逆音共振 PART.8 讃歌

Last-modified: 2025-02-02 (日) 20:23:48

 クレシェンテ劇場。
広い観客席は、ライブを見に来たエージェントたちで埋め尽くされている。
エージェント七花とクロに会えるなんて信じらんない!ここ、ターシャリレベルじゃないよね!?
エージェント前のさよならライブ、残業で行けなかったんだよね~。あのあと三日三晩フリーズして大変だったわ。これでやっと願いが叶うよ!
エージェントすっごい人だね。それにあの大胆な舞台デザイン!さっすがクロ様!
エージェントスタッフたちもすごいカッコしてる~……見て、猫まで超カラフル~!
 VIPエリア。
ペルシカすごい数のエージェントですね。
イオスバーバンクが不夜城と呼ばれるのは、熱意あふれるエージェントたちのおかげでもあるの。
メリルとは言え、七花とクロじゃなかったら、ここまでの規模は珍しいね。
イオスなにせ、真のエンターテインメントの伝道師だもの。浄化者にすらできないことを、二人は成し遂げた。
イオスこの人気も頷けるわ。
メリルありがと、{教授}。二人を連れてきてくれたおかげで、フェスティバルが一段と賑やかになった。
{教授}ん?私が連れてきた……?
{教授}二人への感謝の気持ちに、招待状をよこしたのはそっちだろう?
メリルえ……そう?
 メリルは思わしげにイオスを見た。
イオスは小さく頷いて、彼女に微笑み返す。
メリル……なるほど。
ペルシカメリルさん、一体……
メリルいいの、ならそういう事にしといて。
メリルとにかく来たからには、カーニバルを楽しんで……
 ピピピッ。
 ふいに通信音が私たちの会話を遮った。
メリル私よ。
メリル……嘘!?
 メリルは突如立ち上がった。その顔に初めて焦りが浮かぶ。
メリル……わかった。そこから動かないで、すぐに行く。
ペルシカどうかしましたか?
メリルちょっとね。カラオケ1号……さっきの異相レンジャーΩが故障したみたい。
{教授}故障?
メリルいきなり動かなくなった、フリーズしたみたいに。
メリルステージがもう始まる、こんな時に冗談キツイわ……あぁ、私が医療人形だったら……
メリル……そうだ、ペルシカ。あんた、その方面の専門家だったわよね?
ペルシカ専門家には及びませんが、経験なら少しは……
メリル異相レンジャーΩの様子を見に行くの、一緒に来てくれる?
 ペルシカは私を見た。
(選択)1.放ってはおけない、行っておいで。A
2.これが「取り引き」を勝ち取る「チャンス」なのか?B
Aメリルありがとう。それと、外交の話はフェスティバルの後に手配しておくわ。C
Bメリル人に付け込まれるのは好きじゃない。まぁ、そう取ってもらってかまわないけどね。C
C{教授}それじゃペルシカ、頼んだよ。
ペルシカはい。すぐに戻ってまいります、教授。
 ペルシカはやや不安そうにイオスを一瞥すると、メリルに連れられて去って行った。
イオスまた二人きりね、教授。
イオスこれも何かの「縁」かしら?あなたたちって、この言葉好きよね?
(選択)1.確かにある種の縁かもね。D
2.馴れ馴れしくしないでほしいな。E
D{教授}残念ながら、まわりは騒がしいな。ムードもへったくれもありゃしない。F
E{教授}それに、どう見ても「二人きり」じゃないだろう。
人混みの中で偶然隣り合っただけだ。
F
F 私がそう言い終える前に、観客席から熱狂的な歓声が上がった。
司会さぁてお次は――お待ちかね伝説の二人によるデュエット!
『絆のオンパレード』!
司会登場してもらいましょう!七花、クロ!
エージェントたちわぁぁぁあああああああーーーーッッ!!!
エージェントたち七花!七花!
エージェントたちクーロ!クーロ!
七花みんなーーっ!来てくれてありがとーー♥
クロ前代未聞、空前絶後の復帰ライブだッ!!スパチャの準備はいい!?
イオスふふふ。バーバンクのエージェントたちって、娯楽のためならオペランドを惜しまないのよね。
イオスこれが他のセクターだったら、「異常」とみなされるのかしら。
 イオスは微笑んだまま、ステージに視線を向けた。
伴奏が流れ、七花の歌声が徐々にクレシェンテ劇場へと響き渡る。
七花見える 聞こえる♫
七花欲しくなると手を伸ばす♫
イオスここでは海に紛れた水滴のように目立たなくても、所変われば異常エージェントとみなされ、追われる身の上。
(選択)1.それは、浄化者の理念を疑ってのことか?G
2.暗に私たちのことを言ってるのか?H
G{教授}馬鹿げていると知りながら、
君たちは異常エージェントとみなした存在を削除して回ってる。
イオス馬鹿げてるなんて思ってないわ。システムの揺らぎはエラーに違いないし、私たちにはそれを正す義務がある。
イオスもちろん、どの程度の揺らぎを脅威とみなすかについては、常に認識を改めるよう心がけてるわ。I
Hイオス言ったはずよ。貴方とそのお仲間は、他の異常エージェントとは異なるって。
イオスもちろん、異なるタイプの異常エージェントにどう向き合うべきかは、常に考えているわ。I
Iイオスそう、長らく考えてはいるのだけれど、一向に答えがはっきりしないの。
七花隠しているみたい もっともっともっと知りたい♫
クロ抑えきれない気持ちが 熱を帯びてパンクする♫
イオス考えれば考えるほど、困惑してしまう。
(選択)1.気持ちはわかる。J
2.どうしてだ?J
Jイオス私たちのロジックでは、すべてが「合理的」でなくてはならないの。合理性に欠ける行動は、私たちの判断の終着点にあるべきじゃない。
イオスでも合理性とはすなわち、定義されたステータスを意味する。それらの「理(ことわり)」を定めたのは人間。
クロ君の奥底に ずっとずっとずっと触れたい♫
七花傷つけあうこともあるけど 無意識なほどに いつも惹きつけられるよ♫
 七花とクロのライブが佳境にさしかかった。
エージェントたちの歓声がますます大きくなってゆく。
会場に潜り込んだ猫さえも、リズムに合わせて尻尾を振っている。
ネコニャーオ。
イオス例えばだけど。カーニバルを楽しむエージェントたち、奇妙な姿をした小動物、豪華なパフォーマンス……バーバンクでは、どれも合理的よね?
イオスでも、それをどう理解すべきなのかしら?彼らの行動の意味や価値はどこにあるの?
 イオスの問いかけに応えるかのごとく、曲がクライマックスを迎えた。
エージェントたちの叫び声もピークに達している。
七花&クロさぁ すぐに飛び出そう 躊躇は捨てちゃおうよ♫
七花&クロ灯る熱情を 君と感じていたい♫
エージェントたち七花!クーロ!七花!クーロ!
イオスどうして娯楽を追い求めるの?この欲望はどこからくるの?
イオスプログラムが定めたものなら、それは果たして本物?本当の欲望と言えるの?
イオスそれとも、誰かに作り出された偽りの感情?
七花&クロ時を忘れよう 刹那が全てだよ♫
七花&クロ高鳴なる鼓動を 寄せて 寄せて♫
イオス……貴方はどう思う、教授?
七花&クロ――輝く希望を君と感じていたい♫
 パンッ!
 ステージから上がった花火が、バーバンクの夜空と熱気に満ちた会場を照らした。
そして、私の傍で微笑むイオスの横顔も。
 私がどう答えようか考えていた時――
ガーゴイルガァァァーーッ!
{教授}!!
七花きゃあっ!?
クロナナっぺ!大丈夫!?
 ステージにいたガーゴイルが突如動き出し、七花とクロに襲いかかった。
{教授}どうなってるんだ?ガーゴイルはペルシカとランコが検査したはず……
 二人のパフォーマンスは途切れ、
観客たちも突然のガーゴイルの挙動に驚いている。
椅子に座っていた猫が飛び退き、威嚇するように鳴き声を発した。
シャーーッ!
エージェントどういうこと?これもパフォーマンスなの?
エージェントさすがはクロ様の演出、ブッ飛んでる~~!
エージェントあっ、他のガーゴイルも動きだしたよ!超ロックなんだけどー!
エージェントあれっ、なんか、特等席のほうに向かってない……?
 ガーゴイルが私たちのいる方へ、フラフラと向かってきた。
ランコこ、こここーんッ!?
{教授}あれは、ランコ?
 ステージの傍では、各種スナックを抱えたキツネの売り子が、
大慌てでガーゴイルから逃げようとしている。
ガーゴイルガァァァーーッ!
エージェントうわっ、あの売り子さん、ガーゴイルに近づきすぎなんじゃ……
ランコこーーんッ!?
{教授}危ない……!
 ガーゴイルがランコを捕まえようとした瞬間、
にわかに銀河のような一筋の光が瞬き、彼女を背後へと押しのけた。
ランコ……
エージェントわぁっ、舞台エフェクトかな?星空みたいでキレーイ!
エージェントあっ、あっちに白い光が!
 白い光が舞台へと降り注ぎ、前列にいた二体のガーゴイルは動きを止めた。
それと同時にイオスが立ち上がり、伸ばした手を戻す。
イオスこのガーゴイルたち、許されざる欲望を抱いているようね。
{教授}左にもいる、右もだ。クロの奴、ガーゴイルを配置しすぎだ。
イオス反応が素早くてなによりね、もうキーボードを取り出したみたいよ。
{教授}君の浄化者は?
イオスフェスティバルに浄化者がいたら、興ざめだとは思わない?事前にバーバンクからは撤退させたわ。
{教授}偵察する手段もないのか?
イオス当然あるにはあるけど、お恥ずかしいわ。今となってはもはや無意味ね。
イオスこの状況で、エラー報告が一つも来ていない。
 ふいに、私の通信機が鳴った。
ペルシカ教授、大変です!
ペルシカ異相レンジャーΩを検査しようとしたところ、突如目を覚まし暴走を始めました!
ペルシカ私たちでは抑えきれませんでした、劇場のほうへ向かっています!様子が妙なんです、まるで何かに操られているような……
ペルシカそれと、倉庫で倒れていたはずのパズルさんが見当たりません!
{教授}なるほどな、こっちの情況とも符合する。
ペルシカこっちの情況……?まさか、劇場で何かあったんですか!?
{教授}ああ、その通り。ペルシカ、君に支援を……
ガーゴイルグァァッ!
 その時、一体のガーゴイルが突如目の前に現れ、私の通信機を弾き飛ばした。
私へと振り下ろされる拳を、またしてもイオスが防ぐ。
イオス思ったより数が多いわね。
イオスこのままじゃ、私とクロさんたちだけでは持たないわ。
ガーゴイルガァァッ!グルルル……!
エージェントね、ねぇ……このパフォーマンス、さすがにリアルすぎない?
エージェントキャーーッ!!クロ様ーーッ!!やっつけちゃってーーッ!!
クロのぁあああああああッ!
七花クロ、危ない!背後にもいるよ!
クロヤバっ……!
ガーゴイルガァァッ!!!
 クロが反応できずにいると、金色に輝く人影が私たちの横をすり抜け、
ステージ上へと駆けていった。
??やめろッ、ガーゴイル!
??お前の悪行もここまでだ!
七花ソル!
エージェントあーーッ!前にダークレンジャーをやっつけた人!
ソル正義の鉄槌を受けてもらうぞ!