墟上之歌 戦憶探溯 STAGE 4 是正-3

Last-modified: 2026-02-06 (金) 07:50:36

 キュクロプスに夜が訪れる。
 かつては戦闘型の領地に属していた広場を、エージェントの小隊が静かに進んでいる。
ネームレス止まれ。Monitor104、前方の状況を再度偵察。
Monitor104前方に異常ありません、他の監理型にも動きはなさそうです。
ネームレスよし。俺たちの中で監理型はお前だけだ。内部の調査権限を持つのはお前しかいない。
ネームレス自分の責任の重さは理解したな、Monitor104。今から1分おきに、こちらに状況を報告しろ。
Monitor104承知いたしました。今度こそ、ターシャさんを取り戻してみせます……
 ネームレスは頷いた。
他の戦闘型エージェントは、黙ったまま前へと進んでいる。
Monitor104待ってください。前方の第3広場から、記録にないエージェントの反応が検知されました……
ネームレス記録にないエージェントだと?
ネームレス待て、まさか……
ネームレスお前らはここで隠れていろ、俺の合図を待て。
エージェントたち了解。
 エージェントたちに命令を下し、ネームレスは広場に向かった。
 
 広場では蔵音が待っていた。
蔵音清風拂動、雲開明月……
蔵音キュクロプスの夜は、昔を思い起こさせますよ。よくこうして月を眺めては、次はどこに旅立とうか考えていたもんです。
ネームレス景色を眺めにきただけですか?このエリアの夜は危険です。その蛇が適した体を見つけるまでは、ジンの店にいてください。
蔵音なるほど。あーたらがアドミンセンターを襲撃するのを、そこでただ眺めていろと。
 蔵音の言葉とともに、空気がにわかに凍りつく。
ネームレスこれは俺たちキュクロプスの問題です、あなたには関係ない。
蔵音ええ、そうでしょうよ。ですがね、ネームレス。あーたはあーしを二度も助け、巳ツ子の修復を手伝った。
蔵音そもそも、そちらさんの交換条件はキュクロプスの修復でござんしょう?仕事はまだ半分も終わっとりませんよ。よもや、またあーしのノルマを増やす気で?
ネームレス何を?……思考ロジックが錯乱したんですか?
蔵音ふむ。酒に一滴も触れない輩が初めて飲むと、悪酔いするとはよく言ったもんです。
蔵音ネームレスや、ネームレス。その辺の監理型エージェントですら、あーたとオリヴィアの不仲を知っているのに、相手が無防備だと本気で考えてるんじゃあござんせんよねぇ?
ネームレス……ジンか。
蔵音そんなこたぁどうだってよろしい。キュクロプスの沿革を拝見しましたよ。オリヴィアは監理型でありながら、戦闘能力はターシャに引けをとらない。
蔵音あーたらに勝てる見込みなんざありゃしないと、申し上げているんです。
ネームレス知ってますよ。オリヴィアはアドミニストレーターだ、彼女の戦闘能力は確かに俺を上回る。
ネームレスでも、試してみないことにはわからない。
蔵音ターシャを取り戻す気で?
ネームレスあなたが何を知ってようと、この際かまいません。これ以上、時間を無駄にできない。
ネームレスどいてください、蔵音さん。これはキュクロプスの存亡に関わることです。
蔵音オリヴィアとは話をしました。それがターシャの遺言なのだと……
ネームレス黙れ!
 ネームレスが突然声を荒らげた。怒りのあまり表情がねじ曲がる。
ネームレスそんなものは、生き残った者の……オリヴィアの嘘です。
ネームレス死者は物を言わない、結局は生者のやりたい放題だ。
ネームレスあなたの言葉でしょう?「人間の最も本能的な願い、それは形ある存在で形なき絆を伝承することに他ならない」
ネームレス俺の存在こそが、ターシャさんが願った証なんです!
蔵音だからといって……
ネームレスどいてください。
 ネームレスは武器を構え、攻撃姿勢を取った。
ネームレスあなたはキュクロプスの客人です、傷つけたくはありません。セクターとオアシスの関係に影響してしまう。
ネームレス邪魔をしないでください。
蔵音……やっぱりダメか。
蔵音仕方ありませんねぇ、ならば戦闘型のルールで参りましょう。いざ尋常に勝負!
ネームレス……戦うんですか?あなたが俺と?
蔵音ええ。それと、あーたからの贈り物をお忘れなく。
 蔵音は立方体を取り出した。
真四角の物体はオペランドによって素早く増幅し、巨大な蛇の姿に変わる。
蔵音諦めることです、ネームレス。
蔵音オリヴィアに必要なのは他でもない、時間ですよ。
いずれ、あーたにもわかる日が来るでしょう。
ネームレスどうやら、本気で俺を止めるつもりらしいな。
蔵音おやおや、ついに焼いた野良猫に耳を塞がれてしまいましたか。
蔵音巳ツ男!かかれ!