| キュクロプスセクター、第3広場。 | |||
| オリヴィアの前に跪いたネームレスは、地面に倒れ込まないよう、 盾を使って自身をかろうじて支えている。 | |||
| ネームレス | はぁ……はぁ……監理型アドミニストレーターに、こんな戦いができたとは…… | ||
| ネームレス | 俺の負けだ。 | ||
| ネームレス | ……ターシャさんのところへ、送ってくれ。 | ||
| オリヴィア | 完全に破壊されたいの? | ||
| ネームレス | 敗者にはふさわしい結末だ。 | ||
| オリヴィア | でも、私たちにはまだ次がある……次の次も。人間が再び訪れるまで。 | ||
| ネームレス | そうかもしれない、だがターシャさんはどうなる? | ||
| オリヴィア | 彼女の考えは、とっくにあなたに教えているでしょう。 | ||
| ネームレス | ……まさか、ターシャさんは、本当に…… | ||
| オリヴィアは目を閉じた。 | |||
| あの戦いが、まるでついさっきのことのように蘇る。 ターシャの声が、彼女の耳元で響いた。 | |||
| ターシャ | オリヴィア……ごめんな……オレ、疲れちまったかも…… | ||
| ターシャ | 知ってたか?レイヴンが隔離壁を建てた時……オレさ……実はホッとしたんだ…… | ||
| ターシャ | だってさ……お前に会わなけりゃ……怪物じみたオレを、見られずにすむから…… | ||
| ターシャ | お願いだ……オレをリセットしないでくれ……もう殺すのは嫌なんだ……もう充分満足した……うんざりなんだ……夢も、もう叶えた…… | ||
| オリヴィア | ターシャは言ってた……もう、疲れたって。 | ||
| オリヴィア | 夢ももう叶えた、もううんざりなんだ、って。 | ||
| ネームレス | …… | ||
| オリヴィア | 私が嘘をついていると思うなら、謝るわ。だけど、私は彼女の願いに背くつもりはない。もう二度と、キュクロプスに新しい彼女を生み出しはしない。 | ||
| ネームレス | ……わかってます。 | ||
| ネームレス | 嘘じゃないって、ほんとは、知ってました…… | ||
| ネームレス | でも俺、認めたくなかったんです。ずっと、俺たちを率いてた人が、本来の使命を捨てただなんて…… | ||
| ネームレスは盾を持ったほうの手に額を押し当てた。 声には嗚咽が交じる。 | |||
| ネームレス | ターシャさん、俺……あ、あなたに、言ってほしかった……「戦いは終りだ」って。 | ||
| オリヴィアはネームレスを見つめてこう言った。 | |||
| オリヴィア | あなたを殺しはしないわ。 | ||
| オリヴィア | 死者は形見を遺してゆく。あなたも、私も、私たち全員が、彼女の遺した形見。 | ||
| ネームレス | 形見……か。 | ||
| オリヴィア | ターシャが遺していったものを、消したくないの。 | ||
| オリヴィア | キュクロプスの問題はまだ山積みよ。私の助手になってくれる、Sortie 002? | ||
| そう言って、オリヴィアはネームレスに手を伸ばす。 | |||
| オリヴィア | 彼女の声を聞かせてあげられなくて、ごめんね。 | ||
| ネームレスは答えずに、力強く立ち上がって、オリヴィアの手を取った。 | |||
| 月はすでに空の中央へと昇っていた。 オリヴィアの声が、キュクロプスの大地に響き渡る。 | |||
| オリヴィア | Sortie 002-369、およびキュクロプスセクターの全エージェントに告ぐ―― | ||
| オリヴィア | 「戦いは終わった」 |
