黄昏のラメント 真紅の葬儀 STAGE 3 葬月の詠嘆-2

Last-modified: 2026-02-10 (火) 22:49:06

軍事基地付近の公道。
ヘルああっ!燃え盛る炎!立ちこめる硝煙!荒れ果てた大地!
ヘルむふ~……この道、気に入ったぜ。通るたんびに、地面にある白い線を数えるんだ!それにしても、前の任務から1日足らずでこの有様かァ?
ヘルまったくよ~、モラルもへったくれもありゃしねー!道すら爆破しちまうとはな!
クロト……ヘル、外勤では静かに。
ヘルへいへいへい、わぁってるって。
ヘル空襲中に、ここを通った哀れなヤツらを探しに行くんだろ?手伝うぜ、オマエみたいに目は良くないけどよ、オレ、がんばるからさ!
ヘルあ~あ、オマエをイジメたあの兵士どもが、転がってたら面白いのにな~
クロトそう言わないで、死の前には誰しも平等だから。
ヘルけどよ~、アイツらマジでムカツクぜ!まともなのは、あのアルバート中尉だけだ!アイツは良いヤツだ!
 わちゃわちゃと騒ぎ立てるヘルをよそに、クロトは目を閉じて、小声で歌い始めた。
いつもの強い光が、彼女の瞼の下から溢れる。
クロト……
クロト……
クロト……
ヘルなんだァ、今日はやけに長いな?
クロト……
ヘルデッカいヤツなのか~?それともチッコいやつ?識別し辛いとか?
ヘル……へいへい、黙ってりゃいいんだろ、黙ってりゃ。のんびり探せばいいさ。オレはオマエの横で、砂を防いでやるから。静かにするよ……
クロト……見つけた。
 クロトは公道を離れ、付近の坂へと向かった。
ヘルうおっ、これって……車のパーツかァ?ここまで飛んでくるとは……
ヘルよし、クロト!オマエにまかせた!シンチョーにどかせよ~……
 障害物を取り除いた瞬間、奇しくもクロトの表情が変わった。
クロト……この者は……
ヘルア、アアア……アルバート中尉じゃねェかっ!?
アルバート……
アルバートお前、さんは……クロト、か……?
クロト……
 クロトは彼を見たまま、動きを止めた。
アルバートゲホッ……ははは、運が良かったぜ……少なくとも、運転手よりかは……
アルバート賢明だったよ。
 彼はいつもの口癖を繰り返すと、胸元にある右手で懐中時計をまさぐった。
クロト……顔をあげないで。
アルバートわかってるさ……首がもうダメだってこたァ……ゴホゴホッ……
アルバート午後3時57分か……たった30分で俺を見つけたか……賢明だ……
アルバートボーっとするな……あの棺桶に……俺をさっさと入れんか。
クロトあなたの魂はまだ現世にある、私が引導を渡そう。
 クロトは手を休めることなく、静かに、それでいて素早く車の残骸を片付けている。
アルバートフン……人形も嘘をつくってか……
アルバート時間だよ……わかってる。思ってたよりも唐突だが、いつかはこうなると知ってたさ……
アルバートあとは、頼んだぞ……男前にしてくれりゃ、あのサルどもも、お前さんにかまわんだろうさ……
クロトあなたの魂はまだ現世にある、私が引導を渡そう。
アルバートはは……お前さんがその気なら、勝手にしろ……
アルバートハァ……この戦争は……いつになったら終わるんだ……
 アルバートの息遣いが弱まってゆく。
だが、クロトは動きを止めない。
クロト……ヘル。
ヘルはいよッ!こちとら準備万端、オールオーケーだ!だからよ、中尉!オマエもあきらめんな!温度、湿度ともに良好!通気性もバッチリだぜ!
ヘルあともう少しだ、ふんばれ!オレん中から生きて出てったヤツだって、大勢いるんだからな!マジもマジ、大マジよ!ウソついたら雷100本うたれちまう!いや、別に雷は怖くねーけどよ、オレ、誓うぜ!
アルバート……
 クロトが瓦礫の下からアルバートを安全に引きずり出した時、
彼はすでに気を失っていた。残るは微かな呼吸音だけ。
クロト……
クロト生存率を計算……0.3%以下……
クロト……ヘル、はやく。
ヘルいいぜ!どんと来いッ!
 クロトはアルバートを棺桶に横たわらせた。
ヘル密封完了、安定性OK!どんなに揺らしたって中は静かなモンだぜ!はやく戻るぞ、クロト!
 クロトはヘルを背負って、来た道を全速力で戻っていった……