臨界爆震 STAGE 20 切り札-5

Last-modified: 2025-02-05 (水) 01:45:57

オデットお姉さまの声が……消えた……
ハンナどうやら、あっちは成功したみたいですね。
オデットそんな、ありえない……私のお姉さま、愛おしいお姉さまが……せっかくもう一度会えたのに……どうして……
オデットでも、いいの……お姉さまと私は……いつかまた一つになれる……
オデットだけど、その前に……!
 オデットの顔から恍惚とした笑顔が消える。
彼女は鋭い爪を高く掲げ、チューリングに狙いを定めた。
オデットお前には退場してもらうわ……!!
 グサッ――
 鋭利なものが何かを貫く音がして、それに静寂が続いた。
オデット……
 オデットは信じられないという表情で、自分の腕の中を見た。
そこにはチューリングではなく、一回り小さなハンナが抱きしめられている。
 ハンナは間一髪のところで両腕を掲げ、
小さな障壁を展開し、辛うじて致命傷を免れていた。
障壁を貫いたオデットの爪先が、ハンナの腕に食い込む。
オデットどうして……?
ハンナこれぞロッサム名物……メンタル互換。
ハンナちなみに、片方がもう一方への完全制御権限を有しているのが条件ね……まさか、使うことになるとは思わなかったけど……
 
ハンナ……私も、私の使命を……
 ピピッ!
 ハンナの決意に応えるかのように、端末が鳴った。
ハンナえっ……チューリングからの……!?
 ハンナの目に映る、これ以上ないほどに見慣れたコード配列。
記憶の奥底から、未来への一筋の道が照らし出される。
クロックうそ、どういうこと?チューリングはなんて……?
ハンナ……チューリングの、メンタルの制御権を含む、全権限が送られてきてます……そっか、データが大きかったから、今頃届いたんだ……
クロックえっ、なんで……どういうつもりで……!?
ハンナきっとデータセンターにあったぜんぶの記録、それに「あの時」の映像を見たんだ……つまり、彼女は私に……
 
ハンナチューリングは信じてた。これが勝利の鍵になるって……今度こそ、二人で生き延びるんだって……!
オデット……信じる?
ハンナあーあ……チューリングとの身長差、もっとあると思ったんだけど……そう上手くはいかないか……
ハンナまさか……今度は私が使う番になるなんて……思いもしなかったな……
 激痛に、ハンナの顔がみるみる青白くなる。
 オデットが我に返り、相手の腕から爪を引き抜こうとした時、
ハンナは無傷なほうの手を掲げ、握っていた道具をオデットの胸元に突き立てた。
オデットな、なに……何かが……体に、入ってくる……?
ハンナお姉さまとはさよならできた?……オデット……!
オデット……だれ、にも……お姉さま、邪魔……させない!
 オデットの目に不気味な光が宿る。
彼女は黒紫色のオペランドを手先に凝聚させ、ハンナの腕へと這わせた。
ソルオデット!!やめろ!!!
 ハンナの腕を完全に貫いたオデットの爪が、二人のメンタルを繋ぐ媒介となる。
それとほぼ同時に、ソルの刃がオデットを捉えた。
ハンナ……
 だが、すでに遅かった。
 オデットとハンナは二人同時に目を閉じて、
エントロピー液の浸る地面へと、次々と倒れていった。