| ごろつき | クソッ、人形ごときが……分が悪い、ずらかるぞ! | ||
|---|---|---|---|
| 不良 | お前らなんざ廃棄処分になっちまえ!この鉄クズどもが! | ||
| 口先だけは立派だが、ごろつきどもの戦闘力は、明らかにニ名の人形には及ばなかった。 | |||
| 秋 | ……逃げたか、まぁいいだろう。 | ||
| デュパン | 潮時を見極める程度の頭脳はあるらしい。なにせ相手からの加害行為がなければ、人形は人間に手出しできないからな。 | ||
| デュパン | といっても、ささやかな反撃がせいぜいだ。民生用人形のプログラム制限には逆らえない。 | ||
| デュパン | それがわかっていたから、交渉を持ちかけようとしたのだ。 | ||
| 秋 | なるほどな、しかし俺は…… | ||
| ??? | ゴホッ、ゴホゴホッ…… | ||
| 秋 | 話はあとだ、まずはこやつを助けねば。おい、大丈夫か…… | ||
| 秋 | ……お前は……咲耶!? | ||
| デュパン | 突撃して行ったかと思えば……今頃気づいたのか? | ||
| デュパン | いずれにせよ結果オーライだ。咲耶さん、問題ないか? | ||
| 咲耶 | いたた……助けてくださってありがとうございます。すみません、みっともない所をお見せして…… | ||
| 秋 | 待て、お前……首のそれはなんだ? | ||
| 咲耶 | 先ほどの者たちに付けられた、暗号付きの首輪です……人間たちの悪意には、際限などないのでしょうね…… | ||
| 少女の首元から伸びる鎖のもう一方は、壊れた消火栓にがっちりと繋ぎとめられていた。 鎖が短すぎるせいで立ち上がることも座ることも許されず、 仕方なく消火栓に体をよりかからせている。 | |||
| 秋 | なんて奴らだ……次に会ったら袋叩きにしてやる! | ||
| 秋 | くっ……こうも鎖が短くては、刀は使えぬ……デュパン、咲耶を見ていろ。使えそうな工具を見繕ってくる。 | ||
| デュパン | 必要ない、ここは私が。 | ||
| デュパンは咲耶に近づき、暗号付きの首輪を手にとって、なにやら入力し始めた。 首輪から電子音が鳴ったかと思うと、 今度は点滅しながら入力エラーの警報を発し始めた。 | |||
| デュパン | これは、違うか……ならば…… | ||
| 秋 | 暗号を試すつもりか?悠長な探偵もあったものだ……いや、待てよ。 | ||
| 秋 | お前、何かに気づいたのだな?その……分析能力で? | ||
| デュパン | そうとも言えるが……私とて確信はない。 | ||
| デュパン | 先ほどのごろつきたちの訛り方からして、おそらくは北部の出身だろう。 | ||
| デュパン | 日本北部には、独自の方言が複数存在する。そして、彼らのよく使う所謂スラングも…… | ||
| 何度か文字を入力しても、首輪は目障りな警告を繰り返すばかりだ。 しかし、首輪の構造が簡単で助かった、パスワードの入力回数に上限はないらしい。 | |||
| デュパン | 駄目か。だが、私の推理が正しければ…… | ||
| デュパンは眉をひそめ、しばし考え込んだ。 そして今度は、二つの単語を組み合わせたものを入力してみる。 | |||
| ピッ―― | |||
| 秋 | おおっ、鍵が開いたぞ! | ||
| 秋 | 咲耶、どうだ、立てそうか? | ||
| 咲耶 | ゴホッ……ありがとうございます。 | ||
| 少女は秋の手を取って、よりかかった姿勢から立ち上がった。 彼女が着物の裾を手ではたくと、 身につけていた装飾用の花びらが地面へといくつか散らばった。 | |||
| デュパンは視線をそらし、街角へと目を向けた。 この裏通りから大通りへと続く道にも、白い花びらが落ちている。 咲耶はおそらくあそこから―― | |||
| ふと何かを思いつき、デュパンは踏みしだかれた白い花びらを見つめた。 秋に呼ばれたのを聞いて、ようやく我に返る。 | |||
| 秋 | あいつらに何もされてないな?デュパン、お前も見てやってくれ! | ||
| デュパン | ――目立った外傷はなさそうだ。咲耶さん、具合はいかがかな? | ||
| 咲耶 | ご安心ください、セルフメンテナンスを走らせました。異常はなさそうです。 | ||
| 咲耶 | 本当に、ちょうどいいところへ駆けつけてくださいました。お二方にどうお礼を申し上げるべきか。あと少しでも遅かったら…… | ||
| 秋 | お前が無事なら、それでいいさ!悪をくじき弱きを助けるのが、剣士の使命だからな。そうだろう、デュパンよ…… | ||
| 秋 | ……おい、デュパン。また呆けているのか? | ||
| デュパン | ……いや、なんでもない。 | ||
| デュパンは首をふると、その言葉を最後に黙り込んでしまった。 |
