| センタウレイシーの部屋。 | |||
| ヘル | うわっ!うひょ~!!だっはぁぁ~!! | ||
|---|---|---|---|
| ヘル | 日差しの差し込む明るい窓!清潔な床!整ったメンテナンス設備! | ||
| ヘル | カンペキだ……カンペキだぜ、センタウレイシー!! | ||
| センタウレイシー | ありがとうございます。ヘルさんの場所は、この壁でよろしいですか? | ||
| ヘル | トーゼン!ヒェ~、タイルがピッカピカだ!見ろよクロト、床に映るこの影!オレが2倍に伸びちまったぜ! | ||
| クロト | 清潔すぎる場所には、倒影が浮かぶ……私も。 | ||
| クロトは俯いて地面を見た。 ふいに、顔の傷口がひときわ目立って感じられる。 | |||
| 彼女は頭上の黒いレースを引っ張って、傷口を隠した。 だが、影の中のそれは相変わらず際立って見える。 | |||
| センタウレイシー | クロトさん、ここへおかけください。 | ||
| センタウレイシーはクロトの肩に手を当てた。 彼女の袖に遮られて、影に映る傷が見えなくなった。 | |||
| クロト | ……ええ。 | ||
| クロトはセンタウレイシーに促されるまま、椅子に座って彼女を見上げた。 | |||
| センタウレイシー | この姿勢のまま、動かないでくださいね。 | ||
| クロト | 目的はいまだ謎霧に包まれたまま……何をするつもり、センタウレイシー? | ||
| センタウレイシー | あなたの皮膚を修復します。 | ||
| クロト | 直したところで、いずれは綻ぶ。 | ||
| センタウレイシー | 床だって、いずれは汚れるものでしょう。 | ||
| クロト | …… | ||
| クロトは目を瞬かせて、目と鼻の先にある家政用人形の表情を見た。 | |||
| 稼働中のセンサーが、センタウレイシーの手の温度をクロトのメンタルへと届ける。 それは、死者とはまるで異なる感触だった。 | |||
| センタウレイシー | もうすぐアフタヌーンティーのお時間です。好きな飲み物はございますか? | ||
| クロト | 茶は生者に属する物事、私の責務とは無関係。関連データはインプットされていない。 | ||
| センタウレイシー | でしたら、紅茶はいかがです?濃厚な香りと、微かな甘味。午後にぴったりですよ。 | ||
| クロト | 甘味……お茶が、甘い? | ||
| センタウレイシー | ええ。もちろん、ケーキとでしたら、ストレートでお召し上がり頂いてもかまいません。 | ||
| クロトの記憶の中から、三人で午後の時間を過ごした場面が浮かび上がる。 灼けるような胸の痛みに耐えきれず、クロトは目を閉じた。 | |||
| センタウレイシー | ……痛くさせてしまいましたか? | ||
| クロト | ……ううん。こんな痛みなど、すぐに消える。 | ||
| クロト | 紅茶と……ケーキをお願いしたい。かまわない? | ||
| センタウレイシー | もちろんです。この部位を処理し終えたら、すぐに。 | ||
| ヘル | おお~っ!ケーキと紅茶かぁ!オレ、棺桶だけどさ、オレのカラダにもぶっかけてくれよ!なぁ! | ||
| クロト | 錆びる。 | ||
| ヘル | あとで拭けばいいだろ~!なぁ、クロト、頼むよ。オレにも味わわせてくれ! | ||
| 騒ぎ立てるヘルの言葉を聞いて、 センタウレイシーは皮膚の修復を済ませると、こう答えた。 | |||
| センタウレイシー | かまいませんよ。驚いた心を癒やす、午後のお茶会をお楽しみくださいませ。その後は、私の部屋でゆっくりお休みになってください。 | ||
| ヘル | ヒャッホー!やったぜ!棺桶人生初のアフタヌーンティーだ! |
