| 一週間後、後方部門のオフィス。 | |||
| 後方部門の士官 | ふむ、各種試験の結果は申し分ないな。センタウレイシー、お前はここでの滞在期間が最も長い人形になりそうだ――基地が爆破されない限りは。 | ||
|---|---|---|---|
| センタウレイシー | お褒めに預かり光栄です。 | ||
| 後方部門の士官 | これは本心さ、あっという間に馴染んでしまうとはな。どの人形も、調整に2週間を費やすような鉄クズばかりだと思っていたぞ。 | ||
| センタウレイシー | ここでの仕事は、これまで携わった業務とよく似ています。定時に基地を清掃し、衣類を洗い、一日三膳を用意する。過去に同じような訓練を経験しております。 | ||
| 後方部門の士官 | だが、ここでは根本的な仕様が異なる――後方基地と言えど、いつ前線に派遣されてもおかしくない。或いは、あの小隊のように、奇襲戦で命を落とすことも…… | ||
| 後方部門の士官 | 誰もが死のプレッシャーに抗っている。故に……人形で憂さ晴らしをする連中も少なくない。だが、お前へのクレームは一つもない! | ||
| センタウレイシー | 私には戦闘モジュールが組み込まれているため、ある程度の自衛が可能です。 | ||
| センタウレイシー | その他にも、アルバート中尉は人形にお優しいですし…… | ||
| 後方部門の士官 | なんだってかまわんさ。大事なのは、お前の仕事が完璧だという点だ。 | ||
| 後方部門の士官 | やめだ。まったく、人形に何を話しているんだか……とにかく、よくやった。これからもその調子で頼む。 | ||
| センタウレイシー | 承知いたしました。 | ||
| ふいに、センタウレイシーが動きを止めた。 奇襲戦という言葉を聞いて、クロトを思い出す。 | |||
| センタウレイシー | 上官、ひとつお尋ねしても? | ||
| 後方部門の士官 | なんだ? | ||
| センタウレイシー | クロトさん――私とともにここを訪れた人形の様子は如何でしょうか? | ||
| センタウレイシー | 彼女は「突発的な状況」を処理するために、派遣されたのだと伺いました。普段はお忙しくて、あまり基地にはいらっしゃらないとも…… | ||
| 後方部門の士官 | あいつか?フン……まぁ、仕事はしているさ。 | ||
| 後方部門の士官 | ああいった仕事は誰がやろうと同じだ……運悪く、砲弾に砕かれないことを祈る。 | ||
| 後方部門の士官 | 関係ないことに首を突っ込むな、仕事に戻れ。 | ||
| センタウレイシー | イェッサー。 | ||
| 休憩エリア。 | |||
| 兵士A | おい、見ろよ!27エリアの人形メイドがおでましだ! | ||
| 兵士B | 今は休憩時間、中尉はいないときた。今度こそ邪魔されずに済む! | ||
| センタウレイシー | そこをおどきください、このエリアを清掃いたします。 | ||
| 兵士A | チェッ……相変わらず冷たいなぁ…… | ||
| 兵士C | よせよ、ピーター。またこいつの鉄拳をくらいたいか?まったく、あん時は驚かされたぜ! | ||
| 兵士A | フン。家政用人形に格闘術を仕込むなんて、暇な軍人もいたもんだ…… | ||
| 口ではそう言いつつも、兵士たちは大人しくその場からどいて、彼らのゲームを続けた。 | |||
| 兵士C | あっはは!ピーター、またお前の負け~! | ||
| 兵士A | 黙れ!もう一回だ! | ||
| 音楽の流れる中、彼らは床を転がっては、円を描くように地面を駆けずり回っている。 どうやら、身体能力を競い合う遊びのようだ。 | |||
| センタウレイシー | バケツに触れないよう、お気をつけください。 | ||
| 兵士C | 聞いたか、ピーター?邪魔だとよ! | ||
| 兵士A | 今日はやけに突っかかってくるな!それにお前!僕が邪魔だと!? | ||
| 兵士A | そこまで言うんなら、お前がやってみろよ!どっちが格上か、わからせてやる! | ||
| 兵士B | おいおい、人形と体力比べってか?次は戦車と硬さを競い合ったらどうだ!? | ||
| 兵士A | 戦車がどうした?僕だって戦車と戦ったことくらいあるさ!見ろよ、ピンピンしてるだろ!? | ||
| 兵士C | へいへい、わかったわかった。その辺にしとけよ、ま~た上に叱られっぞ。 | ||
| 兵士C | おい、センタウレイシー。見逃してやるから、さっさとここを片付けろ。また中尉に告げ口したらタダじゃおかねーからな! | ||
| 騒々しい兵士たちが場所を譲った。 センタウレイシーは、いくつかの言葉を思い出す。 | |||
| アルバート | お前さんも同じだ、わかるな?己の使命をきっちり果たせば、周囲は自然とお前さんを尊重する。それが軍隊ってやつだ。 | ||
| 後方部門の士官 | なんだってかまわんさ。大事なのは、お前の仕事が完璧だという点だ。 | ||
| センタウレイシー | ……その通りのようね。 | ||
| 彼女は宿舎のほうを見た。クロトの部屋は相変わらず締め切られたままだ。 きっとまた任務に出ているのだろう。 | |||
| センタウレイシー | 彼女も、自身の使命を果たせているといいけど…… | ||
| なぜだかわからないが、センタウレイシーはクロトを気にかけるようになっていた。 | |||
| だが、彼女は知らない。 その時、クロトがこの一週間で最も困難な任務についていたことを。 |
