| 軍事基地付近の公道。 | |||
| ヘル | ああっ!燃え盛る炎!立ちこめる硝煙!荒れ果てた大地! | ||
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| ヘル | むふ~……この道、気に入ったぜ。通るたんびに、地面にある白い線を数えるんだ!それにしても、前の任務から1日足らずでこの有様かァ? | ||
| ヘル | まったくよ~、モラルもへったくれもありゃしねー!道すら爆破しちまうとはな! | ||
| クロト | ……ヘル、外勤では静かに。 | ||
| ヘル | へいへいへい、わぁってるって。 | ||
| ヘル | 空襲中に、ここを通った哀れなヤツらを探しに行くんだろ?手伝うぜ、オマエみたいに目は良くないけどよ、オレ、がんばるからさ! | ||
| ヘル | あ~あ、オマエをイジメたあの兵士どもが、転がってたら面白いのにな~ | ||
| クロト | そう言わないで、死の前には誰しも平等だから。 | ||
| ヘル | けどよ~、アイツらマジでムカツクぜ!まともなのは、あのアルバート中尉だけだ!アイツは良いヤツだ! | ||
| わちゃわちゃと騒ぎ立てるヘルをよそに、クロトは目を閉じて、小声で歌い始めた。 いつもの強い光が、彼女の瞼の下から溢れる。 | |||
| クロト | …… | ||
| クロト | …… | ||
| クロト | …… | ||
| ヘル | なんだァ、今日はやけに長いな? | ||
| クロト | …… | ||
| ヘル | デッカいヤツなのか~?それともチッコいやつ?識別し辛いとか? | ||
| ヘル | ……へいへい、黙ってりゃいいんだろ、黙ってりゃ。のんびり探せばいいさ。オレはオマエの横で、砂を防いでやるから。静かにするよ…… | ||
| クロト | ……見つけた。 | ||
| クロトは公道を離れ、付近の坂へと向かった。 | |||
| ヘル | うおっ、これって……車のパーツかァ?ここまで飛んでくるとは…… | ||
| ヘル | よし、クロト!オマエにまかせた!シンチョーにどかせよ~…… | ||
| 障害物を取り除いた瞬間、奇しくもクロトの表情が変わった。 | |||
| クロト | ……この者は…… | ||
| ヘル | ア、アアア……アルバート中尉じゃねェかっ!? | ||
| アルバート | …… | ||
| アルバート | お前、さんは……クロト、か……? | ||
| クロト | …… | ||
| クロトは彼を見たまま、動きを止めた。 | |||
| アルバート | ゲホッ……ははは、運が良かったぜ……少なくとも、運転手よりかは…… | ||
| アルバート | 賢明だったよ。 | ||
| 彼はいつもの口癖を繰り返すと、胸元にある右手で懐中時計をまさぐった。 | |||
| クロト | ……顔をあげないで。 | ||
| アルバート | わかってるさ……首がもうダメだってこたァ……ゴホゴホッ…… | ||
| アルバート | 午後3時57分か……たった30分で俺を見つけたか……賢明だ…… | ||
| アルバート | ボーっとするな……あの棺桶に……俺をさっさと入れんか。 | ||
| クロト | あなたの魂はまだ現世にある、私が引導を渡そう。 | ||
| クロトは手を休めることなく、静かに、それでいて素早く車の残骸を片付けている。 | |||
| アルバート | フン……人形も嘘をつくってか…… | ||
| アルバート | 時間だよ……わかってる。思ってたよりも唐突だが、いつかはこうなると知ってたさ…… | ||
| アルバート | あとは、頼んだぞ……男前にしてくれりゃ、あのサルどもも、お前さんにかまわんだろうさ…… | ||
| クロト | あなたの魂はまだ現世にある、私が引導を渡そう。 | ||
| アルバート | はは……お前さんがその気なら、勝手にしろ…… | ||
| アルバート | ハァ……この戦争は……いつになったら終わるんだ…… | ||
| アルバートの息遣いが弱まってゆく。 だが、クロトは動きを止めない。 | |||
| クロト | ……ヘル。 | ||
| ヘル | はいよッ!こちとら準備万端、オールオーケーだ!だからよ、中尉!オマエもあきらめんな!温度、湿度ともに良好!通気性もバッチリだぜ! | ||
| ヘル | あともう少しだ、ふんばれ!オレん中から生きて出てったヤツだって、大勢いるんだからな!マジもマジ、大マジよ!ウソついたら雷100本うたれちまう!いや、別に雷は怖くねーけどよ、オレ、誓うぜ! | ||
| アルバート | …… | ||
| クロトが瓦礫の下からアルバートを安全に引きずり出した時、 彼はすでに気を失っていた。残るは微かな呼吸音だけ。 | |||
| クロト | …… | ||
| クロト | 生存率を計算……0.3%以下…… | ||
| クロト | ……ヘル、はやく。 | ||
| ヘル | いいぜ!どんと来いッ! | ||
| クロトはアルバートを棺桶に横たわらせた。 | |||
| ヘル | 密封完了、安定性OK!どんなに揺らしたって中は静かなモンだぜ!はやく戻るぞ、クロト! | ||
| クロトはヘルを背負って、来た道を全速力で戻っていった…… |
