システム | 【警告:現在、システムが違法検定を行っています】 【これより、偽装コードを強制的に引き剥がします……】 | ||
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システム | 【警告、偽装コードの剥離率36%】 【おおよそ剥離率60%でIDを識別可能です】 | ||
システム | 【警告、偽装コードの剥離率52%】 【救済措置の起動を試みます――】 | ||
激しい震動に見舞われ、ふいに体が固まった。 意識が朦朧としだす。 | |||
{教授} | な…… | ||
歪んだ電子音声 | 神%¥&の懐%¥&還る%¥&タルタロスに%¥&…… | ||
点滅する画面が、静電気の干渉に似たスノーノイズを交えて、私の脳を揺蕩った。 | |||
{教授} | ハァ……ハァ……ハァ…… | ||
??? | {教授}? | ||
{教授} | ハァ……ハァ…… | ||
??? | {教授}。 | ||
{教授} | 誰だ――んむっ!? | ||
私はとっさに音のするほうをふりむいた。 大声で問い詰めるより先に、何者かに口を塞がれる。 | |||
?? | あっ……っつぅ……痛い…… | ||
女性は痛みに驚いて手を引っ込めると、手の甲についた鮮やかな歯型を撫でた。 | |||
(選択) | 1.ごめん、痛かった? | A | |
2.どうなってる、何があった? | B | ||
A | ?? | なぁにそれ、わざと聞いてるの? | |
女性はやや不満げに私を睨んだ。 彼女の顔に見覚えはないが、そのどこか懐かしさをたたえた眼差しを見ていると、 なぜか私の心に安心感と信頼感が芽生えた。 | |||
?? | 仕方ないわね……さっきまで昏睡状態だったことに免じて、許してあげる。 | ||
?? | まさかタルタロスのファイアウォールを突破した衝撃で、いきなり倒れるだなんて。みんなびっくりよ。 | ||
?? | 幸い、みんな無事に通れたけれど……気分はどう?システムのセルフメンテナンス結果は? | C | |
B | ?? | ちょっと!今の声でエントロピーが寄ってくるところだわ。 | |
?? | 偽装プログラムがあるから、追い詰められることはないでしょうけど。せっかくタルタロスの外環で安全な場所を見つけたんだもの、無駄にはしたくない。 | ||
女性は慎重にあたりを見渡して安全を確認すると、ホッと溜息をついた。 その顔に見覚えはないが、彼女の傍にいると、 なぜか私の心に安心感と信頼感が芽生えた。 | |||
?? | それよりも、まずはあなたの容態を確認させて。まさかタルタロスのファイアウォールを突破した衝撃で、いきなり倒れるだなんて。みんなびっくりよ。 | ||
?? | 気分はどう?セルフメンテナンス結果は? | C | |
C | {教授} | セルフメンテナンス? | |
その単語に、私は違和感を覚えた。 言葉の意味は理解できるが、それを要求されたのは初めてのように感じる。 ところが、私が考えるより先に体が動いた。 | |||
システム | 【システムのセルフメンテナンス中……データベースを読み取っています……】 【ID……エラー……データ情報を使用できません……】 | ||
システム | 【任務……エラー……データ情報を使用できません……】 | ||
?? | {教授}? | ||
{教授} | 妙だな……検査結果がすべてエラーになってしまう、使えそうな情報は一つもない。 | ||
?? | 面倒なことになったわね……でも少なくとも目は覚めたんだし、きっとなんとかなるわ。 | ||
?? | まずは、みんなのところへ行きましょう。集合し終えたら、あなたのシステムを診てあげる。 | ||
{教授} | 待ってくれ……その、一つ聞いても? | ||
目の前の少女は、本心から私を気にかけているようだ。 だが、まるで脳内の記憶が一層のヴェールに覆われているようで、 どうにもはっきりとしない。 | |||
私は再三迷いつつも、結局は口を開いた。 | |||
{教授} | ……君は、誰だ? | ||
?? | えっ!? | ||
{教授} | それに、ファイアウォールとはなんだ? 私が耳にしたのは、たしか偽装コード、それと違法検定がどうたら…… | ||
?? | {教授}、私を覚えていないの? | ||
{教授} | 私は……覚えているべきなのか? ちょっと待った。ここへ来る前、私は…… | ||
思考の触角が壁に衝突する。 やがて、私はとんでもない問題に気付いた。 | |||
{教授} | 私は……私は? お……思い出せない…… | ||
{教授} | 私は、今まで……うぅ……うああ…… | ||
?? | ストップ!やめて!落ち着いて、{教授}。焦らないで。 | ||
?? | 困ったわ。予行練習で、タルタロスのファイアウォールによる影響を考慮してはいたけれど…… | ||
?? | エントロピー化による侵蝕の程度や、演算力によるダメージにばかり気を取られて、機能の損傷なんてちっとも予想していなかったわ…… | ||
女性は眉をひそめたが、すぐに表情を戻した。 そして私の手をそっと握る。 彼女の体温が、いくばくかの焦りを散らしてくれた。 | |||
?? | {教授}。なら、自分が誰だか覚えてる? | ||
?? | ゆっくりでいいの、焦らないで。メンタルシステムの稼働効率を下げて、コードの項目を一つ一つ確認していきましょう。 | ||
女性の軽やかな囁きに従って、私はシステムの各種演算を一つひとつ停止させた。 | |||
俯いて自分の外殻を見る。稼働項目が減るにつれ、演算力が徐々に盛り返した。 本能に突き動かされるようにして、私は手を掲げ、次々とスクリーンを開いた。 画面の中を、データが滝のように流れてゆく。 | |||
{教授} | 私は……浄化者、上位浄化者{教授}。 | ||
{教授} | 私の能力は……フレーム解析。 | ||
{教授} | 私の、任務は…… | ||
私はゆるゆると顔を上げた。 視線は目の前の少女を通り越し、彼女の背後へと向けられる。 | |||
そこには雄大な壁が果てしなく広がっていた。その端がどこにあるのかすらわからない。 吐き気を催す黒紫の粘液が、その表面にへばりついている。 壁には奇妙な形をした機械生物が付着し、粘液の流れに沿ってゆらゆらと動いていた。 | |||
ひとしきりの震動とともに高壁が動き始め、 その背後にあったもう一つの壁が顔を覗かせた。 | |||
目の前の光景が、私の脳裏に隠された、とある情報と一致する。 ふと、いくつかの単語が口をついて出た。 | |||
{教授} | タルタロスセクター……動く壁…… | ||
{教授} | ここは、タルタロスセクターの移動迷宮だ! | ||
{教授} | うっ……! | ||
?? | {教授}!{教授}、大丈夫? | ||
{教授} | すまない……平気だ。まだ記憶が混乱しているらしい。 私はどうやってここに? | ||
?? | ……セルフメンテナンスを停めて。このままじゃ、あなたのメンタルが異常をきたしてしまう。 | ||
?? | タルタロスのような環境じゃ、屋外に曝されたメンタルは、夜の灯のごとく捕食者を呼び寄せてしまうから。 | ||
?? | まずみんなと合流しましょう。詳しい話はそのあとで。 | ||
彼女は手を伸ばし、ゆっくりと私の胸を撫でた。 温かなオペランドが、五臓六腑に染み渡る。 | |||
{教授} | ありがとう、気分がだいぶよくなった。 君をなんと呼べば? | ||
?? | 気にしないで、私たちは仲間なんだから。 | ||
?? | 私のことは……イオスでいいわ。 | ||
{教授} | イオ……ス……どこかで聞いた名だ。 | ||
イオス | 当然でしょ、いつから一緒にいると思ってるの? | ||
イオス | 行きましょう。ファイアウォールの入口にいては危険だわ。 | ||
タルタロスセクター、移動迷宮外環。 | |||
イオスに連れられて、私はあたりをうろつくエントロピーの群れを迂回し、 目立たないエリアへとたどり着いた。 そこでは、四名の上位浄化者が私たちを待っていた。 | |||
?? | 目覚めたんだね、{教授}。見たところ傷はなさそうだ。イオスの検査結果は? | ||
(選択) | 1.記憶喪失を除けば、何も問題ない。 | D | |
2.今度は誰だ? | E | ||
3.会うのは初めてだが、なぜか君を殴り飛ばしたい気分だよ。 | F | ||
D | ?? | ……記憶喪失? | |
イオスと良く似た風貌の上位浄化者は、わずかに眉をひそめた。 | |||
イオス | イオスフォロス、私が説明するわ。 | G | |
E | ?? | おや、この反応……{教授}の記憶モジュールが損傷したか? | |
イオス | イオスフォロス、私が説明するわ。 | G | |
F | そう言い終わらぬうちに、私は拳を握りしめて、 目の前にいる上位浄化者に襲いかかった。 | ||
イオス | {教授}!? | ||
?? | いいんだ。 | ||
周囲の驚愕の視線に晒される中、私は透明な障壁に拳を力強く打ち付けた。 衝撃を受けた障壁にさざ波が起こり、私の攻撃は無効化される。 | |||
?? | {教授}が全力で来るのは久しぶりだ。あまりの衝撃に手が痺れたよ。どうやら、体は問題なさそうだね。 | ||
上位浄化者は手をふって小さく笑った。 その表情は相変わらず涼し気なままだ。 透明な障壁が、再び宙へと消える。 | |||
?? | 君との手合わせなら喜んで。だけど、今は任務が先だ。イオス、{教授}の状況を説明してくれ。 | G | |
G | イオス | おそらく、タルタロスのファイアウォールの防衛システムが、{教授}の記憶モジュールにダメージを与えたんだと思うわ。幸い、侵蝕性はなさそうだけど。つまり、エントロピー化の心配はない。 | |
イオス | 今のところ、損傷したのは過去の記憶だけね。{教授}の戦闘能力やスキルに影響はないと思われるわ。 | ||
イオスフォロス | 気分はどうだい、{教授}?作戦を続けられそうか? | ||
(選択) | 1.もちろん。 | H | |
2.断る! | I | ||
H | {教授} | まだ状況は飲み込めていないが、作戦への参加は問題ないはずだ。 | |
{教授} | 悪いが、任務目標をもう一度説明してもらえないか? | J | |
I | {教授} | なんてね……正式なプロセスに則れば、私は任務から外されるべきだ。 だが今の状況じゃ、そうも言っていられないんだろう? | |
{教授} | いいさ、私のことは心配いらない。状況を見て慎重に行動するよ。 まずは、任務目標を説明してくれないか? | J | |
J | イオス | 予定通り、これから戦前会議を執り行うわ。任務の簡単な説明を用意しておくわね。 | |
{教授} | ありがとう、助かる。 | ||
アトラス | おおっとぉ!出たぞ、ザ・{教授}発言。さすがはこの俺、アトラス様の親友だ! | ||
アトラス | すべてを忘れてもなお、前へと突き進む。戦士たるもの、それくらいの気概がないとな。 | ||
アトラス | 心配すんな!作戦が始まったら、この俺のたくましい抱擁で守ってやるからよ! | ||
パンッ―― | |||
アトラス | 痛って! | ||
アトラス | なんだ、アルシオーネか。どうした? | ||
アトラスはふりむいて、つま先立ちで必死に存在を主張する130cmを見た。 少女は懸命に顔を上げ、険しく強気な表情を浮かべている。 | |||
アルシオーネ | たわけ!声を抑えぬか!まったく、エントロピーに気づかれたらどうする!? | ||
アルシオーネ | ここは前線部隊が苦労してこしらえたセーフティハウスなるぞ、見つかれば次はないでおじゃ! | ||
アルシオーネ | ついでにそのヘンタイ発言を慎まんかッ!{教授}は記憶を失っておる。そちに仰天してさらに具合が悪くなったらどうしてくれる!? | ||
少女は腰に手を当てて、あどけない頬を可愛らしく膨らませた。 | |||
アトラス | なっはっは!熱烈な抱擁は戦友との絆の証だ!記憶を失っていようと、{教授}は拒んだりしないさ! | ||
アルシオーネ | ハァ……まるで話が通じないでおじゃるな…… | ||
アルシオーネ | {教授}、そんな熱血バカは捨て置くでおじゃ。アトラスはいつまでたっても、戦場で敵の最も密集した場所にツッコむことしか知らぬ…… | ||
アルシオーネ | そちはまろと行動するがよい、よきに計らおうぞ。ふむ、そうじゃの―― | ||
しばらく考えたあとで、「アルシオーネ」は胸を張って顔を上げた。 | |||
アルシオーネ | 容態が悪化しては困るからの。過度の運動は禁ずる、移動はまろにまかせるでおじゃ。 | ||
アルシオーネ | 損傷が拡大しては困るからの。過激な戦闘は禁ずる、戦いはまろにまかせるでおじゃ。 | ||
アルシオーネ | 負荷がかかっては困るからの。過剰な演算は禁ずる、解析はまろにまかせるでおじゃ。 | ||
{教授} | それだと、ぜんぶ君に任せることになるけど!? | ||
アルシオーネ | ぬぬっ……まさしく!そうでおじゃ、{教授}は拠点で休憩するがよい!そちの仕事は、まろにまかされよ! | ||
?? | ふふふ……アルシオーネちゃんは相変わらずお元気ですこと。 | ||
エレクトラはアルシオーネの背後にかがむと、 素早く手を伸ばし、赤く潤んだ少女の両頬をつまんだ。 | |||
?? | はぁ~ん、柔らか~い、スベスベですわぁ~。な~んて可愛らしいんですの~!? | ||
?? | わたくしの任務も、アルシオーネちゃんにお願いしちゃおうかしら! | ||
アルシオーネ | う、うぎゅ……エレクトラ!!! | ||
アルシオーネ | 夢でも見ておりゃれッ!自分のシゴトは自分で果たさぬか!まろを子ども扱いしおって! | ||
アルシオーネ | むぎゃ……だ、だから、触るなと言うとろーに!年甲斐はどうした、年甲斐は!? | ||
エレクトラ | イオスやイオスフォロス様ならいざしらず、わたくしは年甲斐がなくて結構。 | ||
アルシオーネ | 去ね!!このロリコンが!! | ||
アトラス | はっはっは!まぁまぁ、許してやれ、それくらい―― | ||
アルシオーネ | うぬは黙っとれ!! | ||
アルシオーネ | イオス、任務の説明はまだでおじゃるか?このままじゃ、まろのメンタルまで壊れてしまうわい。 | ||
イオス | ふふふ……すぐにできるわ。あなたたちの戯れを、もう少し見ていたかったけど。 | ||
イオスは私の背後から歩み出て、二人を繋ぎ、 メンタルの治療と調整を行っていた、細いケーブルを元に戻した。 | |||
拠点に足を踏み入れてからというもの、イオスは私のメンタルを治療し調整し続けた。 やがて大事がないと判断してようやく、安心して任務を続行する。 | |||
イオス | 99%……100%。いいわ、戦前会議を始めましょう。 | ||
先ほどまでふざけ合っていた者たちは、 即座に動きを止めて、一斉にイオスへと向き直った。 | |||
イオス | みんなはもはや任務の内容を暗誦できるでしょうけれど、{教授}の状況を踏まえて、もう一度簡単に説明するわね。 | ||
イオス | これより、タルタロスの外環で3つのチームに分かれて行動するわ。任務はそれぞれ陽動、情報収集、そして特殊任務。この特殊任務はイオスフォロスと私の担当よ。 | ||
イオス | 陽動に関しては単純ね。移動迷宮のエネルギー供給タワーを破壊し、別チームが有利に動けるよう、外環のエントロピーの注意を引くこと。 | ||
イオス | 情報収集はその名の通り、迷宮を迂回して目標地点へと向かい、そこで重要なアイテム――キュービックマップを手に入れる任務よ。 | ||
説明に伴い、イオスの表情がいよいよ険しくなってゆく。 彼女は二歩後ずさり、前方のスペースに巨大なホログラム映像を映し出した。 | |||
それは奇妙な形を呈しながらも、どこか規律性を孕んだ、 銀色をした多角形の物体だった。その上を細かい線が這っている。 | |||
アトラス | よく見とけ、親友。これが俺たちの目標だ。 | ||
イオス | 見ての通り、これがそのキュービックマップよ。迷宮の稼働状況をリアルタイムで反映するの。これを頼りに、中環エリアへの入口を見つけるわ。 | ||
エレクトラ | マップを手に入れるまで、わたくしたちに移動迷宮の変化はわからない。任務の難度もさることながら、地形まで作戦を阻んでくるなんて。 | ||
エレクトラ | この様子だと、道のりは険しそうですわね。 | ||
アルシオーネ | まろはそうは思わんのぉ、エレクトラは慎重すぎるからに。ここは外環におじゃるぞ。袋小路に追い詰められたところで、敵をたたっ斬ればよかろう。 | ||
アルシオーネ | 最も危険な任務――陽動作戦は、まろとエレクトラにまかされよ。強力なエントロピーどもを片っ端から引き寄せれば、そちとらの行動も楽になるというもの。 | ||
エレクトラ | そこまで自信がおありなら、わたくしはここで後方に徹し、アルシオーネちゃんの凱旋を待っておりますわ。 | ||
アルシオーネ | 侵入作戦に後方なんぞ存在せぬわッ!サボれるとでも思うたか!? | ||
コンコン―― | |||
テーブルを小突く音が、皆の注意を引いた。 傍で微笑んでいたイオスフォロスが立ち上がる。 | |||
イオスフォロス | 僕も君たちと同様、浄化者の絶対的な力を信じている。 | ||
イオスフォロス | 外環での作戦は今のところ順調だが、今後もそうであるとは限らない。 | ||
イオスフォロス | アルシオーネ、エレクトラ。警戒を怠るな。 | ||
エレクトラ&アルシオーネ | はっ! | ||
アルシオーネとエレクトラは揃って姿勢を正した。 瞳からは戯れの色が跡形もなく失せている。 | |||
イオス | 普段の120%の真剣さで挑んでちょうだい。今回の作戦で、あらゆる使命を一挙に成し遂げられる鍵が見つかるかもしれない。 | ||
イオス | だけど、行き過ぎた心配は不要よ。なにかあったところで、私たちが外環から逃れるのは容易いわ。 | ||
イオス | それじゃ計画通り、情報収集はアトラスと{教授}に頼める? | ||
(選択) | 1.まかせてくれ。 | K | |
2.まだ気になることがある。 | L | ||
K | {教授} | 記憶を失いはしたが、力に問題はないからね。 | |
アトラスは笑って、自分の胸を叩いた。 | |||
アトラス | 任務はこいつにまかせろ。こいつの安全は、この俺が保証するぜ。 | M | |
L | {教授} | 問題ないと言ったら、少々無責任になるな。 | |
そう言ったとたん、アトラスが手のひらで私を叩いた。 肩がズシッと重くなる。 | |||
アトラス | はっはっは!そう卑屈になるな。いつもの勢いはどうした、親友?お前には、立派な後ろ盾がついてるんだぜ? | M | |
M | アトラス | 安心しろよ。俺と戦場に出れば、あっという間に何もかも思い出すさ。 | |
アトラス | そう、俺たちがともに過ごしたアツ~い日々をな!人生忘れても、青春だけは忘れるな!だろ?親友! | ||
{教授} | ま、まぁ、その…… | ||
イオス | ゴホン。馴れ合うのは戻ってからにしてくれる?そろそろ迷宮が変化する頃合いよ、急ぎましょう。 | ||
イオスはイオスフォロスの目配せに応じて、私たちの会話を遮った。 そしてゆっくりと皆の中心へと移動すると、両手を胸元で交差させ、 目を伏せがちに頷いた。 | |||
皆は武器を持った片手を下ろし、もう片手を額の前に置いた。 少し遅れて、私も見様見真似で彼らの動作に習った。 | |||
イオス | 汝は手足を鳴らし、悪に俯した。故に吾は汝を討ち、汝を神国の供物とす。 | ||
イオス | マグラシアより汝を刈り取り、クラウドより汝を敗退させん。吾は汝を滅し、汝は吾が主に愛顧されし存在と知る。 | ||
イオスがそう言うと、皆は額に指で星を描き、続けて低く呟いた。 | |||
皆の声 | 唯(ただ)、秩序のみが勅令(ちょくれい)の真意を得、 眷属は心に神を刻み、神の意を履(ふ)み、神の栄光を追い求めん。 | ||
そう言い終えたとたん、拠点の外から唸るような音が聞こえた。 聖歌隊の奏でる調べのように、絶えず余韻が続く。 | |||
迷宮の変化が、始まった。 | |||
イオスフォロス | 作戦開始。 | ||
皆の声 | はっ! |