逆音共振 PART.3 同位

Last-modified: 2025-02-02 (日) 19:36:48

バーバンクセクター、人混みの中。
 ペルシカはソルを追う途中、何かに感づいたのか、
ふいに教授のいるほうをふりむいた。
ペルシカ教授……確かに危険はなさそうだけど、なんだか心配だわ……
ソル見つけた!ペルシカ、リコはあっちだ!
ペルシカは、はい!
 キツネの耳が再び街角に現れる。ソルが即座に駆け寄った。
ソルこんの、キツネ娘……
??こーんッ!?
ソルやっと捕まえたぞ!まったく、数日会わなかっただけで無視……
ソル……あれ?
 ソルに捕まったエージェントは、驚いた表情でソルを見上げた。
??あ、あのォ~……
ペルシカソルさん、間違えてますよ。
ソルうわぁっ、ご、ごめん!
 相手の耳を掴んでいた手を離し、ソルは謝った。
ソル知り合いに似てたからさ、ついシグネチャコード確認し忘れちゃって……
リコそりゃ当たり前さ。なんたって、リコとおんなし通貨トレーダーだかんねェ。
ソルあっ、リコ!どっから出てきた!?
リコ名前を呼ぶヤツがいると思って来てみりゃあ、なんだい、お前さんたちかい。
リコはれまっ!リコのカワイイ後輩に何してくれてんだい?
ソルあーっ!このキツネ頭、あんたの後輩だったのか!
 ソルは頭を掻くと、うろたえるキツネのエージェントに向き直った。
ソルあ、あの……ホ、ホントにごめん。てっきりリコかと思って、つい手が出ちゃった……
リコって、リコだったら手ェ出していいんかーい!?
 リコの後輩であるキツネエージェントが、ようやく落ち着きを取り戻す。
??リコ先輩、お知り合いで?
リコそっ、こいつらが例の追放者。
リコお前さんらにも紹介したろかね。こいつァ通貨トレーダーのランコってんだ。
ソル通貨トレーダーも量産されてたの?
リコそりゃそうだ!こーーんなにデッカいマグラシアを、リコ一人でどう駆けずり回れってのさ!?
ソルでも、あたしらはリコにしか会ったことないよ?
リコふっふっふ。そりゃあまぁ、リコは通貨トレーダーどもの元締めだかんねェ~!
リコオアシスみたいなボロい相手に、リコが出ないでどーするってんだい!
リコほれ、ランコ。こいつらに自己紹介してやんな。
ランコな、なァんだ、オアシスの御客人でしたかィ。リコ先輩からお噂はかねがね、あっしはランコでさァ。お見知りおきを……
ソルそうだったんだ。まさかおべんちゃら使いのリコに、こんなにマトモな後輩がいたなんてね。
リコチッチッチ……こいつを甘く見るんじゃないよ。なんたってランコは、後輩の中でもいっちゃん優秀なんだ。能力は言わずもがな、誰よりも通貨トレーダーのみんなを大事にしてんだから……
リコ……ん?ちょい待ち、今「おべんちゃら使い」って言ったァァ!?
ペルシカお元気そうでなによりです、リコさん。
ペルシカしばらくお見かけしなかったので、何かあったのかと心配したんですよ。
リコオアシスみたいな金ヅルを、リコがほっとくかっての……
ソルねぇ、今、「金ヅル」って言ったよね?
リコお得意先だよ、お得意先!
ランコ最近は、その……
ランコあちこち不景気ですんで……
リコんー……ま、そうなんだけどさ。いいじゃんか、問題は解決したんだし?
リコオアシスに顔出してなかったのは、バーバンクのビッグな商売にかまけてたからさァね。
 リコは小さな手を振って、彼女の成果をペルシカたちに見せた。
リコほォ~らごらんよ!このライト!この彫像!ほいでもって、この巨大スクリーン!
リコぜ~ッんぶ徹夜の成果だよッ!どんなもんさね!
ソルこれ、ぜんぶ一人でやったの?
リコあたぼーよッ!……と、言いたいトコだ・け・ど。
リコ逆なんだな~、フェスティバルはもっぱらランコの担当なのさ。リコはほんのちょ~っち外から資源を調達しただけさね。
リコいやぁランコ、お前、成長したねェ……母さんは嬉しいッ!!こんこーーんッ!!(涙)
ソルいつからオカンになったんだお前は……
ランコあ、あっし、頑張りやす!リコ先輩ッ!
ランコそういや、昨日おっしゃってた品物のリスト、整理できやしたゼ。先輩、いつ頃お時間頂けやすか?
リコへっ?あっ……て、手が空いたら目ェ通しとくよ!
ソル面倒な仕事、後輩に押し付けてるだけじゃん……
リコな・ん・だ・って~~?
ソルゴホン……べつに?
リコと・に・か・く!リコは忙しいんだッ!お前さんたち、暇ならそのへんブラついてきちゃどうだい。あっ、教授さんによろしくゥ~!
ランコえっ、リ、リコ先輩、ならあっしは……
リコそのへんで休んでな!こんなもん、リコ一人で充分さ!
ペルシカリコさんの負けず嫌いが発動しちゃいましたね、ソルさん。
ランコえぇ……っと、そうだ。あの、お二方。あっしがバーバンクを案内しやしょうか?
ペルシカいえ、大丈夫です。こちらにはガイドがいますから。
ランコまぁまぁそう言わず!オアシスの皆様方にゃ、常々お会いしたいと思ってやしたんで。
ランコ一般のガイドエージェントなんざ無知なもんでさァ。フェスティバルのことなら、あっしらトレーダーにお任せくだせェ!
ソルううん、やっぱいいよ。あたしたちのガイド、かなりちゃんとしてる人だし。
ソルイオスさんって名前なんだけど、親切で優しくて、お客さんとしっかり結びついてるっていうか……んー、どう言ったらいいのかな……
ペルシカソルさん!スクリーンを!
ソルあっ、そうそう、あれあれ!あんなふうに教授と結びついてるのがその……
ソル……って、えええええ???きょ、教授?教授と、イオスさん……!?
 巨大なスクリーン上に、突如奇妙な光景が映し出された。
緊張感のある音楽を背景に、よく知った二人が何者かに担がれ、
ゆっくりと燃え盛る炎へ運ばれようとしている。
ランコホ、ホントに御客人と結びついてらァ……
ソル感心してる場合かッ!こ、このままじゃ教授たちが丸焼きにされちゃうよ!早く助けに行かないと!!
ペルシカ謎の黒服エージェントに縛り上げられて燃やされるだなんて、一体なにがどうしたらこんなことに……
 
一時間前。
イオスつまり、バーバンクでの付き添いを許してくれるのね?
イオスそれじゃ、よろしく頼むわね。教授。
 イオスは艶やかに笑いながら私の腕に絡んできた。
{教授}なにを……
 彼女の真意を推し量ろうとした時、ふいに周囲の人々がざわつき始めた。
黒衣のエージェントカップル発見!
黒衣のエージェント奴らを捕えろ!
 私が反応できずにいると、恐ろしげな黒衣のエージェントたちが次々と現れ、
私とイオスを取り囲んできた。
黒衣のエージェントターゲットを発見したぞ!N様に連絡だ!
???よくやった!皆の者、かかれ!
 口笛とともに、スケートシューズを履いた黒い人影が、電光石火のごとく接近してくる。
スケーター悪の制裁を受けよ、忌まわしいカップルめ……
スケーター……ん?あ、あれっ?ど、どうして教――
 ドンッ!
 スケーターはブレーキが間に合わず、勢いよく私に激突してきた。
スケーターいたたた……
スケーター教授、どうしてあなたが……
{教授}ん?
スケーター今はパフォーマンス中なんだ……すまない、教授!
{教授}ちょ、待っ……えっ!?
 私の言葉を待たずに、スケーターは慣れた手付きで私を抱きかかえた。
同じように、他のエージェントがイオスを捕まえる。
イオス私もなの?まったく……
スケーター当然だ。乳繰り合いしか脳のないカップル風情が、私から逃げられると思うな!
スケーター諸君!我らが影に隠れ、寂しさに耐え忍んでいた時に、この忌々しいリア充エージェントどもは堂々とフェスティバルを楽しんでいたのだ!
スケーターこれを許してなるものか?否、断じて許せん!我らは災厄より生まれしダークレンジャー、奴らを幸せになどさせてたまるかッ!
スケーターいざ、この私ダークレンジャーNとともに反撃の狼煙を上げるのだ!フェスティバルを厄災で覆い尽くし、不義なる世界に大いなる制裁を与えよ!
黒衣のエージェントたち制裁!制裁!制裁!
ダークレンジャーNこのカップルを第一の生贄にしてやろう!
ダークレンジャーN光栄に思え。その体から燃え上がる炎で、我らの明日は照らし出されるのだからッ!
黒衣のエージェントたちそうだそうだーーッ!!
 ドローンのカメラが迫るにつれ、あたりの雰囲気もクライマックスへと近づいてゆく。
(選択)1.カップルじゃないんだけど……A
2.イオスッ!やめて、彼女を離しなさい!狙いは私なんでしょう!?B
3.イオスが可愛いのは認めるけど、実は私も女なの……C
4.気持ちはわかるけど、どうしてカップルを燃やす必要が……D
AダークレンジャーNまさかのドクズ……連れて行け!E
Bイオスあぁ……私のことはいいの。教授、あなたがご無事なら……
 私たちのノリの良さに、黒衣のエージェントたちは称賛の眼差しを向けてきた。E
CダークレンジャーNなるほど……それがどうした?女同士がベタベタしよって、連れて行け!E
DダークレンジャーNわからぬか?我々は平等な暮らしを約束されていたはずだった。だが自らの幸せにしか興味のない異端者が現れれば……
ダークレンジャーN人と人との平等はたやすく打ち壊されてしまうのだ!そうなれば、我らは凄惨な孤独者の群れへと押しやられる!お前たちを燃やし尽くさずしてなんとする!?
{教授}カップルがみんな幸せなわけじゃないけどね……
ダークレンジャーNこの身の程知らずがッ!連れて行け!E
E そうして、私たちは黒衣のエージェント……
ダークレンジャーたちに火刑場へと連れて行かれた。
{教授}誰よ、エージェントたちに余計な知識を吹き込んだのは……