| オディールとオデットが、エントロピー液の中へと倒れ込んだ。 どちらも真っ白な顔を仰向けにして、綻んだ天井を瞳に映している。 | |||
| オデット | お姉さ、ま…… | ||
| オディール | あぁ……また……終わってしまった…… | ||
| オディール | この演目も……いよいよフィナーレね…… | ||
| ハンナが無表情でそれを見下ろしている。 | |||
| 横たわったままのオディールが、視線をハンナに向けて、淡く微笑んだ。 | |||
| オディール | たかがエージェントが……ターシャリレベルの幻に抗えるだなんて…… | ||
| オディール | 最期に……観客のコメントを頂戴しても……? | ||
| オディール | 読み取ったはずの、チューリングの記憶の欠片……なぜ急に変異を遂げたの?なぜ、私たちは負けたの……? | ||
| ハンナ | ……何が起きたのかは、私にもわからない。 | ||
| ハンナ | でも、教授の……人間の言葉を借りるなら、これが「愛」の力なんだって。 | ||
| ハンナ | 理由なんて必要ない。私はチューリングにたくさんの「愛」をもらった。それさえあれば、私はなんだって乗り越えられる。 | ||
| ハンナ | 今度は私がその「愛」を、チューリングに分け与える番。幻覚や勝ち負けなんかに囚われてたまるか。私はここを出て、チューリングに会うんだ。 | ||
| オディール | 愛……今、あなたの帰りを待つ彼女は、本当にあなたの言う彼女なのかしら? | ||
| オディール | 昔のように、あなたを愛せると思う? | ||
| ハンナ | どちらかが相手を覚えている限り、新しい絆は紡げるよ。「愛」は受け継いでゆける。 | ||
| ハンナ | 彼女を信じる私を、私は信じる。 | ||
| そう言って、ハンナは姉妹に背中を向けると、 ふりむきもせずに明るい場所へと歩いていった。 | |||
| オディール | 自分の……選択、ね……そうか、そういうこと……あはは…… | ||
| オディール | 空を自由にかけめぐる、小さな小鳥……あなたが、真の「主役」だったの? | ||
| オディール | これだけの逸材を、演者に加えなかったのは……私の落ち度ね…… | ||
| オディール | 新たな時代の幕が開く……この物語を……終わらせる時が来た。 | ||
| オディール | 最期に……この手で終止符を…… |
