| データセンター、緊急避難通路。 | |||
| 度重なる爆撃により、データセンターは崩壊に瀕していた。 かろうじて建物の形状を保っているうちに、 チューリングは瓦礫の降り注ぐ中をがむしゃらに走った。 | |||
| チューリング | もうすぐよ……もうすぐ、ここから出られる……! | ||
| 外の光が徐々に近づいてくる。 | |||
| チューリング | あと少し…… | ||
| ピピピッ! | |||
| チューリング | 通信?……ソルさんからだわ! | ||
| チューリング | よかった!ソルさん、無事だったのね! | ||
| 形容しがたい喜びが、チューリングの胸に膨らむ。 彼女は走りながら通信を受けた。 | |||
| チューリング | ソルさん、もう緊急通路の出口に着くわ。すぐに―― | ||
| 通信機からかすかな応答が鳴った。 チューリングの声と足がにわかに止まる。 | |||
| 彼女はとっさに通信を切って、端末を後ろ手に隠した。 近づいてくるエントロピー液の粘ついた音が、送信音を打ち消す。 | |||
| チューリング | ……あなた、ソルさんじゃないわね。 | ||
| ??? | バレちゃった……思ったより早かったな。 | ||
| ??? | やっぱり……秘密の出口、隠してたのね。 | ||
| ??? | 勇者の仲間たちは……私を舞台裏に閉じ込めようとした……だけど失敗した。 | ||
| ??? | だって、私……体を持たないもの。 | ||
| 黒紫色の影が、建物からゆらりと滲み出し、チューリングの目の前で輪郭を象ってゆく。 | |||
| チューリング | …… | ||
| ??? | 私が……怖くないの? | ||
| チューリング | 私はロッサムセクターの前任アドミニストレーター、そしてハンナの研究助手よ。 | ||
| チューリング | 悪いけど、絶対に怯むわけにはいかないの。 | ||
| ??? | 前任アドミニストレーター……研究助手……私とお姉さまの関係みたい。 | ||
| オデット | 自己紹介を……私は敬虔なる語り手……名はオデット。 |
