黄昏のラメント 真紅の葬儀 STAGE 3 葬月の詠嘆-1

Last-modified: 2026-02-10 (火) 22:47:26

一週間後、後方部門のオフィス。
後方部門の士官ふむ、各種試験の結果は申し分ないな。センタウレイシー、お前はここでの滞在期間が最も長い人形になりそうだ――基地が爆破されない限りは。
センタウレイシーお褒めに預かり光栄です。
後方部門の士官これは本心さ、あっという間に馴染んでしまうとはな。どの人形も、調整に2週間を費やすような鉄クズばかりだと思っていたぞ。
センタウレイシーここでの仕事は、これまで携わった業務とよく似ています。定時に基地を清掃し、衣類を洗い、一日三膳を用意する。過去に同じような訓練を経験しております。
後方部門の士官だが、ここでは根本的な仕様が異なる――後方基地と言えど、いつ前線に派遣されてもおかしくない。或いは、あの小隊のように、奇襲戦で命を落とすことも……
後方部門の士官誰もが死のプレッシャーに抗っている。故に……人形で憂さ晴らしをする連中も少なくない。だが、お前へのクレームは一つもない!
センタウレイシー私には戦闘モジュールが組み込まれているため、ある程度の自衛が可能です。
センタウレイシーその他にも、アルバート中尉は人形にお優しいですし……
後方部門の士官なんだってかまわんさ。大事なのは、お前の仕事が完璧だという点だ。
後方部門の士官やめだ。まったく、人形に何を話しているんだか……とにかく、よくやった。これからもその調子で頼む。
センタウレイシー承知いたしました。
 ふいに、センタウレイシーが動きを止めた。
奇襲戦という言葉を聞いて、クロトを思い出す。
センタウレイシー上官、ひとつお尋ねしても?
後方部門の士官なんだ?
センタウレイシークロトさん――私とともにここを訪れた人形の様子は如何でしょうか?
センタウレイシー彼女は「突発的な状況」を処理するために、派遣されたのだと伺いました。普段はお忙しくて、あまり基地にはいらっしゃらないとも……
後方部門の士官あいつか?フン……まぁ、仕事はしているさ。
後方部門の士官ああいった仕事は誰がやろうと同じだ……運悪く、砲弾に砕かれないことを祈る。
後方部門の士官関係ないことに首を突っ込むな、仕事に戻れ。
センタウレイシーイェッサー。
 
休憩エリア。
兵士Aおい、見ろよ!27エリアの人形メイドがおでましだ!
兵士B今は休憩時間、中尉はいないときた。今度こそ邪魔されずに済む!
センタウレイシーそこをおどきください、このエリアを清掃いたします。
兵士Aチェッ……相変わらず冷たいなぁ……
兵士Cよせよ、ピーター。またこいつの鉄拳をくらいたいか?まったく、あん時は驚かされたぜ!
兵士Aフン。家政用人形に格闘術を仕込むなんて、暇な軍人もいたもんだ……
 口ではそう言いつつも、兵士たちは大人しくその場からどいて、彼らのゲームを続けた。
兵士Cあっはは!ピーター、またお前の負け~!
兵士A黙れ!もう一回だ!
 音楽の流れる中、彼らは床を転がっては、円を描くように地面を駆けずり回っている。
どうやら、身体能力を競い合う遊びのようだ。
センタウレイシーバケツに触れないよう、お気をつけください。
兵士C聞いたか、ピーター?邪魔だとよ!
兵士A今日はやけに突っかかってくるな!それにお前!僕が邪魔だと!?
兵士Aそこまで言うんなら、お前がやってみろよ!どっちが格上か、わからせてやる!
兵士Bおいおい、人形と体力比べってか?次は戦車と硬さを競い合ったらどうだ!?
兵士A戦車がどうした?僕だって戦車と戦ったことくらいあるさ!見ろよ、ピンピンしてるだろ!?
兵士Cへいへい、わかったわかった。その辺にしとけよ、ま~た上に叱られっぞ。
兵士Cおい、センタウレイシー。見逃してやるから、さっさとここを片付けろ。また中尉に告げ口したらタダじゃおかねーからな!
 騒々しい兵士たちが場所を譲った。
センタウレイシーは、いくつかの言葉を思い出す。
 
アルバートお前さんも同じだ、わかるな?己の使命をきっちり果たせば、周囲は自然とお前さんを尊重する。それが軍隊ってやつだ。
 
後方部門の士官なんだってかまわんさ。大事なのは、お前の仕事が完璧だという点だ。
 
センタウレイシー……その通りのようね。
 彼女は宿舎のほうを見た。クロトの部屋は相変わらず締め切られたままだ。
きっとまた任務に出ているのだろう。
センタウレイシー彼女も、自身の使命を果たせているといいけど……
 なぜだかわからないが、センタウレイシーはクロトを気にかけるようになっていた。
 だが、彼女は知らない。
その時、クロトがこの一週間で最も困難な任務についていたことを。