| ロッサムセクター、アドミンセンター付近、臨時避難所。 | |||
| クロック | ソル、チューリング、準備は? | ||
|---|---|---|---|
| ソル | うん、バッチリ! | ||
| チューリング | いつでも出発できるわ。 | ||
| クロック | オッケー、ハンナの部隊があの道路を抜けてから動いて。敵に見つからないように、建物の影に沿って移動してよ。 | ||
| ソル | 了解。今日はやけに指示が細かいじゃん? | ||
| クロック | 『武装機兵』の超鉄板作戦をこの手で直に再現できんだよ、こんな貴重なチャンス、フイにしてたまるかっつの…… | ||
| ソル | 何言ってんのかサッパリだけど、安心しなって。あたしにだって勝手はわかるからさ。 | ||
| ソルはおおらかに笑って言うと、ハンナのほうを向いた。 | |||
| ソル | ハンナは?準備はいい? | ||
| ハンナ | はい。先ほどロッサムのエージェントに、戦闘エージェントの皆さんに、簡単な治療を施させました。 | ||
| ハンナ | それと、ディラックの修復と最適化をある程度行っています。クロックさん、機体のチューニングは必要ですか? | ||
| クロック | えっ、あ、大丈夫……ありがとう。仕事、はやいね…… | ||
| ソル | あはは、メカニックが形無し! | ||
| クロック | チッ……どうせあたしゃリーダーに不向きの根暗オタクだよ…… | ||
| クロック | ゴホン……えーっと、なんだ、その……とにかく、最終的な作戦内容をもう一回確認するよ。 | ||
| クロック | 大部隊はハンナを連れて、敵を陽動しつつレールガンに向かう――つまり、データセンターとは真逆の方向にエントロピーどもをおびき出すわけ。 | ||
| クロック | ソルとチューリングはその隙に、戦闘エージェントとデータセンターに向かって。 | ||
| クロック | エントロピーが大部隊に追いつきそうになったら、ディラックで敵に奇襲をかけて一網打尽にする。その後は最初の計画通り。問題ないね? | ||
| 全員 | 了解! | ||
| しばらくして、ハンナを中心に据えた大部隊が砲台へと出発し、 大通りの上を堂々と駆けていった。 | |||
| エントロピー | ギッ……ギギ……!! | ||
| ハンナ | エントロピーの群れが集まってる……こっちを追ってきました! | ||
| クロック | 落ち着いてハンナ、計画通りだよ。あたしは裏の通りから向かってる、敵との距離を随時報告して。 | ||
| ハンナ | 私は十分落ち着いてます。現在の距離は約200mほど、スピードはあちらのほうがやや優勢ですね。 | ||
| クロック | オッケー、指定のポイントに群れが収まるよう誘導して。 | ||
| クロック | ディラックの予熱完了、いつでも出れるよ。あの看板のとこで待機してるから。 | ||
| ハンナ | わかりました。 | ||
| クロックはディラックを操縦して、とある建物の陰に身を隠し、その時を待った。 | |||
| ハンナ | 部隊が予定エリアを通過しました、敵との距離約130m! | ||
| クロック | 見えた!そのまま敵に気づかれないよう走れ! | ||
| ハンナ | 敵の群れが予定エリアに近づいています! | ||
| クロック | 来た来た来たァァァーーーッ!! | ||
| クロックの砲口が前方へと向けられる。 そして、エントロピーの群れが予定したポイントへ差し掛かろうという時…… | |||
| ??? | 止まって。 | ||
| クロック&ハンナ | !? | ||
| ??? | 消し幕、それに狂言……奇妙だわ。 | ||
| ??? | 退がりなさい…… | ||
| ハンナ | あれは……上位エントロピー!?クロックさん、プランBです!! | ||
| クロック | もうやってる! | ||
| 轟音とともに建物から飛び出してきた機兵が、銃口を掲げ、敵を掃射し始めた。 | |||
| ハンナ | 総員、Uターン!クロックさんの援護を!! | ||
| ??? | これより……即興パフォーマンスを始めるわ。 | ||
| 待ち伏せに遭遇したにも関わらず、 異変を事前に察したエントロピーの群れは素早く陣形を整え、 大通りの両側へと散らばった。 | |||
| ハンナ | えっ、違う……クロックさん、方向が違います!! | ||
| ??? | これは陽動ね、真の主役は……舞台のもう一方にいる。 | ||
| エントロピーの群れが方向転換し始める―― それも、ハンナ率いる大部隊とは真逆の方向へ。 その視線の先には、ソルとチューリングの小隊が姿を消した曲がり角があった。 | |||
| ??? | スポットライトを、切り替えなくちゃ…… | ||
| ハンナ | 敵がデータセンターのほうに向かっています!! | ||
| クロック | チッ……ぜんぶ見抜かれてたか…… | ||
| ハンナ | チューリングを追わせるわけには……! | ||
| クロック | こうなったら、これでもくらえ――フルチャージ・インパルス爆撃!! | ||
| 機兵が前方へと突進し、こちらへ背を向けるエントロピーの群れに必殺技を浴びせた。 | |||
| ??? | 損傷がひどい……役者の数が減ってる…… | ||
| ??? | 競演は不利、避けなきゃ…… | ||
| クロック | ああっ……!! | ||
| ハンナ | 残ったエントロピーが路地裏に逃げていく……! | ||
| クロック | だめだ……廃墟とガレキだらけでディラックじゃ入れない……どうしよう…… | ||
| クロック | ハンナ、ここ爆破していい!? | ||
| ハンナ | ダメです!このあたり一帯の建物はすべて構造が繋がっています!万が一ソルさんたちに危険が及んだら……! | ||
| クロック | エントロピーのヤツ、まさかそこまで考えて……!? | ||
| クロックは裏路地をゆくエントロピーのボスを、射程内に捕捉しようとした。 | |||
| ??? | 補給切断……全力進攻。 | ||
| ??? | 演目を……次の幕へと移行させましょう。 | ||
| クロック | くっそぉ…… | ||
| 敵は狭い廃墟の隙間を器用に通り抜け、やがてクロックの視界から消えた。 | |||
| ハンナが戦闘エージェントを引き連れて、エントロピーの消えたほうへと走り出した。 だが、前方にあったディラックの手に拾い上げられる。 | |||
| ハンナ | クロックさん!降ろしてください!チューリングが危険です、はやく追いかけなくちゃ! | ||
| ハンナが必死に抗うも、ディラックは微動だにしない。 | |||
| クロック | 落ちついて、ハンナ!あっちは上位エントロピーだ!ディラックなしじゃ、あたしらには刃が立たない! | ||
| ハンナ | 私、私は……ふぅー……ふぅー…… | ||
| クロック | そう、その調子……ハンナ、今は落ち着いて。 | ||
| ハンナ | ……わかり、ました。 | ||
| 冷静になったハンナは、ディラックの手のひらに座った。 | |||
| ハンナ | このままじゃ、チューリングたちが敵に包囲されてしまう…… | ||
| クロック | あっちにも戦闘エージェントがついてる。数は少ないけど、みんな精鋭だよ。オペランドの解凍が終わりさえすれば、レールガンでここを更地にできる。 | ||
| クロック | エントロピーのヤツら、セクターの道にやたら詳しいし、こっちの計画もお見通しときた。しかも、建物の構造まで把握してる……ハンナ、心当たりとかないの? | ||
| ハンナ | わかりません……外部の者がロッサムの構造をここまで把握できるとは考えられません。まさか、私が造り出される前に……? | ||
| クロック | そっか……仕方ない、こうなったらソルたちを信じるしかないね。こっちは早く…… | ||
| ハンナ | 私たちは砲台へと急ぎましょう。レールガンの制御コンソールにたどり着ければ、こちらの戦力の大部分を彼女たちの支援に回せます。 | ||
| クロック | どうなってんだよなんでいっつもハンナに台詞ブン取られてんの?人に話かぶせられる呪いにでもかかってんのか?あたしだってカッコいい台詞言ってみたいのにひどすぎない……? | ||
| ハンナ | クロックさん、行きましょう……クロックさん? | ||
| クロック | わかったってば。その前に…… | ||
| クロックはコックピットのスクリーンをタップして、通信画面を開いた。 | |||
| クロック | きょうじゅに一言教えたげなきゃ。 | ||
| クロック | きょうじゅ、こちらクロック。 今、レールガンの砲台に向かってるとこ。 | ||
| クロック | さっき、上位エントロピーっぽいヤツに会った。 映像を送るね…… |
