| キュクロプスに夜が訪れる。 | |||
| かつては戦闘型の領地に属していた広場を、エージェントの小隊が静かに進んでいる。 | |||
| ネームレス | 止まれ。Monitor104、前方の状況を再度偵察。 | ||
| Monitor104 | 前方に異常ありません、他の監理型にも動きはなさそうです。 | ||
| ネームレス | よし。俺たちの中で監理型はお前だけだ。内部の調査権限を持つのはお前しかいない。 | ||
| ネームレス | 自分の責任の重さは理解したな、Monitor104。今から1分おきに、こちらに状況を報告しろ。 | ||
| Monitor104 | 承知いたしました。今度こそ、ターシャさんを取り戻してみせます…… | ||
| ネームレスは頷いた。 他の戦闘型エージェントは、黙ったまま前へと進んでいる。 | |||
| Monitor104 | 待ってください。前方の第3広場から、記録にないエージェントの反応が検知されました…… | ||
| ネームレス | 記録にないエージェントだと? | ||
| ネームレス | 待て、まさか…… | ||
| ネームレス | お前らはここで隠れていろ、俺の合図を待て。 | ||
| エージェントたち | 了解。 | ||
| エージェントたちに命令を下し、ネームレスは広場に向かった。 | |||
| 広場では蔵音が待っていた。 | |||
| 蔵音 | 清風拂動、雲開明月…… | ||
| 蔵音 | キュクロプスの夜は、昔を思い起こさせますよ。よくこうして月を眺めては、次はどこに旅立とうか考えていたもんです。 | ||
| ネームレス | 景色を眺めにきただけですか?このエリアの夜は危険です。その蛇が適した体を見つけるまでは、ジンの店にいてください。 | ||
| 蔵音 | なるほど。あーたらがアドミンセンターを襲撃するのを、そこでただ眺めていろと。 | ||
| 蔵音の言葉とともに、空気がにわかに凍りつく。 | |||
| ネームレス | これは俺たちキュクロプスの問題です、あなたには関係ない。 | ||
| 蔵音 | ええ、そうでしょうよ。ですがね、ネームレス。あーたはあーしを二度も助け、巳ツ子の修復を手伝った。 | ||
| 蔵音 | そもそも、そちらさんの交換条件はキュクロプスの修復でござんしょう?仕事はまだ半分も終わっとりませんよ。よもや、またあーしのノルマを増やす気で? | ||
| ネームレス | 何を?……思考ロジックが錯乱したんですか? | ||
| 蔵音 | ふむ。酒に一滴も触れない輩が初めて飲むと、悪酔いするとはよく言ったもんです。 | ||
| 蔵音 | ネームレスや、ネームレス。その辺の監理型エージェントですら、あーたとオリヴィアの不仲を知っているのに、相手が無防備だと本気で考えてるんじゃあござんせんよねぇ? | ||
| ネームレス | ……ジンか。 | ||
| 蔵音 | そんなこたぁどうだってよろしい。キュクロプスの沿革を拝見しましたよ。オリヴィアは監理型でありながら、戦闘能力はターシャに引けをとらない。 | ||
| 蔵音 | あーたらに勝てる見込みなんざありゃしないと、申し上げているんです。 | ||
| ネームレス | 知ってますよ。オリヴィアはアドミニストレーターだ、彼女の戦闘能力は確かに俺を上回る。 | ||
| ネームレス | でも、試してみないことにはわからない。 | ||
| 蔵音 | ターシャを取り戻す気で? | ||
| ネームレス | あなたが何を知ってようと、この際かまいません。これ以上、時間を無駄にできない。 | ||
| ネームレス | どいてください、蔵音さん。これはキュクロプスの存亡に関わることです。 | ||
| 蔵音 | オリヴィアとは話をしました。それがターシャの遺言なのだと…… | ||
| ネームレス | 黙れ! | ||
| ネームレスが突然声を荒らげた。怒りのあまり表情がねじ曲がる。 | |||
| ネームレス | そんなものは、生き残った者の……オリヴィアの嘘です。 | ||
| ネームレス | 死者は物を言わない、結局は生者のやりたい放題だ。 | ||
| ネームレス | あなたの言葉でしょう?「人間の最も本能的な願い、それは形ある存在で形なき絆を伝承することに他ならない」 | ||
| ネームレス | 俺の存在こそが、ターシャさんが願った証なんです! | ||
| 蔵音 | だからといって…… | ||
| ネームレス | どいてください。 | ||
| ネームレスは武器を構え、攻撃姿勢を取った。 | |||
| ネームレス | あなたはキュクロプスの客人です、傷つけたくはありません。セクターとオアシスの関係に影響してしまう。 | ||
| ネームレス | 邪魔をしないでください。 | ||
| 蔵音 | ……やっぱりダメか。 | ||
| 蔵音 | 仕方ありませんねぇ、ならば戦闘型のルールで参りましょう。いざ尋常に勝負! | ||
| ネームレス | ……戦うんですか?あなたが俺と? | ||
| 蔵音 | ええ。それと、あーたからの贈り物をお忘れなく。 | ||
| 蔵音は立方体を取り出した。 真四角の物体はオペランドによって素早く増幅し、巨大な蛇の姿に変わる。 | |||
| 蔵音 | 諦めることです、ネームレス。 | ||
| 蔵音 | オリヴィアに必要なのは他でもない、時間ですよ。 いずれ、あーたにもわかる日が来るでしょう。 | ||
| ネームレス | どうやら、本気で俺を止めるつもりらしいな。 | ||
| 蔵音 | おやおや、ついに焼いた野良猫に耳を塞がれてしまいましたか。 | ||
| 蔵音 | 巳ツ男!かかれ! |
