クレシェンテ劇場、観客席。 | |||
ステージが終わると、ほとんどのエージェントたちは会場を後にした。 対峙するペルシカとイオスだけを残して。 | |||
そして、その二人の間には…… | |||
(選択) | 1.どうしたんだ、ペルシカ? | A | |
2.落ち着け、イオス。 | B | ||
A | {教授} | なんで突然、イオスさんにそんな態度を? | C |
B | {教授} | なにか誤解してるんだ、まずは話し合おう。 | C |
C | ペルシカ | 彼女の言い分を聞いてみたいですね。 | |
イオス | ええ、喜んで。何を知りたいの? | ||
ネコ | ニャー…… | ||
二人が睨み合っている傍で、一匹の猫が身を震わせ、私の腕の中へと収まった。 | |||
ペルシカ | 気づいていないんですか、教授? | ||
ペルシカ | 先ほどの騒ぎで、彼女は奇妙な力を使ってあなたを守った。 | ||
ペルシカ | その行為自体については感謝します…… | ||
ペルシカ | ですが、あのオペランドの凝集の仕方……断じて一介のガイドエージェントにできることではありません。 | ||
ペルシカ | 私の知る限り、あんな攻撃を可能とするのはただ一人……私たちの宿敵だけ。 | ||
イオス | ふぅん、そうだったの。 | ||
イオス | バーバンクのすべては娯楽と関係しているわ。セクターのガイドとして、いくつか芸ができて当たり前だと思うけれど。 | ||
ペルシカ | ひどい言い訳ですね。教授、あなたは始めから知っていたのでしょう? | ||
(選択) | 1.何かを隠しているのは確かだが、彼女の手助けが必要なんだ。 | D | |
2.彼女のことを知っておくのは、悪いことじゃない。 | E | ||
D | {教授} | ガーゴイル事件はまだ解決していないし、彼女はこの件に関しては潔白だ。 私の視線を離れていないからね。 | |
{教授} | 今、私たちに必要なのは敵じゃなく仲間だ。 | F | |
E | {教授} | 特に、相手が善意を示している場合はね。 | |
{教授} | なんにせよ、彼女が誰にも危害を加えていないのは事実だ。違うか? | F | |
F | ペルシカ | ですが、教授…… | |
{教授} | 安心しろ、君の心配は始めからわかっていたさ。 | ||
私はペルシカに目配せをした。 私がとっくにイオスの正体に気づいていたと知り、ペルシカはゆっくりと手を降ろす。 | |||
ペルシカ | 教授がそこまで仰るのでしたら……わかりました。 | ||
ソル | は、ははは……とにかく、みんな無事で良かったよ! | ||
ナシタ | ソル……これは一体どういうことだ? | ||
ソル | よくわかんないけど、ペルシカすごく怒ってるみたい。ここは黙ってたほうがいいと思う。 | ||
{教授} | それで、ペルシカ。そっちで何があったんだ? | ||
ペルシカ | はい。先ほど通信でお伝えした通り、異相レンジャーΩが突然暴走したんです。 | ||
メリル | 体から不思議なパワーがほとばしってた、彼が普段持つオペランドの数十倍はあるわね。 | ||
メリル | それにあの目、完全に別人だったし。とんだ超展開よ。 | ||
ナシタ | 監督、来てたのか。Ωは…… | ||
メリル | 何も言わずに劇場のほうに走ってったよ、あんなの誰にも止められやしない。 | ||
ペルシカ | すぐに教授にご連絡したのですが、通信が途絶えてしまって。 | ||
ペルシカ | そちらの状況が心配だったので、さっそく駆けつけました。それで、暴走したガーゴイルたちを目にしたというわけです。 | ||
ソル | つまり、異相レンジャーΩとガーゴイルは、同じタイミングで暴走したってこと? | ||
ペルシカ | そうなります。時間から見ても、二つの事件には関連性があるはず。 | ||
ペルシカ | それに、あの突然大きく変化を遂げる様子……酷似しています、私たちのよく知る怪物たちに…… | ||
ソル | それって……エントロピー? | ||
ペルシカ | 異相レンジャーΩが、エントロピー化した可能性は大いにありますね…… | ||
ソル | まさか?パフォーマンスの時はピンピンしてたのに、いつの間に…… | ||
ペルシカ | ウイルスの潜伏期間には揺れ幅がありますし、エントロピーは偽装に長けています。例えばオディールのように。 | ||
ペルシカ | 隠していただけで、とっくにエントロピー化していたのかもしれません。 | ||
{教授} | とにかく、まずは彼を探そう。異相レンジャーΩはどこにいるんだ? | ||
メリル | 人を遣った、あのキツネたちにも声をかけてる。すぐに見つかるはずよ。 | ||
ランコ | メリルの姐さん、ただいま戻りやした。 | ||
メリル | 噂をすればなんとやら。どうだった? | ||
ランコ | 面目ございやせん、カラオケ1号――もとい異相レンジャーΩは、その、見つかりやせんで…… | ||
ソル | えっ、戦闘服着てたよね?結構目立つはずだけど。 | ||
メリル | 広いバーバンクで身を隠すのは、そう難しくはない。 | ||
ランコ | あっしがガーゴイルを検査してた時、Ωと一緒だったんでさァ……こうなると知ってたら、止められたんですが…… | ||
ペルシカ | もしかしたら、その時にガーゴイルにエントロピーの種を埋め込んだのかも。 | ||
(選択) | 1.おそらくは。 | G | |
2.そうなのかな……? | G | ||
G | 私は傍で不安そうにしている猫を一目見た。 | ||
メリル | そのウイルスとやらが何なのか知らないけど、Ωがバーバンクを離れたことは一度もない。 | ||
ペルシカ | あるいは、何者かが外部からウイルスを持ち込んだ。 | ||
メリル | ファイアウォールの管理を怠ってるって言いたいの? | ||
メリル | 他所のエージェントなんてめったに入れないわ。七花とクロ、それとナシタやパズルを除けばだけど…… | ||
ナシタ | パズル……あいつがそんな…… | ||
イオス | ここで勘繰っていても仕方がないわ。それよりも、早いところ感染したエージェントを探したらどう? | ||
ソル | そうだよ!ステージを壊す陰謀は、あたしとナシタで阻止できたけど。あいつがここで手を引くとは思えない。 | ||
ソル | 一度あることは必ず二度ある。はやくΩを見つけないと! | ||
ランコ | でも、捜すのはあっしらがもう…… | ||
ペルシカ | トレーダーとエージェントによる捜索だけでは足りません。それに、フェスティバル自体も捜索のペースに大きく影響します。 | ||
ペルシカ | メリルさん、事態は急を要します。どうか―― | ||
メリル | 断る。 | ||
ペルシカ | えっ? | ||
メリル | フェスティバルを中断させて、浄化者に徹底捜査させろと言いたいのね? | ||
メリル | 不可能よ。 | ||
ソル | で、でも、みんなの安全に関わることなんだよ!? | ||
ソル | 普通のエージェントが、あんたと同じ考えだとは思えないな。 | ||
イオス | 申し訳ないけれど、メリルさんの判断が正しいわね。 | ||
ソル | えっ!? | ||
イオス | フェスティバルの開催はバーバンクの使命よ、おのずと最上級の優先レベルを有するわ。 | ||
メリル | そう、でもそれだけじゃない…… | ||
メリル | バーバンクのエージェントの数は膨大だけど、彼らのほとんどは「襲撃」や「避難」といった複雑な状況を理解できない。 | ||
メリル | 強制的に命令を下しても、混乱に陥るだけよ。 | ||
ソル | た……たしかに…… | ||
イオス | それに教授の立場からしても、ここで大勢の浄化者に出くわしたくはないでしょうし? | ||
イオスは私に向かってウィンクしてみせた。 | |||
ソル | でも、だったらどうするのさ? | ||
ソル | Ωがどこにいるのかも、何をする気かも、いつ動くかもわからないんじゃ…… | ||
ソル | 手の施しようがないよ。 | ||
イオス | 「舞台の主役」は、往々にして過酷な決断を担う。 | ||
イオス | 貴方だったらどうする、教授? | ||
ペルシカ | 教授…… | ||
どうしたらいい? | |||
私の脳は素早く回転し始めた。何か手がかりはないのだろうか? | |||
このセクターを訪れてからの様々な記憶が、脳裏で次々とつながってゆく。 | |||
H | (選択→K) | 1.(敵の目的を分析) | I |
2.(現在の情況を分析) | J | ||
I | {教授} | 敵はエントロピーだ。通常、奴らはエージェントの感染を目的としている。 | H |
J | {教授} | 第一に、フェスティバルは中断できない。 第二に、ここのエージェント全員を守るには人手が足りない。 | H |
K | {教授} | (待てよ、フェスティバルを逆に利用してしまえば……) | |
イオス | 自分の職業を利用してイマーシブシアターをデザインし、敵を人形の領域に誘い込んだのよ。 | ||
イオス | そして「パフォーマンス」の途中で、敵に危険性の極めて高いギミックを自ら起動させた。 | ||
イオス | 観客は皆、リアルなパフォーマンスだと思っていた。そして舞台が終わって初めて、それが公然たる殺人だと気づいたの。 | ||
(選択) | 1.(劇にまつわる要素を集める) | L | |
2.(舞台にまつわる要素を集める) | M | ||
L | {教授} | 盛大な劇、それと…… | N |
M | {教授} | セクターを舞台としたパフォーマンス、それと…… | N |
N | |||
エージェント | えっ、異相レンジャーΩの後輩なの?そんな設定あったっけ。 | ||
エージェント | あ、そういえば、十何話か前にそれっぽいこと言ってたな……まさかの伏線回収!? | ||
イオス | 役者にとっては、役に入りすぎて困ることはないでしょう。 | ||
メリル | まぁね。役者じゃないなら、気をつけたほうが身のためだけど…… | ||
(選択) | 1.(脚本にまつわる要素を集める) | O | |
2.(没入感にまつわる要素を集める) | P | ||
O | {教授} | それと、制御を可能とするシナリオ。 | Q |
P | {教授} | それと、役に入り込める演出。 | Q |
Q | イオス | どうやら、答えは見つかったみたいね。 | |
{教授} | たぶんね。 | ||
{教授} | メリルさん、「取り引きを勝ち取る真のチャンス」が巡ってきたようだ。 | ||
メリル | へぇ、この状況を解決できるって言いたいの? | ||
{教授} | それだけじゃない。フェスティバルを絶頂まで盛り上げてみせるさ。 | ||
{教授} | 君さえ協力してくれたらね。 | ||
ネコ | ニャー…… | ||
抱いていたカラフルな猫を下ろし、私はメリルに手を伸ばした。 |