劇場全体が歓声の渦に包まれた。 目の届くところでは、エージェントたちが次々と変身を遂げるか、 ブレスレットを掲げステージへとオペランドを託している。 | |||
きらきらと輝く無数の光の柱が、バーバンクセクターの夜空を駆けてゆく。 地平線に差し昇る巨大な太陽が、月明かりの清光をかき消した。 | |||
イオス | 誰もが物語の主人公であり、誰もが物語を終幕へと推し進める。 | ||
イオス | ふふふ……素晴らしい舞台だったわ。これを見れただけでも、貴方と同行した甲斐があった。 | ||
{教授} | それだけじゃない。さっきの質問を覚えてる? | ||
イオス | ……クレシェンテ劇場でのことね?あなたこそ覚えていたなんて。 | ||
イオス | どうして娯楽を追い求めるの?この欲望はどこからくるの? | ||
イオス | プログラムが定めたものなら、それは果たして本物?本当の欲望と言えるの? | ||
イオス | それとも、誰かに作り出された偽りの感情? | ||
イオス | ……貴方はどう思う、教授? | ||
{教授} | あの時は、ガーゴイルのせいで答えられなかったから。 | ||
イオス | ……このパフォーマンスがその答えだと言いたいの? | ||
{教授} | この光景を目にしたあなたになら、もうわかっているはずよ。 | ||
イオス | 驚いたわ……だけど、悪くはない回答ね。 | ||
イオス | でも、まだ一つ質問があるの。 | ||
イオス | 貴方は、これが正しい結末だと思う? | ||
{教授} | なんのこと? | ||
イオス | ここのエージェントたちは興奮しきっているわ。彼らのコマンドに、これほどの高揚が記されたことは今までなかった。 | ||
イオス | エージェントたちに自我が芽生えることは、創造主の意図に反する。 | ||
イオス | 貴方はそれが、本当に正しいと思う? | ||
彼女は私を見た。ステージの鮮やかなイルミネーションが、 瞳の中を煌めいては流れてゆく。 まるで燦然たる星空が双眸に収まっているかのようだ。 | |||
その厳かな語気に、私はふと気づいた。 この質問への答えが、彼女の真の目的なのだということを。 | |||
(選択) | 1.正しいよ、それに意味のあることだと思う。 | A | |
2.好ましくはないけど、すでに起きてることだから。 | B | ||
3.どっちでもいいかな。 | C | ||
A | イオスが驚いて目を見開く。 そして宝物を手に入れたかのように、満足気に微笑んでみせた。 | ||
イオス | それが貴方の答えなのね……ありがとう、よく理解できたわ。 | D | |
B | イオスはいたずらっぽく私に瞬きしてみせた。 | ||
イオス | 起きたことだから、どうしたの?教授にはすべてを復元する権限があるのでしょう? | ||
イオス | それとも貴方には、他にもっと重要な何かがあるとでも? | ||
{教授} | あなたがオアシスに来たら、教えてあげる。 | ||
イオス | はぐらかすのがお上手なのね、私の責務を知っているくせに。 | D | |
C | イオスは残念そうに首をふる。 | ||
イオス | ほんと、相変わらず隙のない御方。 | ||
イオス | つまりは事がどう運ぼうと、気にならないわけね……ふふ、まるで神そのものね。 | D | |
D | {教授} | まぁ、私がどう答えようと、あなた自身の考えを改める必要はないよ。 | |
{教授} | あなたの意志を左右する権利は、私にはないからね。 | ||
イオス | 「どう考えようと事態は変わらない。そこから誰がどんな答えを得ようと、その者の自由だ」、そう言いたいのね? | ||
イオス | 「自由」。マグラシアではあまりにも貴重だわ…… | ||
彼女はそう感嘆しながら視線をそらした。 彼女の視線を追って、白昼のように明媚な夜空に目を向ける。 | |||
{教授} | ……バーバンクの迎えた初めての「昼」か。 エージェントたちに誤った印象を与えないといいけど。 | ||
イオス | 「誤った」印象って? | ||
{教授} | 例えば、太陽は地上で作られているだとか。 | ||
イオス | あながち間違いではないと思うけど?マグラシアの太陽も星も、すべて人の手で作られたものでしょう? | ||
イオス | 来る日も来る日も、日は昇りまた沈む。彼らはそうして、明確な使命を携えて前へと進み続ける。他には目もくれずに。 | ||
{教授} | 今もそうなの? | ||
イオス | 今は違うわ。いいえ、とっくに違っていたのかもしれない。 | ||
私たちの会話に、軽快な通知音が頭上から割り込んできた。 | |||
空にある巨大なプログレスバーは、すでに99%に達している。 最後の1%は言うまでもなく、ステージ上のヒーローたちだ。 | |||
異相レンジャーS | こいつ、思ったより手強いな。さすがはあたしたちの指導者だ…… | ||
異相レンジャーN | いまさら褒めたところで、奴が手を引くものか。 | ||
異相レンジャーΩ? | …… | ||
二人からの激しい牽制を受けていながら、異相レンジャーΩに慌てる様子はなく、 自身の防衛ラインを淡々と維持し続けている。 | |||
異相レンジャーN | ……セクターのオペランドを吸収しているのだ。 奴のいる舞台とコンソールとの繋がりを断たなくては! | ||
異相レンジャーS | なるほど、よくわかんないけど……まぁ、見てろって! | ||
そう言うと、異相レンジャーSの装甲が眩しく輝き始めた。 彼女が剣を振り下ろしたとたん、舞台が真っ二つになった! | |||
{教授} | ……さすがにオーバーすぎない? ペルシカがエニグマのオペランドを吸収した時さえ、こうはならなかったのに。 | ||
イオス | そうね。おおかた、メリルさんが裏で舞台を操作しているんでしょう。 | ||
(選択) | 1.それにしたってやりすぎよ。 | E | |
2.こういうのがグッと来るのよね! | E | ||
E | イオスは微笑んで頷いた。 | ||
イオス | 私たちのブレスレットが、最後の二つね。 | ||
イオス | 教授、どうしたい? | ||
(選択) | 1.彼女たちを応援しよう。 | F | |
2.これで私たちも異相レンジャーね! | F | ||
F | 私たちは目を合わせて一笑すると、 ブレスレットを頭上高く掲げ、光の中へと溶けていった。 | ||
…… | |||
ソルとナシタはエントロピー化した異相レンジャーΩを見事倒し、 舞台の上で彼を拘束した。 | |||
空に浮かぶプログレスバーの進度は100%に達していた。 軽快な通知音が鳴って、バーバンクにカラーリボンの雨が降り注ぐ。 | |||
それと同時に、セクター全体から雷鳴のような歓声が沸き起こった。 |