臨界爆震 PART.1 解構

Last-modified: 2025-02-05 (水) 00:54:34

ロッサムセクターから1km離れた場所、通信ステーション前。
ペルシカ……以上が、現在の戦況です。手強い戦いですが、オアシスが攻め落とされる危険性は今のところありません。
{教授}わかった。よくやった、ペルシカ。
ペルシカそちらは順調ですか?
 ペルシカの問いかけを聞いて、私は通信ステーションを覆う一面の黒紫色を見た。
{教授}ロッサムセクターまであと1km程度だ。
ソルとクロックが偵察を行ってる。
ペルシカ……
 あえて話題を逸した私の意図を察してか、
ペルシカは通信の向こうで疲労に満ちた溜息をついた。
ペルシカ教授がお戻りになるまで、オアシスは戦い続けます。
ペルシカご自身の安全にはくれぐれもお気をつけて。それが最も重要なのですから。
 ピッ――
アントニーナどうでしたか?
(選択)1.オアシスは今のところ安全のようだ。A
2.君も聞いてたじゃないか?B
Bアントニーナ……誰かさんのように、盗み聞きする習慣はありませんから。
{教授}冗談だよ、オアシスのほうは一安心だな。A
Aアントニーナそれなら良かった。
アントニーナこちらの状況をあえて伝えなかったのは、どうかと思いますけど。
{教授}本拠地の安全が最優先だからね。
増援を要請するほどの事態にはなってないし。
アントニーナ……本気でそう思ってるんです?
アントニーナロッサムとの通信ルートすら修理できてないのに、すでに5回もエントロピーとの遭遇戦を強いられているんですよ。
{教授}残ったエージェントの数は?
アントニーナ85%、先が思いやられる数字ですね。
アントニーナ第一小隊は2名、第二小隊は1名、偵察小隊は3名を失っています。オアシスでリセットされるとは言っても……
{教授}アントニーナ。
 私はアントニーナの肩を叩いた。
彼女は深呼吸して、私の手を振り払う。
アントニーナ私は至って冷静です、無用な懸念は引っ込めてもらえます?
アントニーナ認めたくはありませんが、5回の遭遇戦を経てこれだけの数が無事だったのは、その身分に似つかわしくない戦闘指揮のおかげですよ……
アントニーナですがこれ以上、幸運が続くとも思えません。
 アントニーナが構築した仮設休憩所の周囲には、
エントロピーの痕跡がそこかしこに見られた。
 やや遠くでは、怪物たちが蠢きながらあたりを徘徊している。
移動には不向きなはずのNullエリアでさえ、今や一面が紫色の海に染まっていた。
アントニーナもともと、Nullエリアはオペランドが極めて少ないんです。ところが、エントロピー液をあちこちにばら撒かれたせいで、今や地形が形成されつつある。
{教授}エントロピーはオペランドが主食だろう。
Nullエリアの造成なんかに、体液を割いてどうするつもりだ。
アントニーナそれについては、一考の価値がありますね。
アントニーナですが、エントロピー学者を目指す前に、ロッサム側の通信ルートを速やかに修復しなくては。その後でセクター内へと通じる道を探します。
{教授}ハンナが心配なんだな?
アントニーナいいえ。
 口ではそう言いつつも、黒紫色の瘴気が最も濃厚な場所に、
アントニーナの視線は向けられていた。
 私たちの救助対象――ロッサムの新任アドミニストレーター、ハンナは、
その孤城に囚われている。
{教授}何千何万というエントロピーが相手だ……
ソルとクロックが連れて行った偵察小隊を含めても、
たった数部隊では敵の前菜にもなりはしない。
アントニーナこんな時によく軽口が叩けますよね。味方の手が滑って、敵の渦に突き落とされないとも限らないのに。
{教授}フレンドリーファイアは御免だよ。
アントニーナだったらもったいぶってないで、策略を聞かせてもらえます?ソルとクロックを先に行かせて、私をここへ連れてきたのには、意味があるんでしょう?
{教授}数や力で救助に当たるわけじゃないからね。
ハンナとの最後の通信を覚えてるかい?
 
 
アントニーナそこまでの規模だとは……そうなると、オアシスの戦闘力を割くわけにも……
ハンナでも、こっちにはまだ手段がある。オアシスから精鋭部隊を派遣してほしいの。それと十分なだけのオペランドも……
ハンナそうすれば……後で…(ザー)…を起動し…(ザー)…
アントニーナハンナ?ハンナ!?
アントニーナくそっ、通信チャンネルがジャミングされた!
 
アントニーナハンナはオペランド支援と精鋭部隊を要請していた。後者はおそらく、身の安全を守るためでしょう。そうすれば、何かしらの手段が使えるとも言っていましたね。通信は途中で途切れてしまいましたが。
{教授}ああ。彼女の考えはまだはっきりしないが、その手段には期待できそうだ。
アントニーナ誰かさんと違って、ハンナは誇張などしませんからね。彼女の言葉は信用できます。
{教授}たぶんね……精鋭部隊はこうして向かってる。
残る問題は、いかにしてオペランドを送り届けるか。
{教授}私の考えはこうだ……
 私の推論を聞いているうちに、アントニーナの表情がみるみる曇りだす。
アントニーナ本気ですか?
{教授}こう見えて、判断を誤ることは滅多にないんだ。
アントニーナ……なるほど、判断に従いましょう。
 
 しばらくして、ソルとクロックたちが大部隊へと戻ってきた。
ソル教授、偵察から戻ったよ。
{教授}おかえり。どうだった、何かわかったか?
クロック悪い知らせしかないけどね。
クロックNullエリア、だだっ広いから、敵の偵察範囲さえ避けてきゃいいと思ってたのに――
クロックさすがに多すぎやろがい!!コミックフェアですらこんなに混雑してないよ!?
 それを聞いて、アントニーナは私をひと目見た。
 私はそれに笑顔で応える。
アントニーナは口をとがらせて視線を戻し、クロックの話の続きを聞いた。
クロックあたしが引きこもってた間に、なんでこんなことになっちゃってるわけ?
クロックこんなん、どう考えても異常っしょ。前はエントロピーなんかマグラシアにいなかったのに。
アントニーナクロックさんが寝ている間に、エントロピーとは数回遭遇していますけど、ここまで大規模な群れは私たちも初めてです。
{教授}確かに。今回の襲撃はどう見ても尋常じゃない。
エントロピー自体は珍しくもないが、こういった戦いは私たちにとって未知数だ。
クロック前の戦闘記録から、エントロピーが増えた原因とかわかんないのかな?
 
{教授}最初はオアシス、次にソースコードを得るために訪れたピエリデス。
ピエリデスは陥落し、そこのアドミニストレーターだったオディールは
完全にエントロピー化している。
アントニーナピエリデスの襲撃は秘密裏に行われ、浄化者すらそれを知らなかった。
記録にあった中位浄化者の感染はそのせいです。
{教授}ウィズダムだね……そして次はコプリーだ。
アドミニストレーターのタラナムは、海底で密かにエントロピーの実験をしていた。
{教授}しかも、浄化者はまたしても情報をつかんでいなかった。
私たちからの報告でようやく事態に気づいたんだ。
 
ソルそれから、この間のバーバンクでの出来事も……
 
{教授}トレーダーであるランコが自身の立場を利用して、
エントロピーウイルスをセクターに持ち込んだ。
ソルあたしたちがすぐに気づいたから、感染が広がらずに済んだんだ。
 
{教授}ああ。これまでのエントロピーによる被害は、始まりはどれも小規模だった。
この規模のエントロピーが突然出現した記録はない。
クロックえ、なんで突然ってわかんの?今までみたいに、こっそり増えてたのかもしんないよ。
クロック誰も知らないうちにセクターに忍び込んで、バレないように繁殖してた可能性もあるよね?
クロックほら、「Gを1匹見かけたら、30匹はいると思え」ってよく言うじゃん。
ソルその例え、背筋がゾッとするからやめて……
ソルってなわけだから、敵に気づかれないように潜り込むのはまず無理だね。
ソルでも、正面から突っ込むってなると……
 私は休憩所を見渡した。
困難な戦いをいくつもくぐり抜けてきた戦闘エージェントたちは、
まだ座って休憩を取っている。
ソルあたしらが見る限りでは、強行突破できる可能性はないに等しいね。
{教授}となると、方法は一つ。
アントニーナ……
{教授}君たちもハンナからの通信記録を聞いてるだろう?
彼女はその時、とある手段が使えると言っていた。
{教授}その後、キュクロプスのオリヴィアと連絡を取ったんだが、
そのプランがなんなのか、大体の予想はついたよ。
アントニーナ勝負を「そのプラン」に賭けようというんですね?私は異論ありません。
{教授}逆だよ、これは賭けじゃない。
クロックまどろっこしいなぁ、なんなのかはっきり言ってよ。
{教授}とにかく、私についてくればわかるよ。
まずロッサムとの通信を回復させよう。
それを終えたら、通信が邪魔されない場所を見つけるんだ。
{教授}そうすれば、お城に囚われたお姫様から、知恵を拝借できるはずだ。