| オデット | お姉さまの声が……消えた…… | ||
|---|---|---|---|
| ハンナ | どうやら、あっちは成功したみたいですね。 | ||
| オデット | そんな、ありえない……私のお姉さま、愛おしいお姉さまが……せっかくもう一度会えたのに……どうして…… | ||
| オデット | でも、いいの……お姉さまと私は……いつかまた一つになれる…… | ||
| オデット | だけど、その前に……! | ||
| オデットの顔から恍惚とした笑顔が消える。 彼女は鋭い爪を高く掲げ、チューリングに狙いを定めた。 | |||
| オデット | お前には退場してもらうわ……!! | ||
| グサッ―― | |||
| 鋭利なものが何かを貫く音がして、それに静寂が続いた。 | |||
| オデット | …… | ||
| オデットは信じられないという表情で、自分の腕の中を見た。 そこにはチューリングではなく、一回り小さなハンナが抱きしめられている。 | |||
| ハンナは間一髪のところで両腕を掲げ、 小さな障壁を展開し、辛うじて致命傷を免れていた。 障壁を貫いたオデットの爪先が、ハンナの腕に食い込む。 | |||
| オデット | どうして……? | ||
| ハンナ | これぞロッサム名物……メンタル互換。 | ||
| ハンナ | ちなみに、片方がもう一方への完全制御権限を有しているのが条件ね……まさか、使うことになるとは思わなかったけど…… | ||
| ハンナ | ……私も、私の使命を…… | ||
| ピピッ! | |||
| ハンナの決意に応えるかのように、端末が鳴った。 | |||
| ハンナ | えっ……チューリングからの……!? | ||
| ハンナの目に映る、これ以上ないほどに見慣れたコード配列。 記憶の奥底から、未来への一筋の道が照らし出される。 | |||
| クロック | うそ、どういうこと?チューリングはなんて……? | ||
| ハンナ | ……チューリングの、メンタルの制御権を含む、全権限が送られてきてます……そっか、データが大きかったから、今頃届いたんだ…… | ||
| クロック | えっ、なんで……どういうつもりで……!? | ||
| ハンナ | きっとデータセンターにあったぜんぶの記録、それに「あの時」の映像を見たんだ……つまり、彼女は私に…… | ||
| ハンナ | チューリングは信じてた。これが勝利の鍵になるって……今度こそ、二人で生き延びるんだって……! | ||
| オデット | ……信じる? | ||
| ハンナ | あーあ……チューリングとの身長差、もっとあると思ったんだけど……そう上手くはいかないか…… | ||
| ハンナ | まさか……今度は私が使う番になるなんて……思いもしなかったな…… | ||
| 激痛に、ハンナの顔がみるみる青白くなる。 | |||
| オデットが我に返り、相手の腕から爪を引き抜こうとした時、 ハンナは無傷なほうの手を掲げ、握っていた道具をオデットの胸元に突き立てた。 | |||
| オデット | な、なに……何かが……体に、入ってくる……? | ||
| ハンナ | お姉さまとはさよならできた?……オデット……! | ||
| オデット | ……だれ、にも……お姉さま、邪魔……させない! | ||
| オデットの目に不気味な光が宿る。 彼女は黒紫色のオペランドを手先に凝聚させ、ハンナの腕へと這わせた。 | |||
| ソル | オデット!!やめろ!!! | ||
| ハンナの腕を完全に貫いたオデットの爪が、二人のメンタルを繋ぐ媒介となる。 それとほぼ同時に、ソルの刃がオデットを捉えた。 | |||
| ハンナ | …… | ||
| だが、すでに遅かった。 | |||
| オデットとハンナは二人同時に目を閉じて、 エントロピー液の浸る地面へと、次々と倒れていった。 |
