バーバンクセクター、辺境。 | |||
某時刻。 とある謎のアクセス記録によって、永遠に続くかと思われていた静寂は破られた。 | |||
システム | 【不明なアクセスを検知、ゲストIDを認証中……】 | ||
??? | あぁぁ~~お願い、頼むから中に入れてよ……元社員だって社員には変わりないでしょ、システム様このとーり…… | ||
??? | 浄化者に追われてんだってばぁぁ、あんな大勢倒せるわけないじゃん! | ||
システム | 【ゲストID認証中……サイバーメディア人形・クロ】 【認証完了しました、どうぞお楽しみください】 | ||
クロは安堵の溜息をついて、セクターへと足を踏み入れた。 | |||
クロ | あっは!さいなら~、浄化者さんたち! | ||
クロ | ふっふっふー……バーバンクセクター、またの名をマグラシアの不夜城!このクロ様がついに……って、あれ……? | ||
クロの歓声が通りに虚しく響いた。 行き来するエージェントの中には反応するものもいたが、彼女を一瞥するか、 もしくはぎこちなく笑いかけるだけで、誰も足を止めようとはしない。 | |||
賑やかなはずのセクターは、ひっそりと静まり返っていた。 夜のネオンは色褪せ、街頭の音楽すら聞こえない。 | |||
クロ | えっ……ど、どーなってんの!? | ||
クロ | バーバンクって、エンターテインメントの金字塔で、マグラシアの不夜城なんじゃなかったの!? | ||
クロ | ま、まま、待って!そう、あんた!ストップ! | ||
通りすがりのエージェント | えっ……え!? | ||
通りすがりのエージェント | あ、あの、何かご用件でも……? | ||
クロ | 用件も何も、イッタイゼンタイどーなっちゃってんのよ!?ここ、娯楽の聖地なんでしょ!? | ||
クロ | 「NotREAL?」のオンラインコンサートもここで開催されたんだよね!?なにこのしみったれた街は!? | ||
通りすがりのエージェント | あ……もしかしてゲストさん、ですか? | ||
通りすがりのエージェント | ごめんなさい、バーバンクセクターは長期休業中なんです。 | ||
クロ | はぁ!?休業~~!?なんでよ娯楽セクターなんざあらゆる人種の休暇に対応できるよう24時間年中無休で開いてて当然でしょーが!? | ||
通りすがりのエージェント | えっと……そうなんですけど、もう随分と人間が訪れてなくて…… | ||
クロ | ありえんわ、マジで!! | ||
クロは怒号を上げた。彼女の叫び声に通り全体が震える。 周囲のエージェントたちが驚愕の眼差しを二人に向けた。 | |||
クロ | 娯楽は人間だけのモンじゃないっつの!AIにだって娯楽や芸術を楽しむ権利はある!じゃなきゃあっちゅー間に老けちゃうでしょーが! | ||
通りすがりのエージェント | そ、そうかもしれないですけど、でも…… | ||
クロ | デモデモダッテは受付けませ~ん! | ||
エージェントたちの奇異な目をものともせずに、 クロは空を指差して意気揚々と宣言した。 | |||
クロ | サイバーメディアにクロなくして、娯楽に未来はない! | ||
クロ | このクロ様が、バーバンクにネオンを取り戻してみせるッ!! |