| ロッサムセクターから1km離れた場所、通信ステーション前。 | |||
| ペルシカ | ……以上が、現在の戦況です。手強い戦いですが、オアシスが攻め落とされる危険性は今のところありません。 | ||
|---|---|---|---|
| {教授} | わかった。よくやった、ペルシカ。 | ||
| ペルシカ | そちらは順調ですか? | ||
| ペルシカの問いかけを聞いて、私は通信ステーションを覆う一面の黒紫色を見た。 | |||
| {教授} | ロッサムセクターまであと1km程度だ。 ソルとクロックが偵察を行ってる。 | ||
| ペルシカ | …… | ||
| あえて話題を逸した私の意図を察してか、 ペルシカは通信の向こうで疲労に満ちた溜息をついた。 | |||
| ペルシカ | 教授がお戻りになるまで、オアシスは戦い続けます。 | ||
| ペルシカ | ご自身の安全にはくれぐれもお気をつけて。それが最も重要なのですから。 | ||
| ピッ―― | |||
| アントニーナ | どうでしたか? | ||
| (選択) | 1.オアシスは今のところ安全のようだ。 | A | |
| 2.君も聞いてたじゃないか? | B | ||
| B | アントニーナ | ……誰かさんのように、盗み聞きする習慣はありませんから。 | |
| {教授} | 冗談だよ、オアシスのほうは一安心だな。 | A | |
| A | アントニーナ | それなら良かった。 | |
| アントニーナ | こちらの状況をあえて伝えなかったのは、どうかと思いますけど。 | ||
| {教授} | 本拠地の安全が最優先だからね。 増援を要請するほどの事態にはなってないし。 | ||
| アントニーナ | ……本気でそう思ってるんです? | ||
| アントニーナ | ロッサムとの通信ルートすら修理できてないのに、すでに5回もエントロピーとの遭遇戦を強いられているんですよ。 | ||
| {教授} | 残ったエージェントの数は? | ||
| アントニーナ | 85%、先が思いやられる数字ですね。 | ||
| アントニーナ | 第一小隊は2名、第二小隊は1名、偵察小隊は3名を失っています。オアシスでリセットされるとは言っても…… | ||
| {教授} | アントニーナ。 | ||
| 私はアントニーナの肩を叩いた。 彼女は深呼吸して、私の手を振り払う。 | |||
| アントニーナ | 私は至って冷静です、無用な懸念は引っ込めてもらえます? | ||
| アントニーナ | 認めたくはありませんが、5回の遭遇戦を経てこれだけの数が無事だったのは、その身分に似つかわしくない戦闘指揮のおかげですよ…… | ||
| アントニーナ | ですがこれ以上、幸運が続くとも思えません。 | ||
| アントニーナが構築した仮設休憩所の周囲には、 エントロピーの痕跡がそこかしこに見られた。 | |||
| やや遠くでは、怪物たちが蠢きながらあたりを徘徊している。 移動には不向きなはずのNullエリアでさえ、今や一面が紫色の海に染まっていた。 | |||
| アントニーナ | もともと、Nullエリアはオペランドが極めて少ないんです。ところが、エントロピー液をあちこちにばら撒かれたせいで、今や地形が形成されつつある。 | ||
| {教授} | エントロピーはオペランドが主食だろう。 Nullエリアの造成なんかに、体液を割いてどうするつもりだ。 | ||
| アントニーナ | それについては、一考の価値がありますね。 | ||
| アントニーナ | ですが、エントロピー学者を目指す前に、ロッサム側の通信ルートを速やかに修復しなくては。その後でセクター内へと通じる道を探します。 | ||
| {教授} | ハンナが心配なんだな? | ||
| アントニーナ | いいえ。 | ||
| 口ではそう言いつつも、黒紫色の瘴気が最も濃厚な場所に、 アントニーナの視線は向けられていた。 | |||
| 私たちの救助対象――ロッサムの新任アドミニストレーター、ハンナは、 その孤城に囚われている。 | |||
| {教授} | 何千何万というエントロピーが相手だ…… ソルとクロックが連れて行った偵察小隊を含めても、 たった数部隊では敵の前菜にもなりはしない。 | ||
| アントニーナ | こんな時によく軽口が叩けますよね。味方の手が滑って、敵の渦に突き落とされないとも限らないのに。 | ||
| {教授} | フレンドリーファイアは御免だよ。 | ||
| アントニーナ | だったらもったいぶってないで、策略を聞かせてもらえます?ソルとクロックを先に行かせて、私をここへ連れてきたのには、意味があるんでしょう? | ||
| {教授} | 数や力で救助に当たるわけじゃないからね。 ハンナとの最後の通信を覚えてるかい? | ||
| アントニーナ | そこまでの規模だとは……そうなると、オアシスの戦闘力を割くわけにも…… | ||
| ハンナ | でも、こっちにはまだ手段がある。オアシスから精鋭部隊を派遣してほしいの。それと十分なだけのオペランドも…… | ||
| ハンナ | そうすれば……後で…(ザー)…を起動し…(ザー)… | ||
| アントニーナ | ハンナ?ハンナ!? | ||
| アントニーナ | くそっ、通信チャンネルがジャミングされた! | ||
| アントニーナ | ハンナはオペランド支援と精鋭部隊を要請していた。後者はおそらく、身の安全を守るためでしょう。そうすれば、何かしらの手段が使えるとも言っていましたね。通信は途中で途切れてしまいましたが。 | ||
| {教授} | ああ。彼女の考えはまだはっきりしないが、その手段には期待できそうだ。 | ||
| アントニーナ | 誰かさんと違って、ハンナは誇張などしませんからね。彼女の言葉は信用できます。 | ||
| {教授} | たぶんね……精鋭部隊はこうして向かってる。 残る問題は、いかにしてオペランドを送り届けるか。 | ||
| {教授} | 私の考えはこうだ…… | ||
| 私の推論を聞いているうちに、アントニーナの表情がみるみる曇りだす。 | |||
| アントニーナ | 本気ですか? | ||
| {教授} | こう見えて、判断を誤ることは滅多にないんだ。 | ||
| アントニーナ | ……なるほど、判断に従いましょう。 | ||
| しばらくして、ソルとクロックたちが大部隊へと戻ってきた。 | |||
| ソル | 教授、偵察から戻ったよ。 | ||
| {教授} | おかえり。どうだった、何かわかったか? | ||
| クロック | 悪い知らせしかないけどね。 | ||
| クロック | Nullエリア、だだっ広いから、敵の偵察範囲さえ避けてきゃいいと思ってたのに―― | ||
| クロック | さすがに多すぎやろがい!!コミックフェアですらこんなに混雑してないよ!? | ||
| それを聞いて、アントニーナは私をひと目見た。 | |||
| 私はそれに笑顔で応える。 アントニーナは口をとがらせて視線を戻し、クロックの話の続きを聞いた。 | |||
| クロック | あたしが引きこもってた間に、なんでこんなことになっちゃってるわけ? | ||
| クロック | こんなん、どう考えても異常っしょ。前はエントロピーなんかマグラシアにいなかったのに。 | ||
| アントニーナ | クロックさんが寝ている間に、エントロピーとは数回遭遇していますけど、ここまで大規模な群れは私たちも初めてです。 | ||
| {教授} | 確かに。今回の襲撃はどう見ても尋常じゃない。 エントロピー自体は珍しくもないが、こういった戦いは私たちにとって未知数だ。 | ||
| クロック | 前の戦闘記録から、エントロピーが増えた原因とかわかんないのかな? | ||
| {教授} | 最初はオアシス、次にソースコードを得るために訪れたピエリデス。 ピエリデスは陥落し、そこのアドミニストレーターだったオディールは 完全にエントロピー化している。 | ||
| アントニーナ | ピエリデスの襲撃は秘密裏に行われ、浄化者すらそれを知らなかった。 記録にあった中位浄化者の感染はそのせいです。 | ||
| {教授} | ウィズダムだね……そして次はコプリーだ。 アドミニストレーターのタラナムは、海底で密かにエントロピーの実験をしていた。 | ||
| {教授} | しかも、浄化者はまたしても情報をつかんでいなかった。 私たちからの報告でようやく事態に気づいたんだ。 | ||
| ソル | それから、この間のバーバンクでの出来事も…… | ||
| {教授} | トレーダーであるランコが自身の立場を利用して、 エントロピーウイルスをセクターに持ち込んだ。 | ||
| ソル | あたしたちがすぐに気づいたから、感染が広がらずに済んだんだ。 | ||
| {教授} | ああ。これまでのエントロピーによる被害は、始まりはどれも小規模だった。 この規模のエントロピーが突然出現した記録はない。 | ||
| クロック | え、なんで突然ってわかんの?今までみたいに、こっそり増えてたのかもしんないよ。 | ||
| クロック | 誰も知らないうちにセクターに忍び込んで、バレないように繁殖してた可能性もあるよね? | ||
| クロック | ほら、「Gを1匹見かけたら、30匹はいると思え」ってよく言うじゃん。 | ||
| ソル | その例え、背筋がゾッとするからやめて…… | ||
| ソル | ってなわけだから、敵に気づかれないように潜り込むのはまず無理だね。 | ||
| ソル | でも、正面から突っ込むってなると…… | ||
| 私は休憩所を見渡した。 困難な戦いをいくつもくぐり抜けてきた戦闘エージェントたちは、 まだ座って休憩を取っている。 | |||
| ソル | あたしらが見る限りでは、強行突破できる可能性はないに等しいね。 | ||
| {教授} | となると、方法は一つ。 | ||
| アントニーナ | …… | ||
| {教授} | 君たちもハンナからの通信記録を聞いてるだろう? 彼女はその時、とある手段が使えると言っていた。 | ||
| {教授} | その後、キュクロプスのオリヴィアと連絡を取ったんだが、 そのプランがなんなのか、大体の予想はついたよ。 | ||
| アントニーナ | 勝負を「そのプラン」に賭けようというんですね?私は異論ありません。 | ||
| {教授} | 逆だよ、これは賭けじゃない。 | ||
| クロック | まどろっこしいなぁ、なんなのかはっきり言ってよ。 | ||
| {教授} | とにかく、私についてくればわかるよ。 まずロッサムとの通信を回復させよう。 それを終えたら、通信が邪魔されない場所を見つけるんだ。 | ||
| {教授} | そうすれば、お城に囚われたお姫様から、知恵を拝借できるはずだ。 |
