オアシス障壁残存時間――0:26:33 ロッサムセクター、データセンター。 | |||
ドンッ―― | |||
ソルは再びフェイスによって壁に叩きつけられた。 だが彼女は声をあげなかった。悲鳴も、叫び声も、何もない。 | |||
ソル | …… | ||
チーム唯一の近接戦要員であるソルは、フェイスの攻撃の80%近くを引きつけていた。 だがいかに屈強な戦士だろうと、やがては力尽きる時がくる。 | |||
ペルシカ | ソルさん! | ||
アントニーナ | ソ……ごほッ……ソル、さん…… | ||
…… | |||
ペルシカ | ソルさん、返事をしてください!ソルさん! | ||
フェイス | 貴様らのたくましさには、目を見張るぞ。 | ||
フェイスの状態も万全とはいえない。 関節部分の装甲は完全に破壊され、首元は露わになっている。 | |||
だが彼女の戦闘力にはなんら影響無いようだった。 フェイスはソルに近づき、最期の一撃を加えようとする。 | |||
ドォンッ――― | |||
その時、予想だにしない事態が起こった。 フェイスの頭上で激しい爆発が起きたかと思うと、 炎に混じって小さな影が飛び降りてきたのだ。 | |||
ハンナ | はぁぁーーッ!! | ||
チューリング | ハンナ! | ||
アントニーナ | ハンナ駄目だ! | ||
ハンナは力を振り絞り、手にしていた何かをフェイスの首元へと突き刺した。 しかし次の瞬間、彼女はフェイスによって首を掴まれ、宙に持ち上げられてしまう。 | |||
フェイス | 【異常エージェントを検知、ナンバーT1642】 | ||
フェイス | 見つけたぞ。 | ||
チューリング | 待って!フェイス!その子を放しなさい! | ||
フェイス | 【訓練モード、威嚇攻撃】 | ||
殺傷力の極めて低い弾丸がフェイスの手中より発せられ、 チューリングの足元に命中した。 | |||
フェイス | これ以上過ちを犯すな、チューリングよ。 | ||
フェイス | 今のお前は一時的に拘束されているに過ぎない。だが怪しい動きをすれば、罪は重くなる。 | ||
フェイス | そうなれば、「イオスフォロス」様の審判は必要なくなる。お前を処するなど、我一人の権限で十分だ。 | ||
ハンナ | お前に……人を……処する……権利なんて、ない。 | ||
ハンナが背後にあった手を翻すと、 フェイスの首に挿し込まれていた装置が静かに稼働し始めた。 | |||
システム | >接触面積が要求値に到達、リライトプログラムアクティベート…… | ||
ハンナ | リライトプラン……開始! | ||
フェイス | リライトプラン?何のことだ? | ||
チューリング | なんですって!?ハンナ、今すぐ止めて!! | ||
フェイス | 【浄化者執行条約第八章第11条に基づき、異常エージェント、お前を浄化する】 | ||
フェイスはハンナの首をつかんだまま持ち上げ、彼女に武器を突き立てようとした。 | |||
チューリング | やめて――! | ||
チューリング | 【メンタル互換リクエスト、対象――ナンバーT1642】 | ||
チューリング | 【接続完了……強制変換】 | ||
その刹那、チューリングはハンナのメンタルシステムへと強制接続した。 | |||
ザーーー | |||
微かなハウリング音が鳴った。それに武器の風切音が続く。 | |||
チューリング | うぐッ!!! | ||
フェイス | ???チューリング!? | ||
刃を突き立てたフェイスは、信じられないという表情で目を見開いた。 その手に捕らわれていたはずの異常エージェントが、 チューリングにすり替わっていたのだ。 | |||
システム | >浄化者による越権行為を検知―― 【規則違反のない状況下で、浄化者が自らアドミニストレーターに危害を加えました】 >損傷検測中…… | ||
損傷確定――致命傷、最終警告! 警告が発令されました!違反者――中位浄化者フェイスに懲戒処分が科せられます! | |||
フェイス | 貴様!なぜだ!うぅっ―― | ||
瞬く電光が、フェイスの躯体から弧を描いてほとばしった。 彼女は立つ事さえままならず、足をもつれさせてその場に倒れ込んだ。 | |||
システム | >懲戒処分執行中。処分その一、装甲解除。 | ||
フェイス | かはッ――!げほげほッ……げほッ…… | ||
システム | >懲戒処分執行中。処分その二、武器弱体化。 | ||
フェイス | やめろ……やめろ! | ||
システム | >懲戒処分執行中。処分その三、中位殺傷プログラム権限オフ。 | ||
フェイス | うわぁぁぁ―――!!! | ||
突然の出来事に、その場にいた全員が呆気に取られていた。 やがてハンナがチューリングのもとへ駆けつけるのを見て、メンバーは我に返った。 | |||
ペルシカ | !! | ||
ペルシカ | 今です! |