黄昏のラメント 真紅の葬儀 STAGE 1 黄昏の独白

Last-modified: 2026-02-10 (火) 22:40:29
  • あらゆる者の血が枯渇し、
    荒れ地には草花の残骸が遺され、拾う者はいない。
    氷雨や冷たい風、砂埃に煙は沈んでゆく
    • そこの黒服のお嬢さん……何が言いたい?
  • ???:「死だけが平等かつ公正」だと、人々は口々に言う。けれど現実では、死した者たちの多くは安息の地を得る資格すら与えられない。
    • ……

  • 四騎士が巨大な鎌を振り回すと、
    そこには荒廃と泣き叫ぶ声だけが残った

    ???:兵士は志願者とともに、亡骸を野外の広場へと並べ、印に白い布を被せた。

    ???:言い得ない複雑な感情が心に浮かぶ。疲労と倦怠感。亡骸を目にした時の恐怖。耳元からは生存者たちのすすり泣く声が聞こえる。
    • そんな光景、想像するだけで耐えられない

  • ヴェールを紡ぐはクロト、彼女が糸を引き寄せる。
    測量せしはラケシス、彼女が糸の長さを測る。
    切り落とすはアトロポス、彼女が糸の終焉を定める

    ???:災禍に遭難し死した者たちの最期を看取るのは、数名の人形であると誰が知っただろう。
    • 葬儀用の自律人形なんて、珍しくもないだろう?
  • ???:ええ、今は。けれど昔は違う。

    ???:数名の臨時改造を施されたUAS人形たちが、慌ただしく葬儀用の礼服に着替え、野外の広場で弔辞を述べる。
    • 立派な葬式は、死者への最高の手向けだ

  • 万物はやがて凋落し朽ち果てる。

    ???:あの惨禍から約半年が経った。臨時改造を施された人形たちは、今やボランティア団体の一員として特殊な責務を果たしている。

    ???:特殊とは言えない、人間なら誰しも経験することだから。
    • それは死
  • ???:彼女たちはともに仕事に勤しみ、ともに死者を送り出す。普段はまるで姉妹のようだ。

    ???:しかし、人形にもその日は訪れる。鋼鉄の躯体は死への免罪符にはならない。
    • ああ……彼女たちはもういないのか?

  • スピンドルに綿糸を巻き付け、純白の糸を紬ぐ。
    ほら、あれが命よ

    ???:彼女たちはまだ生きている。死と踊る彼女たちは、新たな生命を手に入れたというべきか。
    • えっ?
  • ???:ボランティア団体はUASから3つの素体を買いとり、彼女たちに全く新しい姿を与えた。
    • 死を象徴する者が新たな生を迎えるなんて、意味深だな

  • 平等の種を、地上の民へとふり撒く。

    ???:すべての家庭が専門的なチームや神職者を雇えるわけじゃない。

    ???:けれどそれとは無関係に、あるいはより体裁の整った方法で、彼らは肉親を送り出すことができる。
    • 前に言ってた、人形たちのおかげだな
  • ???:ええ。

    ???:新たな素体に替えるまで、彼女たちに名前はなかった。そして優雅で魅力的な名前を授かった。
    • 当ててみよう……クロト、ラケシス、それにアトロポス?

  • 生と死はけして逃れられぬ終極の問題。

    ???:長年、生死や離別を目の当たりにしていれば、鉄の心も疼くようになる。

    ???:感情システムを持つ人形なら尚の事。長らく悲しみに浸っていると、ネガティブな情緒が他の感情モジュールを押し殺してしまう。
    • 彼女たちは変わってしまったのか?
  • ???:そう、「彼女」だけを除いて。スピンドルを使い綿糸を紬ぐ者。人間の感情と理論に当てはめるなら、一番下の妹。彼女が姉たちのように心を崩壊させることはなかった。

    ???:でも…それは精巧なヴェールを纏っているだけ。まさか、UAS人形の感情がここまで変化を遂げるとは。最も変化が顕著なのは彼女なのかもしれなかった。
    • ……

  • 感情は、さながら永遠なる名状しがたき
    混沌のように、不可思議なものだ。

    ???:姉たちは消えた。

    ???:彼女がこれほど寂しさと孤独を露わにすることは、今までなかった。特に、悲しみに心を壊された「姉」たちの運命を彼女が知った時――
    • まさか……廃棄処分に?
  • ???:壊れたメンタルはリセットされる。

    ???:なんて皮肉だろう。かつて彼女たちは新たな躯体と生を手に入れた。だが今や、その魂は拭い去られ書き換えられようとしている。
    • たとえ姉たちが戻ってきても、記憶の中のかつての姉ではないと、彼女は知っていたのかもね

  • 「私の物語はこれでおしまい」
    「他に聴きたいことは?」
    • もう十分だよ、クロト
  • 「そう。あの痛みは、もう二度と味わいたくない。だから私はここへと降臨した。深邃なるデジタルの海で、悲しみを癒やす秘薬を探し求めるために」

    「永遠に、かつての彼女たちと共にあるために」

    「製品コード:Mortician-3」
    「素体コード:SSD-56SE-2」
    「製品シリアル番号:MOIRAI23224」
    「アクティベート時刻:2056.12.31」
    「製品名:Clotho」
    「メンタル活性度:??%」

    「Mortician-3、CALL NAME:クロト…認証完了」
    • それじゃ、ここにサインを