ロッサム 標準 PART.7 視角

Last-modified: 2024-11-26 (火) 20:53:15

十数分前。
オアシス障壁残存時間――1:18:41
ロッサムセクター、データセンター上層。チューリングとの通信中断後――
アントニーナチューリングさん?もしもし?チューリングさん?
ハンナチューリングに何かあったの?
アントニーナフェイスがアドミンセンターに現れたらしく、一方的に切られました。
ハンナプランは伝えた?チューリングはなんて?
アントニーナいえ、それはまだ。チューリングさんは、私たちにロッサムを離れろと。
ハンナロッサムを離れる?どうやって?セクターの全部の出入り口に浄化者がいるんだよ。
アントニーナロッサムに来ている私の知り合いが、チューリングと取引したそうです。彼女たちが迎えにきます。
ハンナアンナの知り合い?
アントニーナええ、古い馴染みです……オペランドと引き換えだそうですよ。彼女たちがオペランドで何をするつもりなのか、大体の予測はつきますけどね。
アントニーナいずれにせよ、チューリングさんはもう手配を済ませています。私たちはそれに従うまで。
アントニーナハンナ、ボーッとしてないで、オペランドを抽出してきてください。彼女たちが来たら、すぐに立ち去れるようにしておかないと。
ハンナ……その知り合い、本当にアテになるの?
アントニーナペルシカたちは頼りになりますよ。下位浄化者程度が相手なら、余裕ですね。
ハンナそうなんだ……そんなに……
ハンナだったら、「リライトプラン」を実行に移すのはどう?
アントニーナ「リライトプラン」……?まだあきらめてなかったんですか。この状況で成功するとは思えませんけど……
ハンナもしあの「フェイス」っていう中位浄化者に接触できて、そいつのファイアウォールを破ることができれば、異常エージェントに対する判断基準を書き換えることが……
アントニーナダメです。彼女たちを危険に晒すわけにはいきません!代償が大きすぎる!
アントニーナそれに、浄化者の基準を書き換えられる保証もないんですよ。
アントニーナ私たちの目的は、あなたとT1641を生かすことです。浄化者の脅威を消し去ることじゃない。
ハンナでもそれじゃ何の解決にもならないよ。一時的に安全になるだけで、チューリングと浄化者はいがみ会ったままじゃない。
ハンナ「リライトプラン」さえ成功すれば、ロッサムは……
アントニーナ何事も一朝一夕にはいきませんよ、ハンナ。それに、プランを変更している暇はありません。
アントニーナまずは、今の危機を乗り越えてから考えましょう。
ハンナでも……
アントニーナフェイスはすでにアドミンセンターに到着しています、こちらもオペランドの準備を急がなくては。
アントニーナチューリングの計らいを無駄にするわけにはいきません。
ハンナ……わかった。
 
 オアシス障壁残存時間――0:44:54
ロッサムセクター、データセンター下層。
ソルふぅ――やっと着いた……あれっ、リコは?
ペルシカ浄化者の注意を逸らすと言って、名刺を残して行ってしまいました。次回は料金割り増しだそうです。
ソル巻き込まれたくないだけのくせして、良く言うよ。さすがはキツネだ……
ペルシカ小言はあとにしましょう。はやくハンナさんを見つけないと。
 データセンターの扉が開くと、T1641に良く似たエージェントが私たちを出迎えた。
ペルシカT1641にそっくり……あなたがハンナさん?
ハンナはい、ハンナは私です。
ハンナ皆さん、ご苦労様でした。まずは休憩してはいかがでしょう?
ペルシカ休憩している時間はないの。浄化者がロッサムを完全に掌握する前に、あなたを連れてここから離れないと。
ハンナチューリングに言われて、ここへいらしたんですね?
ハンナそうしたいのは山々ですが、あなた方の必要としてるオペランドがまだ抽出できていません。抽出を中断して、ここを立ち去るべきでしょうか?
ペルシカそんな……
{教授}ペルシカ、君とハンナはオペランドの状況を確認してくるんだ。
私とソルでここを守る。
{教授}心配いらない、ほんの少しの間だけだ。なんとかなるさ。
ペルシカわかりました、すぐに向かいます。
 
 ハンナに連れられ、ペルシカはデータセンター内部へと向かった。
 物言わぬハンナの足取りは急いていた。
ペルシカ怖がらなくていいのよ。私たちが必ず助け出してみせるから。
ハンナ……怖くはありません。ただ……考え事をしていただけです。
 ハンナはエレベーターのボタンを押すと、顔を上げてペルシカを見た。
ハンナペルシカさんはロッサムの状況をご存知なんですか?浄化者と私たちとの関係について。
ペルシカええ、ある程度は。辛かったでしょうね。
ハンナペルシカさんは、チューリングの計画が合理的だと思いますか?
ペルシカというと……?
ハンナ私をロッサムから連れ出してどうなるのです?逃げたって何の解決にもならない。どうして根本的な問題を解決しようとしないのです?
ペルシカあなたは、浄化者に立ち向かいたいの?
ハンナペルシカさんたちには、それができるのでしょう?もし手助けしてくださるのなら、私が現状を変えてみせます。
ペルシカごめんなさい、ハンナさん。そうするわけにはいかないの。
ペルシカ私たちはリスクを冒せない。あなたの安全を最優先するのが、チューリングさんとの約束だもの。
 ポーン――
ペルシカエレベーターが来たわ。質問はまた今度にしましょうか。
 
 ペルシカがエレベーターへ足を踏み入れようとした途端、爆発が起きた。
衝撃によって建物全体が大きく揺れる。
ペルシカどういうこと?
システム>通信リクエストを受信……
{教授}ペルシカ!はやく外へ!
ペルシカ教授?
システム>通信中断。
ハンナ……
ペルシカハンナさんはここにいて、すぐに戻って来るから。
 ペルシカの背中を見送るハンナは、首をかしげて何かを考えていた。
 機械の瞳孔は収縮し続け、瞳の中をデータフローが次々と過ってゆく。
 
 ペルシカはデータセンターの入り口に戻った。
彼女を待っていたのは、瓦礫の中に倒れているソルと……
 チューリングをひっさげ、扉を突き破って現れたフェイスの姿だった。
浄化者【異常エージェントを検知、数3、浄化モードへ移行】
 チューリングを傍に置き、フェイスはデータセンターの内部を見回した。
何かを探しているようだ。
ペルシカチューリングさん!!!
チューリングげほッ……ごほごほッ……こ……来ないで……
フェイスお前たちはロッサムの先住エージェントではないな。チューリングが匿っているのはお前たちではない。
フェイスD11、D12、チューリングの匿う異常エージェントを探し出せ。ここの異常エージェントは我が引き受ける。
浄化者【コマンドを受信、行動開始】
ソルそうは……させるか!
ペルシカソルさん!
{教授}ペルシカ、気を取られるな!他の浄化者どもを食い止めるんだ!