黄昏のラメント 真紅の葬儀 STAGE 2 夕暮れの序章-2

Last-modified: 2026-02-10 (火) 22:44:01

後方部門、オフィス。
センタウレイシー失礼いたします。
後方部門の士官入れ。
 センタウレイシーは部屋に入り、とっさに模範的な軍人姿勢で立った。
そんな彼女を見た士官の眉間がわずかにほぐれる。
後方部門の士官資料は?
センタウレイシーすでに、そちらの端末にお送りしております。
後方部門の士官ほう、早いな。どれ……UASだと?あそこはスクラップばかりを生産していると思っていたが……
後方部門の士官ふむ、共同開発人形か。こいつは珍しい!
 士官は顔を上げ、センタウレイシーをじっくりと見定めた。
後方部門の士官なるほどな、他の奴らよりかは使えそうだ。
後方部門の士官契約書の乙方には該当しないのか……なに、壊れたら弁償だと?
後方部門の士官なんだこの価格は!冗談じゃない!あいつら、今度は軍部にたかる気か!?
 士官は、端末の画面とセンタウレイシーとを何度も見比べた。
彼女は何も言わずに、その様子を眺めている。
やがて、相手の鋭い眼光が次第に収まってゆく。
後方部門の士官つまり……スヴァローグ重工がお前の開発に関与しているんだな?戦闘モジュールは搭載されているか?
センタウレイシーはい。Butler-36には、最新型の戦闘モジュールが搭載されております。
後方部門の士官よろしい、ならばそう簡単に壊れはしないだろう。
後方部門の士官だが業務範囲はしっかりと覚えておけ、交戦エリアには近づくな。
後方部門の士官お前の脳がショートして、勝手に防衛エリアを抜け出して木っ端微塵にされたとしても、金は一銭たりとも払わんからな。
センタウレイシーイェッサー。
 士官は資料を閉じて、今度は登録画面を呼び出した。
電子音声【軍事識別コード授与完了、通行識別コード授与完了】
電子音声【ラレド軍事エリア27-99前線軍事基地へようこそ】
【あなたの任務は基地内の居住エリアの清掃です。期限は72日間です】
【任務期間中は、オースティン軍の関連する命令に従っていただきます】
【契約書に明記されていないサービスを提供する必要はありません】
電子音声【サービス対象エリア内で発生したあらゆるメンテナンス、廃棄、賠償などの費用は】
【UASによって所有者へと支払われます】
【任務終了後、UASがラレド居住エリアであなたを回収します】
電子音声【あなたの休憩室はCエリア105号室です】
【派遣元より提供された緊急メンテナンス設備とメンタル検測設備は】
【すでに休憩室へと配備されています】
電子音声【登録完了いたしました】
センタウレイシーイエッサー。
後方部門の士官何をボーっとしている、さっさと居住エリアに向かえ。お前の職務に慣れておくことだ。血の気の多いバカどもとは事を起こすな。
センタウレイシーイエッサー、私におまかせください!
 
27-99軍事基地、居住区。
 清掃道具を手に公共エリアへと現れたセンタウレイシーは、
すぐに兵士たちの注意を引いた。
兵士A見ろよ、新しい鉄人形だ!
兵士Bっつか、更新頻繁すぎんだろ?その金を俺たちの武器に使えよな!?
兵士C銃から甘い汁は吸えねェけど、人形となっちゃ話は別だもんな。うっひょ~、しっかし今度のはやけに細いな?素材ごまかしてんじゃね?
兵士Aアンドレのオッサンの趣味だろ?アハハハッ!
 センタウレイシーは彼らを無視して、まっすぐデスクの前へと向かった。
センタウレイシーそこをおどきください、このエリアを清掃いたします。
兵士C「そこをおどきください」――だとよ!人形ごときが命令してきやがった!
兵士Bこっちは命かけて戦ってるってのに、なんで鉄クズに世話されなきゃなんねーんだ。
センタウレイシー27-99軍事基地のスケジュールによりますと、現在は自由訓練の時間です。この時間に休憩エリアを清掃するのは、ルールに沿った行動です。
兵士A口が減らないなぁ。お前さ、前の清掃用人形がどうやって壊れたか知ってる?
 兵士たちは無骨にそう言いながら、腕をならしている。
センタウレイシーは顔色を変えずに数歩後退し、自衛プログラムを起動しようとした……
??おい、お前ら!遊園地じゃねェんだぞ、えぇ!?
 ふいに、恰幅のいい軍人が現れた。
片方の手を腰に当て、もう片方の手で旧式の懐中時計を弄っている。
姿勢を斜めにしているせいで、肩の階級章が露わになった。
兵士Bちゅ、中尉?
??俺が中尉だってのは覚えてたか、賢明だ。訓練時間にここにいる理由を、30秒内に説明してもらおうか?
兵士Aぼ、僕たち……
??言い訳もできねェんなら、グズグズしてねェで表出ろ!グラウンド20周、腕立て伏せ100回だ!
??特にお前だ、ピーター!今度アンドレ大佐を呼び捨てにしてみろ、貴様をここから追い出してやる!
兵士Aも、申し訳ありません、中尉!
??お前らに30分やる、俺の言ったメニューを終わらせろ!とっとと行け!
 士官が懐中時計を揺らすと、数名の兵士たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
??お前が新しく来た後方部門の人形か?俺はここの中尉、アルバートだ。
センタウレイシー助けてくださってありがとうございます、センタウレイシーと申します。
アルバートみっともねェとこ見せちまったな。許してやってくれ、あいつらも無能ってわけじゃねェんだ。
アルバート戦争がこれだけ長引きゃ、人間もおかしくなるってもんさ。後で上に言っとくよ、少しは規律を正せってな。
センタウレイシーわかっております。
アルバートふむ、賢明だ。あのサルどもよりよっぽど規律正しいな。
センタウレイシー以前、軍人家庭にお仕えしておりましたから。
アルバートなるほどな、あいつらにお前さんの爪の垢を飲ませてやりたいよ。
アルバート仕事は真面目にやれよ。今度サルどもに絡まれたら、俺を呼べ。
センタウレイシーイエッサー。
 去っていくアルバートの背中を見て、センタウレイシーは考えていた。
ここでの仕事も悪くはないかもしれない、と。