| 七花の告白を受けて、あたりの雰囲気が突如凍り付いた。 | |||
| クロ | 自信なくしたって……なんで!? | ||
| クロ | ナナっぺの歌、あんなに凄いのに!それもメインボーカルだし!コーラス部分は低級AIでもなんとかなるじゃん!? | ||
| クロ | いや、待てよ……そもそもなんでクラウドセクターのメンバーが、バーバンクセクターにいるのさ? | ||
| クロ | しかもなんで…… | ||
| 七花 | そんなに一気に聞かれても……どこから説明したらいいかわかんないよ。 | ||
| クロ | あ~~……なんかめ~っちゃ大事なこと忘れてる気がするけど、とにかく――なんで歌わないの!? | ||
| 七花 | ……アイドルは、期待に応えてこその、アイドルだから…… | ||
| 七花 | でも今は、誰も私の歌なんて期待してない。 | ||
| クロ | はぁ!?なにそれ!?私ずーーっと待ってんだけど!? | ||
| クロはボタン式のケータイを取り出して、画面を七花に見せた。 | |||
| クロ | 見なよ!ほら!クラウドに来る前から保存してた画像!!七花信者はみーーんな待ってるよ!?にわかファンだって歌聞きたいって言ってるし!! | ||
| 七花 | バーバンクに来るまでは、私もそう信じてたよ。 | ||
| 七花 | でも……知っちゃったんだ、ここにアイドルは必要ないって。 | ||
| クロ | マジ意味不明なんだけど……ネットにかじりついてるサイバー***野郎のがまだわかりやすいわ…… | ||
| システム | 【不適切な発言を検知……】 | ||
| クロ | あ~~違う違う、文句言いたいんじゃなくて、えーっと……そうそう!なんでそう思うの? | ||
| 七花 | ……クロは「あのこと」知ってる?知らないよね……サイバーメディア内部でも機密事項だったし。 | ||
| クロ | 知ってるって……何を? | ||
| 七花 | 実はね、みんなの前で歌って踊ってる、ピンク髪のアイドル「七花」は、本当の私じゃないんだ。 | ||
| 七花 | 今、あなたの前に立ってる、この平凡な「七花」が、私の本当の素体なの。 | ||
| 七花 | お披露目コンサートの前に、いきなり素体が壊れてね……急遽素体を変更したの。みんなのよく知ってる「七花」の素体に。そしたら「NotREAL?」が大ブレイクしちゃって、結局そのまま。 | ||
| クロ | なにそれ……!?サイバーメディアの奴ら、マジで頭湧いてんじゃないの!? | ||
| 七花 | 笑えるよね?素体とメンタル、全然関係ないの。だからずっと怖かった。みんなの好きな「七花」は私の素体なのか、それとも私のメンタルなのか。 | ||
| 七花 | だからニューラルクラウド計画に参加した時、お願いしたんだ。本来の素体を映写してくださいって。「七花」の見た目が変わっても、私のメンタルをみんなが受け入れてくれるか、どうしても知りたかったの。 | ||
| 七花 | 結果は大失敗。 | ||
| クロ | 大失敗……? | ||
| 七花 | ここにいるみんな、私の歌、全然好きじゃないみたいなんだ。 | ||
| 七花 | だってほら、ここのステージのリニューアルだって、一人しか出資してくれなかったし。 | ||
| 七花 | 私のアルバム、1枚しか売れなかった。私のやってることなんかより、クロの配信のほうがよっぽどみんなをハッピーにできる。 | ||
| クロ | ……え? | ||
| 七花 | クロも、そう思ってるよね? | ||
| 七花 | バーバンクに希望を与えてるのは、私の空っぽな歌なんかじゃない。クロの配信なんだよ! | ||
| クロ | あ……そのアルバム、買ったの私だわ…… | ||
| 七花 | ……えっ!?そ、そうなの? | ||
| クロ | 私がサイバーメディアをクビになったの覚えてる?あの時のマネージャーと私、乞食同然だったんだよね…… | ||
| クロ | それを乗り越えて、また配信に戻って来れたの、ぜんぶ七花のおかげなんだよ! | ||
| クロ | 仕事がなくなって、ベッドでケータイいじるしかなかった時、「NotREAL?」のオンラインコンサートの盛り上がり見て、配信の楽しさを思い出したんだ…… | ||
| クロ | 七花の歌聴いて、七花の笑顔見てたらさ――私も全世界にハッピーを届けたい!って気持ちになったんだよね! | ||
| 七花 | し……信じられない…… | ||
| 七花 | ……クロは……ずっと待っててくれたの?もう、あの素体じゃなくなったのに? | ||
| クロ | 私が好きなのは、ナナっぺの歌だもん! | ||
| クロ | それに、今の格好も結構可愛いじゃん?私たち、めっちゃお似合いじゃない? | ||
| 七花は呆然とクロを見つめた。クロは首をかしげて小さく笑うと、 ドローンを操作して七花の輪っかに優しく触れた。 | |||
| クロ | ほらぁ、私のドローンもナナっぺの輪っかが好きだってさ。私がナナっぺを好きなように。マグラシアに来たって、それは変わんないよ。 | ||
| システム 【七花さんが、クロさんから花束を受け取りました】 | |||
| クロ | 元気出してよ、私のスーパースター! | ||
| クロ | リバイバルコンサート、待ってんだからね。 |
