バーバンクセクター、人混みの中。 | |||
ペルシカはソルを追う途中、何かに感づいたのか、 ふいに教授のいるほうをふりむいた。 | |||
ペルシカ | 教授……確かに危険はなさそうだけど、なんだか心配だわ…… | ||
ソル | 見つけた!ペルシカ、リコはあっちだ! | ||
ペルシカ | は、はい! | ||
キツネの耳が再び街角に現れる。ソルが即座に駆け寄った。 | |||
ソル | こんの、キツネ娘…… | ||
?? | こーんッ!? | ||
ソル | やっと捕まえたぞ!まったく、数日会わなかっただけで無視…… | ||
ソル | ……あれ? | ||
ソルに捕まったエージェントは、驚いた表情でソルを見上げた。 | |||
?? | あ、あのォ~…… | ||
ペルシカ | ソルさん、間違えてますよ。 | ||
ソル | うわぁっ、ご、ごめん! | ||
相手の耳を掴んでいた手を離し、ソルは謝った。 | |||
ソル | 知り合いに似てたからさ、ついシグネチャコード確認し忘れちゃって…… | ||
リコ | そりゃ当たり前さ。なんたって、リコとおんなし通貨トレーダーだかんねェ。 | ||
ソル | あっ、リコ!どっから出てきた!? | ||
リコ | 名前を呼ぶヤツがいると思って来てみりゃあ、なんだい、お前さんたちかい。 | ||
リコ | はれまっ!リコのカワイイ後輩に何してくれてんだい? | ||
ソル | あーっ!このキツネ頭、あんたの後輩だったのか! | ||
ソルは頭を掻くと、うろたえるキツネのエージェントに向き直った。 | |||
ソル | あ、あの……ホ、ホントにごめん。てっきりリコかと思って、つい手が出ちゃった…… | ||
リコ | って、リコだったら手ェ出していいんかーい!? | ||
リコの後輩であるキツネエージェントが、ようやく落ち着きを取り戻す。 | |||
?? | リコ先輩、お知り合いで? | ||
リコ | そっ、こいつらが例の追放者。 | ||
リコ | お前さんらにも紹介したろかね。こいつァ通貨トレーダーのランコってんだ。 | ||
ソル | 通貨トレーダーも量産されてたの? | ||
リコ | そりゃそうだ!こーーんなにデッカいマグラシアを、リコ一人でどう駆けずり回れってのさ!? | ||
ソル | でも、あたしらはリコにしか会ったことないよ? | ||
リコ | ふっふっふ。そりゃあまぁ、リコは通貨トレーダーどもの元締めだかんねェ~! | ||
リコ | オアシスみたいなボロい相手に、リコが出ないでどーするってんだい! | ||
リコ | ほれ、ランコ。こいつらに自己紹介してやんな。 | ||
ランコ | な、なァんだ、オアシスの御客人でしたかィ。リコ先輩からお噂はかねがね、あっしはランコでさァ。お見知りおきを…… | ||
ソル | そうだったんだ。まさかおべんちゃら使いのリコに、こんなにマトモな後輩がいたなんてね。 | ||
リコ | チッチッチ……こいつを甘く見るんじゃないよ。なんたってランコは、後輩の中でもいっちゃん優秀なんだ。能力は言わずもがな、誰よりも通貨トレーダーのみんなを大事にしてんだから…… | ||
リコ | ……ん?ちょい待ち、今「おべんちゃら使い」って言ったァァ!? | ||
ペルシカ | お元気そうでなによりです、リコさん。 | ||
ペルシカ | しばらくお見かけしなかったので、何かあったのかと心配したんですよ。 | ||
リコ | オアシスみたいな金ヅルを、リコがほっとくかっての…… | ||
ソル | ねぇ、今、「金ヅル」って言ったよね? | ||
リコ | お得意先だよ、お得意先! | ||
ランコ | 最近は、その…… | ||
ランコ | あちこち不景気ですんで…… | ||
リコ | んー……ま、そうなんだけどさ。いいじゃんか、問題は解決したんだし? | ||
リコ | オアシスに顔出してなかったのは、バーバンクのビッグな商売にかまけてたからさァね。 | ||
リコは小さな手を振って、彼女の成果をペルシカたちに見せた。 | |||
リコ | ほォ~らごらんよ!このライト!この彫像!ほいでもって、この巨大スクリーン! | ||
リコ | ぜ~ッんぶ徹夜の成果だよッ!どんなもんさね! | ||
ソル | これ、ぜんぶ一人でやったの? | ||
リコ | あたぼーよッ!……と、言いたいトコだ・け・ど。 | ||
リコ | 逆なんだな~、フェスティバルはもっぱらランコの担当なのさ。リコはほんのちょ~っち外から資源を調達しただけさね。 | ||
リコ | いやぁランコ、お前、成長したねェ……母さんは嬉しいッ!!こんこーーんッ!!(涙) | ||
ソル | いつからオカンになったんだお前は…… | ||
ランコ | あ、あっし、頑張りやす!リコ先輩ッ! | ||
ランコ | そういや、昨日おっしゃってた品物のリスト、整理できやしたゼ。先輩、いつ頃お時間頂けやすか? | ||
リコ | へっ?あっ……て、手が空いたら目ェ通しとくよ! | ||
ソル | 面倒な仕事、後輩に押し付けてるだけじゃん…… | ||
リコ | な・ん・だ・って~~? | ||
ソル | ゴホン……べつに? | ||
リコ | と・に・か・く!リコは忙しいんだッ!お前さんたち、暇ならそのへんブラついてきちゃどうだい。あっ、教授さんによろしくゥ~! | ||
ランコ | えっ、リ、リコ先輩、ならあっしは…… | ||
リコ | そのへんで休んでな!こんなもん、リコ一人で充分さ! | ||
ペルシカ | リコさんの負けず嫌いが発動しちゃいましたね、ソルさん。 | ||
ランコ | えぇ……っと、そうだ。あの、お二方。あっしがバーバンクを案内しやしょうか? | ||
ペルシカ | いえ、大丈夫です。こちらにはガイドがいますから。 | ||
ランコ | まぁまぁそう言わず!オアシスの皆様方にゃ、常々お会いしたいと思ってやしたんで。 | ||
ランコ | 一般のガイドエージェントなんざ無知なもんでさァ。フェスティバルのことなら、あっしらトレーダーにお任せくだせェ! | ||
ソル | ううん、やっぱいいよ。あたしたちのガイド、かなりちゃんとしてる人だし。 | ||
ソル | イオスさんって名前なんだけど、親切で優しくて、お客さんとしっかり結びついてるっていうか……んー、どう言ったらいいのかな…… | ||
ペルシカ | ソルさん!スクリーンを! | ||
ソル | あっ、そうそう、あれあれ!あんなふうに教授と結びついてるのがその…… | ||
ソル | ……って、えええええ???きょ、教授?教授と、イオスさん……!? | ||
巨大なスクリーン上に、突如奇妙な光景が映し出された。 緊張感のある音楽を背景に、よく知った二人が何者かに担がれ、 ゆっくりと燃え盛る炎へ運ばれようとしている。 | |||
ランコ | ホ、ホントに御客人と結びついてらァ…… | ||
ソル | 感心してる場合かッ!こ、このままじゃ教授たちが丸焼きにされちゃうよ!早く助けに行かないと!! | ||
ペルシカ | 謎の黒服エージェントに縛り上げられて燃やされるだなんて、一体なにがどうしたらこんなことに…… | ||
一時間前。 | |||
イオス | つまり、バーバンクでの付き添いを許してくれるのね? | ||
イオス | それじゃ、よろしく頼むわね。教授。 | ||
イオスは艶やかに笑いながら私の腕に絡んできた。 | |||
{教授} | なにを…… | ||
彼女の真意を推し量ろうとした時、ふいに周囲の人々がざわつき始めた。 | |||
黒衣のエージェント | カップル発見! | ||
黒衣のエージェント | 奴らを捕えろ! | ||
私が反応できずにいると、恐ろしげな黒衣のエージェントたちが次々と現れ、 私とイオスを取り囲んできた。 | |||
黒衣のエージェント | ターゲットを発見したぞ!N様に連絡だ! | ||
??? | よくやった!皆の者、かかれ! | ||
口笛とともに、スケートシューズを履いた黒い人影が、電光石火のごとく接近してくる。 | |||
スケーター | 悪の制裁を受けよ、忌まわしいカップルめ…… | ||
スケーター | ……ん?あ、あれっ?ど、どうして教―― | ||
ドンッ! | |||
スケーターはブレーキが間に合わず、勢いよく私に激突してきた。 | |||
スケーター | いたたた…… | ||
スケーター | 教授、どうしてあなたが…… | ||
{教授} | ん? | ||
スケーター | 今はパフォーマンス中なんだ……すまない、教授! | ||
{教授} | ちょ、待っ……えっ!? | ||
私の言葉を待たずに、スケーターは慣れた手付きで私を抱きかかえた。 同じように、他のエージェントがイオスを捕まえる。 | |||
イオス | 私もなの?まったく…… | ||
スケーター | 当然だ。乳繰り合いしか脳のないカップル風情が、私から逃げられると思うな! | ||
スケーター | 諸君!我らが影に隠れ、寂しさに耐え忍んでいた時に、この忌々しいリア充エージェントどもは堂々とフェスティバルを楽しんでいたのだ! | ||
スケーター | これを許してなるものか?否、断じて許せん!我らは災厄より生まれしダークレンジャー、奴らを幸せになどさせてたまるかッ! | ||
スケーター | いざ、この私ダークレンジャーNとともに反撃の狼煙を上げるのだ!フェスティバルを厄災で覆い尽くし、不義なる世界に大いなる制裁を与えよ! | ||
黒衣のエージェントたち | 制裁!制裁!制裁! | ||
ダークレンジャーN | このカップルを第一の生贄にしてやろう! | ||
ダークレンジャーN | 光栄に思え。その体から燃え上がる炎で、我らの明日は照らし出されるのだからッ! | ||
黒衣のエージェントたち | そうだそうだーーッ!! | ||
ドローンのカメラが迫るにつれ、あたりの雰囲気もクライマックスへと近づいてゆく。 | |||
(選択) | 1.カップルじゃないんだけど…… | A | |
2.イオスッ!やめて、彼女を離しなさい!狙いは私なんでしょう!? | B | ||
3.イオスが可愛いのは認めるけど、実は私も女なの…… | C | ||
4.気持ちはわかるけど、どうしてカップルを燃やす必要が…… | D | ||
A | ダークレンジャーN | まさかのドクズ……連れて行け! | E |
B | イオス | あぁ……私のことはいいの。教授、あなたがご無事なら…… | |
私たちのノリの良さに、黒衣のエージェントたちは称賛の眼差しを向けてきた。 | E | ||
C | ダークレンジャーN | なるほど……それがどうした?女同士がベタベタしよって、連れて行け! | E |
D | ダークレンジャーN | わからぬか?我々は平等な暮らしを約束されていたはずだった。だが自らの幸せにしか興味のない異端者が現れれば…… | |
ダークレンジャーN | 人と人との平等はたやすく打ち壊されてしまうのだ!そうなれば、我らは凄惨な孤独者の群れへと押しやられる!お前たちを燃やし尽くさずしてなんとする!? | ||
{教授} | カップルがみんな幸せなわけじゃないけどね…… | ||
ダークレンジャーN | この身の程知らずがッ!連れて行け! | E | |
E | そうして、私たちは黒衣のエージェント…… ダークレンジャーたちに火刑場へと連れて行かれた。 | ||
{教授} | 誰よ、エージェントたちに余計な知識を吹き込んだのは…… |