逆音共振 PART.10 種子

Last-modified: 2025-02-02 (日) 20:27:00

クレシェンテ劇場、観客席。
 ステージが終わると、ほとんどのエージェントたちは会場を後にした。
対峙するペルシカとイオスだけを残して。
 そして、その二人の間には……
(選択)1.どうしたんだ、ペルシカ?A
2.落ち着け、イオス。B
A{教授}なんで突然、イオスさんにそんな態度を?C
B{教授}なにか誤解してるんだ、まずは話し合おう。C
Cペルシカ彼女の言い分を聞いてみたいですね。
イオスええ、喜んで。何を知りたいの?
ネコニャー……
 二人が睨み合っている傍で、一匹の猫が身を震わせ、私の腕の中へと収まった。
ペルシカ気づいていないんですか、教授?
ペルシカ先ほどの騒ぎで、彼女は奇妙な力を使ってあなたを守った。
ペルシカその行為自体については感謝します……
ペルシカですが、あのオペランドの凝集の仕方……断じて一介のガイドエージェントにできることではありません。
ペルシカ私の知る限り、あんな攻撃を可能とするのはただ一人……私たちの宿敵だけ。
イオスふぅん、そうだったの。
イオスバーバンクのすべては娯楽と関係しているわ。セクターのガイドとして、いくつか芸ができて当たり前だと思うけれど。
ペルシカひどい言い訳ですね。教授、あなたは始めから知っていたのでしょう?
(選択)1.何かを隠しているのは確かだが、彼女の手助けが必要なんだ。D
2.彼女のことを知っておくのは、悪いことじゃない。E
D{教授}ガーゴイル事件はまだ解決していないし、彼女はこの件に関しては潔白だ。
私の視線を離れていないからね。
{教授}今、私たちに必要なのは敵じゃなく仲間だ。F
E{教授}特に、相手が善意を示している場合はね。
{教授}なんにせよ、彼女が誰にも危害を加えていないのは事実だ。違うか?F
Fペルシカですが、教授……
{教授}安心しろ、君の心配は始めからわかっていたさ。
 私はペルシカに目配せをした。
私がとっくにイオスの正体に気づいていたと知り、ペルシカはゆっくりと手を降ろす。
ペルシカ教授がそこまで仰るのでしたら……わかりました。
ソルは、ははは……とにかく、みんな無事で良かったよ!
ナシタソル……これは一体どういうことだ?
ソルよくわかんないけど、ペルシカすごく怒ってるみたい。ここは黙ってたほうがいいと思う。
{教授}それで、ペルシカ。そっちで何があったんだ?
ペルシカはい。先ほど通信でお伝えした通り、異相レンジャーΩが突然暴走したんです。
メリル体から不思議なパワーがほとばしってた、彼が普段持つオペランドの数十倍はあるわね。
メリルそれにあの目、完全に別人だったし。とんだ超展開よ。
ナシタ監督、来てたのか。Ωは……
メリル何も言わずに劇場のほうに走ってったよ、あんなの誰にも止められやしない。
ペルシカすぐに教授にご連絡したのですが、通信が途絶えてしまって。
ペルシカそちらの状況が心配だったので、さっそく駆けつけました。それで、暴走したガーゴイルたちを目にしたというわけです。
ソルつまり、異相レンジャーΩとガーゴイルは、同じタイミングで暴走したってこと?
ペルシカそうなります。時間から見ても、二つの事件には関連性があるはず。
ペルシカそれに、あの突然大きく変化を遂げる様子……酷似しています、私たちのよく知る怪物たちに……
ソルそれって……エントロピー?
ペルシカ異相レンジャーΩが、エントロピー化した可能性は大いにありますね……
ソルまさか?パフォーマンスの時はピンピンしてたのに、いつの間に……
ペルシカウイルスの潜伏期間には揺れ幅がありますし、エントロピーは偽装に長けています。例えばオディールのように。
ペルシカ隠していただけで、とっくにエントロピー化していたのかもしれません。
{教授}とにかく、まずは彼を探そう。異相レンジャーΩはどこにいるんだ?
メリル人を遣った、あのキツネたちにも声をかけてる。すぐに見つかるはずよ。
ランコメリルの姐さん、ただいま戻りやした。
メリル噂をすればなんとやら。どうだった?
ランコ面目ございやせん、カラオケ1号――もとい異相レンジャーΩは、その、見つかりやせんで……
ソルえっ、戦闘服着てたよね?結構目立つはずだけど。
メリル広いバーバンクで身を隠すのは、そう難しくはない。
ランコあっしがガーゴイルを検査してた時、Ωと一緒だったんでさァ……こうなると知ってたら、止められたんですが……
ペルシカもしかしたら、その時にガーゴイルにエントロピーの種を埋め込んだのかも。
(選択)1.おそらくは。G
2.そうなのかな……?G
G 私は傍で不安そうにしている猫を一目見た。
メリルそのウイルスとやらが何なのか知らないけど、Ωがバーバンクを離れたことは一度もない。
ペルシカあるいは、何者かが外部からウイルスを持ち込んだ。
メリルファイアウォールの管理を怠ってるって言いたいの?
メリル他所のエージェントなんてめったに入れないわ。七花とクロ、それとナシタやパズルを除けばだけど……
ナシタパズル……あいつがそんな……
イオスここで勘繰っていても仕方がないわ。それよりも、早いところ感染したエージェントを探したらどう?
ソルそうだよ!ステージを壊す陰謀は、あたしとナシタで阻止できたけど。あいつがここで手を引くとは思えない。
ソル一度あることは必ず二度ある。はやくΩを見つけないと!
ランコでも、捜すのはあっしらがもう……
ペルシカトレーダーとエージェントによる捜索だけでは足りません。それに、フェスティバル自体も捜索のペースに大きく影響します。
ペルシカメリルさん、事態は急を要します。どうか――
メリル断る。
ペルシカえっ?
メリルフェスティバルを中断させて、浄化者に徹底捜査させろと言いたいのね?
メリル不可能よ。
ソルで、でも、みんなの安全に関わることなんだよ!?
ソル普通のエージェントが、あんたと同じ考えだとは思えないな。
イオス申し訳ないけれど、メリルさんの判断が正しいわね。
ソルえっ!?
イオスフェスティバルの開催はバーバンクの使命よ、おのずと最上級の優先レベルを有するわ。
メリルそう、でもそれだけじゃない……
メリルバーバンクのエージェントの数は膨大だけど、彼らのほとんどは「襲撃」や「避難」といった複雑な状況を理解できない。
メリル強制的に命令を下しても、混乱に陥るだけよ。
ソルた……たしかに……
イオスそれに教授の立場からしても、ここで大勢の浄化者に出くわしたくはないでしょうし?
 イオスは私に向かってウィンクしてみせた。
ソルでも、だったらどうするのさ?
ソルΩがどこにいるのかも、何をする気かも、いつ動くかもわからないんじゃ……
ソル手の施しようがないよ。
イオス「舞台の主役」は、往々にして過酷な決断を担う。
イオス貴方だったらどうする、教授?
ペルシカ教授……
 どうしたらいい?
 私の脳は素早く回転し始めた。何か手がかりはないのだろうか?
 このセクターを訪れてからの様々な記憶が、脳裏で次々とつながってゆく。
H(選択→K)1.(敵の目的を分析)I
2.(現在の情況を分析)J
I{教授}敵はエントロピーだ。通常、奴らはエージェントの感染を目的としている。H
J{教授}第一に、フェスティバルは中断できない。
第二に、ここのエージェント全員を守るには人手が足りない。
H
K{教授}(待てよ、フェスティバルを逆に利用してしまえば……)
 
イオス自分の職業を利用してイマーシブシアターをデザインし、敵を人形の領域に誘い込んだのよ。
イオスそして「パフォーマンス」の途中で、敵に危険性の極めて高いギミックを自ら起動させた。
イオス観客は皆、リアルなパフォーマンスだと思っていた。そして舞台が終わって初めて、それが公然たる殺人だと気づいたの。
 
(選択)1.(劇にまつわる要素を集める)L
2.(舞台にまつわる要素を集める)M
L{教授}盛大な劇、それと……N
M{教授}セクターを舞台としたパフォーマンス、それと……N
N 
エージェントえっ、異相レンジャーΩの後輩なの?そんな設定あったっけ。
エージェントあ、そういえば、十何話か前にそれっぽいこと言ってたな……まさかの伏線回収!?
イオス役者にとっては、役に入りすぎて困ることはないでしょう。
メリルまぁね。役者じゃないなら、気をつけたほうが身のためだけど……
 
(選択)1.(脚本にまつわる要素を集める)O
2.(没入感にまつわる要素を集める)P
O{教授}それと、制御を可能とするシナリオ。Q
P{教授}それと、役に入り込める演出。Q
Qイオスどうやら、答えは見つかったみたいね。
{教授}たぶんね。
{教授}メリルさん、「取り引きを勝ち取る真のチャンス」が巡ってきたようだ。
メリルへぇ、この状況を解決できるって言いたいの?
{教授}それだけじゃない。フェスティバルを絶頂まで盛り上げてみせるさ。
{教授}君さえ協力してくれたらね。
ネコニャー……
 抱いていたカラフルな猫を下ろし、私はメリルに手を伸ばした。