逆音共振 PART.7 覓索

Last-modified: 2025-02-02 (日) 20:18:40

クレシェンテ劇場、楽屋。
ペルシカここでよろしいですか、教授?
{教授}ああ。
イオス……
{教授}イオス、どうかしたのか?
イオスあ……
イオスううん、平気よ。ただ、教授がこんな手段に出るとは思わなくて。
イオス教授、普段からエージェントにはこうなの?
(選択)1.勘違いするな、私だって普段は紳士だ。A
2.今回はやむを得なかったからね。B
A{教授}こうして目立たない所から、慎ましくフェスティバルを応援してるじゃないか。
イオスふふふ……楽しめて頂けてなによりだわ。さっきのパフォーマンスでは物足りなかったかしら?C
B{教授}被害が広がらずに済んだんだ、手際の良さを褒めてもらいたいね。
イオスその考え方、まるで浄化者ね。C
C{教授}それじゃ次は……
ニャー!
{教授}ん?
ペルシカ教授、お気をつけて!向こうから物音が聞こえます!
 ペルシカは手を掲げ、戦闘態勢を取った。
ペルシカまさか、またガーゴイルの暴走?
ペルシカまずは強制的に活動を停止させて……
クロま、ままま待った!ペルシカ、ストップ!味方だよ、味方!
ペルシカクロさん?それに七花さんまで。
 曲がり角からドローンを抱えたクロが、慌てふためいた様子で現れた。
彼女の背後に立つ七花の胸には、一匹のカラフルな猫が抱きかかえられている。
クロちぇっ、せっかくのスクープだったのにさ。教授がペルシカとイオスさんを薄暗い倉庫に連れ込んであんなことやこんなこと……トレンド1位ゲットできるチャンスだったのに!
クロあ~も~、この猫のせいでマジ台無し!
ネコニャーオ。
七花でもこの子、すっごく可愛いニャン♥毛色もとっても綺麗だし。よしよし……
ネコニャニャ~ン。
クロフン。こんな猫、バーバンクじゃ珍しくもなんともないじゃん!
ペルシカそれで、お二人はこんなところで何を?
クロおっと、しらばっくれたってム・ダ・ム・ダ!ぜ~んぶ聞いてたもんね~!
クロブン殴って気絶させたどっかの誰かを、どう処理しようか相談してたでしょ!
クロいやぁ~、まさかあの教授がねぇ。大人しい顔してやることダイタンなんだから~!
七花な、七花も聞いちゃった。教授、これって……
七花あれっ、こんなところに女の子?
 二人はスリープ状態のパズルを見つけた。クロの表情が瞬時に変わる。
クロ教授……あんた、まさか本気で……!?
(選択)1.どう見ても誤解だと思うけど。D
2.人の嗜好は自由だろ。E
Dクロチッ……ここで認めとけば一大スクープになったものを。F
Eクロう、うわぁぁぁ!こいつヤバすぎィィ!?F
Fペルシカおふざけはそこまでですよ、クロさん。こちらは仕事がありますので。
 ペルシカは二人に事のあらましを語った。
七花ガーゴイルが暴走を?
ペルシカはい、すぐにでも原因を突き止める必要があったんです。ですが、フェスティバルに影響が出ても困りますし……
ペルシカそれで仕方なくパズルさんを。
七花そうだったんだ……あ、もしかしたら、七花たちお手伝いできるかも★
七花何か理由をつけて、みんながガーゴイルに近づかないよう誘導すればいいんだよ。
七花それでライブの最中にアナウンスを流すの。できるよね、クロ?
クロそんなん朝飯前に決まってんじゃん、クロ様の得意分野だよ?
ペルシカありがとうございます、七花さん、クロさん。でもそれでは時間稼ぎにしかなりません。ライブが始まるまでに、ガーゴイルを徹底的に検査しておかないと……
ランコ検査なら、もう終わっちまいやしたゼ。
ペルシカラ、ランコさん!?
(選択)1.まさに神出鬼没。G
2.君はここで何を?G
Gランコいやァなに、アドミニストレーターからのお達しでして。楽屋に残ってるガーゴイルを調べ上げておけと。
ランコ見たところ、ヤツらにゃ初歩的なメンタルが搭載されてるようでさ。
ランコそ言やぁトレーダーん中でも、似たようなウワサが行き交ってやしてね。とある彫刻家が作品に命を吹き込みたくて、彫像に小細工を仕掛けたとかなんとか……
イオス初歩的なメンタルはとても不安定よ。少しでも気を抜いたら、異常プログラムに変貌する危険性だってある。
イオスでも外からの干渉がなければ、そう簡単に攻撃性を持ったりしないはずだけど……
ランコとにかく、楽屋のガーゴイルはあっしらが処理しておきやしたんで。今、リコ先輩がサプライ元を確認中でさァ。
ランコこれで、メンタルが暴走する危険性はなくなりやしたゼ。
クロはぇ~、何から何までご苦労さん……お金、取ったりしないよね?
ランコこーんッ!?クロの姐さん、そりゃ誤解でさァ……これもアフターサービスの一環、トーゼン無料ですゼ。
ランコただ、あっしの技術はリコ先輩ほど立派じゃあねェんで。ペルシカの姐さん、念のためもっぺん見といてもらえますかィ?
ペルシカわかりました、お手伝いします。
ペルシカそれにしても……ランコさんは初めからこちらに?
七花ランコさんだけじゃないよ。あなたたちが来る前から、三人ともここにいたの。
クロこのキツネ娘……「お疲れさんでやした、楽屋でご休憩なさってくだせェ」とか調子いいこと言っときながら……
クロここに着いたとたん急にサインねだってきてさ!マジありえなくない!?
ペルシカまぁ……お二人の人気からすれば、驚くこともないかと……
ペルシカそれにクロさんは、まんざらでもないのでは?
クロそりゃまぁ、そうだけどさ……一気に500人分はさすがに無理だって!
クロんな芸当ができんの、締切前の野良くらいのモンしょ!
七花ファンのためなら、七花は精一杯頑張るよ!それがアイドルのシゴトだもん★
七花まぁ、確かに数は多いけど……
七花このサイン、本当にファンにあげるものなんだよね?
ランコあたぼーでさァ!なんせお二人はバーバンクセクターの功労者、ファンは星の数ほどいまっせ。
ランコ言い換えりゃ、人気商品間違いなしってコトでさ!お二人のサインを頂けたら、この後のライブのVIPチケットをお譲りしやすゼ!
クロどこに自分のライブのVIPチケットを欲しがるヤツがいんのよ?
ランコ何をおっしゃる。おトモダチ、コイビト、ビジネスパートナー、誰に送っても喜ばれる逸品でさ!
ペルシカなんでも商売に結びつけてしまう……さすがは誰かさんの後輩ですね。
クロほんとそれ。この隙あらば入り込もうとする図々しさ、リコのヤツにそっくり!
ランコひぇぇぇッ、リコ先輩と比べるなんざ恐れ多い……先輩だったら今頃、ドッチにとってもオイシイ取り引きを持ち出してるでやんすよ。
クロへぇ~……?
ランコあっしがずーっと商いの何たるかを学んで、業績を上げようと躍起になってンのァ、先輩に追いつくためでさァ。
(選択)1.リコは確かに優秀な商人だ。H
2.君の言うリコは、確かにあのリコなんだな?I
Hランコこーんッ!教授さん、よくご存知で!
ランコあっしらトレーダー界隈じゃ、リコ先輩は伝説的な人物なんですゼ。J
Iランコんー……ま、わかんねェのも仕方ねっか。あっしらトレーダー界隈じゃ、リコ先輩は伝説的な人物なんですゼ。J
Jランコ現実とのコネクションロスト当初、セクターが次々と封鎖されっちまったせいで、あちこちでオペランドの流れが止まっちまいやして。
ランコ例えンなら、人間の血管が分断されるようなモンでさァ。そのせいで、マグラシア全土のオペランドシステムが崩壊しちまいやしてね。
ランコあっしらトレーダーはその波をモロに受けたわけでさ。酷い時にゃあ、オペランド不足が原因で仲間が「失踪」したことも……
クロそれマジ?配信でもしてスパチャ募ればよかったのに。
ペルシカクロさん。一般の方には配信なんて、そうやすやすと出来るものではないですよ。
ランコいいってことでさァ。クロの姐さんには生き延びる術がある、それも才能のうちでやんすよ。
ランコけどまァ、あっしらは弱すぎたんでしょう。武力もなけりゃ特技もない。規則通りに商う他に、なんの取り柄もありゃしない。
ランコそんな折に、リコ先輩が立ち上がったんでさァ。
ランコ先輩はあっしらに一致団結しろと、情報を共有して互いに助け合えと、チームとしての商いを呼びかけた。
ランコ先輩に教えられて、あっしらトレーダーは古い規則を取っ払い、新しいビジネスをどんどん取り入れやした。そしたらだんだん具合が良くなって、マグラシアのオペランドも再び循環し始めたってワケでさ。
クロうっわぁ……なにそれ、まるで主役みたいじゃん!?あのリコだよ、リ・コ!
クロ能あるキツネは尻尾を隠すってヤツ?それとも何、ギャップ萌え狙いとか?
ペルシカいずれにせよ、彼女が危機的な情況から商機を見いだせるのは確かですね。
ランコまさにそんとーりッ!あっしらトレーダーの嗅覚がこンだけ鋭くなったのも、ぜ~んぶリコ先輩のおかげでさァね!
ランコあっしはリコ先輩に誓いやした。どんな困難があろうとも、必ず通貨トレーダーたちをより良い未来へ導いてみせると!
ランコってなワケで、七花の姐さん、それにクロの姐さん!ランコの夢のために力を貸しておくんなせェ!
クロなんであんたの夢のために、この腕を使い潰さなきゃなんないのよ……
七花うん、わかった!
クロな、ナナっぺ?
七花誰かに憧れて頑張ろうとする気持ち、七花、すっごくよくわかるよ!それがアイドルの存在意義だもん!
七花ファンたちの期待には背けない、もちろんリコさんのファンの期待にも!
七花この情熱をバーバンクのファンたちに届けよう、ランコさん!
クロえーと、リコはアイドルじゃないんだけども、そのへんは……
七花クロも手伝ってくれるよね?
クロうっ……ナナっぺがそう言うんなら、しゃーない。
ランコこーんッ!七花の姐さん、恩に着やす!
ランコお礼にライブの準備、あっしもお手伝いしやすゼ!
ランコおっと、VIPチケットを忘れるとこだったィ!
ペルシカい、いえ、それは……
ランコまぁまぁまぁ、そう言わず!オアシスの皆様方にゃ世話ンなっとりやすから、どうかお納めくだせェ。
七花七花も、教授たちに特等席から楽しんでもらいたいな♥
(選択)1.それじゃ、お言葉に甘えて。K
2.七花とクロのステージは、ぜひ見ておきたかったんだ。K
K七花ランコさんも一緒にどうかな?
ランコすいやせん、あっしは観客席の売り子担当ですンで。
クロもはや商売好きってレベルじゃねーな……
{教授}……
ペルシカそれじゃ決まりですね。ガーゴイルを検査し終えたら、みんなでライブを見に行きましょう。
イオス楽しみだわ。
ペルシカランコさん、素敵な機会をありがとうございます。
ランコとんでもねェ、あっしも光栄でさァ!えっへへへ……
ランコそんじゃ、また後で!約束ですゼ!
 ランコは真摯な笑顔を浮かべた。
 
一方、トレーニングルーム。
ソルやめろッ、ダークレンジャーN!
ナシタようやく現れたか、異相レンジャーS!
ソルこれ以上、好きにはさせないぞ!お前の……えーと……
ナシタ……お前の悪行。
ソルお、お前の悪行もここまでだ!
ソル正義の鉄槌を受けてもらうぞ!
 ソルは無意識に二振りの剣を抜いたが、ふと何かに気づいて動きを止めた。
ソルあ……
ナシタソル、動きが間違ってるぞ!
ソルご、ごめん、いつもの癖でつい……
ソル正義の鉄槌をぉ……受けてもらうぞッ!これでいい?
ナシタそれはΩのポーズだ。異相レンジャーSなら右手をもっと下に、左足は外に出せ。そのほうが見映えがいい。
ソルむ、難しいな……
ナシタもう20分練習だ、ここの動きと足運びを覚えておけ!
 
ソル異相レンジャーの力、我が正義の心に応えよ!
機械音声【アー・ユー・レディ?】
ソル異相レンジャー!変ッ身ッ!
ナシタカット!
ナシタ基本はまずまずだな。
ソルま、まずまず……
ナシタ演技はそう容易くないぞ。とりあえず休憩にしよう。
ソルあぁ、やっと休憩!
ナシタすまない、厳しすぎたか?
ソルううん、ゼンゼン!思ったより面白いね!
ナシタならよかった。ソルの進歩もかなりのものだな、驚いたぞ。
ソルあはは、ほとんど素だけどね……異相レンジャーSってすごく慎重だから、挑戦しがいがあるよ。
ソルあたしだったら危ない時、すぐに変身して飛んでっちゃうな。敵の動きなんて待ってらんないもん。
ナシタそれじゃダメだ。怒りが一定に達しないと、変身アイテムは機能しないからな。
ナシタ異相レンジャーを突き動かせるのは怒りだけだ。怒りの心が迷いを払い、勇気と正義を奮い起こす。
ソルなんで怒りがなきゃだめなの?そのまま敵をやっつけたって、勇気と正義は証明できるじゃん。
ナシタそれとこれとじゃわけが違う。
 ナシタはにわかに立ち上がると、真剣な眼差しでソルを見た。
ナシタその……悪役が説明するのも変な話だが。異相レンジャーにとっての「変身」は、単に身体能力が上がるだけじゃない。
ナシタそれは普段の日常を捨て、人知れず危険な世界へと足を踏み入れ、平和のために戦うことを意味する。
ナシタ変身を発動する瞬間は、彼らが覚悟を決めた瞬間なんだ。
ナシタその過程を完璧に表現することで、人々は信じることができる。彼らを一般人からヒーローへ変えたのは、愛や勇気、そして正義なのだと。
ナシタ人々を助けるだけじゃない。誰もがヒーローになれると教えてくれた――あたしが異相レンジャーに憧れる理由だよ。
 ナシタの眼差しは揺るぎなかった。
ふいに、ソルの目の前に異相レンジャーの姿が浮かぶ。
ソルその目……ナシタ、さっき異相レンジャーと同じ目をしてた……!
ナシタえっ?
ソルあたし、その目に励まされて、みんなを守るために戦おうって決めたんだ。
ソル観測隊ガイドの時からずっと。マグラシアでだってそれは変わらない。
ナシタなんだそれ、お前の人生全部じゃないか。
ソルうん。だからさ、あたしが異相レンジャーSだったら、力を手に入れたら真っ先にみんなを守ると思う。どんな代償を払ってでもね!それがあたしの信念だから!
ソルだけど、ナシタの言うこともわかるよ。
ソルでもどっちにしろ、異相レンジャーはみんなを守るために戦うんだよね?それならおんなじだ!
ナシタ同じ、なのだろうか……
ソルあっはは、たぶんね!
ナシタプッ……多分とはなんだ、多分とは!
ソルだって、難しい理屈とかよくわかんないし……そういうのはペルシカに押しつけてんの。
ナシタ……いや、お前の言葉に気付かされたよ。監督のやりたいことが、なんだかわかった気がする。
ナシタお前のような勇気と正義感に溢れた人形なら、きっと異相レンジャーSを演じきれるはずだ。
ナシタこれを。
ソルこれって……変身アイテム?
ナシタそうだ。このベルトを身に着けていれば、自らの意志で変身できる。
ナシタ変身後の戦闘服はただカッコいいだけじゃない、本物のオペランドを凝集して作られたものだ。つまり、本当に戦闘能力が身につくってわけさ。
ソルえーーッ!?そ、そこまでリアルなの!?
ナシタリアルじゃなかったら、誰が異相レンジャーを信じる?
 ナシタは得意げな笑顔を浮かべた。
ソルなんか……ナシタって正義のヒーローのこと、よく知ってるね。
ソル監督もナシタを主役にすればいいのに。ってか悪役はないでしょ、悪役は。
ソルあたしが監督にかけあってみようか?
ナシタ……
 
???――だから言っただろう、人形なんぞに演じられるわけがないと!
???私が欲しいのは純然たるヒーローだ!心の底から沸き上がる勇気、楽観的な性格、そして前へと突き進む熾烈さ!
???ただ命令に従うだけの模倣品などではない。
???サイバーメディアに連絡しろ、返品だ。
 
ナシタ……
ナシタいや、いいんだ。気持ちは受け取っておくよ。
ナシタ誰にでも主役の素質があるわけじゃないからな。
ソルどうしてさ?ナシタは特撮専門のパフォーマンス人形なんでしょ?あたしなんかより素質はあると思うけどな。
ナシタ特撮専門の人形だからだ。あたしの正義への憧れだって、ベースコマンドにそう決定づけられただけなのかもしれない。
ナシタでもお前とΩは違う。お前たちは自ら正義感を生み出したエージェントだ。
ナシタお前たちの正義のほうが、よっぽど純粋だ。だから異相レンジャーに相応しいんだろう。
ソルよくわかんないけど……
 ピピピッ。
ソルあっ、ペルシカからの連絡だ。
ソルナシタ、一緒に七花とクロのステージ見に行かない?VIPチケットがあるんだって!
ソル行こうよ、ナシタ!
ナシタで、でも練習が……
ソルいいじゃん、ちょっとした息抜きにさ!ねぇ、行こ?
ナシタ……わかった。
 ソルの熱意に負けて、ナシタは誘いに応じた。