね、まったく…… | ||
ペルシカ | つまり、そのエージェントたちは、浄化者の定めたメンタル基準をオーバーしていたというだけで、他に問題はなかったと? | ||
リコ | あん子らに会ったことあるよ。見たカンジ……至ってフツーってか、単純そうなモンだったけどねェ。 | ||
ペルシカ | 教授、なんだか不安になってきました。ハンナさんは異常エージェントです。今後、もし何か問題があったら…… | ||
(選択) | 1.分析する | B | |
2.ペルシカをなだめる | C | ||
B | {教授} | 他に問題があるなら、浄化者が隠したりしないだろう。 | |
{教授} | 浄化者はマグラシアのセキュリティシステムだ、奴らにも独自のルールはある。 それも、恐ろしく柔軟性に欠けた類のね。 | D | |
C | {教授} | 心配するな、ペルシカ。T1641はどう見てもただの子どもだ。 おそらくハンナも同様だろう。 | D |
D | ペルシカ | ……それを聞いて、安心しました。 | |
リコ | 聞こえたよ~!お前さんたち、チューリングのために動いてたのかい。ハンナを守る代わりに……なるほど!オペランドをせびる気か! | ||
リコ | てやんでぃっ、情けないったらないね!通貨トレーダーともあろうリコが、アドミニストレーターに商売のコシを折られるなんざ! | ||
ペルシカ | ……先に取引を持ちかけてきたのはチューリングさんですよ。 | ||
リコ | そいを横取りできないのが情けないのさ!あまつさえ、商売敵の肩をもっちまうなんて……うぐッ!くやしーーッ!! | ||
リコ | ……まっ、仕方ないっか。人命にゃあ換えられないしねェ。そいに、リコだってあのエージェントたちにゃ同情してんだ。あん子らはな~んも悪くないってのにさ。 | ||
リコ | しっかし解せないねェ。お前さんたち、そんだけのオペランドを手に入れて、どうしよってんだい? | ||
ペルシカ | それはその……また別の問題が…… | ||
ピッ―― | |||
その時、一通の通信要請が会話に割り込んできた。 | |||
クロック | こちらオアシス、クロックからペルシカへ、応答せよ。 | ||
ペルシカ | クロックさん、私です、ペルシカです。 | ||
クロック | オッケー。現在の時刻15:55:00、きょうじゅの指示通り、一回目の定期連絡を行うよ。オアシスは今のところ変わりなし。二回目は5分後ね。 | ||
クロック | そっちはどう? | ||
ペルシカ | さしあたっては順調です、特に問題はありません。 | ||
クロック | こっちも。今、低出力状態でサンドボックス障壁の弱ってるトコを見て回ってる。 | ||
クロック | 浄化者どもも、今んとこは大人しくしてる。計画通り、オペランドを持って帰って来ればいいから。 | ||
ドン―― | |||
通信の向こうから巨大な音が響いた。端に座っていたリコすらも、それに驚く。 | |||
クロック | あっちゃ~……言った傍から……あっ!!! | ||
ソル | もしもし、クロック!大丈夫!? | ||
クロック | なんでもない、ポッチーが落ちただけ。もう一本取ってくる。 | ||
ソル | ……ってか、ホントに大丈夫なの!? | ||
クロック | 当たり前じゃん、あたしを誰だと思ってんの?単なる小手調べだよ、心配いらな…… | ||
ドン―― | |||
クロック | げっ、マジで攻めてきた!とりあえず切るよ! | ||
ソル | へっ?ちょっと、クロック?もしもし? | ||
システム | >通信終了。 | ||
リコ | なんであんだけオペランドが必要なのか、やっとわかったよ…… | ||
ペルシカ | 早くしないと……リコさん!次の列車はいつです? | ||
リコ | おぉっと、ちょうど到着する頃だ。まずはホームに出るよっ! |