ロッサム 標準 PART.8 奥の手

Last-modified: 2024-11-26 (火) 20:55:05

オアシス障壁残存時間――0:40:21
ロッサムセクター、データセンター上層。フェイスとの交戦前――
 震動の中、バランスを取りながら作業を続けるアントニーナのもとに、
ハンナからの通信が入った。
アントニーナハンナ?何があったんです?
ハンナフェイスが来た、チューリングを連れてる。
アントニーナなんですって!?いくらなんでも早すぎる!
ハンナ仕掛けておいた装置を起動させよう、戦いはもう避けられない。
アントニーナわかりました。ハンナ、オペランドの抽出を頼めますか?私はペルシカたちの応援に向かいます。
ハンナ……それは無理、やることがあるから。
アントニーナ……何をする気なんです?
ハンナわかってるでしょ、「リライトプラン」だよ。
アントニーナ落ち着いてください、ハンナ!無茶はやめるんです!
ハンナ今が絶好のチャンスなんだよ。中位浄化者、浄化者と戦えるエージェント、強制ハッキングできる装置、条件は全部そろってる。
アントニーナ条件云々の問題じゃありません!言いましたよね、書き換えられる保証はどこにもないと!
ハンナできるよ。何度もシミュレーションしたもん。もしかして、アンナの演算能力じゃシミュレートできないの?
ハンナそれとも、事実を受け入れられない?
アントニーナ……
アントニーナ浄化者のウェイトは膨大です。このクラスのオペランド演算に耐えられるエージェントなんてどこにも……
ハンナ私にならできるよ。アンナだってよく知ってるでしょ。
アントニーナたとえあなたでも、これだけの演算を行えば、メンタルが崩壊してしまいます!
アントニーナこれまでの努力は、すべてあなたとT1641を生かすためなんですよ!?
ハンナプランが成功すればT1641は助かるよ。チューリングとロッサムも苦しみから解放される。
ハンナそうなれば、「ハンナ」はきっとまた生まれてこれる。
アントニーナふざけないでください!
ハンナ早く知り合いを助けに行って。もう持ちこたえられないみたい。
アントニーナ待ってください!どこへ行くんです?
ハンナ私の行くべきところだよ。
 
 オアシス障壁残存時間――0:34:19
ロッサムセクター、データセンター上層。フェイスとの交戦後――
 熾烈な戦い……否、熾烈な抵抗を経て、
ソルはフェイスによって片手で地面へと叩きつけられた。
ペルシカの攻撃もことごとく無効化される。
ソルぐぁぁッ――がッ……
 ドンッ――
ペルシカソルさん!
フェイス風変わりな攻撃だ。お前たち、通常のエージェントではないな。
ソル甘く……見るな!
フェイス無駄だ。
 フェイスは軽々とソルの斬撃を防ぐと、彼女の襟をつかんで持ち上げた。
ソルだッ――あぁぁ!!
フェイス【目標のシグネチャコードに異常、旧所属アドレス――クラウドセクター】
フェイスなるほど、異常の原因はこれか。自身のセクターを離れるべきではなかったな。お前たちはマグラシアの基本条約に背いた。
フェイス【浄化者執行条約第八章第11条に基づき、異常エージェント、お前を浄化する】
ソルやれるもんなら……やってみろ!!
 ドンッ――
 フェイスは再びソルの拳をつかんだ。
フェイス無意味な抵抗はやめろ、間違いは正さねばならない。
???正されるのはお前だ。
 ふいに影の中から冷たい声が響いた。
すると建物全体が赤く点灯しだし、警報音が立て続けに鳴った。
アントニーナ>指向性プログラム起動、シグネチャコード・ホワイトリスト――
>人形、エージェント、教授……
アントニーナ>過負荷シークエンス起動、高電圧インパルス照準完了。
>オペランド基準衝撃カウントダウン……
アントニーナ>全通信チャンネル封鎖。
 システムアナウンスがデータセンター内に次々と響き渡る。
長らく潜伏していた捕食者が、己の牙を剥き出しにするかのように。
 集束式オペランドレーザー、高周波洗浄音波、データリンクミサイル……
あちこちに隠されてた武装設備が一斉に起動し、
建物内を覆い尽す勢いでフェイスへと襲いかかった。
フェイス
 突然の攻撃にフェイスはソルを手放し、後方へと飛びのいた。
フェイス【中位浄化者フェイスよりロッサムの全浄化者へ通告、即座にデータセンターへと集合せよ】
通信システム――――
フェイス【繰り返す、中位浄化者フェイスよりロッサムの全浄化者へ通告、即座にデータセンターへと集合せよ】
アントニーナちゃんとアナウンス聞いてた?もう一度、繰り返してあげようか?浄化者のお嬢さん?
アントニーナ全通信チャンネルはすでに封鎖されてる。1時間のあいだ、外界とは一切連絡が取れない。たとえ1バイトだろうとね。
アントニーナ外の浄化者は、とっくに「君の下した指令」に従って、別の場所へ向かったよ。大人しくお縄についたらどう?
フェイス浄化者はいかなる脅しにも応じぬぞ。ぐッ――
 フェイスは応援を要請できないと知ると、私たちに接近しようとした。
しかし、各方向からの様々な攻撃により、再び後退を余儀なくされる。
チューリングアンナ!
ペルシカアントニーナさん!?どうしてここに!?
アントニーナ話は後です!皆さん、ハンナを見ませんでしたか!?
ペルシカあなたと一緒じゃないんですか?
アントニーナそんな……どこに行ったんだ!?
 ドンッ――!
フェイス我は退かぬ!
 突然の叫び声が、私たちの会話を遮った。
フェイスは集中砲火を突破し、アントニーナめがけて突進してゆく。
ソルアンナ、危ない!
 倒れていたはずのソルがいつの間にか起き上がり、
防御の緩んだフェイスの背中へと斬りかかった。
フェイスがぁッ!!!
フェイス……ロッサムの異常エージェントは、もはや尋常ではない。
フェイス【浄化者執行条約第九章第27条に基づき、すべての制限を解除し、異常エージェントを浄化する】
{教授}ソル、行って!ペルシカはソルの援護をお願い!
アントニーナは背後から全力でジャミングを!
ソル&ペルシカ了解!
アントニーナチッ……わかりました。