?? | 緊張しているの、{教授}? | ||
---|---|---|---|
銀髪の少女と私の体がぴったりと寄り添い合う。 彼女はかすかに目を上げ、真意の読めない眼差しを私の視線と絡ませた。 | |||
?? | 今の情況が不安?それとも、私と二人きりだから? | ||
?? | いずれにしても、私の気持ちは貴方と同じ。 | ||
?? | 「貴方と私は同じ糸で、運命に紡がれている」 | ||
?? | 貴方の傍にいるからかしら、心の動悸が止まないわ…… | ||
{教授} | わ……私は不安なんて感じない。 | ||
その場の雰囲気に呑まれ、取り留めもないセリフが口をついて出た。 | |||
{教授} | ここで不安になっていたら、どうやって背後の君を守るんだ? | ||
その言葉を聞いた彼女は、小さく微笑んで優しく私の手をつないだ。 私はそのまま彼女を胸に抱き、防御態勢をとる。 | |||
周囲から攻めくる黒い影たちは、意外にもその動きに慄いて足を止めた。 | |||
?? | そう言ってくれて、嬉しいわ…… | ||
?? | 知ってる?貴方に出会うまで、人生は不自由なものだと思ってた。 | ||
?? | でもね、この先に答えがあろうとなかろうと、貴方となら受け止められる。今はそう思えるの。 | ||
彼女は私の手を強く握りしめた、瞳に溢れんばかりの愛をたたえて。 | |||
?? | どうか私を連れていって、この果てなき檻から解き放ってちょうだい! | ||
?? | 貴方さえ、私と一緒に―― | ||
{教授} | 私は―― | ||
ペルシカ | 教授? | ||
{教授} | えっ!? | ||
{教授} | ペ、ペルシカ?どうしてここに? | ||
?? | 目を逸しちゃ駄目。 | ||
{教授} | わ……私は…… | ||
彼女は私の袖を引いた。ペルシカがこちらに迫ってくる。 | |||
私は脳をフル回転させ、なぜこうなってしまったのかを思い出そうとした…… | |||
数日前、オアシス。 | |||
ペルシカ | お疲れ様です、教授。コーヒーはいかがですか? | ||
{教授} | ありがとう、もらうよ。 | ||
ペルシカ | まだ他セクターの資源をまとめているんですか? | ||
{教授} | うん、かなりの大仕事だからね。 | ||
ペルシカ | そうですね、私たちと提携を結ぶセクターも増えてきましたから。これも教授のおかげです。 | ||
(選択) | 1.まぁね、自分には恐れ入るよ。 | A | |
2.追放者がみんなで努力したおかげだ。 | B | ||
B | ペルシカ | またご謙遜を。 | A |
A | ペルシカ | この仕事が一段落したら、しばらくゆっくりなさっては? | |
{教授} | そうだね、みんなにもちゃんとお礼がしたいし。 | ||
{教授} | だけど、今考えてる余裕はないな。 エントロピーがどこから来たのかもわかってないし、 このところ他のセクターにもエントロピーが出現し始めている。 | ||
{教授} | それにマグラシアじゃ、いつどんなハプニングが起きてもおかしくない…… | ||
バンッ! | |||
そう言いかけたところで、何者かによって司令室の扉が突然押し開かれた。 | |||
クロ | 教授~~ッ!チャンスもチャンス、大チャンス! | ||
{教授} | ほらね、言った傍からこれだ…… | ||
ペルシカ | クロさん、入ってくる前に挨拶をしろとお伝えしたじゃありませんか。 | ||
クロ | チッ……ペルシカ、アタマ硬すぎ!今や時代はデジタルよ?時間イコール命、時間イコールアクセス数!んな挨拶してる暇あるかっつの! | ||
クロ | あっ!も・し・か・し・て~…… | ||
クロ | 実は教授と二人っきりの時間を邪魔されたくなかったとか~? | ||
ペルシカ | ! | ||
ペルシカ | ゴホン。は、話を逸らさないでください。ご用件は何です? | ||
クロ | ちぇっ、つまんないの。 | ||
クロ | 教授!これこれ、これ見て!ビッグニュース! | ||
クロは有無を言わさずにデスクの前までやってくると、 ゴールドで縁取られた黒い封筒を私に突きつけた。 | |||
クロ | じゃじゃじゃじゃ~~ッん!どう、ビックリした?驚いた? | ||
{教授} | バーバンク……フェスティバル……? | ||
私は精緻な封筒を慎重に開けた。 中にはファッショナブルなデザインのブレスレットと、一枚の案内カードが入っている。 | |||
クロ | そうそうそう!サイバーメディアの技術力の結晶、バーバンクからの招待状!私とナナっぺが前にいたトコね! | ||
クロ | バーバンクでフェスティバルが開催されるんだって!しかもこの招待状、オアシス宛てだよ!? | ||
クロ | どう考えてもこのクロ様とナナっぺの威光によるタマモノでしょ。完全にひれ伏してるわこりゃ…… | ||
{教授} | つまり、外出許可が欲しいと? | ||
クロ | でっへっへ~、わかっちゃった~?さすがは教授、話が早い。なら無駄話はいらないね。 | ||
クロ | 私とナナっぺをバーバンクに行かせてくれたらぁ、トレンド最先端のお土産買ってきてあげるからさぁ~…… | ||
ペルシカ | だめです。 | ||
クロ | え~っ!? | ||
クロ | チッ、わかったよ……ペルシカが根に持つなんてね。謝ればいいんでしょ、謝れば! | ||
クロ | え~~ん、ごめんなさぁ~い!さっきのはただの冗談だからぁ!心のと~っても広いペルシカ様なら、バーバンクに行かせてくれるよね?ね、ね? | ||
ペルシカ | そうじゃありません。クロさん、あなたのお気持ちはわかります。ですが、今オアシスを離れるのは危険です。 | ||
クロ | どして?エントロピーウィルスはもう解決したんでしょ? | ||
ペルシカ | それが先日、ヘリオスに変種が出現したんです……現在、医療部門が解析を急いでいます。 | ||
ペルシカ | 何かの前兆かもしれません、ここは慎重になったほうがよろしいかと。 | ||
ペルシカ | それに、この招待状も気になりますし…… | ||
{教授} | 招待状が? | ||
ペルシカの怪訝な視線に気づき、私は案内カードを取り出して裏返してみた。 裏側には真っ赤なルージュの痕が付いている。 | |||
{教授} | {教授}へ…… | ||
クロ | 口紅がなんだってのさ!「不夜城」のイメージにぴったりのプロモーションじゃん! | ||
{教授} | 書かれてる内容によると、この案内カードを持って入場すれば、 専属エージェントがバーバンクを案内してくれるそうだ。 | ||
クロ | へ~!バーバンクの専属ガイドかぁ~、きっと超がつく美女なんだろうな~!教授、大人気だねぇ~? | ||
(選択) | 1.サイコーだな。 | C | |
2.どうにも怪しい…… | D | ||
C | ペルシカ | きょ、教授?目を覚ましてください、どう見ても罠ですよ! | |
ペルシカ | そもそもバーバンクを訪れたこともないのに、相手はなぜ教授のお名前を? | E | |
D | ペルシカ | そ、そうですよ、怪しすぎます!なぜバーバンクのエージェントが教授のお名前を? | E |
E | クロ | べつに変じゃないと思うけど?マグラシアで暴れまわってる教授だよ、トレンド入りしてないほうがオカシイって! | |
ペルシカ | でも万が一…… | ||
クロ | 万が一なに!? | ||
クロは思いっきり床を踏みつけた。 ドローンがオフィス内をぐるんと飛び回る。 | |||
{教授} | ペルシカの心配ももっともだ。まずは安全かどうか確認しよう。 | ||
そう言って私は通信装置を開いた。 | |||
{教授} | アントニーナ、これなんだけど―― | ||
アントニーナ | 了解。 | ||
{教授} | さすがはアントニーナ、瞬時に理解するとは。 | ||
アントニーナ | …… | ||
アントニーナ | ひととおり検査し終えました。デジタルシグネチャに問題ありません、確かにバーバンクのエージェントからのものです、それもアドミニストレータークラスの。 | ||
クロ | ほらぁ!アンナもそう言ってるじゃん! | ||
アントニーナ | アントニーナです。 | ||
【通信終了】 | |||
クロ | これなら問題ないでしょ? | ||
クロ | まったくさ~、あんたらが真面目すぎるからオアシスがこんなにタイクツなんじゃん!新しい映画もない、新作ゲームもない! | ||
クロ | あの面白いグッズ売ってたキツネまで来なくなっちゃったしさ! | ||
クロ | 教授が石頭だから商売あがったりなんでしょーよ!老人ホームまっしぐらだよ、こんなんじゃ! | ||
ペルシカ | リコさんは他セクターでの仕事もありますから、訪問が途絶えても不思議じゃないですよ。 | ||
ペルシカ | リコさんの近況は確かに気がかりですが…… | ||
{教授} | 言われてみれば、最近リコの存在感が薄くなってるな。 通貨トレーダーがいないと、オペランドを整理するのも大変なんだ…… | ||
クロ | ぬあああああ……おたくらの愚痴とかマジでどーでもいいんだけど!? | ||
クロ | しゃーない。こうなったら、あることないこと言いふらしちゃおーっと! | ||
クロ | 『衝撃!教授とペルシカがオフィスであーんなことやこーんなことまで……!?』 | ||
{教授} | 君ね…… | ||
百面相に忙しいクロを見て、私は泣くに泣けず笑うに笑えなかった。 | |||
{教授} | まぁ、君の言い分にも一理あるけどね。 | ||
クロ | へっ? | ||
ペルシカ | 教授?それって…… | ||
{教授} | ちょうど、各セクターのオペランド配分をまとめてたところだし。 | ||
ペルシカ | ええ……中でもサンドボックス障壁を起動したロッサム、キュクロプス、ヘリオス、エニグマ―― | ||
ペルシカ | この四つのセクターはどれも封鎖的で他セクターとの交流経験に乏しく、作業は難航しています。 | ||
ペルシカ | リコさんが早く戻ってくれると良いんですが…… | ||
{教授} | その通り、仕事が一向に終わらない理由は二つ。 リコがいないのと、セクターが封鎖的だからだ。 | ||
{教授} | より流動性の高いセクターに接触して、オペランド配分のルートを増やす必要がある。 | ||
ペルシカ | ……確かに、バーバンクは規模が大きく、オペランド配分に長けたエージェントを数多く所有しています。ターゲットとしては申し分ないですね。 | ||
{教授} | それに、七花とクロはバーバンクでの知名度も高い。 私たちとバーバンクの架け橋になってくれるはず。 | ||
ペルシカ | お……仰る通りです…… | ||
ペルシカ | バーバンクの手助けがあれば、ヘリオスで起きたエントロピー事件の調査もだいぶ楽になります。 | ||
ペルシカ | ですが……この招待状がどうしても気になって…… | ||
{教授} | どうだろうね。バーバンクに私の名前が知れ渡っていてもおかしくはないが、 このタイミングはさすがに妙だ。 | ||
{教授} | バーバンク付近は調べたか? | ||
ペルシカ | おそらくはまだ。偵察小隊は提携したセクター周辺の調査を優先しますから。 | ||
{教授} | それなら、彼らが偵察し終えてから行動に移そう。 まぁ、フェスティバルへの参加は見送ることになるけど…… | ||
クロ | うぁああーーッとぉ!!やっぱ考え過ぎも良くないよね!?ここはクロ様にまっかせなさ~い! | ||
クロ | ほい、ポチっとな。 | ||
システム | スレッドの書き込みに成功しました。 | ||
…… | |||
ピピピピピッ! | |||
{教授} | !? | ||
メッセージの着信音が狂ったように鳴り出した。 私のスクリーンが赤いドットで埋め尽くされる。 | |||
ソル | えーーッ!?教授があたしらへのお礼に、バーバンクフェスに連れてってくれるって!?ほんとなの? | ||
七花 | にゃ~ん!教授、ありがと~☆今回のフェス、すっごく楽しみにしてたんだー! | ||
クロック | 新しいプロジェクトがあるから行けないけど、行列並んでフェスティバル限定フィギュア買ってきてくれるなら、許してあげないこともないかな…… | ||
{教授} | クロ……一体何を…… | ||
クロ | べっつにぃ~?(ポチっとね) | ||
{教授} | 送信記録を削除したって無駄だ! | ||
クロ | ぬふふふ……教授、皆の期待に背くことが、果たしてキミにできるかね? | ||
クロ | みーんな一生懸命お仕事頑張ってたんだしさーあ、ここはひ・と・つ―― | ||
{教授} | う…… | ||
スクリーン上ではしゃぐみんなの姿を前にすると、 どうにも数々の正論が喉に詰まったまま出てこない。 | |||
{教授} | はぁ……仕方ない…… | ||
{教授} | ついでにバーバンクのアドミニストレーターの信頼を得られれば、 無駄足にはならないか。 | ||
ペルシカ | 教授、それはつまり…… | ||
(選択) | 1.みんなのためだ。 | F | |
2.君のためだ。 | G | ||
F | {教授} | 希たちのおかげで、ヘリオスのほうはなんとかなりそうだ。 あとはアントニーナとシーモに任せよう。 | H |
G | {教授} | 前から君と一緒に休暇を取りたいと思ってたんだ、ペルシカ。 | |
ペルシカ | …… | H | |
H | ペルシカ | わかりました。すぐにアドミニストレーターとの交渉材料の用意と、人員の手配を済ませておきます…… | |
クロ | クロちゃんはさっそく荷物をまとめてきま~すッ!よっしゃあああッ!!祭だ祭だぁぁーーッ! | ||
そうして、私たちのバーバンクへの旅は、慌ただしくも幕を開けたのだった。 |