臨界爆震 PART.4 餌

Last-modified: 2025-02-05 (水) 01:07:44

ロッサムセクター、外周。
ソル予定の座標に到達したよ、教授。
{教授}周囲の状況はどう?
ソルこの辺の敵もさっきの砲撃で一掃されてるね。遠くにまだいるけど、どれもエントロピー液になりかけてる。危険はなさそう。
クロックへへっ……ハンナの一撃もダテじゃないね。
ソルハンナたち、大丈夫かな……
(選択)1.きっと大丈夫よ。A
2.なんとも言えないね。B
A{教授}アドミンセンターの守りはどれも固いわ。
エントロピーを操るのが何者かはわからないけど、さっきの一撃は威嚇になったはずよ。
それにあと少しで、このオペランドを届けられる。
ソルだよね!後はフルパワー砲撃でいっちょあがり、ってね!C
B{教授}ハンナは身の安全と引き換えに、手持ちのオペランドを先ほどの一撃に割いてる。
彼女が稼いでくれた時間を無駄にはできないわ。
ソルと、とにかく、先を急ごう!C
Cソルにしても、教授は慎重だなぁ。陣形を組み直したかと思えば、あたしとクロックを先に偵察に向かわせるなんて。
ソル砲撃でキレイサッパリ無くなってるじゃん。エントロピーどころかエージェントも見当たらない。はやくセクターに入っちゃおうよ!
クロック同感。さすがにここまでやれば、しばらくは安泰っしょ。
クロックま、エントロピーが一斉に襲ってこないとは限らないけど……
戦闘エージェント教授!4時の方向からエントロピーが接近しています!
ソル……
{教授}さっきの陣形で目標地点へと前進、負傷者を優先して掩護!
ソル、クロック!一旦こちらへ戻って応戦を!
アントニーナチッ、なんて速度だ……
 アントニーナは休みなくキーボードを叩く傍ら、悔しげな表情で私を一瞥する。
{教授}わかってるわよ。「事前に陣形を整えておいてよかった」、そう言いたいのね?
アントニーナ……どうやら、あなたの推測に同意するしかなさそうです。とにかく、今はエントロピーをなんとかしましょう。
{教授}飛行型エントロピーの群れね。
アントニーナ、お願い。
アントニーナもしかして、私を使い勝手の良い助手かなにかだと思ってます……?
{教授}違うの?
アントニーナ……味方の指揮をお願いします、こちらは私が。
 
クロックまじサイアク……このエントロピーども、キリないよ!?
 次々と襲い来るエントロピーの群れが、波のように部隊をさらおうとする。
ソルは飛びかかってきた一匹のエントロピーを斬り伏せると、
負傷したエージェントたちを見て、無意識に顔をしかめた。
ソルこいつら、しつこすぎるだろ!!教授、このままじゃダメだ、負傷者が持たない!
{教授}チッ……この群れさえ撃退できれば……
アントニーナ私に方法があります、試す価値はあるかと。
{教授}アントニーナ?
さっきは後列にいたはずじゃ……
アントニーナ教授、失礼をば。
 私が反応できずにいると、突如凄まじい衝撃が私の背中に直撃した。
{教授}!?
 体が宙に舞い上がると同時に、ライトグリーンの暖かな流れが体を包み込んでゆく。
ソルとアントニーナの話し声が、瞬時に遠のいた。
ソルアンナ!?なにやってんだ!?
アントニーナ心配いりません。死にはしませんよ、ほら。
戦闘エージェントクロック隊長!エントロピーたちが方向を変えました!
クロック戦闘中によそ見するとはね!チャージ完了、ディラック!
クロックファイアーーッ!!
 
 しばらくして、少々くたびれた様子の私が、
最後尾にいた戦闘エージェントに連れられて、部隊の前列へと戻った。
私を出迎えるアントニーナがいやに嬉しそうだ。
アントニーナ大丈夫でしたか、教授?
{教授}ええ。あなたが戦闘エージェントを寄越してくれたおかげで、死なずに済んだ。
アントニーナそれはそれは、残念でしたね。
アントニーナアンナ、さっき勝手に手が動いちゃったんだけど、怒ってないよね?きょ~じゅ★
{教授}……あなたに任せた飛行型エントロピーの群れが、
どれだけ厄介だったかは理解したわ。
ソル教授、エントロピーは倒せたよ。予定してた座標で少し休もう。
{教授}損傷状況は?
クロック負傷者は増えてない。エントロピーどもがよそ見してる間に、ディラックとみんなでやっつけたから!
{教授}すぐに負傷者の治療を、周囲を警戒しておいて。
クロックうっす。
ソルだけど、アンナ、さっきはなんで……
 アントニーナが私を見た。
私は小さく頷く。
アントニーナ皆さん、私から話しておきたいことが。
アントニーナ先ほどの戦いでエントロピーが近づいてきた時、何かに気付きませんでしたか?
ソルあ~、あれね。クロックが喋ったとたん、エントロピーが襲ってきたの。しばらく任務に出てなかったから、この子が縁起でもないこと忘れてたよ……
アントニーナその事実に異論はありませんが、今回はどちらかといえば教授の責任ですね。
ソル教授?
(選択)1.エントロピーが私のシグネチャコードを所有してる。D
2.実は、私もエントロピーだったの。E
Dソルなにそれ、どういう意味……?F
Eアントニーナ冗談を言ってる場合ですか?F
F アントニーナは溜息をつくと、端末のスクリーンを指さした。
アントニーナハンナとの通信が繋がったとたん、エントロピーが襲ってきたのを覚えていますか?
 
 どこへ向かおうと、エントロピーの群れはしつこく私たちについてまわった。
先ほどまで目的もなく群れていただけのエントロピーが、今や意志を宿したかのように、
黒紫の無数の瞳で「私」を睨み、「私」へと迫ってきていた。
アントニーナダメです、数が多すぎる!味方の損傷が速い……!
ソルおかしいよ!さっきクロックと偵察した時は、こんなんじゃなかったのに!
アントニーナ上位エントロピーによる指揮かもしれない、信号を探ってみます!
 
クロックそうそれ。ソルとあたしが偵察した時は問題なかったのに。いきなりエントロピーが現れるんだもんな。
クロックでも、上位エントロピーの信号は見つかんなかったんでしょ?
アントニーナええ……
 
アントニーナそんな……ありえない……どうして……
{教授}落ち着いて、どうしたの?
アントニーナ上位エントロピーの信号が見つからない……どこを探しても!
アントニーナまさか、上位の制御を受けてない……?なら、なぜいきなり私たちを攻撃したんだ……!?
アントニーナわけがわからない……どうしてこうなる!?この肝心な時に!
 
アントニーナここに上位エントロピーの信号がないのは確かです。すなわち、下位エントロピーは上位エントロピーに制御されているわけじゃない。
アントニーナそれなのに、奴らの行動は規律が取れていた。何か理由があるに違いないんです。
ソル例えば、事前に誰かがエントロピーに命令を下したとか?
ソル……ちょ、ちょっと、そんな目で見ないでよ、アンナ。コプリーじゃ、デミウルゴスが地上のエントロピーをそうやって操ってたじゃん。
ソルさすがにあたしにだって予想はつくって。
アントニーナ……ええ、おそらくは。エントロピーの挙動からして、背後にいる何者かが私たちの誰か、もしくは複数名のシグネチャコードを手に入れ、「特定の目標を追撃する」命令を下した可能性が高いですね。
ソル「シグネチャコードを追撃しろ」、か……まるで獲物の臭いを追うハウンドみたいだ。
アントニーナあながち間違ってはいませんね。エントロピーにシグネチャコードを教えることは、野獣にある種の臭いを覚えさせるのに似ています。
アントニーナその臭いを持つターゲットが仰々しく通り過ぎれば、相手に見つかるのは当然でしょう。
クロックその「ターゲット」って……
アントニーナまさに灯台下暗し。
 クロックはアントニーナの視線を追って、私を見た。
私は肩をすくめてみせる。
{教授}アントニーナも立派なエントロピー学者ね。
ソル……ってことは、あたしとクロックを先に行かせたり、アンナがいきなり教授を後ろに放り投げたのも、エントロピーのターゲットが誰か確認するため……?
アントニーナ当の本人はとっくに目星がついていたようですけどね。先ほどのは単なる実証ですよ。
{教授}部隊を分けた直後のエントロピーの動きで、裏は取れてるはずよ。
あなたのは純粋な八つ当たりでしょ……
アントニーナターゲットが教授だとはっきりしたじゃありませんか。何か問題でも?
クロックでもさ、なんでエントロピーがきょうじゅのシグネチャコードを?
アントニーナターシャリレベルに入りさえすれば、誰にだって手に入れるチャンスはありますよ。
アントニーナこの仮説がすべて正しいとしたら……今回の黒幕は、教授のターシャリレベルへの侵入経験を持つ、中位以上のエントロピーということになります。
ソルターシャリレベル……まさか……
アントニーナそう、ピエリデスでの一件です……
 メンバーたちの脳裏に、再びオディールの姿が浮かび上がる。
ソルくっそぉ……!またあいつか!!
アントニーナこんな面倒な手段に出たのも、信号からの逆探知を防ぐためでしょう。いかにもあの女らしい手口です。
クロックきょうじゅを狙ってるってことは……近くに潜伏してる可能性が高いよね?
クロックふっふっふ……ちょうどいい。私とディラックも、きさまに会いたかったところだ――
戦闘エージェント教授!エントロピーの群れを検知しました!
{教授}総員、戦闘準備!
クロックへっ!?ほ、ほんとに出てきた……
クロックやばい、また囲まれたら……
ソルクロック!あんたは少し黙ってろ!おかげで敵に囲まれてんだけど!?
クロックなんであたしのせいになるわけ!?
 エージェントたちが一斉に攻撃し始めるも、エントロピーの攻勢は防げない。
負傷者は掩護を必要としている。私たちは窮地に陥った。
クロックなんでまた出てくんの!?
アントニーナなにせ、こちらには「三蔵法師」がいますから。
クロックこうなったら、ディラックのパワーで……
{教授}ダメよ、クロック!ロッサムへのオペランドはディラックに搭載されてる。
さっきの襲撃で機体をすでに損傷してるのよ、これ以上無理しないで!
ディラックが動けなくなったら、盾を失った私たちも、何もかもおしまいだわ!
{教授}相手は下位エントロピーよ、なんとかなる!
できるだけエネルギーを温存して!
クロックディラックのためを思ってくれんのはうれしいけどさ!だったらどうすんの!?
{教授}作戦通りに動こう!
 アントニーナは溜息をついて、再びキーボードに手をかけた。
{教授}ソル、先鋒部隊の半分をこちらに。
ソル了解!
{教授}よし。そうしたら、クロックと本隊を率いてロッサムに向かいなさい。
けして立ち止まっては駄目。
アントニーナまた孤高の英雄しぐさですか……
(選択)1.私を信じて。G
2.これが最も効率的な方法よ。G
G 私は高所に立ち、深呼吸をした。そして――
{教授}残りは私に続け!
戦闘エージェントはい!!!
 私はアントニーナと数名の戦闘エージェントを引き連れて、
ロッサムともオアシスともつかない第三の方向へと、がむしゃらに駆け出した。
 
 ベースコマンドだけで行動する下位エントロピーたちが、すぐに私たちの背後についた。
セクターの周囲にいた個体も、故意に、ないしは無意識にこちらへと近づいてくる。
私の撹乱により、敵の群れは散り散りになった。
クロックきょうじゅ!
アントニーナクロックさん、教授の言う通りにしましょう!ロッサムは頼みました!
 緑色の障壁が上空から降りてきて、私たちとクロック率いる本隊とを隔てた。
アントニーナ彼女の安全は私が守ります、死なせはしません。
 アントニーナの指先から緑色のオペランドが放たれ、
私に近づくエントロピーを次々と倒した。
クロックわかった、気をつけて!!
 クロックはそう言うと、ソルを追って本隊とともにロッサムへと向かっていった。
{教授}さてと……
アントニーナあなたの計画どおり、危険に陥りましたよ。これからどうするんです?
{教授}今、エントロピーのほとんどが11時の方向に集まってる。
ロッサムのある位置よ。
{教授}まずは2時方向にむかう、そこなら比較的安全でしょう。
アントニーナ何をしにいくんです?
{教授}ついてくればわかるよ。
アントニーナここには先鋒部隊の半分の人員しかいません、それも負傷者を連れている。
アントニーナあまり危険な行為に及ぶのはどうかと。
{教授}クロックたちなら、すぐにロッサムのレールガンを起動させられる。
私たちは、それまで持ちこたえればいい。
アントニーナ……なるほど、理解しました。
アントニーナ負傷者は障壁の維持を手伝ってください、残りのメンバーで道を切り開きます。
{教授}頼んだわよ、アントニーナ!