| 二週間後、基地内のとある廊下。 | |||
| クロト | ごきげんよう、レイシー。黄昏が降臨するというのに、あなたは使命を終えていない。 | ||
|---|---|---|---|
| センタウレイシー | ごきげんよう、クロト。このエリアで最後よ。あなたは?これから何をしにいくの? | ||
| クロト | 補給を受け取って、戦場の捜索。 | ||
| センタウレイシー | そうだったのね、頑張って。早く戻って来てね、夜にワッフルを焼くわ。それと、基地で映画を放映するんですって。 | ||
| 清潔な服に着替えたクロトが、巡回中の兵士たちと鉢合わせした。 | |||
| 兵士A | おっと、誰かと思えば、カラスも寄り付かない葬儀屋人形か! | ||
| クロト | カラスは知性を持つ鳥類、私が現世に生きる存在だと知っている。 | ||
| クロト | カラスに纏わり付かれる感覚を知りたいなら……ヘル、どう思う? | ||
| クロトは棺桶をポンと叩いた。 | |||
| ヘル | ヘイ、寄ってくかい? | ||
| クロトとヘルの答えを聞いて、兵士は大声で笑い出した。 | |||
| 兵士A | センタウレイシーにつられて、お前まで冗談を言い出すとはな。まぁ、悪くないよ。精巧なだけの鉄クズよりはマシだ。 | ||
| 兵士B | そいつで遊ぶな、真面目に警戒しろ。 | ||
| 兵士B | ……それと、ピーター。お前に言っておきたいことがある。 | ||
| 兵士たちはクロトと距離を取って、声を低くした。 だが、彼らの会話ははっきりと聞こえている。 | |||
| 兵士B | 妙だ。あの突撃兵どもを撃退したってのに、なんで上は反応がない? | ||
| 兵士A | 反応ってなんだよ?こっちも公約を無視して攻め込めって? | ||
| 兵士B | マジで頭にくるぜ……クズにとっちゃ、戦争の公約なんざ紙切れも同然だ、クソッ! | ||
| 兵士A | それ、中尉の受け売りだろ。でも、確かにこのところの状況は妙だな。 | ||
| 兵士B | ああ、考えてもみろ。まずは小規模の交戦、そんで中尉の狙撃。次は衛生兵小隊の襲撃…… | ||
| 兵士A | あのゴロツキども、こっちを探ってるのか? | ||
| 兵士B | ありえるな。上への報告に返事はあったか? | ||
| 兵士A | 聞くところによると、少しずつ撤退し始めてるって話だよ。他の部隊が先に行って、僕たちは二日後だ。 | ||
| 兵士B | よかった、俺たちの言葉は届いたんだな。だが、中尉は…… | ||
| 兵士A | ……やめよう、この話は。お前はそっち、僕はこっちだ。3分に一度連絡を。 | ||
| 兵士たちが各々巡回に向かおうとすると、にわかに鋭い警報音が鳴った。 | |||
| 兵士A | …… | ||
| 兵士B | 空襲だ……奴らが来たぞ!!! | ||
| クロト | ……! | ||
| クロトが猛然とふりむくと、敵軍のエアシップが飛来していた。 | |||
| クロト | まずい……レイシー……センタウレイシー! | ||
| クロトは躊躇うことなく、宿舎へ向かって走り出した。 | |||
| 宿舎の中、扉の縁を拭いていたセンタウレイシーが、異様な気配に気づいて身を正す。 | |||
| センタウレイシー | 空襲警報……! | ||
| センタウレイシー | すぐにでも撤退しないと、だけどクロトが…… | ||
| センタウレイシーは、笑顔で手を振るクロトの姿を思い出して、急に立ち止まった。 | |||
| クロト | レイシー! | ||
| クロトがセンタウレイシーのもとへと駆けつける。 | |||
| センタウレイシー | クロト、敵の空襲よ!今すぐ撤退しなくては! | ||
| クロト | よかった、間に合った……そのことを伝えに来たから。 | ||
| 人形が二人して基地の外へと撤退し始める。 しかし、頭上からは天地を揺るがす轟音が響いていた。 | |||
| ドォンッ!! | |||
| 巨大な衝撃波に呑まれ、宿舎が崩壊した。 |
