黄昏のラメント 真紅の葬儀 STAGE 5 絶響探求-3

Last-modified: 2026-02-10 (火) 23:07:14

 砲撃がどれだけ続いただろうか、軍事基地はほとんど更地になっていた。
 廃墟の中で、ヘルが奇声を上げながら蓋を開け、
上にのしかかる瓦礫を無理やりどかした。
ヘルいだ、いだだだだだだだーーーッ!!!
センタウレイシー大丈夫?
クロトへ……平気。私がヘルを背負う。
センタウレイシー掃討部隊が来た……はやくここから撤退しないと!ついて来て!
 (アサルトライフルの銃声)
センタウレイシーなぜ民生用人形を付け狙うの……あっ……
クロト……あなたが前の作戦で軍服を着ていたから、戦術人形だと認識されているのかも。
センタウレイシーありえるわね。二人は先に逃げて、私は別の道を行くから。
クロトあの嗜血者どもの目標に、私も含まれているはず。狼煙が満ちれば、逃げられる者はいない。
センタウレイシーそうね……奴らに噛みつかれたら厄介だわ。もっと速く走るのよ。敵が使っているのはレールガンだから、丘に隠れてしまえば当たらない!
 二人は少しずつ追手から距離を取った。
 再び砲撃音が鳴る。
クロトしまった、砲弾!
 一発の砲弾が、センタウレイシーめがけて飛来した。
クロトがとっさにセンタウレイシーを突き飛ばし、続いてヘルを掲げる。
 弾頭がヘルに触れた瞬間、それは爆発した。
衝撃波が二人を吹き飛ばす!
センタウレイシー&クロトう、ううう……
ヘルこ、腰が……これ、腰折れたんじゃね……?
センタウレイシークロト、大丈夫!?まだ動ける?
クロトか……体が、言うことを……
センタウレイシー爆発による磁場でシステムが錯乱したんだわ……
 遠くでは、敵の掃討部隊が行動を始めていた。
 センタウレイシーの視線が、ヘルに向けられる。
ヘルあいててて……な、なんだよ、レイシー?
 センタウレイシーはヘルの状況を検めた。
センタウレイシー変形がひどい、でも開閉はできるわね。
ヘルそりゃ有用な情報をどーも。軍規格のEMPレールガンを真正面からくらっても無事なのは、世界広しといえどオレぐらいのモンさ。でも、オマエらはさっさと逃げたほうがいいぜ……ん?なにしてんだ?
 センタウレイシーはヘルの蓋を開けて、クロトをその中に入れた。
そして鎖で自分自身と棺桶とをがんじがらめにする。
 センタウレイシーは棺桶を背負って飛び出した。
荒野を凄まじい速度で駆けてゆく。
クロトレイシー、何を……ここから出して、一人で逃げて!
センタウレイシーしっ、静かに。
 ドォンッ!!
 爆撃音が鳴って、クロトは強烈な無重力感を覚えた。
激しい動転と、衝突が後に続く。
クロトレイシー!
センタウレイシーじっとして!!
 クロトはついさっきの衝撃で目眩を患ったかと思うと、
今度は移動による加速度に襲われる。
 ドンッ!ドンッ!ドンッ!
 クロトにはわかっていた。
砲撃でセンタウレイシーが立ち止まる時間が徐々に長くなっている。
 ズドンッ!!
 またしても砲撃だ。
その時、センタウレイシーはすぐには立ち上がれなかった。
クロトレイシー……!
 素体の制御権を取り戻したクロトは、棺桶の蓋を押し開こうとした。
だが、ヘルの鍵は完全に締め切られている。
センタウレイシーそこで、じっとしてなさい……外は……危険すぎる……
クロトかまわない!生者は必然的に死へと赴く、私に未練なんてない!
クロトでもレイシー、あなたは違う!まだヴェーネがあなたを待ってる……!
センタウレイシーあの子は、私を忘れないわ。
クロトでも……あっ……
 クロトは、センタウレイシーが立ち上がって、丘の上へと走ってゆくのを感じた。
センタウレイシーたとえ私が「死んで」も、たとえ私が何も覚えてなくたって、
あの子はこれまでのように接してくれる、何も変わらない。
クロト私は、レイシーに生きていてほしい……お願いだから……!
センタウレイシークロト。もしあなたが「死んだ」ら、
お姉さんたちを覚えている人は、誰もいなくなる。
センタウレイシーこの物語を語り継げるのは、あなただけなのよ。
センタウレイシーだから、クロト、あなたは生き残らなくちゃ。