黄昏のラメント 真紅の葬儀 STAGE 5 絶響探求-4

Last-modified: 2026-02-10 (火) 23:08:56

 ズドンッ!!!!
 爆発が起きて、センタウレイシーが再び歩を止めた。
クロトレイシー!!
ヘルぐっ……
クロトヘル!?どうしたの!?
ヘルクロト……パーツのあちこちがイカれちまった……
オレ……もうダメかも……
ヘルこれが、死ぬって……ゲホッ……やつなの、か……?
クロトだ、だめ!あなたは死なない!死んではだめ!
クロトここから出して!センタウレイシー!!
センタウレイシー待って……今、鍵を開けるから……バックルが、変形して……
ヘルクロト、あのさ。
ヘルオレ、ここへ来てから、オマエのことがずっと心配だったんだぜ。
レイシーがいてくれてよかったよ。
オマエが元気になって、嬉しいよ……
ヘルただ、残念だ。
オマエと最期まで、いられると思ってたんだけどなァ……
クロトヘル……?ヘル!?
 鍵がようやく開いて、クロトが棺桶から転がり出た。
 そして彼女はようやく、目の前の人形と棺桶を目の当たりにした。
センタウレイシー……
クロト……
 そこはすでに、砲弾の影響がおよぶ射程範囲の最端だった。
砲火が徐々に他のエリアへと転向してゆく。
 ヘルはまるで平らに潰された鉄の塊のようだ、棺桶には到底見えない。
 一方、センタウレイシーは完全に元の面影を失っている。
ヘル【人格ロジックの維持に失敗しました……基礎システムに移行します】
ヘル【素体損傷率が高すぎます。この場合は本機を遺棄し、速やかにこのエリアから撤退してください】
クロトヘル……センタウレイシー……
センタウレイシー……クロト。
 センタウレイシーがクロトに手を伸ばす。
 クロトは、あの絶望した負傷兵を思い出した。
彼女はとっさにセンタウレイシーの手をつかもうとする。
しかし、センタウレイシーは彼女の手を取らず、損壊した自身の腹部を指さした。
センタウレイシー掃討部隊が、ここに来る可能性が……高い。
クロトいや……いや、言わないで……
センタウレイシー私の、エネルギーを使って……ここから、逃げて。
センタウレイシー行きなさい、クロト……自分を、埋葬しては……だ、め……
 センタウレイシーは稼働を停止した。
クロト……ぜんぶ……知ってた、の?
クロト私が死を、消滅を追い求めていたこと……なのになぜ、そこまでして……
 彼女に応えるのは、静寂だけだ。
クロト結局、生き残ったのは私だけ……私には、見送ることしかできないの?
 遠くではまだ砲撃が轟いている。
クロトが顔を拭う、まるで涙を拭き取るかのように。
 灰にまみれたオイルが、手の甲に擦り付けられる。
彼女は深く深呼吸をして、素体に蓄積された不要な熱を放出した。
クロトううん……違う。少なくとも、今は……私にだって、できることがある。
 彼女はヘルを背中にくくりつけ、センタウレイシーを抱き上げた。
 彼女の素体の重さは、これまで運んだ遺体となんら変わらなかった。
しかしクロトは、いまだかつてない重みを腕に感じていた。
 彼女のメンタルには、一縷の希望、一時の暖かな思い出が、
いかなる亡霊よりも鮮明に存在していた。
それが「死にたがり」の人形をこの世に留めている。
クロト生きるんだ……
 彼女はセンタウレイシーを慎重に、大切に抱きしめた。
自身の頬を、彼女の額にそっと寄せる。
そして凛と顔を上げ、揺るがぬ眼差しを遠くに向けた。
クロトレイシー、約束する……だけど、あなたも約束して。
必ず、「生きて」いくって。
 送り人は、稼働停止したままの人形を抱いて、
一歩一歩、死と破壊に満ちた戦場から歩いていった。