| しばらくして。柳生師範の臨時の邸宅。 | |||
| デュパン | ……私の知る情報は以上だ。 | ||
|---|---|---|---|
| 秋 | なるほど。そのルブランとかいう輩のせいで、主催者が狼狽えているというわけか。だが、あの刀はすでに展示会場へと送っているし…… | ||
| デュパン | ここへ来る前に、刀の引き渡し現場に立ち会った。さしあたって数珠丸恒次は無事だ。 | ||
| 秋 | そうだったか!ははは、頼りになるな!お前のような探偵がいれば、爺さん自ら山を降りた甲斐があったというものだ! | ||
| デュパン | 家主はまだご休憩中か?今は午後だ、高齢者には優しい時間帯であるはずだが。 | ||
| デュパン | ご都合が悪いようなら、日を改めるとしよう。私が独自に調査を進めた上で、情報交換に伺えばよい。 | ||
| 秋 | 気にするな、爺さんはいつもああだ!気分が多少優れないってだけで面会謝絶だ。案ずるな、なにも問題ない。 | ||
| 秋 | それに爺さんが言っていた。数珠丸恒次の展示と保護に関しては、俺たち二人で協力し合えと。お前はどう考える? | ||
| デュパン | 私は一向にかまわんさ。君が調査に全面的に協力してくれるのなら。 | ||
| 秋 | 当然だ。こう見えて、正真正銘のボディーガード人形なのだからな。 | ||
| 秋 | 展示会場への刀の護送も俺が担当した。お前が必要としている情報は、すべてここにある。 | ||
| 秋はそう言って自分自身を指さすと、デュパンに向かって微笑んだ。 | |||
| 秋 | と、いうわけだ。で、いつ始めるんだ?言っておくが、やる気に満ちた俺は貴重だぞ! | ||
| デュパン | やけに嬉しそうだな? | ||
| 秋 | 当たり前だろう、爺さんに言われたんだ。これも世間を知る良い機会だと。 | ||
| 秋 | 剣術の修行にせよ、世事(せじ)の修行にせよ、俺にとっちゃどちらも有り難い。それに、爺さんの役に立てるとなれば一石二鳥だろう? | ||
| 秋 | 爺さんは口ではああ言いつつも、この度の贈呈をそれなりに重んじているのだ。調査に加わりたいと俺が申し出た時は、二つ返事で承諾したものさ。 | ||
| デュパン | ずいぶんと気前のいいことだ……わかった。 | ||
| デュパン | ――となれば、善は急げだな。私はこれより展示会場付近へと赴き調査を行う。君はどうする? | ||
| 秋 | 今からか? | ||
| デュパン | 展示会は明日。相手はあのルブランだ、準備を万全に整えても足りないくらいさ。 | ||
| 秋 | ほぉ、そこまで……そいつが怪盗であること以外は、俺は何も知らなんだ。 | ||
| デュパン | 手強い奴さ……相手が極めて聡明かつ狡猾である点は否定できない。奴に関わった多くの者が万策尽きている。 | ||
| デュパン | 奴と対峙する際には、細心の注意を払うべきだ。わずかな隙でも見せれば、確実に足をすくわれる。 | ||
| 秋 | お前をしてそこまで言わせるとはな、厄介な相手であるのは間違いなさそうだ。 | ||
| 秋 | よし、ならば…… | ||
| ドォン―― | |||
| 秋が言い終わらぬうちに、外の庭から轟音が響いた。 | |||
| ロボットA | 【(〝▼皿▼) セヤカラ、ナンドモイウタヤロ!ウエカエハ、シンチョーニ!】 | ||
| ロボットB | 【( 」゚Д゚)< Aガオコッタドー!ウエキバチノカケラ、ハヤクカタヅケルデゴンス!】 | ||
| ロボットC | 【⊙0⊙ カタヅケルドス、カタヅケルドスエー!】 | ||
| デュパン | これは……どうなっている? | ||
| デュパン | (あのロボットどもは、先ほど庭に入った時に見た……) | ||
| デュパン | あの小型ロボットには「スヴァローグ重工」のロゴが記されている。そんなものが、なぜここに? | ||
| ?? | 申し訳ありません。この子たち、さっきデバッグを行ったばかりで……まだ万全ではないんです。 | ||
| ?? | ご察しのとおり、この子たちはスヴァローグ重工の汎用機を、園芸用にカスタマイズしたものでして。 | ||
| 園芸用の枝切りバサミを手にした少女が、もう一つの部屋から現れた。 地面に落ちていた枝をひろいあげ、ロボットに渡す。 | |||
| ?? | はじめまして、私は咲耶といいます。 | ||
| デュパン | 私はデュパンだ。その身なり……もしや、ここの植物の剪定と世話は君が? | ||
| 咲耶 | あっ、いいえ。ただ時間があったものですから。展示会場の造園が、私の本来の担当です。 | ||
| 秋 | 咲耶か。チビどもも、前よりずいぶんと賢くなったな。 | ||
| 秋 | ふむ、この俺が仲介するとしよう。デュパンは展示会の安全を確保すべく、爺さんが呼び寄せた探偵だ。こっちの咲耶は―― | ||
| 秋 | 展示会の主催側が特別に招いた庭師なんだが、爺さんが腕前にたいそう惚れ込んでなぁ。庭の設計をこやつに一任したのだ。 | ||
| デュパン | なるほど、ここへ一時的に身を寄せているわけか。理解した。 | ||
| 咲耶 | はい。それに、こちらの庭園でしたら、会場で使う園芸ロボットさんたちの調整にちょうど良いですし。一石二鳥というものです。 | ||
| 咲耶 | 細かい作業には向いていませんが、基本的な園芸業務のサポートには、とても役立つんですよ。 | ||
| そう言いながら、咲耶は整理し終えた鉢植えを抱き上げた。 いくつかの真っ白な花が、緑葉の合間から顔をのぞかせ、 彼女の歩みとともに微かに揺れている。 | |||
| 咲耶 | お出かけになるんですか?でしたら、私はこれで。 | ||
| 秋 | ああ!少しばかり出かけてくる。 | ||
| 秋 | デュパン、出発するんだな?どこにいくかアテはあるのか? | ||
| デュパン | 老練かつ沈着冷静なパートナーが理想だったが……まぁ、これも悪くはないか。 | ||
| デュパン | まずは会場周辺の調査に向かう、ついてきたまえ。 |
