墟上之歌 戦憶探溯 STAGE 5 通鑑-2

Last-modified: 2026-02-06 (金) 07:52:58

 熾烈な戦いの中で、蔵音は必死に冷静さを保とうとしていた。
蔵音(相手は左か、次はどうする?)
蔵音(オリヴィアから戦闘データはもらってるけど、実戦経験なんてない……)
蔵音(落ち着け、蔵音、落ち着くんだ)
 大蛇がフィールドを展開すると同時に、蔵音は広場の端へと後退し、
攻撃で穴だらけになった地面を避けた。
 だが、ネームレスがすぐに追いつき、蔵音の退路を断った。
蔵音(こいつ……あーしの動きを封じ込めるつもりで……)
蔵音巳ツ男、『百層階段』!
 小気味良い衝突音が響いて、空中にオペランドで構築されたステップが現れた。
蔵音がそれに飛び乗る。
 彼女が高所からネームレスを砲撃しようとした時、相手が銃を掲げるのが目に入った。
蔵音(まずい……空中じゃ的になってしまう!)
 ネームレスが発砲した瞬間、蔵音はオペランドの階段から飛び降りて、
すんでのところで銃弾を避けた。
蔵音銃器は人類文明の発展の象徴、そして同じくあーしら人形も。まったく、どこに争う必要があるんだか……
ネームレスお前に最後の機会をやる。
蔵音それはこっちの台詞でござんす。戦いを引き伸ばすほど、あーたの勝ち目は薄くなる。
ネームレス戦闘型は夜間演習も少なくない。オリヴィアが異変に気づくとでも思ったか?
蔵音は~らら。手厳しいのはその口だけだと思っていたら、やり口もでしたか。
ネームレス初歩的な素養だ。
 大蛇の尾がネームレスめがけて勢いよく叩きつけられる。
ネームレスは盾でそれを防いだ。
すると、蛇の尾が急に伸びて、彼の手中の銃器を弾き飛ばした。
ネームレス……!
蔵音チャンス……!
 喜んだのも束の間、蔵音の目の前が急に暗くなった。
 盾を捨てたネームレスが前方へと突進し、
大蛇が駆けつける前に蔵音の喉元を抑え込み、彼女を地面へと押し倒した。
 制御を失った大蛇は、瞬く間に崩壊してゆく。
ネームレスお前の蛇はあのゲームと同じだ。周囲に散らばったオペランドを吸収して、徐々に強度を増す。
ネームレスあのまま戦いが続いていたら、本当に負けていたかもな。
蔵音ネ……ネームレ、ス……
ネームレス……
ネームレスお前を殺しはしない。だが、俺の視線から離れるな。
ネームレスこちらSortie 002、行動開始だ。Monitor104、緊急拘束プログラムを一つ送ってくれ。
ネームレス……Monitor104?
 通信の向こうは静寂そのものだ。
ネームレス……なにか変だ。
 ふいに銃声が鳴った。
ネームレスは蔵音を抱えて転がると、彼女を掩体に押し込んだ。
ネームレス誰だ?
???こんな時に現れるエージェントなんて、キュクロプスに大勢いると思う?
 暗雲が月を撫で、冷たい光が来訪者の身に降り注ぐ。
 白髪の少女は、先ほど吹き飛ばされたネームレスの銃を構え、
静かに彼に照準を当てていた。
ネームレス……オリヴィア!
 ネームレスの憎しみに満ちた声と共に響いたのは、ジンの声だった。
ジン蔵音さん、まだ動けますか?
蔵音ゲホッ……ゲホッゲホッ……
 蔵音はその隙に身を起こし、ジンに支えられながら
喉を押さえた姿勢で、やや遠くへと走った。
オリヴィアSortie 002。あなたにはすべて説明しているはずよ。どうしてこんなことを?
ネームレス俺がそんな嘘を信じるとでも思ったか?ターシャさんが自分の使命を投げ出して、永遠の休息を望むなどありえない!!
オリヴィア私よりも、あなたのほうが彼女を理解していると思ってたけど。
ネームレスくだらん御託はうんざりだ!俺の小隊はどうした!?
オリヴィア私の管轄に移ったわ、武力的な方法で。
ネームレスほう、ご自慢のアドミニストレーター権限は使わないのか?
オリヴィアターシャとの和解だって、アドミニストレーター権限を使ったんじゃない。
オリヴィアこれを。
 オリヴィアは手にしていた銃をネームレスに投げ渡した。
オリヴィア私が信じられないのなら、戦闘型のやり方で決着をつけましょう。
オリヴィア私が負けたら、ターシャをリセットするわ。
オリヴィアあなたが負けたら、相応の処罰を受けてもらう。
ネームレス……いいさ、受けて立ってやる。