臨界爆震 PART.15 仲間

Last-modified: 2025-02-05 (水) 01:32:25

ロッサムセクター、高密度オペランドレールガン制御室前。
クロックあらかた片付いたかな。
戦闘エージェントはい。ロッサムのエージェントによるスキャンでも、周囲に敵影は見られませんでした。
クロックりょーかい……みんなはここで警戒を維持、あたしとハンナが中に入る。
 バンッ!
 新しく建設されたはずの建物は、敵の攻撃によりあちこちが変形していた。
半開きになった扉を、クロックが勢いよく蹴り開ける。
クロックようやく最終兵器のお出ましだぜ!!
クロックこれが伝説とうたわれたレールガンの制御……室……?
クロックな、なにここ……余剰データだらけじゃん!?ゴホッ、ゴホッ……掃除しなよ!?
ハンナなにせ、手動での制御は初めてですから。大目に見てください。
クロックゴホゴホ……思った通り、エントロピーの攻撃であちこち損傷してる……
クロックえーっと……データタブはどこ?ジェネレーターは?
クロックあれっ、ジェネレーターがない……このパーツなに?見たことないんだけど……
ハンナクロックさん、私が手動で整備します。
クロックあ……ヤバいつい興奮しちゃって素がまろびでちゃったテヘペロおこちゃまに注意されるとかどんだけ?ヤバい恥ずかしすぎて死ぬ今すぐ死にたい誰かコロして誰かコロせ……
ハンナお気持ちはわかりますが、表に出ていてもらえますか?
ハンナこのレールガンは私の指示のもとで組み立てられました。キュクロプスの技術を基に、様々な新機能を付け加えています。整備できるのは、この世に私しかいません。
ハンナ教授が通信で言っていたように、オディールさえ倒せば、片割れのオデットは形を保っていられなくなる。そうすればチューリングたちは助かるんです。
クロックあ、あたしもなにか手伝えるかも……
ハンナこの戦いを終えたら、メカニズムをゆっくり教えてあげますから。
ハンナ今はとにかく、素早く確実に砲台が撃てるようにしないと!
クロックちぇっ、わかったよ……なら、あたしはどうすれば?
ハンナクロックさんにできることはなさそうです……
ハンナここは私が引き受けますので、クロックさんはソルさんとの通信を続けてください。二人に連絡がつかないのは心配です……
クロックうん……さっきからかけてるんだけど、なんでだか繋がらなくて。
クロックそれじゃ、その……外で、ソルに連絡してるね……
ハンナよろしくお願いします。
 クロックはトボトボと制御室から出ていった。
ハンナはすぐさま整備に取りかかる。
ハンナまずはコンソールを起動しないと……
システム音声【アドミニストレーター権限を確認、コンソールを起動します】
ハンナはやく、はやく……チューリングがもうオペランドを送ってきてるかも……
システム音声【コンソール起動完了、データを確認中……受信できるデータはありません】
ハンナまだ送られてきてないか……今のうちに制御システムを起動して……
ハンナうわっ、設備がめちゃくちゃ、思ったよりも大変そう……
ハンナまずはコードをもとに戻して……
 ドォン!!
 突如鳴った轟音が、彼女の思考を遮った。
突然の揺れにハンナはバランスを崩し、その場に尻もちをついた。
ハンナきゃっ!
ハンナクロックさん!何があったんです!?
クロックエントロピーだよ、まっすぐこっちを狙ってきた!
クロック数自体は少ないけど、砲撃手が紛れ込んでる!流れ弾が砲台に当たったらごめん!
ハンナわかりました、外は頼みます!こちらも整備を急ぎます!
ハンナ教授が座標を知らせてくる前に、なんとしてもレールガンを撃てるようにしなきゃ……でないと、何もかも無駄になってしまう!
クロックわかってる……頼んだよ、ハンナ!
 クロックがそう言い終える前に、ハンナはすでに通信を切っていた。
ハンナそう、頼れるのは自分だけ……
 
チューリング……エージェントに聞いたの。私がリセットされたのは、この身を犠牲にして、一般エージェントだったあなたを守ったからだ、って。
ハンナ……
チューリングもしそれが本当なら、きっと優先順位の判断ミスが起きたせいよね?だから私は権限を剥奪されて、あなたがアドミニストレーターになった。でも、そのエージェントはそうじゃないっていうの……
 
ハンナ……チューリングは、いつも正しかった。
ハンナ証明するんだ……チューリングの犠牲は、ロッサムを私に託したことは、なに一つ間違ってなかったって!
 
ハンナここも壊れてる……それに予備リアクターの動力が足りないのかな……
ハンナバレルに熱が……どうして?まだ起動もしてないのに……
 エラーを知らせるウィンドウがいくつかポップアップした。
ハンナはそれを一つ一つ確認したが、多くの原因が見当たらない。
ハンナこうなったら初期化するしか……動力システム、リセット開始!
ハンナリセット完了、システム稼働失敗、エラーコード……どうして……!?
 ピピピッ!
 通信機が鳴り続けるのをよそに、ハンナは手を動かし続けている。
ハンナどうしてなの……元の設定を復元したはずなのに……
 ドォンッ!!!
ハンナうわぁっ!
システム音声【警告、右側外殻に損傷を確認】
【警告、右側外殻に損傷を確認】
システム音声【速やかに修復してください……】
ハンナ銃身が……!また砲撃されたら今度こそおしまいだ!
ハンナ考えなくちゃ、何か、何か方法は……私はロッサムのアドミニストレーターなんだから……私が方法を考えないと……
ハンナそうだ!まず銃身を直して、オペランドで障壁を作れば……
 ハンナは焦っていた。彼女はとっさに計画を思いつくと、
外部へとつながる頭上のハッチを開けて、損傷した部位を確認しようとする。
 だが、ハッチから顔を覗かせた瞬間、黒紫色の砲弾がハンナめがけて飛んできた――
ハンナしまった……
 ドンッ!
ハンナ……
 オペランドの使用も間に合わず、ハンナは思わず両手で攻撃を防ごうとした。
だが、予想していた衝撃は訪れない。
 ハンナが目を見開くと、そこには巨大な機兵が立っていた。
無数の弾丸で流れ弾を次々と撃ち落とす。
ハンナク……クロックさん!
クロックハンナ、無理しないで。
 逆光の中、機兵のコックピットが開かれ、パイロットが中から下りてくる。
クロック自己紹介がまだだったな。スヴァローグ重工のトップエンジニア、ならびにオアシス製造局の責任者とは、他でもないこの私。
クロックそして今は――君のパートナーだ。
 ハンナは茫然とクロックに視線を向けたまま、レールガンの銃身へと上がった。
その時彼女はようやく、相手が自分よりも背が高かったことに気づく。
クロックの影に、ハンナはすっぽりと収まった。
 まるで大人だ……チューリングのような。
 
レールガンの制御室内。
クロック最後にこれを繋げて、と――いっちょあがり!
システム音声【……エネルギー供給正常、動力システム起動完了】
ハンナほ、本当に起動できた……どうして?砲台のメカニズムは知らないはずなのに……
クロックオペランドの圧縮は、正直やられたと思ったよ。いまだにどういう構造なのか理解できないし。
クロックけど、稼働できてたマシンの動力システムがダウンするのは、十中八九、機体の耐久上限に達しちゃってるからなんだよね。
ハンナでも、前はこんなこと……あ……!
クロック気づいた?そう、エントロピー液が原因。こうして拭き取れば、システムがより安定する。
クロックほんとは砲台の基礎をもっと固めて、表面をメッキでコーティングできたらいいんだけど……とりあえずは応急処置ね。
クロックエントロピーに襲撃されたら、また動力が落ちちゃうだろうけど、今はそんなこと言ってらんないし。
ハンナどうして思いつかなかったんだろう……ありがとうございます、クロックさん。本当に助かりました。
 クロックはポッチーの箱を取り出して、ハンナに一本差し出した。
クロックなんでもかんでも一人で背負わないでよ、お子サマなんだからさ。少しはあたしにもカッコつけさせて。
ハンナクロックさん……
 ハンナはポッチーを受け取り、黙って味わった。
システム音声【データセンターからオペランドの転送申請を受理しました】
ハンナあっ!チューリングだ!
クロックってことは、あっちも成功したんだ。
ハンナよかった……あとは教授から座標をもらうだけ!
クロックでもヘンだな、ソルとチューリングに連絡つかないなんて……
 ピピピッ。
クロックおっと、噂をすれば!ソル、そっちは……
???舞台が……幕を開けた。
クロック!?
ハンナソルさんじゃない!!
???私は、葬礼の語り手……名は、オデット。
 通信画面の向こうで、小さなブラックスワンが、終章の帳をそっとかき分けた。
 まずチューリングの姿がぼんやりと浮かび上がった。瞳は精彩を失っている。
次に、彼女の喉元に当てられた、黒紫色の鋭い羽根が目に入る。
そして、背後に浮かぶ少女の姿も。
ハンナ……チューリング!!!
 ハンナの叫び声を聞いて、チューリングが小さく抵抗した。
だがすぐにオデットに取り押さえられる。
 語り手は虚ろな視線を通信機に向けたまま、台詞を呟く。
オデットそちらの演目を……終わらせなさい。
オデットさもないと、彼女が……誰よりも先に、退場することになる。