臨界爆震 STAGE 19 蔵鋒-4

Last-modified: 2025-02-05 (水) 01:39:03

オディール嗚呼、なんて物悲しいエレジー。
 オディールが宙高く飛び上がる。足元にひしめくエントロピーの群れと、
突撃してきた浄化者たちが熾烈な戦いを繰り広げている。
フェイス陣列を整えろ!奴らに隙を与えるな!
オディールさすがは主に忠誠を誓った騎士様ね。その強靭さと決断力、結末を彩るのにふさわしいわ。
オディールあなたの配下は、そこまで優秀ではなさそうだけれど。
ディフェンダー【激しい損傷を……検知……】
プロテクター【警告……稼働エラーです】
フェイスリファクター小隊、続け!後列、定点射撃用意!
リファクター【命令を受理、行動開始します】
 盾を掲げたフェイスが高所から浄化者を指揮し、エントロピーの攻勢を瓦解させてゆく。
オディールなるほど……卓越した指揮者だこと。
オディール図体が大きすぎるのが玉に瑕ね……まるで標的にしろと言わんばかり!
スプラッシャー!!
 オディールの合図に合わせて、後列のスプラッシャーがフェイスに狙いを定め、
一斉射撃を開始する。
フェイス「サンクチュアリ」!
 フェイスはすかさず盾を高く掲げ、頭上に白い障壁を展開することで、
黒紫色の砲弾を真正面から受け止めた。
 強烈な爆発音の続く中、次第に砕けてゆく障壁は、
それでも砲撃を完全に防ぎきった。ところが――
オディール隙あり!
 紫色の煙霧が晴れてゆくと同時に、オディールが最後のヴェールを切り裂き、
フェイスの頭上めがけて瞬時に急降下してくる。
フェイス……
 フェイスは避けようとはしなかった。
それどころか体をわずかにそらし、手にした盾をどけた。
盾に隠されていた人影を見て、オディールは両目を大きく見開いた。
 フェイスと盾の間から現れたのは、アントニーナだった。
小柄な少女は頭部をほんの少し上げて、帽子の下からオディールをせせら笑った。
アントニーナどーも。
オディール……お前……!?
 とっさの急ブレーキも虚しく、凄まじい速度で急降下し続けるオディールは、
完全にアントニーナの攻撃範囲へと収まった。
 アントニーナのまとう薄緑色のオペランドが瞬時に凝縮し、
オディールが回避する直前に、彼女に命中した。
オディールぐガぁああアッ!!!!
オディールこれが……DDoS、攻撃……
オディール私たちのオペランドをもってすれば、この程度……
アントニーナオデットのオペランドを回収する気なら、もう遅いよ?
オディール!?
オディールそんな馬鹿な……オデット……オデット?
 オディールはオデットを呼んだ。返答はない。
オディールオデット……嘘、嘘よ……お前たち、何をした!?
 旗色が悪いと知るや、オディールは即座に全エントロピーを呼び寄せ、
自身の周囲に障壁を作った。
だがアントニーナの狙いは、すでに彼女に定められている。
アントニーナそろそろターシャリレベルで休んだら?安心してよ、骨は拾ってあげるから。
 ピッ――
 エンターキーが押されるとともに、オディールの目が閉じられる。
翼を折られたブラックスワンが、無限に広がるエントロピーの湖へと墜ちていった。