黄昏のラメント 真紅の葬儀 STAGE 5 絶響探求-5

Last-modified: 2026-02-10 (火) 23:10:27

ラレド居住区、UAS支部。
 街中に降り注ぐ朝の日差しが、しわくちゃになった一枚の手紙を優しく照らした。
「これはUASの受け入れ契約書です。パパとママが残していったお金で、
 あなたの長期保守サービスを購入しました。
 だからあなたがUASへ戻っても、所有者は私のままです。
 でももう仕事を続ける必要はありません。
 どうか、あなたの好きなことをしてください」
「私は軍に入隊して、パパとママを探しに行きます。
 ついてこないでね、レイシー。
 戦場に来ちゃだめ――これは主人としての最後の命令です。
 ごめんね、直接伝えてあげられなくて。
 直接伝える勇気がなくて、本当にごめんね」
「元気でね、お姉ちゃん」
「いつもあなたを愛しています。あなたの妹、ヴェーネより」
 クロトは古ぼけた手紙を不器用に折りたたんで、
センタウレイシーのポケットに入れた。
 クロトの左腕はひどく損壊し、いびつな形で垂れ下がっている。
髪の毛の大半も燃やし尽くされていた。
 一滴のオイルが、彼女の腕の断面から滴り落ちて、センタウレイシーの頬を伝った。
さながら誰かの涙のように。
クロト私は、戻れない。廃棄処分にされてしまう……
クロトでも、レイシー、あなたは違う。きっと誰かが助けてくれる。
クロトコアはまだ稼働してる。UASなら、あなたを直せる。
クロト私を覚えてなくたっていい。あなたが生きてさえいれば、きっとまた、会いに行くから……
クロトさようなら、センタウレイシー。
 クロトはセンタウレイシーをUAS支部のゲート前に置いて、訪問ベルを鳴らした。
電子音声【ようこそ、UASへ。ご要件はなんでしょう?】
クロトButler-36、センタウレイシー。回収を要請する。
電子音声【承知いたしました、ID情報をご提供ください】
電子音声【ID情報をご提供ください】
電子音声【……】
電子音声【プロセスエラー、人工窓口に切り替えます】
 クロトはすでに、街の角へと隠れていた。
 UAS支部のスタッフたちが、センタウレイシーを建物へ運び込むのを見届けてから、
彼女はヘルを抱き上げて、アメリカの朝もやの中へと消えた。