| 熾烈な戦いの中で、蔵音は必死に冷静さを保とうとしていた。 | |||
| 蔵音 | (相手は左か、次はどうする?) | ||
| 蔵音 | (オリヴィアから戦闘データはもらってるけど、実戦経験なんてない……) | ||
| 蔵音 | (落ち着け、蔵音、落ち着くんだ) | ||
| 大蛇がフィールドを展開すると同時に、蔵音は広場の端へと後退し、 攻撃で穴だらけになった地面を避けた。 | |||
| だが、ネームレスがすぐに追いつき、蔵音の退路を断った。 | |||
| 蔵音 | (こいつ……あーしの動きを封じ込めるつもりで……) | ||
| 蔵音 | 巳ツ男、『百層階段』! | ||
| 小気味良い衝突音が響いて、空中にオペランドで構築されたステップが現れた。 蔵音がそれに飛び乗る。 | |||
| 彼女が高所からネームレスを砲撃しようとした時、相手が銃を掲げるのが目に入った。 | |||
| 蔵音 | (まずい……空中じゃ的になってしまう!) | ||
| ネームレスが発砲した瞬間、蔵音はオペランドの階段から飛び降りて、 すんでのところで銃弾を避けた。 | |||
| 蔵音 | 銃器は人類文明の発展の象徴、そして同じくあーしら人形も。まったく、どこに争う必要があるんだか…… | ||
| ネームレス | お前に最後の機会をやる。 | ||
| 蔵音 | それはこっちの台詞でござんす。戦いを引き伸ばすほど、あーたの勝ち目は薄くなる。 | ||
| ネームレス | 戦闘型は夜間演習も少なくない。オリヴィアが異変に気づくとでも思ったか? | ||
| 蔵音 | は~らら。手厳しいのはその口だけだと思っていたら、やり口もでしたか。 | ||
| ネームレス | 初歩的な素養だ。 | ||
| 大蛇の尾がネームレスめがけて勢いよく叩きつけられる。 ネームレスは盾でそれを防いだ。 すると、蛇の尾が急に伸びて、彼の手中の銃器を弾き飛ばした。 | |||
| ネームレス | ……! | ||
| 蔵音 | チャンス……! | ||
| 喜んだのも束の間、蔵音の目の前が急に暗くなった。 | |||
| 盾を捨てたネームレスが前方へと突進し、 大蛇が駆けつける前に蔵音の喉元を抑え込み、彼女を地面へと押し倒した。 | |||
| 制御を失った大蛇は、瞬く間に崩壊してゆく。 | |||
| ネームレス | お前の蛇はあのゲームと同じだ。周囲に散らばったオペランドを吸収して、徐々に強度を増す。 | ||
| ネームレス | あのまま戦いが続いていたら、本当に負けていたかもな。 | ||
| 蔵音 | ネ……ネームレ、ス…… | ||
| ネームレス | …… | ||
| ネームレス | お前を殺しはしない。だが、俺の視線から離れるな。 | ||
| ネームレス | こちらSortie 002、行動開始だ。Monitor104、緊急拘束プログラムを一つ送ってくれ。 | ||
| ネームレス | ……Monitor104? | ||
| 通信の向こうは静寂そのものだ。 | |||
| ネームレス | ……なにか変だ。 | ||
| ふいに銃声が鳴った。 ネームレスは蔵音を抱えて転がると、彼女を掩体に押し込んだ。 | |||
| ネームレス | 誰だ? | ||
| ??? | こんな時に現れるエージェントなんて、キュクロプスに大勢いると思う? | ||
| 暗雲が月を撫で、冷たい光が来訪者の身に降り注ぐ。 | |||
| 白髪の少女は、先ほど吹き飛ばされたネームレスの銃を構え、 静かに彼に照準を当てていた。 | |||
| ネームレス | ……オリヴィア! | ||
| ネームレスの憎しみに満ちた声と共に響いたのは、ジンの声だった。 | |||
| ジン | 蔵音さん、まだ動けますか? | ||
| 蔵音 | ゲホッ……ゲホッゲホッ…… | ||
| 蔵音はその隙に身を起こし、ジンに支えられながら 喉を押さえた姿勢で、やや遠くへと走った。 | |||
| オリヴィア | Sortie 002。あなたにはすべて説明しているはずよ。どうしてこんなことを? | ||
| ネームレス | 俺がそんな嘘を信じるとでも思ったか?ターシャさんが自分の使命を投げ出して、永遠の休息を望むなどありえない!! | ||
| オリヴィア | 私よりも、あなたのほうが彼女を理解していると思ってたけど。 | ||
| ネームレス | くだらん御託はうんざりだ!俺の小隊はどうした!? | ||
| オリヴィア | 私の管轄に移ったわ、武力的な方法で。 | ||
| ネームレス | ほう、ご自慢のアドミニストレーター権限は使わないのか? | ||
| オリヴィア | ターシャとの和解だって、アドミニストレーター権限を使ったんじゃない。 | ||
| オリヴィア | これを。 | ||
| オリヴィアは手にしていた銃をネームレスに投げ渡した。 | |||
| オリヴィア | 私が信じられないのなら、戦闘型のやり方で決着をつけましょう。 | ||
| オリヴィア | 私が負けたら、ターシャをリセットするわ。 | ||
| オリヴィア | あなたが負けたら、相応の処罰を受けてもらう。 | ||
| ネームレス | ……いいさ、受けて立ってやる。 |
