| オディールは目を見開いた。 | |||
| クラウドに戻った彼女は、まだ夢の世界から視線をそらせずにいる。 | |||
| 目を瞑るオデットは、エントロピー液に浸ったままだ。 オディールはどうにか身を起こし、その場に立ち上がった。 | |||
| そして、周囲を見渡す。 | |||
| この上なく馴染みのある劇場。 彼女自らが手がけた施設は、その心に合わせて動き出す。 | |||
| オディールの視線を出迎えて、ピアノが知らない曲を奏でた。 どこからともなく吹き付ける微風をまとい、調べが木の枝とともにダンスを踊る。 | |||
| 空がいよいよ白みを帯びてくる。オディールは一歩一歩、舞台の中央へと向かった。 陽の光が彼女の体を照らすにつれ、漆黒に染まったブラックスワンの体が、 当初の白鳥のごとき純白を取り戻してゆく。 | |||
| 広げられた真っ白な翼をドレスに見立て、 一面狼藉となった観客席へと、恭しくお辞儀をする。 | |||
| ドンッ―― | |||
| 耳をろうするような礼砲が鳴り、すべては静寂へと墜ちていった。 |
