| 砲撃がどれだけ続いただろうか、軍事基地はほとんど更地になっていた。 | |||
| 廃墟の中で、ヘルが奇声を上げながら蓋を開け、 上にのしかかる瓦礫を無理やりどかした。 | |||
| ヘル | いだ、いだだだだだだだーーーッ!!! | ||
| センタウレイシー | 大丈夫? | ||
| クロト | へ……平気。私がヘルを背負う。 | ||
| センタウレイシー | 掃討部隊が来た……はやくここから撤退しないと!ついて来て! | ||
| (アサルトライフルの銃声) | |||
| センタウレイシー | なぜ民生用人形を付け狙うの……あっ…… | ||
| クロト | ……あなたが前の作戦で軍服を着ていたから、戦術人形だと認識されているのかも。 | ||
| センタウレイシー | ありえるわね。二人は先に逃げて、私は別の道を行くから。 | ||
| クロト | あの嗜血者どもの目標に、私も含まれているはず。狼煙が満ちれば、逃げられる者はいない。 | ||
| センタウレイシー | そうね……奴らに噛みつかれたら厄介だわ。もっと速く走るのよ。敵が使っているのはレールガンだから、丘に隠れてしまえば当たらない! | ||
| 二人は少しずつ追手から距離を取った。 | |||
| 再び砲撃音が鳴る。 | |||
| クロト | しまった、砲弾! | ||
| 一発の砲弾が、センタウレイシーめがけて飛来した。 クロトがとっさにセンタウレイシーを突き飛ばし、続いてヘルを掲げる。 | |||
| 弾頭がヘルに触れた瞬間、それは爆発した。 衝撃波が二人を吹き飛ばす! | |||
| センタウレイシー&クロト | う、ううう…… | ||
| ヘル | こ、腰が……これ、腰折れたんじゃね……? | ||
| センタウレイシー | クロト、大丈夫!?まだ動ける? | ||
| クロト | か……体が、言うことを…… | ||
| センタウレイシー | 爆発による磁場でシステムが錯乱したんだわ…… | ||
| 遠くでは、敵の掃討部隊が行動を始めていた。 | |||
| センタウレイシーの視線が、ヘルに向けられる。 | |||
| ヘル | あいててて……な、なんだよ、レイシー? | ||
| センタウレイシーはヘルの状況を検めた。 | |||
| センタウレイシー | 変形がひどい、でも開閉はできるわね。 | ||
| ヘル | そりゃ有用な情報をどーも。軍規格のEMPレールガンを真正面からくらっても無事なのは、世界広しといえどオレぐらいのモンさ。でも、オマエらはさっさと逃げたほうがいいぜ……ん?なにしてんだ? | ||
| センタウレイシーはヘルの蓋を開けて、クロトをその中に入れた。 そして鎖で自分自身と棺桶とをがんじがらめにする。 | |||
| センタウレイシーは棺桶を背負って飛び出した。 荒野を凄まじい速度で駆けてゆく。 | |||
| クロト | レイシー、何を……ここから出して、一人で逃げて! | ||
| センタウレイシー | しっ、静かに。 | ||
| ドォンッ!! | |||
| 爆撃音が鳴って、クロトは強烈な無重力感を覚えた。 激しい動転と、衝突が後に続く。 | |||
| クロト | レイシー! | ||
| センタウレイシー | じっとして!! | ||
| クロトはついさっきの衝撃で目眩を患ったかと思うと、 今度は移動による加速度に襲われる。 | |||
| ドンッ!ドンッ!ドンッ! | |||
| クロトにはわかっていた。 砲撃でセンタウレイシーが立ち止まる時間が徐々に長くなっている。 | |||
| ズドンッ!! | |||
| またしても砲撃だ。 その時、センタウレイシーはすぐには立ち上がれなかった。 | |||
| クロト | レイシー……! | ||
| 素体の制御権を取り戻したクロトは、棺桶の蓋を押し開こうとした。 だが、ヘルの鍵は完全に締め切られている。 | |||
| センタウレイシー | そこで、じっとしてなさい……外は……危険すぎる…… | ||
| クロト | かまわない!生者は必然的に死へと赴く、私に未練なんてない! | ||
| クロト | でもレイシー、あなたは違う!まだヴェーネがあなたを待ってる……! | ||
| センタウレイシー | あの子は、私を忘れないわ。 | ||
| クロト | でも……あっ…… | ||
| クロトは、センタウレイシーが立ち上がって、丘の上へと走ってゆくのを感じた。 | |||
| センタウレイシー | たとえ私が「死んで」も、たとえ私が何も覚えてなくたって、 あの子はこれまでのように接してくれる、何も変わらない。 | ||
| クロト | 私は、レイシーに生きていてほしい……お願いだから……! | ||
| センタウレイシー | クロト。もしあなたが「死んだ」ら、 お姉さんたちを覚えている人は、誰もいなくなる。 | ||
| センタウレイシー | この物語を語り継げるのは、あなただけなのよ。 | ||
| センタウレイシー | だから、クロト、あなたは生き残らなくちゃ。 |
