| ラレド居住区、UAS支部。 | |||
| 街中に降り注ぐ朝の日差しが、しわくちゃになった一枚の手紙を優しく照らした。 | |||
| 「これはUASの受け入れ契約書です。パパとママが残していったお金で、 あなたの長期保守サービスを購入しました。 だからあなたがUASへ戻っても、所有者は私のままです。 でももう仕事を続ける必要はありません。 どうか、あなたの好きなことをしてください」 | |||
| 「私は軍に入隊して、パパとママを探しに行きます。 ついてこないでね、レイシー。 戦場に来ちゃだめ――これは主人としての最後の命令です。 ごめんね、直接伝えてあげられなくて。 直接伝える勇気がなくて、本当にごめんね」 | |||
| 「元気でね、お姉ちゃん」 「いつもあなたを愛しています。あなたの妹、ヴェーネより」 | |||
| クロトは古ぼけた手紙を不器用に折りたたんで、 センタウレイシーのポケットに入れた。 | |||
| クロトの左腕はひどく損壊し、いびつな形で垂れ下がっている。 髪の毛の大半も燃やし尽くされていた。 | |||
| 一滴のオイルが、彼女の腕の断面から滴り落ちて、センタウレイシーの頬を伝った。 さながら誰かの涙のように。 | |||
| クロト | 私は、戻れない。廃棄処分にされてしまう…… | ||
| クロト | でも、レイシー、あなたは違う。きっと誰かが助けてくれる。 | ||
| クロト | コアはまだ稼働してる。UASなら、あなたを直せる。 | ||
| クロト | 私を覚えてなくたっていい。あなたが生きてさえいれば、きっとまた、会いに行くから…… | ||
| クロト | さようなら、センタウレイシー。 | ||
| クロトはセンタウレイシーをUAS支部のゲート前に置いて、訪問ベルを鳴らした。 | |||
| 電子音声 | 【ようこそ、UASへ。ご要件はなんでしょう?】 | ||
| クロト | Butler-36、センタウレイシー。回収を要請する。 | ||
| 電子音声 | 【承知いたしました、ID情報をご提供ください】 | ||
| 電子音声 | 【ID情報をご提供ください】 | ||
| 電子音声 | 【……】 | ||
| 電子音声 | 【プロセスエラー、人工窓口に切り替えます】 | ||
| クロトはすでに、街の角へと隠れていた。 | |||
| UAS支部のスタッフたちが、センタウレイシーを建物へ運び込むのを見届けてから、 彼女はヘルを抱き上げて、アメリカの朝もやの中へと消えた。 |
