L.A.D.事件 謎影解析 STAGE 2 帰属理論-3

Last-modified: 2026-02-12 (木) 19:42:43

 夜の帳が降りる。
柳生師範による采配で、デュパンは邸宅の客間で夜を越すこととなった。
 明日はいよいよ展示会だ。
デュパンは眠りもせずに、客間で資料の整理を続け、物思いにふけっている。
デュパンまたしてもルブランとの対決か……
 部屋の明かりが窓から庭へと滑り込む。
窓の外に広がる闇が、デュパンの思考をさらなる深みへと促した。
デュパン(セキュリティ装置は機械が主だ。賢さはAIに劣るが、ルブランの得意とする電子ジャミングを最大限防げる……)
デュパン(会場に配置された警備人形の検査も終えている。理論上、出入り口の安全は確保されているはずだ。垂れ幕の昇降も手動での操作が可能……)
デュパン(会場周辺の建物とルートは、現地での記録と整合を行ったばかりだ。確率の低すぎる266の可能性を取り除くと……)
デュパン(……)
 ピッ――ふいに鳴った着信音が、寂夜ではひときわ顕然に感じられた。
 ふと、デュパンの心に不吉な予感が差し昇る。
彼はすぐに通信を受けた。
君と連絡先を交換するのは、これが初めてか?
——デュパン。
デュパン……ルブラン。
ルブランさすがは名探偵、私の正体を真っ先に言い当てるとは――
私の挑戦状は、受け取ってもらえたようだな。
デュパンこんな時に連絡をよこしたのは、私と馴れ合うためか?
 ルブランの口調はゆったりとしていた。さながら夜に奏でられる弦のように。
デュパンは無意識に杖をさすりながら、全モジュールを稼働させて
ルブランの意図を推し量った。彼の言葉に振り回されるつもりなど毛頭ない。
ルブラン相変わらず冷たいな、君は。
もう少し、ロマンというものを嗜んでおくべきだろう。
そのほうがずっと面白いぞ。
デュパン明日の「パフォーマンス」にずいぶんと自信がおありのようだ。
ルブラン――明日だと?
ルブラン鮮やかな演目は、すでに始まっているではないか。
デュパン……
デュパン尋ねてほしそうだな、私になにを教えるつもりだ?
ルブラン「薔薇の名は変われど、香りは同じ」
ルブラン一つの舞台に、演目がたった一つだとは限らない。
ルブラン今度は私に追いつけるかどうか、楽しみにしているぞ……
 ピッ――
 通信が切られ、いたずら電話のごとき通話は、一方的に終わりを告げた。
デュパンはすばやく現状を整理し、ルブランの魂胆を推理し始める。
同時に、主催側に通信で確認を取った。
 
セキュリティ数珠丸恒次ですか?いえ、特に問題はありませんが。ルブランは姿を見せていません。
デュパン念のため、展示品のセキュリティ映像を回してもらえるかい。
セキュリティええ、かまいませんが……ご覧のとおり、警備もついてます。
ロボットA【(╬ ̄皿 ̄) ナンヤネン!ナンノサワギヤ!?】
小さなロボットB&C【⊙0⊙ ワッツカミングアップ!?ワッツカミングアップ!?】
セキュリティ各方面のセキュリティをもう一度確認しろ!
小さなロボットたち【Σ(☉▽☉ セキュリティカクニン!オタカラ、マモルー!】
デュパン……頼んだ。
セキュリティ展示会には名だたる面々がお越しになります、セキュリティを万全にしておくのが我々の役目。最善を尽くしますよ。
 
デュパン……展示会の方に異常はなさそうだな。
デュパンルブランの単なるいたずらか?いや、あの男のことだ……
デュパン万が一のこともある、ここはやはり展示会場に向かおう。秋に連絡してすぐに出発を……
 デュパンは書類を整理しながら、通信を立ち上げた。
ところが、あらゆる資料と身支度が整っても、相手が通信を受け取る気配はない。
システム【ツー……ツー……】
システム【ツー……ツー……】
【通信が繋がりません】
デュパン……この時間だと……
 
デュパン夜が深まれば、頭脳もより明晰になるかもしれない。
へいへい、っと――あふ。あぁ~、丸一日働いてくたびれた。ひとっ風呂浴びて、ゆっくり寝るとするか。
 
デュパン仕方あるまい、警備員に連絡させよう。彼を起こせるといいが……
システム……ピッ。
デュパン……いや、ここは……
 
ボディガード若旦那ですか?部屋の照明は点いているので、まだ起きているはずです。しかし珍しいですね、こんな遅くに……
ボディガード若旦那?
 コンコン……
デュパンここは私が。
 コンコン……
デュパン秋?
デュパンチッ……
 デュパンは秋の部屋のドアノブに手をかけながら、
扉の鍵を観察しつつ、家主に報告すべきかを考えていた。
扉がかすかに押し開かれたとたん、内側へと一気に開け放たれる。
 扉に鍵はかかっていなかった。
部屋はもぬけの殻だ。
デュパン秋……!