L.A.D.事件 謎影解析 STAGE 3 偽のジレンマ-3

Last-modified: 2026-02-12 (木) 19:45:48

デュパンそうとわかれば、これ以上装う必要もあるまい。
デュパンまさかお前が、他人の姿を借りて現れるとはな。ルブラン。
ルブランどうだ、驚いたか?
ルブラン見透かされるとは思っていなかったが、幸い興は満たせた。
デュパンそれが新しい趣味だと言うのなら、追及しないでおこう。君に尊重と祝福を。
デュパンこの件が片付いたら、この手でお前を逮捕する。その女性人形にきちんと謝っておくことだ。
ルブラン逮捕されずともそうするつもりだ、当然だろう?
ルブランそれにしても相変わらずだな、君は。いつ私だと気づいた?
デュパンこれからとある場所に向かう、お前と語り合っている暇はない。
デュパンどうしても気になるのなら、私についてきたまえ。道すがら話そう。
ボディガードお、お待ちください!若旦那はどうするおつもりです!?それにこの……この怪しい奴を放っておく気ですか?!
デュパン端緒はつかんだ、君たちはここで私からの連絡を待ちたまえ。
デュパンルブランに至っては……この男は非常識なように見えて極めて慎重だ。
デュパンここにいる「咲耶」を捕らえたところで意味はない、それどころか罠の可能性もある。
ルブランふはははは!デュパンよ、よくわかっているじゃないか!
ルブラン正解したことに免じて、君に同行してやろう。
 
ルブランここは……
デュパン秋の失踪から、たいして時間は経っていない。素体を抱えていては、そう遠くへは逃げられないはずだ。
デュパンそして今は真夜中。たとえ車両を用意していたとしても、邸宅の周辺で大々的に行動すれば、すぐに発見される。
ルブランつまり、奴らはまだ付近にいると?
デュパン先ほどの通信で、相手のいる倉庫の設備と出入り口のタイルを確認した。
デュパンそして、窓から倉庫内を照らす明かりも。光の角度、時間、構成から察するに……
デュパンこの裏通りのどこかに間違いないだろう。わずかな時間さえあれば、記憶の中の映像と照らし合わせることができる。
ルブランほう――極めて精確な判断だ。だが、私だと気づいたことと、なんの関係が?
デュパン……ここも違う、次だ……
ルブランおい、質問に答えんか!
デュパン……
デュパン昼間、この付近でお前と遭遇した時、なぜ治安が悪いと知っていて、たった独りで訪れたのか訊いたな。
デュパンお前は花の種を買うためだと言っていた。だが、それは答えとしては不十分だ……
デュパンなぜ「咲耶」は、たった独りで出かけようとしたのだ?
ルブランそれは……
デュパン名の知れた庭師である彼女には、財閥の後ろ盾がついている。花の種を買うためだけに、自身を危険に陥れる必要はない。
デュパンあの時も、お前に入れ替わっていたのだろう?
デュパン人目につかずに窃盗と逃亡の下準備を行うには、この道は避けては通れない。
ルブラン鋭いな……君たちが咲耶を助けずとも、私が手を下すつもりだった。
ルブラン愛らしい少女を危険にさらすなど言語道断だ。違うか?
デュパン確かに、お前らしい手口だな。
ルブランだがそれも、この私の仕業であるという決定的な証拠にはなりえない。
ルブラン悪党に見えるからといって、なんでもかんでも私のせいにされては困る!
 ふと足音が止んだ。懸命に手がかりを手繰り寄せていたデュパンは、
思考をルブランに妨げられ、思わずこめかみに手を当てた。
デュパン……そういう意味ではない。
デュパンもう一つは、この誘拐事件だ。誘拐犯からの通信を受け取った時から、私はそれについて考えていた。
デュパン本人の性格はさておき、秋には警備用人形、そして剣士としての資質が備わっている。
デュパンラチェットはただの人間だ。音を立てずに彼を邸宅から連れ出すなど、不可能に近い。
ルブランつまり君は、私がラチェットを手助けしたと言いたいんだな?
デュパン例によって、秋を事前に昏睡状態にしておけば、ラチェットの仕事は容易い。
ルブランふむ、その通りだ。だが、私が秋くんの誘拐を手助けして何になる?
デュパンなぜなら、お前は私を熟知しているからだ。私がお前をよく知るように……
デュパンここも違うか……残るは最後の数軒……
ルブラン話を終えてから探せばよいものを。
デュパンいいアイディアだ、お前の時間稼ぎにもなるしな?
 未だ明けきらぬ暗い夜の中を、二人は駆けてゆく。
デュパンの足取りが休まる気配はない。
デュパンもうすぐ夜明けだ。数珠丸恒次の展示は間近だというのに、私はこんな所で誘拐犯を探し回っている。
デュパンこの状況なら、私が迷わず秋を助けるであろうことを、お前は知っていた。お前との勝負にかまけ、秋の身柄を警察に託すのではなく……
デュパンこれは、お前が私のために設えた迷宮。私は、それに足を踏み入れる運命だった。
ルブランククク……賢い名探偵殿だ。
ルブラン今思えば、先ほど庭で「咲耶」が姿を現した時から、君はわかっていたのだろう?
デュパン本心からの憂慮と意図的な誘導は、一般人には見分けがつかないものさ。だが私には、それがわかる。
ルブランなるほど。いつの間にか、私も当事者になっていたというわけか。
デュパン可能性はいくつもあった。だが、この推理を成立させるための動機と能力を持つのは、お前だけなのだよ――「ルブラン」
デュパンラチェットの言っていたハッキングプログラムは……存在するかもしれないが、けして万能ではない。
デュパン現代の技術水準をもとに導き出した結論だよ。ああいった人種がそれを扱えるとするよりも、お前がそれを開発したと考えたほうが自然だろう。
ルブランお褒めに預かり光栄だ、名探偵殿。
ルブランあの男に握らせたのは、極めてお粗末な破壊プログラムだ。人形を操れなどしないが、一定確率でメンタルを破壊することはできる。
ルブラン奴がよそ見している隙に、比較的「安全」なプログラムへとすり替えておいたのだぞ。少しは感謝したらどうなんだ?
デュパンそうさせてもらうよ。お前が事態を助長するのではなく、真の意味で手助けしてくれたらな。だが、今回は明らかに違う。
デュパンなにか特殊な手段を用いたのかと思ったが、単に咲耶の素体を制御しているだけに過ぎないようだな。
ルブランフッ……ばれてしまっては仕方ない。だが、君はどうやって……
ルブランむっ!?ちょっと待て、なんだそのゴミを見るような目は!?
ルブラン私は麗しき女性に手出しなどしないぞ!!断じてだ!!
ルブランゴホン……誤解しないでもらいたい。私はただ、彼女の睡眠時や充電時、放心している時に素体を拝借しているまでだ。
デュパンそういった状況でしか拝借「できない」の間違いだろう。
ルブラン人の欠点をあげつらうのはやめておけ、人望を失くすぞ。
 その時、デュパンが歩調を緩めた。
確信を持てたかのように、二つの部屋を見比べている。
その間も会話は続いていた。
デュパン……咲耶の有事には「手を下すつもりだった」と言ったな。だが彼女の素体を調べたところ、彼女に戦闘モジュールは備わっていなかった。
デュパンつまりあの時、お前本人もこの付近にいたということになる。
デュパンだが秋と私が現れるのを見て、手を引いた。
ルブランふははははは!さすがだな!こうなると知っていたら、秋を選ぶんだった。咲耶の素体を危険にさらすこともなかったろうに。
デュパン技術が及ばなかっただけで、当初はそのつもりだったのだろう。
デュパン機能面から見ても、秋のメンタルセキュリティが一段と高いのは明らかだ。単純なハッキングすら困難に違いない。
ルブランさて、それはどうかな?これから全面的な研究を進めるつもりなんだ、君も加わらないか?
デュパン気持ちだけ受け取っておくよ。
ルブランまぁまぁ、そう言わず……
おっと、そろそろターゲットに行き着く頃合いか?
デュパン正確には――すでに行き着いている。