黄昏のラメント 真紅の葬儀 STAGE 4 憐星の間奏-1

Last-modified: 2026-02-10 (火) 22:52:47

センタウレイシーの部屋。
ヘルうわっ!うひょ~!!だっはぁぁ~!!
ヘル日差しの差し込む明るい窓!清潔な床!整ったメンテナンス設備!
ヘルカンペキだ……カンペキだぜ、センタウレイシー!!
センタウレイシーありがとうございます。ヘルさんの場所は、この壁でよろしいですか?
ヘルトーゼン!ヒェ~、タイルがピッカピカだ!見ろよクロト、床に映るこの影!オレが2倍に伸びちまったぜ!
クロト清潔すぎる場所には、倒影が浮かぶ……私も。
 クロトは俯いて地面を見た。
ふいに、顔の傷口がひときわ目立って感じられる。
 彼女は頭上の黒いレースを引っ張って、傷口を隠した。
だが、影の中のそれは相変わらず際立って見える。
センタウレイシークロトさん、ここへおかけください。
 センタウレイシーはクロトの肩に手を当てた。
彼女の袖に遮られて、影に映る傷が見えなくなった。
クロト……ええ。
 クロトはセンタウレイシーに促されるまま、椅子に座って彼女を見上げた。
センタウレイシーこの姿勢のまま、動かないでくださいね。
クロト目的はいまだ謎霧に包まれたまま……何をするつもり、センタウレイシー?
センタウレイシーあなたの皮膚を修復します。
クロト直したところで、いずれは綻ぶ。
センタウレイシー床だって、いずれは汚れるものでしょう。
クロト……
 クロトは目を瞬かせて、目と鼻の先にある家政用人形の表情を見た。
 稼働中のセンサーが、センタウレイシーの手の温度をクロトのメンタルへと届ける。
それは、死者とはまるで異なる感触だった。
センタウレイシーもうすぐアフタヌーンティーのお時間です。好きな飲み物はございますか?
クロト茶は生者に属する物事、私の責務とは無関係。関連データはインプットされていない。
センタウレイシーでしたら、紅茶はいかがです?濃厚な香りと、微かな甘味。午後にぴったりですよ。
クロト甘味……お茶が、甘い?
センタウレイシーええ。もちろん、ケーキとでしたら、ストレートでお召し上がり頂いてもかまいません。
 クロトの記憶の中から、三人で午後の時間を過ごした場面が浮かび上がる。
灼けるような胸の痛みに耐えきれず、クロトは目を閉じた。
センタウレイシー……痛くさせてしまいましたか?
クロト……ううん。こんな痛みなど、すぐに消える。
クロト紅茶と……ケーキをお願いしたい。かまわない?
センタウレイシーもちろんです。この部位を処理し終えたら、すぐに。
ヘルおお~っ!ケーキと紅茶かぁ!オレ、棺桶だけどさ、オレのカラダにもぶっかけてくれよ!なぁ!
クロト錆びる。
ヘルあとで拭けばいいだろ~!なぁ、クロト、頼むよ。オレにも味わわせてくれ!
 騒ぎ立てるヘルの言葉を聞いて、
センタウレイシーは皮膚の修復を済ませると、こう答えた。
センタウレイシーかまいませんよ。驚いた心を癒やす、午後のお茶会をお楽しみくださいませ。その後は、私の部屋でゆっくりお休みになってください。
ヘルヒャッホー!やったぜ!棺桶人生初のアフタヌーンティーだ!