| 参拝者 | ……舞台の上で踊ってる巫女さん、とっても動きが綺麗ねぇ。 どのパートもきめ細やかだし、素晴らしいわ。 | ||
|---|---|---|---|
| 参拝者 | ありゃUASの開発した神職用の人形だ、S55-HMKだとさ。 まさか神に仕える巫女まで、ロボットになっちまうとはな…… | ||
| 参拝者 | まぁ、なんてこと……神に必要なのは人々の篤い信仰心よ? 人形に信仰がわかってたまるもんですか、心もない機械なんかに…… | ||
| 参拝者 | そうだ、こんな人形が存在すること自体、神への冒涜だ! | ||
| 君惠 | !? | ||
| 楓様 | 集中。流言蜚語に惑わされるな、神はお前の舞を見ておられるぞ。 | ||
| 君惠 | ……楓様の仰せの通りに。 | ||
| 楓様 | こうして舞を続ければ……神の御目にきっと届くはずだ…… | ||
| 君惠 | 神が……見ておられる…… | ||
| ヘリックス | 君惠さん…… | ||
| 君惠 | 人形は、この領域に足を踏み入れるべきではなかったのでございます。わたくしめはデータの分析を通じて、周囲の異常エネルギーを感じ取ることが可能です。そして、寸分違わず除霊の儀を再現することも。 | ||
| 君惠 | けれど、わたくしめには神の旨意(しい)が聴こえませぬ。 | ||
| へリックスは君惠の手をぎゅっと握った。 相手が震えているのに気づいたが、 ただこうして自分のぬくもりを分け与えることしかできない。 | |||
| 君惠 | 次第に、楓様はわたくしめを遊歴に携えなくなりました。ただ一言、神社の留守を預けるとだけ言い残して。 | ||
| 君惠 | 結局のところ、楓様もお気づきになられたのでございましょう。君惠が本当の巫女ではないと。わたくしめは、神を冒涜せし偽物に過ぎないのだと…… | ||
| ヘリックス | そんなことない。 | ||
| 君惠 | ……? | ||
| ヘリックス | そのカエデ様は、君惠さんを守ろうとしてたんじゃないかな。 | ||
| 君惠 | なぜ、そう思われるのです? | ||
| ヘリックス | だ、だって…… | ||
| ????? | ヘリー……いや、へリックス…… | ||
| ????? | 私にはもはや、どうすることもできない。 お前の記憶から自分を消すことしか……私たちは、二度と会えないだろう…… | ||
| ????? | お前の世界が、陽の光に満ちた場所であることを、 その両目に世界の闇が映らないことを祈るよ…… | ||
| ヘリックス | あたし……なぜだかわからないけど、君惠さんと同じ経験をしたような気がするの……でも、何も思い出せない…… | ||
| ヘリックス | でも、とにかく……冷たいように思えるけど、その指示のおかげで、君惠さんは人々の悪意に触れずに済んだんじゃないのかな。閉じ込めたいんじゃなくて、大切なものを守りたかったんだと思うよ。 | ||
| ヘリックス | 毛虫が蝶になる時みたいにさ。さなぎがなかったら、蝶は死んじゃうでしょ? | ||
| 君惠 | そうかも、しれませんね……有り難う存じます、へリックス様。 | ||
| ヘリックス | そんな……あたしは君惠さんのおかげで、元気を取り戻せたんだし。 | ||
| ヘリックス | ねぇ、君惠さんは、オアシスのみんなと過ごす日々が楽しい? | ||
| 君惠 | ええ、とても……ですが、大変恐縮でもございます。ここでの日々は、マグラシアで過ごした中で、最も楽しゅう時間でございました故。 | ||
| チョコ | ……でも君惠さんは、神社に帰っちゃうんだよね?教授と話してたの、聞いたよ…… | ||
| ヘリックス | えっ、どうして?あたし、君惠さんが好き!君惠さんも、ここで一緒に暮らそうよ! | ||
| チョコ | わたしも!君惠さんのこと好きだよ!もっと色んなチョコを食べさせてあげたい! | ||
| 君惠 | へリックス様、チョコ様…… | ||
| 二人は期待に満ちた表情で、君惠の答えを待っている。 切実な眼差しを前にした君惠は、胸が苦しくなった。 声までかすれ始める。 | |||
| 君惠 | オアシスの皆様方から受けたご厚意は、この君惠、生涯忘れはいたしません。 | ||
| 君惠 | 辺境に住まうわたくしめが、これだけ多くのご朋輩に恵まれたのは初めてにござります。ですが……かような幸福、かような安寧を、君惠が享受するわけにはゆきませぬ。 | ||
| 君惠 | わたくしめは楓様のお言葉に従い、暮之夢神社を守らなければ。 | ||
| ヘリックス | でも、ここに君惠さんを傷つける人なんていないよ。君惠さんを待ってる、君惠さんのことが好きな人しかいないのに……それでも、神社に帰っちゃうの? | ||
| 君惠 | 左様に……ございます。 | ||
| ヘリックス | そっか…… | ||
| 瞳に寂しさを宿したへリックスが、小さく溜め息をついた。 | |||
| 仲間の溜め息が、君惠のメンタルを大きく揺さぶる。 | |||
| 君惠 | (そう考える者も、お前を傷つけようとする者もいない……) (それでも、神社に帰ろうというの、君惠?) | ||
| 君惠 | (わたくしめの心は……いったい、どう考えているのでしょう?) |
