臨界爆震 PART.11 疑雲

Last-modified: 2025-02-05 (水) 01:25:56

ロッサムセクター、アドミンセンター付近、臨時避難所。
クロックソル、チューリング、準備は?
ソルうん、バッチリ!
チューリングいつでも出発できるわ。
クロックオッケー、ハンナの部隊があの道路を抜けてから動いて。敵に見つからないように、建物の影に沿って移動してよ。
ソル了解。今日はやけに指示が細かいじゃん?
クロック『武装機兵』の超鉄板作戦をこの手で直に再現できんだよ、こんな貴重なチャンス、フイにしてたまるかっつの……
ソル何言ってんのかサッパリだけど、安心しなって。あたしにだって勝手はわかるからさ。
 ソルはおおらかに笑って言うと、ハンナのほうを向いた。
ソルハンナは?準備はいい?
ハンナはい。先ほどロッサムのエージェントに、戦闘エージェントの皆さんに、簡単な治療を施させました。
ハンナそれと、ディラックの修復と最適化をある程度行っています。クロックさん、機体のチューニングは必要ですか?
クロックえっ、あ、大丈夫……ありがとう。仕事、はやいね……
ソルあはは、メカニックが形無し!
クロックチッ……どうせあたしゃリーダーに不向きの根暗オタクだよ……
クロックゴホン……えーっと、なんだ、その……とにかく、最終的な作戦内容をもう一回確認するよ。
クロック大部隊はハンナを連れて、敵を陽動しつつレールガンに向かう――つまり、データセンターとは真逆の方向にエントロピーどもをおびき出すわけ。
クロックソルとチューリングはその隙に、戦闘エージェントとデータセンターに向かって。
クロックエントロピーが大部隊に追いつきそうになったら、ディラックで敵に奇襲をかけて一網打尽にする。その後は最初の計画通り。問題ないね?
全員了解!
 
 しばらくして、ハンナを中心に据えた大部隊が砲台へと出発し、
大通りの上を堂々と駆けていった。
エントロピーギッ……ギギ……!!
ハンナエントロピーの群れが集まってる……こっちを追ってきました!
クロック落ち着いてハンナ、計画通りだよ。あたしは裏の通りから向かってる、敵との距離を随時報告して。
ハンナ私は十分落ち着いてます。現在の距離は約200mほど、スピードはあちらのほうがやや優勢ですね。
クロックオッケー、指定のポイントに群れが収まるよう誘導して。
クロックディラックの予熱完了、いつでも出れるよ。あの看板のとこで待機してるから。
ハンナわかりました。
 クロックはディラックを操縦して、とある建物の陰に身を隠し、その時を待った。
ハンナ部隊が予定エリアを通過しました、敵との距離約130m!
クロック見えた!そのまま敵に気づかれないよう走れ!
ハンナ敵の群れが予定エリアに近づいています!
クロック来た来た来たァァァーーーッ!!
 クロックの砲口が前方へと向けられる。
そして、エントロピーの群れが予定したポイントへ差し掛かろうという時……
???止まって。
クロック&ハンナ!?
???消し幕、それに狂言……奇妙だわ。
???退がりなさい……
ハンナあれは……上位エントロピー!?クロックさん、プランBです!!
クロックもうやってる!
 轟音とともに建物から飛び出してきた機兵が、銃口を掲げ、敵を掃射し始めた。
ハンナ総員、Uターン!クロックさんの援護を!!
???これより……即興パフォーマンスを始めるわ。
 待ち伏せに遭遇したにも関わらず、
異変を事前に察したエントロピーの群れは素早く陣形を整え、
大通りの両側へと散らばった。
ハンナえっ、違う……クロックさん、方向が違います!!
???これは陽動ね、真の主役は……舞台のもう一方にいる。
 エントロピーの群れが方向転換し始める――
それも、ハンナ率いる大部隊とは真逆の方向へ。
その視線の先には、ソルとチューリングの小隊が姿を消した曲がり角があった。
???スポットライトを、切り替えなくちゃ……
ハンナ敵がデータセンターのほうに向かっています!!
クロックチッ……ぜんぶ見抜かれてたか……
ハンナチューリングを追わせるわけには……!
クロックこうなったら、これでもくらえ――フルチャージ・インパルス爆撃!!
 機兵が前方へと突進し、こちらへ背を向けるエントロピーの群れに必殺技を浴びせた。
???損傷がひどい……役者の数が減ってる……
???競演は不利、避けなきゃ……
クロックああっ……!!
ハンナ残ったエントロピーが路地裏に逃げていく……!
クロックだめだ……廃墟とガレキだらけでディラックじゃ入れない……どうしよう……
クロックハンナ、ここ爆破していい!?
ハンナダメです!このあたり一帯の建物はすべて構造が繋がっています!万が一ソルさんたちに危険が及んだら……!
クロックエントロピーのヤツ、まさかそこまで考えて……!?
 クロックは裏路地をゆくエントロピーのボスを、射程内に捕捉しようとした。
???補給切断……全力進攻。
???演目を……次の幕へと移行させましょう。
クロックくっそぉ……
 敵は狭い廃墟の隙間を器用に通り抜け、やがてクロックの視界から消えた。
 ハンナが戦闘エージェントを引き連れて、エントロピーの消えたほうへと走り出した。
だが、前方にあったディラックの手に拾い上げられる。
ハンナクロックさん!降ろしてください!チューリングが危険です、はやく追いかけなくちゃ!
 ハンナが必死に抗うも、ディラックは微動だにしない。
クロック落ちついて、ハンナ!あっちは上位エントロピーだ!ディラックなしじゃ、あたしらには刃が立たない!
ハンナ私、私は……ふぅー……ふぅー……
クロックそう、その調子……ハンナ、今は落ち着いて。
ハンナ……わかり、ました。
 冷静になったハンナは、ディラックの手のひらに座った。
ハンナこのままじゃ、チューリングたちが敵に包囲されてしまう……
クロックあっちにも戦闘エージェントがついてる。数は少ないけど、みんな精鋭だよ。オペランドの解凍が終わりさえすれば、レールガンでここを更地にできる。
クロックエントロピーのヤツら、セクターの道にやたら詳しいし、こっちの計画もお見通しときた。しかも、建物の構造まで把握してる……ハンナ、心当たりとかないの?
ハンナわかりません……外部の者がロッサムの構造をここまで把握できるとは考えられません。まさか、私が造り出される前に……?
クロックそっか……仕方ない、こうなったらソルたちを信じるしかないね。こっちは早く……
ハンナ私たちは砲台へと急ぎましょう。レールガンの制御コンソールにたどり着ければ、こちらの戦力の大部分を彼女たちの支援に回せます。
クロックどうなってんだよなんでいっつもハンナに台詞ブン取られてんの?人に話かぶせられる呪いにでもかかってんのか?あたしだってカッコいい台詞言ってみたいのにひどすぎない……?
ハンナクロックさん、行きましょう……クロックさん?
クロックわかったってば。その前に……
 クロックはコックピットのスクリーンをタップして、通信画面を開いた。
クロックきょうじゅに一言教えたげなきゃ。
 
クロックきょうじゅ、こちらクロック。
今、レールガンの砲台に向かってるとこ。
クロックさっき、上位エントロピーっぽいヤツに会った。
映像を送るね……