| デュパンは部屋には入らずに、入り口に留まった。 探偵としてのカンが、彼に情報収集が先だと忠告したのだ。 | |||
| デュパン | ……秋は行方について、何も告げていなかったのだな? | ||
| ボディガード | ええ、特には。夕食の後、まっすぐ部屋に戻られました……若旦那はたいそうよく眠られるんです。家の者なら誰でも知っていることですが。 | ||
| デュパン | つまり、誰も彼に気を配っていなかった……なるほどな。 | ||
| デュパン | 部屋の中をひととおり調べさせてもらおう。その後で、家主に報告するか否かを判断する。 | ||
| デュパン | (自ら立ち去ったか、あるいは事件に巻き込まれたか……ルブランの挑戦状となにか関係が?) | ||
| デュパン | (それともルブランは、このことを教えるつもりで……?) | ||
| ボディガード | デュパン様? | ||
| デュパン | 調査している間、君たちにはここで待っていてくれ。 | ||
| デュパンは部屋へと足を踏み入れ、周囲を観察し始めた。 室内の環境は、デュパンの部屋となんら違いはない。 | |||
| 部屋には人形が暮らした痕跡があった。 秋の刀はベッドの傍らに残されている。 そのすぐそばに、見たこともない封筒が静かに横たわっていた。 | |||
| デュパン | これは…… | ||
| ボディガード | デュパン様、なにかわかりましたか?師範にご報告する必要は…… | ||
| デュパン | …… | ||
| デュパン | ……そうするしかなさそうだな、これは脅迫状だ…… | ||
| デュパン | 秋が誘拐された。 | ||
| ボディガード | ――な、なんですって!? | ||
| ボディガード | で、ですが、若旦那はボディーガード人形ですよ?柳生流にも精通しておりますし……我々が束になっても敵わないんです!それがなぜ…… | ||
| ボディガード | そもそも、師範の警備は若旦那の担当でした……師範ならともかく、用心棒を誘拐する理由がありません! | ||
| デュパン | 手紙には、犯人からの連絡を待てと書かれている。各方面への報告には、これをスキャンして使用したまえ。 | ||
| デュパン | 事件はすでに起きている。さぁ、はやく。 | ||
| ボディーガードが通信を立ち上げている横で、デュパンは部屋の中を改めて見回した。 遺された事件の痕跡を集め、これから起こり得るであろう 急激な展開について推理し始める。 | |||
| デュパン | (この件……ルブランと無関係ではないな。だがこれまでのケースからして、ルブランが何者かを駆け引きの材料にするとは思えないが……) | ||
| デュパン | (突発的な要素を踏まえても、ここまでする理由が見当たらない。この脅迫者はいったい何者だ……?) | ||
| 身長、体型、性別、身分。足跡、手紙、出入り口、タイミング。 あらゆる手がかりを一つひとつ繋げてゆく。だが、まだまだ足りない。 | |||
| 相手の正体、それに動機は謎に包まれたままだ。 | |||
| デュパン | 数珠丸恒次への注意を分散させるべく、私を足止めするために……? | ||
| いや、動機としてはあまりにも単純すぎる。 犯人がルブランなら、目的は他にあるはずだ…… | |||
| ボディガード | デュパン様!師範に報告いたしました、すぐに参られるそうです!こちらへ…… | ||
| キュイーン……キュイーン…… 小さなロボットたちの稼働音が鳴っている。 邸宅の騒ぎを聞きつけて、他の客人たちも次々と目を覚ました。 | |||
| 咲耶 | うーん…… | ||
| とある部屋から、庭師の人形が現れた。 表情は眠たげなままだ。 | |||
| 咲耶 | こんな遅くに……何があったんですか? | ||
| 咲耶 | えっ……デュパン、さん? |
